WO2018179140A1 - 医療用処置具 - Google Patents

Abstract

細径化を図りながら、大きな力で処置対象部位を処置することを目的として、本発明に係る医療用処置具（１）は、細長い軟性の挿入部（２）と、挿入部の先端に挿入部の長手軸に直交する軸線（Ａ）回りに揺動可能に支持された把持片（３ｂ）と、挿入部の基端に配置され、把持片を駆動する動力を発生させる駆動部と、駆動部により発生した動力を挿入部の先端まで伝達する第１動力伝達部材（４ａ，４ｂ）と、第１動力伝達部材により伝達された動力を増幅する動力増幅機構（５）と、把持片の軸線に固定されたプーリ（７）と、プーリに巻き掛けられ動力増幅機構により増幅された動力をプーリに伝達して、プーリを軸線回りに回転させることにより把持片を揺動させる線状の第２動力伝達部材（６）とを備える。

Description

医療用処置具

　本発明は、医療用処置具に関するものである。

　生体組織等を把持して手技を行う医療用処置具が知られている（例えば、特許文献１参照。）。この医療用処置具は、細長い挿入部の先端に配置された把持部を挿入部の基端に配置された操作部に加えた牽引力によって把持部を閉じるものであり、トグル機構によって牽引力を増幅して把持部による高い把持力を達成している。

特開２０１２－１８７３１１号公報

　しかしながら、特許文献１の医療用処置具に備えられたトグル機構による増幅率は、トグル機構を構成しているリンク部材の長さ寸法に依存し、増幅率を高く設定しようとすると、リンク部材の長さを長くする必要がある。リンク部材は、牽引力を付与する牽引力伝達部材に対して交差する方向、すなわち、挿入部の径方向に延ばす必要があり、リンク部材を長くすると、挿入部の径寸法を増大させざるを得ず、低侵襲で処置を行う必要のある医療用処置具に必要な挿入部の細径化を図ることができないという不都合がある。

　本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、細径化を図りながら、大きな力で処置対象部位を処置することができる医療用処置具を提供することを目的としている。

　本発明の一態様は、細長い軟性の挿入部と、該挿入部の先端に該挿入部の長手軸に直交する軸線回りに揺動可能に支持された把持片と、前記挿入部の基端に配置され、前記把持片を駆動する動力を発生させる駆動部と、該駆動部により発生した動力を前記挿入部の先端まで伝達する第１動力伝達部材と、該第１動力伝達部材により伝達された動力を増幅する動力増幅機構と、前記把持片の前記軸線に固定されたプーリと、該プーリに巻き掛けられ前記動力増幅機構により増幅された動力を前記プーリに伝達して、該プーリを前記軸線回りに回転させることにより前記把持片を揺動させる線状の第２動力伝達部材とを備える医療用処置具である。

　本態様によれば、軟性の挿入部を体内に挿入し、挿入部の基端に配置された駆動部を作動させることにより、挿入部の先端の把持片が揺動させられて処置を行うことができる。駆動部により発生した動力は、第１動力伝達部材によって挿入部の先端まで伝達され、動力増幅機構によって増幅された後に第２動力伝達部材によってプーリに伝達され、プーリの回転によって把持片が揺動させられる。駆動部により発生した動力を動力増幅機構によって増幅するので、小さい動力で把持片を動作させることができるとともに、プーリによって小さなスペースで線状の第２動力伝達部材により伝達されてきた動力を、把持片を揺動させる力に変換することができ、挿入部の細径化を図ることができる。

　上記態様においては、前記動力増幅機構が、前記挿入部の長手軸に沿う方向に移動可能に支持された可動プーリであり、前記第１動力伝達部材が、前記可動プーリに巻き掛けられる線状部材であり、前記第２動力伝達部材の一端が前記可動プーリの回転軸に取り付けられていてもよい。

　このようにすることで、第１動力伝達部材を牽引することにより、第１動力伝達部材が巻き掛けられた可動プーリが挿入部の長手軸に沿う方向に移動し、可動プーリの回転軸に取り付けられた第２動力伝達部材が牽引され、第２動力伝達部材が巻き掛けられたプーリが回転して把持片が揺動させられる。可動プーリを動滑車として使用することにより、第１動力伝達部材を牽引する力が２倍に増幅されて第２動力伝達部材を牽引するので、駆動部により発生した動力を増幅して把持片を揺動させることができる。この場合に、可動プーリが挿入部の長手軸に沿う方向に移動するので、挿入部を大径化させずに済み、細径化を図ることができる。

　また、上記態様においては、前記動力増幅機構が大径部と小径部とを備える段付プーリを備え、前記第１動力伝達部材が前記大径部に巻き掛けられ、前記第２動力伝達部材が前記小径部に巻き掛けられていてもよい。
　このようにすることで、第１動力伝達部材を牽引することにより、第１動力伝達部材が大径部に巻き掛けられた段付プーリが回転させられ、段付プーリの小径部に巻き掛けられた第２動力伝達部材が牽引されてプーリを回転させ把持片を揺動させることができる。第２動力伝達部材を牽引する力は、大径部と小径部との比率だけ第１動力伝達部材を牽引する力を増幅するので、大きな力で処置対象部位を処置することができる。この場合においても、段付プーリの外径を挿入部の外径以内に抑えることにより、挿入部を大径化させずに済み、細径化を図ることができる。

　また、上記態様においては、前記第１動力伝達部材がシャフトであり、前記動力増幅機構が、前記シャフトの先端に形成された送りネジと、該送りネジに締結されるネジ孔を有する可動体とを備え、前記第２動力伝達部材の一端が前記可動体に取り付けられていてもよい。
　このようにすることで、第１動力伝達部材を構成するシャフトを長手軸回りに回転させる駆動力を駆動部により発生すると、シャフトの先端に形成された送りネジの回転が送りネジのリードに応じた可動体の長手軸方向への直線移動に変換され、可動体に固定された第２動力伝達部材が長手軸方向に牽引されてプーリが回転させられ、把持片を揺動させることができる。

　送りネジのリードを十分に小さく設定することにより、第１動力伝達部材に加えた動力を増幅して第２動力伝達部材に伝達することができ、大きな力で処置対象部位を処置することができる。この場合においても、可動体の外径を挿入部の外径以内に抑えることにより、挿入部を大径化させずに済み、細径化を図ることができる。

　また、上記態様においては、前記動力増幅機構が、前記把持片を前記軸線回りの両方向に揺動させる動力を増幅してもよい。
　このようにすることで、把持片を閉じて処置対象部位を高い把持力で把持する動作と、把持片を広げて処置対象部位を大きな力で広げる動作の両方を実施することができる。

　また、上記態様においては、前記動力増幅機構を複数段直列に備えていてもよい。
　このようにすることで、直列に配置される動力増幅機構の段数によって、高い増幅率で動力を増幅することができる。

　また、上記態様においては、前記把持片よりも基端側に、該把持片の前記軸線と平行な軸線回りに屈曲する屈曲関節を備え、前記段付プーリが前記屈曲関節の前記軸線回りに回転可能に取り付けられていてもよい。
　このようにすることで、段付プーリを駆動する第１動力伝達部材あるいは段付プーリによって牽引される第２動力伝達部材のいずれかを屈曲関節の屈曲に応じて湾曲させることにより、屈曲関節の基端側から屈曲関節を超えた先端側に動力を伝達して、大きな力で処置対象部位を処置することができる。

　本発明によれば、細径化を図りながら、大きな力で処置対象部位を処置することができるという効果を奏する。

本発明の第１の実施形態に係る医療用処置具の把持片を閉じた状態を模式的に示す正面図である。 図１の医療用処置具の把持片を開いた状態を模式的に示す正面図である。 本発明の第２の実施形態に係る医療用処置具の把持片を閉じた状態を模式的に示す正面図である。 図３の医療用処置具の把持片を開いた状態を模式的に示す正面図である。 図３の医療用処置具の第１の変形例の把持片を閉じた状態を模式的に示す正面図である。 図５の医療用処置具の把持片を開いた状態を模式的に示す正面図である。 図３の医療用処置具の第２の変形例の把持片を閉じた状態を模式的に示す正面図である。 図７の医療用処置具の把持片を開いた状態を模式的に示す正面図である。 図３の医療用処置具の第３の変形例の把持片を閉じた状態を模式的に示す正面図である。 図９の医療用処置具の一方の把持片を開く際に作用する力を説明する正面図である。 図９の医療用処置具の他方の把持片を開く際に作用する力を説明する正面図である。 図３の医療用処置具の第４の変形例であって、屈曲関節を有する場合を説明する照明図である。 本発明の第３の実施形態に係る医療用処置具の把持片を閉じた状態を模式的に示す正面図である。 図１３の医療用処置具の把持片を開いた状態を模式的に示す正面図である。

　本発明の第１の実施形態に係る医療用処置具１について、図面を参照して以下に説明する。
　本実施形態に係る医療用処置具１は、図１および図２に示されるように、細長い軟性の挿入部２と、該挿入部２の先端に設けられた把持部３と、挿入部２の基端に設けられた図示しない駆動部と、駆動部により発生した牽引力（動力）を伝達する第１ワイヤ（第１動力伝達部材、線状部材）４ａ，４ｂと、牽引力を増幅する増幅機構（動力増幅機構）５と、該増幅機構５により増幅された力を伝達する第２ワイヤ（第２動力伝達部材）６と、第２ワイヤ６の牽引力を、把持部３を開閉させるための力に変換するプーリ７とを備えている。

　把持部３は、挿入部２の先端に固定された固定把持片（把持片）３ａと、挿入部２の長手軸に直交する方向に延びる軸線Ａ回りに揺動可能に支持された可動把持片（把持片）３ｂとを備えている。プーリ７は、可動把持片３ｂの軸線Ａに固定され、プーリ７に巻き掛けられた第２ワイヤ６を牽引することによって、牽引により発生するモーメントの方向に回転させられて、プーリ７が固定された可動把持片３ｂを揺動させるようになっている。

　可動把持片３ｂは一方向に揺動させられることで、固定把持片３ａとの隙間を閉じる方向に揺動させられて、固定把持片３ａとの間に処置対象部位を把持することができるようになっている。また、可動把持片３ｂは他方向に揺動させられることで、固定把持片３ａとの隙間を広げる方向に揺動させられて、処置対象部位を広げることができるようになっている。

　駆動部は、電動あるいは手動により牽引力を発生する部分であり、発生した牽引力を第１ワイヤ４ａ，４ｂの基端に加えるようになっている。
　増幅機構５は、挿入部２に、該挿入部２の長手軸方向に沿って設けられた２つの長孔８，９と、各長孔８，９に回転軸Ｂ，Ｃが回転可能かつ長手軸方向に移動可能に収容された２つの可動プーリ１０，１１とを備えている。

　第１ワイヤ４ａ，４ｂは可動プーリ１０，１１毎に設けられ、基端が駆動部に接続され、先端が可動プーリ１０，１１に巻き掛けられることにより約１８０°折り返されて挿入部２に固定されている。
　第２ワイヤ６はプーリ７に巻き掛けられ、両端が、２つの可動プーリ１０，１１の回転軸Ｂ，Ｃにそれぞれ取り付けられているとともに、長さ方向の途中位置がプーリ７に固定されている。

　これにより、一方の可動プーリ１１が長手軸に沿って基端側に移動させられると、その可動プーリ１１の回転軸Ｃに取り付けられた第２ワイヤ６が牽引されて、発生するモーメントに応じて一方向にプーリ１１を回転させることができるようになっている。また、他方の可動プーリ１０が長手軸に沿って基端側に移動させられると、その可動プーリ１０の回転軸Ｂに取り付けられた第２ワイヤ６が牽引されて、発生するモーメントに応じて他方向にプーリ１０を回転させることができるようになっている。

　このように構成された本実施形態に係る医療用処置具１の作用について以下に説明する。
　本実施形態に係る医療用処置具１を用いて処置対象部位を処置するには、挿入部２を先端側から体内に挿入し、先端が開かれた状態の把持部３を処置対象部位に近接させる。

　そして、駆動部を作動させて、いずれかの第１ワイヤ４ａ，４ｂを基端側に牽引する牽引力を発生させる。第１ワイヤ４ａ，４ｂに加えられた牽引力は、第１ワイヤ４ａ，４ｂによって挿入部２の先端まで伝達され、第１ワイヤ４ａ，４ｂが巻き掛けられている可動プーリ１０，１１を基端側に牽引する。可動プーリ１０，１１に巻き掛けられた第１ワイヤ４ａ，４ｂは可動プーリ１０，１１の回転軸Ｂ，Ｃを挟んだ両側に略平行に基端側に延びているので、可動プーリ１０，１１の回転軸Ｂ，Ｃには、２本の第１ワイヤａ，４ｂに発生している牽引力が作用し、回転軸Ｂ，Ｃが牽引力の２倍の力で基端側に牽引される。

　すなわち、可動プーリ１０，１１が動滑車として機能し、第１ワイヤ４ａ，４ｂの牽引による移動量に対して半分に減速された移動量だけ可動プーリ１０，１１が移動させられることにより、第１ワイヤ４ａ，４ｂの牽引力に対して２倍に増幅された力が回転軸Ｂ，Ｃに取り付けられた第２ワイヤ６に作用する。これにより、第２ワイヤ６が巻き掛けられているプーリ７が可動プーリ１０，１１によって増幅された大きな力で回転させられて可動把持片３ｂが揺動させられる。

　図１に示されるように、一方の第１ワイヤ４ｂに牽引力を加えることで、一方の可動プーリ１１により増幅された牽引力が第２ワイヤ６を介してプーリ７を一方向に回転させ、可動把持片３ｂを固定把持片３ａに対して閉じる方向に揺動させることができる。これにより、大きな力で処置対象部位を把持することができる。

　図２に示されるように、他方の第１ワイヤ４ａに牽引力を加えることで、他方の可動プーリ１０により増幅された牽引力が第２ワイヤ６を介してプーリ７を逆方向に回転させ、可動把持片３ｂを固定把持片３ａに対して開く方向に揺動させることができる。これにより、大きな力で処置対象部位を広げることができる。

　このように、本実施形態に係る医療用処置具１によれば、第１ワイヤ４ａ，４ｂに加えられた牽引力を増幅機構５によって増幅して可動把持片３ｂを揺動させるので、大きな力で処置対象部位を処置することができる。この場合において、増幅機構５が、挿入部２の長手軸方向に移動する可動プーリ１０，１１によって構成されるので、可動把持片３ｂを揺動させる動作において、トグル機構のように径方向に拡大することがない。その結果、挿入部２の細径化を図ることができるという利点がある。

　特に、動滑車として機能する可動プーリ１０，１１を利用することにより、簡易な構成で、挿入部２の長手方向に延びる第１ワイヤ４ａ，４ｂに加えた牽引力を増幅して、長手方向に作用する大きな牽引力を発生させることができる。
　また、本実施形態においては、プーリ７に掛け渡される第２ワイヤ６の両端にそれぞれ可動プーリ１０，１１からなる増幅機構５を配置しているので、可動把持片３ｂを開く動作および閉じる動作の両方において牽引力を増幅して大きな力で処置することができるという利点がある。

　次に、本発明の第２の実施形態に係る医療用処置具１２について、図面を参照して以下に説明する。
　本実施形態の説明において、上述した第１の実施形態に係る医療用処置具１と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。

　本実施形態に係る医療用処置具１２は、図３および図４に示されるように、第１の実施形態に係る医療用処置具１の可動プーリ１０，１１に代えて、段付プーリ（動力増幅機構）１３を備えている。
　段付プーリ１３は、挿入部２の長手軸に直交する回転軸Ｄ回りに回転可能に挿入部２に取り付けられており、大径部１４と、該大径部１４より小径の小径部１５とを同軸に備えている。

　第１ワイヤ４の長さ方向の途中位置が段付プーリ１３の大径部１４に固定され、第１ワイヤ４の両端が挿入部２の基端側に延びている。これにより、第１ワイヤ４の一端を牽引することにより、段付プーリ１３を一方向に回転させ、第１ワイヤ４の他端を牽引することにより、段付プーリ１３を他方向に回転させることができるようになっている。

　第２ワイヤ６はループ状に形成され、可動把持片３ｂに固定されたプーリ７および段付プーリ１３の小径部１５に掛け渡されている。第２ワイヤ６の長さ方向の途中位置はプーリ７および小径部１５に固定されている。

　このように構成された本実施形態に係る医療用処置具１２によれば、図３に示されるように、駆動部によって第１ワイヤ４の一端に牽引力を加えると、段付プーリ１３が一方向に回転し、小径部１５に固定されている第２ワイヤ６に牽引力が作用する。小径部１５と大径部１４とは所定の比率の径寸法を有しているので、第１ワイヤ４に加えた牽引力は、小径部１５と大径部１４との比率だけ増幅されて第２ワイヤ６に作用する。

　また、図４に示されるように、駆動部によって第１ワイヤ４の他端に牽引力を加えると、段付プーリ１３が他方向に回転し、小径部１５に固定されている第２ワイヤ６に、第１ワイヤ４に加えた牽引力を、小径部１５と大径部１４との比率だけ増幅した牽引力が作用する。
　これにより、駆動部により発生した牽引力より大きな力で第２ワイヤ６を牽引し、大きな力で処置対象部位を処置することができる。

　この場合においても、増幅機構５を構成している段付プーリ１３は挿入部２に固定されているので、可動把持片３ｂの揺動動作において、挿入部２の径方向への寸法変化はなく、挿入部２の細径化を図ることができるという利点がある。

　なお、本実施形態においては、段付プーリ１３によって大径部１４に牽引力を加え、小径部１５に巻き掛けられた第２ワイヤ６に作用する牽引力を増幅することとしたが、これに代えて、図５および図６に示されるように、大径部１４に従動ギヤ１６を設けるとともに、該従動ギヤ１６に噛み合う駆動ギヤ１７と該駆動ギヤ１７と同軸に固定されたプーリ１８とを設け、第１ワイヤ４によってプーリ１８を回転させることにしてもよい。この場合にプーリ１８の径寸法は駆動ギヤ１７のピッチ円の径寸法より大きく設定することが好ましい。

　このようにすることで、第１ワイヤ４に加えた牽引力は、プーリ１８の径寸法と駆動ギヤ１７のピッチ円の径寸法との比率だけ増幅されて従動ギヤ１６に加えられ、従動ギヤ１６のピッチ円の径寸法と小径部１５の径寸法との比率だけ増幅されて第２ワイヤ６に加えられる。すなわち、第１ワイヤ４に加えた牽引力は２段階に増幅されて第２ワイヤ６に加えられるので、より大きな力で処置対象部位を処置することができるという利点がある。

　また、図７および図８に示されるように、段付プーリ１３に代えて、内部に図示しない遊星歯車を有し、入力軸１９の回転数を所定の減速比で減速して出力軸２０を回転させる減速機２１を採用してもよい。
　図７および図８に示す例では、入力軸１９に第１ワイヤ４が巻き掛けられ、出力軸２０に第２ワイヤ６が巻き掛けられている。これにより、第１ワイヤ４に加えた牽引力は減速機２１の減速比分だけ増幅されて第２ワイヤ６に作用するので、より大きな力で処置対象部位を処置することができるという利点がある。

　また、本実施形態においては、一方の固定把持片３ａを固定し、他方の可動把持片３ｂのみを揺動させる場合について説明したが、これに代えて、図９から図１１に示されるように、一対の把持片２２ａ，２２ｂを揺動させることにしてもよい。この場合には、各把持片２２ａ，２２ｂに別個のプーリ７ａ，７ｂを固定し、図１１に示されるように、一方の把持片２２ａのプーリ７ａに巻き掛けるループ状の第２ワイヤ６ａを８字状にクロスさせて小径部１５に巻き掛ければよい。

　このようにすることで、図９に示されるように、第１ワイヤ４の一端に牽引力を加えると、段付プーリ１３が一方向に回転して、一方の第２ワイヤ６ａが一方の把持片２２ａを閉じる方向に揺動させ、他方の第２ワイヤ６ｂも他方の把持片２２ｂを閉じる方向に揺動させるので、一対の把持片２２ａ，２２ｂを同期して揺動させて、大きな力で閉じることができる。

　また、図１０および図１１に示されるように、第１ワイヤ４の他端に牽引力を加えると、段付プーリ１３が他方向に回転して、一方の第２ワイヤ６ａが一方の把持片２２ａを開く方向に揺動させ、他方の第２ワイヤ６ｂも他方の把持片２２ｂを開く方向に揺動させるので、一対の把持片２２ａ，２２ｂを同期して揺動させて、大きな力で開くことができる。

　また、本実施形態においては、図１２に示されるように、把持部３の基端側に、該把持部３の方向を挿入部２の長手軸に直交する軸線回りに変更可能にする屈曲関節２３を設けてもよい。
　屈曲関節２３は、例えば、平行な２本のシャフト２４ａ，２４ｂ回りに相互に噛み合うギヤ２５ａ，２５ｂを設け、図示しない操作ワイヤによって先端側のギヤ２５ａが設けられている部材２６にモーメントをかけることにより、基端側のギヤ２５ｂのシャフト２４ｂ回りにギヤ２５ａを転がり接触させながら把持部３を揺動させるようにすればよい。

　そして、この場合に、屈曲関節２３を構成する２本のシャフト２４ａ，２４ｂのうち、先端側のシャフト２４ａに段付プーリ１３、基端側のシャフト２４ｂにアイドラプーリ２７を設け、図１２に示されるように、第１ワイヤ４を段付プーリ１３の大径部１４とアイドラプーリ２７との間でクロスさせて巻き掛けることにより、屈曲関節２３を屈曲させても、第１ワイヤ４の牽引力によって段付プーリ１３を回転駆動することができる。

　これに代えて、基端側のシャフト２４ｂに段付プーリ１３、先端側のシャフト２４ａにアイドラプーリ２７を設け、第２ワイヤ６を段付プーリ１３の小径部１５とアイドラプーリ２７との間でクロスさせて巻き掛けることにしてもよい。

　次に、本発明の第３の実施形態に係る医療用処置具２８について、図面を参照して以下に説明する。
　本実施形態の説明において、上述した第２の実施形態に係る医療用処置具１２と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。

　本実施形態に係る医療用処置具２８は、図１３および図１４に示されるように、第２の実施形態に係る医療用処置具１２の第１ワイヤ４に代えてシャフト（第１動力伝達部材）２９を採用し、増幅機構５として、段付プーリ１３に代えて、シャフト２９の先端に設けた送りネジ３０と該送りネジ３０を締結させるネジ孔を有する可動体３１ａ，３１ｂとを備えている。

　送りネジ３０は、シャフト２９の先端に長手軸方向に並んで、相互に逆ネジの関係となる２種類の送りネジ部３２ａ，３２ｂを備えている。可動体３１ａ，３１ｂは、これら２種類の送りネジ部３２ａ，３２ｂにそれぞれ締結されている。これにより、２つの可動体３１ａ，３１ｂは、シャフト２９を長手軸回りの一方向に回転させると、長手軸方向に沿って相互に離れる方向に移動し、シャフト２９を長手軸回りの他方向に回転させると、長手軸方向に沿って相互に近接する方向に移動するようになっている。

　一方の把持片２２ａに固定されたプーリ７ａに巻き掛けられた一方の第２ワイヤ６ａの一端が一方の可動体３１ａに固定され、他端が他方の可動体３１ｂに固定されている。また、他方の把持片２２ｂに固定されたプーリ７ｂに巻き掛けられた他方の第２ワイヤ６ｂにおいても、一端が一方の可動体３１ａに固定され、他端が他方の可動体３１ｂに固定されている。

　これにより、図１３に示されるように、シャフト２９が一方向に回転させられて、可動体３１ａ，３１ｂが相互に離間する方向に移動させられると、２本の第２ワイヤ６ａ，６ｂがそれぞれ巻き掛けられているプーリ７ａ，７ｂを、該プーリ７ａ，７ｂが固定されている把持片２２ａ，２２ｂが相互に閉じる方向に揺動するように回転させる。また、図１４に示されるように、シャフト２９が他方向に回転させられて、可動体３１ａ，３１ｂが相互に近接する方向に移動させられると、２本の第２ワイヤ６ａ，６ｂがそれぞれ巻き掛けられているプーリ７ａ，７ｂを、該プーリ７ａ，７ｂが固定されている把持片２２ａ，２２ｂが相互に開く方向に揺動するように回転させる。

　この場合において、送りネジ３０のリードを十分に小さく設定しておけば、シャフト２９に加えた回転力に対し、第２ワイヤ６ａ，６ｂに作用させる牽引力を十分に増幅することができ、大きな力で処置対象部位を処置することができるという利点がある。そして、増幅機構５として、送りネジ３０と可動体３１ａ，３１ｂを採用しているので、把持片２２ａ，２２ｂの開閉動作において増幅機構５が径方向に変位せず、挿入部２を細径化することができるという利点がある。

　なお、本実施形態においては、シャフト２９に逆ネジの関係となる２つの送りネジ部３２ａ，３２ｂを設け、単一のシャフト２９によって２つの把持片２２ａ，２２ｂを同期して揺動させることとしたが、これに代えて、２つの把持片２２ａ，２２ｂを別個のシャフトによって駆動することにしてもよい。

　また、上記各実施形態においては、把持片３ａ，３ｂ，２２ａ，２２ｂを閉じる方向のみならず開く方向にも大きな力を加えることができるように構成したが、閉じる方向のみあるいは開く方向のみの動力を増幅し、他方については増幅しないことにしてもよい。あるいは、動力の増幅率を異ならせることにしてもよい。あるいは、他方については、図示しないバネによって、常時開く方向あるいは閉じる方向に付勢しておいてもよい。
　また、各増幅機構５は、複数段直列に設けられていてもよい。これにより、増幅率をさらに大きくすることができる。

　１，１２，２８　医療用処置具
　２　挿入部
　３ａ　固定把持片（把持片）
　３ｂ　可動把持片（把持片）
　４，４ａ，４ｂ　第１ワイヤ（第１動力伝達部材、線状部材）
　５　増幅機構（動力増幅機構）
　６，６ａ，６ｂ　第２ワイヤ（第２動力伝達部材）
　７，７ａ，７ｂ　プーリ
　１０，１１　可動プーリ（動力増幅機構）
　１３　段付プーリ（動力増幅機構）
　１４　大径部
　１５　小径部
　２２ａ，２２ｂ　把持片
　２３　屈曲関節
　２９　シャフト（第１動力伝達部材）
　３０　送りネジ
　３１ａ，３１ｂ　可動体
　Ａ　軸線
　Ｂ，Ｃ　回転軸

Claims (7)

1. 　細長い軟性の挿入部と、
   　該挿入部の先端に該挿入部の長手軸に直交する軸線回りに揺動可能に支持された把持片と、
   　前記挿入部の基端に配置され、前記把持片を駆動する動力を発生させる駆動部と、
   　該駆動部により発生した動力を前記挿入部の先端まで伝達する第１動力伝達部材と、
   　該第１動力伝達部材により伝達された動力を増幅する動力増幅機構と、
   　前記把持片の前記軸線に固定されたプーリと、
   　該プーリに巻き掛けられ前記動力増幅機構により増幅された動力を前記プーリに伝達して、該プーリを前記軸線回りに回転させることにより前記把持片を揺動させる線状の第２動力伝達部材とを備える医療用処置具。
2. 　前記動力増幅機構が、前記挿入部の長手軸に沿う方向に移動可能に支持された可動プーリであり、
   　前記第１動力伝達部材が、前記可動プーリに巻き掛けられる線状部材であり、
   　前記第２動力伝達部材の一端が前記可動プーリの回転軸に取り付けられている請求項１に記載の医療用処置具。
3. 　前記動力増幅機構が大径部と小径部とを備える段付プーリを備え、
   　前記第１動力伝達部材が前記大径部に巻き掛けられ、
   　前記第２動力伝達部材が前記小径部に巻き掛けられている請求項１に記載の医療用処置具。
4. 　前記第１動力伝達部材がシャフトであり、
   　前記動力増幅機構が、前記シャフトの先端に形成された送りネジと、該送りネジに締結されるネジ孔を有する可動体とを備え、
   　前記第２動力伝達部材の一端が前記可動体に取り付けられている請求項１に記載の医療用処置具。
5. 　前記動力増幅機構が、前記把持片を前記軸線回りの両方向に揺動させる動力を増幅する請求項１から請求項４のいずれかに記載の医療用処置具。
6. 　前記動力増幅機構を複数段直列に備える請求項１から請求項５のいずれかに記載の医療用処置具。
7. 　前記把持片よりも基端側に、該把持片の前記軸線と平行な軸線回りに屈曲する屈曲関節を備え、
   　前記段付プーリが前記屈曲関節の前記軸線回りに回転可能に取り付けられている請求項３に記載の医療用処置具。
    

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