明 細 書
インク組成物及び着色体
技術分野
[0001] 本発明はアントラピリドン化合物、その化合物を含有するインク組成物及びこれらを 用いて着色された着色体に関する。
背景技術
[0002] 各種カラー記録法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによ る記録方法において、インクの各種吐出方式が開発されているが、これらはいずれも インクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料 (紙、フィルム、布帛等)に付着さ せ記録を行うというものである。この記録法は、記録ヘッドと被記録材料とが接触しな い為、音の発生が殆どなく静かであり、また小型化、高速化、カラー化が容易という特 長の為、近年急速に普及しつつあり、今後も大きな伸長が期待されている。
従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用インクとしては、水 溶性染料を水性媒体に溶解した水性インクが使用されており、これらの水性インクに お!/、てはペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく一般に水溶性 有機溶剤が添加されている。これら従来のインクにおいては、十分な濃度の記録画 像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性 力はいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求され、また形成され る画像には、耐水性、耐光性、耐湿性等の堅牢度が求められる。
[0003] 一方、コンピューターのカラーディスプレー上の画像又は文字情報をインクジェット プリンタによりカラ—で記録するには、一般にはイェロー (Y)、マゼンタ(M)、シアン( C)、ブラック (K)の 4色のインクによる減法混色により表現される。 CRTディスプレー 等のレッド(R)、グリーン (G)、ブルー(B)による加法混色画像を減法混色画像で出 来るだけ忠実にそれらの色相を再現する為には、 Y、 M、 Cのそれぞれが、出来るだ けそれぞれの標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。又、それに使 用されるインク組成物は長期の保存に対し安定であり、プリントした画像の濃度が高く 、し力、も耐水性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度に優れていることが求められる。
[0004] インクジェットプリンタの用途は、 OA用小型プリンタ乃至産業用の大型プリンタにま で拡大されてきており、耐水性、耐湿性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度がこれま で以上に求められている。耐水性については多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、ァ ノレミナゾル又は特殊セラミックなどの有機又は無機の微粒子を PVA樹脂などとともに 紙の表面にコーティングして被記録材料に受像層を設けることなどにより大幅に改良 されてきて!/、る。耐湿性とは着色された被記録材料を高湿度の雰囲気下に保存した 際に被記録材料中の色素が滲んでくるという現象に対する耐性のことである。色素の 滲みがあると、特に写真調の高精細な画質を求められる画像においては著しく画像 品質が低下するため、できるだけこの様な滲みを少なくする事が重要である。耐光性 については大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、特に Y、 M、 C、 Kの 4原 色のうちマゼンタの色素はもともと耐光性が弱いものが多ぐその改良が重要な課題 となっている。又、最近のデジタルカメラの浸透と共に家庭でも写真をプリントする機 会が増しており、得られたプリント物を保管する時に、空気中のオゾンガス、窒素酸化 物等の酸化性ガスによる画像の変色も問題視されている。酸化性ガスは、記録紙上 又は記録紙中で色素と反応し、印刷された画像を変退色させる性質を有して!/、る。 酸化性ガスの中でも、オゾンガスはインクジェット記録画像の退色現象を促進させる 主要な原因物質とされてレ、る。この変退色現象はインクジェット画像に特徴的なもの であるため、耐オゾンガス性の向上も耐光性の向上と同様重要な課題となっている。
[0005] 耐水性とは着色された被記録材料上に、水滴を滴下し、その水滴を拭き取った際 に被記録材料中の色素が滲んだり、消色してくるという現象に対する耐性のことであ り、その向上も極めて重要な解決すべき課題の一つである。例えば銀塩写真の場合 には不注意などにより写真画像の表面に水を掛けてしまった場合などにおいても、こ の水をふき取れば特に画像の品質が劣化することは無い。
し力、しながらインクジェット記録画像は、例えこれが写真画質であったとしても、同様 な場合において色素の滲みなどに起因する記録画像の著しい劣化が生じやすぐこ れを防止するためには記録画像を例えば樹脂などによりコーティングするなどの特別 な方法を取らざるを得ない。
現在においては、このような特別な方法には、例えばラミネート法がある力 家庭用な
どの一般的利用者には、余り普及しておらず、色素またはインク組成物などの改善に より、記録画像の耐水性を向上させることが要望されている。
[0006] インクジェット記録用水溶性インクに用いられているマゼンタ用色素の色素骨格とし ては、キサンテン系色素と H酸(1 アミノー 8—ヒドロキシ一ナフタレン 3, 6—ジス ルホン酸)を用いたァゾ系色素が代表的である。しかし、前者は色相及び鮮明性は 非常に優れるが耐光性が非常に劣る。又、後者は色相の点では良いものがあるが、 耐光性、耐ガス性及び鮮明性が劣る。このタイプでは鮮明性及び耐光性の優れたマ ゼンタ染料も開発されている力、銅フタロシアニン系色素に代表されるシアン染料や イェロー染料など他の色相の染料に比べ耐光性が依然劣る水準である。
[0007] 鮮明性及び耐光性の優れるマゼンタ用色素としてはアントラピリドン系色素もあげら れる。特に特許文献 1には後記式(1)のナトリウム塩を含有する混合物、およびその 混合物を用いたインク組成物が開示されている。し力、しながら、本発明者らの検討に よれば、該混合物を使用した場合鮮明性及び耐光性等はかなり改善されるが耐水性 が著しく劣り、上記で求められる堅牢性を満足させるものではなかった。また特許文 献 2には「色素 1」として後記式(1)で表される化合物のトリナトリウム塩の構造式、及 びその重水中での1 H— NMRが開示され、その「色素 1」を用いたインク、該インクを 用いた印字サンプルでの変退色試験が示され、高い堅牢性の画像が得られる旨開 示されている。しかし、堅牢性については単に光に対する退色性が検討されているの みで、他の上記された種々の堅牢性については全く記載されていない。更に、該特 許文献 2に記載のトリナトリウム塩の重水中での1 H— NMRの値として記載されている 値は、本件発明者らが合成した後記式(1)で示される化合物のトリナトリウム塩の重 水中での1 H— NMR値とは明らかに異なっており、し力、も、合成方法の開示もないこ とから、該化合物が実際にどのような化合物で、上記で求められる種々の堅牢性をど の程度改善するものかは確認することができない。
[0008] 特許文献 1 :特開平 10— 306221号公報(1 17頁)
特許文献 2:特開 2006— 124611号公報( 11頁)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] 本発明は水に対する溶解性が高ぐインクジェット記録に適する色相と鮮明性を有 し、且つ記録物の耐光、耐湿、耐ガス、特に耐水堅牢性に優れたマゼンタ用色素(化 合物)を含有するインク組成物を提供する事を目的とする。
課題を解決するための手段
[0010] 本発明者等は前記課題を解決すベぐ鋭意検討の結果、下記式(1)で示されるァ ントラピリドン化合物のアンモニゥム塩及び/又はナトリウム塩、特に後記する特定な1
H— NMRの値を有するトリアンモニゥム塩及び/又はトリナトリウム塩を含有するイン ク組成物が前記課題を解決するものであることを見出し本発明を完成させたものであ 即ち、本発明は
(1)下記式(1)で表される化合物のアンモユウム塩、
[0012] (2)上記(1)に記載の式(1)で表される化合物のナトリウム塩、
(3)色素として下記式(1)
で表される化合物のアンモニゥム塩またはナトリウム塩を、インク組成物中の色素の 総量に対して、 HPLCの面積比で 85%以上含有するインク組成物。、
(4)上記(3)に記載のアンモニゥム塩またはナトリウム塩の含有量力 HPLCの面積
比で 95%以上である(3)に記載のインク組成物、
(5)水及び水溶性有機溶剤を含有する上記(3)または(4)に記載のインク組成物、
(6)インクジェット記録用である上記(3)〜(5)の!/、ずれか一項に記載のインク組成 物、
(7)上記(1)または(2)に記載の化合物中の無機分の含有量が 1重量%以下である 上記(3)〜(6)の!/、ずれか一項に記載のインク組成物、
(8)上記(1)または(2)に記載の化合物の含有量が 0· ;!〜 20重量%である上記(3) 〜(7)の!/、ずれか一項に記載のインク組成物、
(9)インクの小滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット 記録方法にお!/、て、インクとして上記(3)〜(8)の!/、ずれか一項に記載のインク組成 物を用いることを特徴とするインクジェット記録方法、
(10)被記録材が情報伝達用シートである上記(9)に記載のインクジェット記録方法、
(11)情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受像層を有するもの である上記(10)に記載のインクジェット記録方法、
(12)上記(11)に記載のインク組成物で着色された着色体、
(13)着色がプリンタによりなされた上記(12)に記載の着色体、
(14)上記(13)に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ
(15)下記式(1)
で表される化合物のトリアンモニゥム塩またはトリナトリウム塩であり、かつ
1 H— NMR の値が下記の表 105及び表 106
表 1 05
ナド」ゥム塩 ( Ds O)
ケミカルシフト(ppm)
3.72 C3H s)
1 2.27 CO."? H, s)
7.42 C I H, m)
7.53 C l H, t)
7.58 ( 1 H, t)
7.66 (1 H cO
7.86-7.90 < 2HT m)
7.93-7.96 < 3H, m)
S.02 ( 1 H, d)
S.06 ( 1 H m)
8.24 C I H, d
3 33 ( 1 H, s) で表される値を有する化合物を、インク組成物中の色素の総量に対して、 HPLCの 面積比で 85%以上含有するインク組成物(但し表中のアンモニゥム(重 DMSO)及 びナトリウム(D O)の欄に記載の値は、それぞれ、 DMSO— d6中でサンプル濃度 5
2
mg/700 a L、及び重水(D〇)中でサンプル濃度 12mg/700!丄 Lで測定した値
2
である)、
に関する。
発明の効果
本発明の式(1)の化合物のアンモニゥム塩またはナトリウム塩、特に、前記表 105 及び 106に記載の1 H— NMRの値を有するトリアンモニゥム塩またはトリナトリウム塩 は、インクジェット記録紙上で非常に鮮明性、明度の高い色相であり、水溶解性に優 れ、インク組成物製造過程でのメンブランフィルターに対するろ過性が良好という特 徴を有する。又、この化合物を使用した本発明のインク組成物は長期間保存後の結 晶析出、物性変化、色変化等もなぐ貯蔵安定性が良好である。そして該アンモユウ
ム塩またはナトリウム塩、特に、前記表 105及び 106に記載の1 H— NMRの値を有す るトリアンモニゥム塩またはトリナトリウム塩をインクジェット記録用のマゼンタインクとし て使用した印刷物は被記録材 (紙、フィルム等)の材質に依存せず、理想的なマゼン タの色相を示す。更に本発明のマゼンタインク組成物は、写真調のカラー画像の色 相を紙の上に忠実に再現させることも可能である。更に写真画質用インクジェット専 用紙やフィルムのような無機微粒子を表面に塗工した被記録材に記録しても耐光性 、耐オゾン性、耐湿性や、特に耐水性などの各種堅牢性が良好であり、写真調の記 録画像の長期保存安定性に優れて!/、る。
図面の簡単な説明
[図 1]本発明のアンモニゥム塩の通常測定(15mg/70011 1の濃度、溶媒 DMSO— d6、測定温度 24°C)により得られた1 H— NMRのチャートである。
[図 2]図 1における δ 6. 7- 8. 5の部分を拡大したものである。
[図 3]図 1における δ 7· 3- 8. 6の部分につき、 COSYの測定により得られたチヤ一 トである。 16回積算を行った結果である。
[図 4]図 1における δ 7· 3- 8. 6の部分につき、 COSYの測定により得られたチヤ一 トである。図 3における積算回数を 64回まで行った結果である。
[図 5]図 1における部分のうち、横軸を δ 7. 3- 8. 1、縦軸を δ 12. 0- 12. 3とした 部分につき、 COSYの測定により得られたチャートである。
[図 6]図 1における δ 7. 3- 8. 6の部分につき、 ΗΟΗΑΗΑの測定により得られたチ ヤートである。
[図 7]図 1における δ 7. 3- 8. 6の部分につき、 NOESYの測定により得られたチヤ ートである。
[図 8]本発明のアンモニゥム塩の通常測定(1511^/700 ^ 1の濃度、溶媒 DMSO— d6、測定温度 24°C)において得られた13 C— NMRのチャートである。
[図 9]図 8における δ 0· 0- 100. 0の部分を拡大したものである。
[図 10]図 8における δ 100. 0- 120. 0の部分を拡大したものである。
[図 11]図 8における δ 120. 0- 140. 0の部分を拡大したものである。
[図 12]図 8における δ 140. 0- 160. 0の部分を拡大したものである。
[図 13]図 8における δ 180.0-200.0の部分を拡大したものである。
[図 14]図 8における δ 100.0-200.0の部分を拡大したものである。
[図 15]DEPTの測定により得られたチャートである。
[図 16]図 15における δ 120.0-140.0の部分を拡大したものである。
[図 17]図 15における δ 100.0-200.0の部分を拡大したものである。
[図 18]HMQCの測定により得られたチャートであり、横軸は1 H— NMR(S—0· 2か ら 12· 5)、縦軸は13 C— NMR( δ -5.0力も 200· 0)である。
[図 19]図 18において、横車由として δ 7.0-9.0、縦車由として δ 120.0— 140.0(D 分を拡大したものである。
[図 20]HSQC— HOHAHAの測定により得られたチャートであり、横軸は1 H— NMR ( δ 7.3-8.6)、縦軸は13 C— NMR( δ 120.0— 135.0)である。
[図 21]HMBCの測定により得られたチャートであり、横軸は1 H— NMR( δ 3.0— 13 • 0)、縦軸は13 C— NMR( δ 100.0-200.0)である。
[図 22]図 21において、横車由として δ 3.6-3.9、縦車由として δ 129.0— 134.0(D 分を拡大したものである。
[図 23]図 21において、横車由として δ 11.0-13.0、縦車由として δ 105.0— 130.0 の部分を拡大したものである。
[図 24]図 21において、横車由として δ 3.6-3.9、縦車由として δ 129.0-161.0(D 分を拡大したものである。
[図 25]図 21において、横車由として δ 7.0-9.0、縦車由として δ 105.0— 155.0(D 分を拡大したものである。
[図 26]図 21において、横車由として δ 7.0-9.0、縦車由として δ 180.0— 200.0(D 分を拡大したものである。
園 27]本発明のナトリウム塩の通常測定 (濃度 〇、測定温
度 24°C)により得られた1 H— NMRのチャートである。
[図 28]図 27における δ 7.2-8.6の部分を拡大したものである。
[図 29]図 27のチャートの各検出ピークに対応する測定 である。
[図 30]本発明のナトリウム塩の濃度 3011¾/700 1、溶媒 D〇、測定温度 24°Cでの
測定により得られた1 H— NMRのチャートである。
[図 31]図 30における、おおよそ δ 7· 1 - 8. 5の部分を拡大したものである。
[図 32]図 30のチャートの各検出ピークに対応する測定値である。
[図 33]本発明のナトリウム塩の濃度 3011¾/700 1、溶媒 D〇、測定温度 60°Cでの
2
測定により得られた1 H— NMRのチャートである。
[図 34]図 33における、おおよそ δ 7· 0- 8. 6の部分を拡大したものである。
[図 35]図 33のチャートの各検出ピークに対応する測定 である。
[図 36]本発明のナトリウム塩の通常測定 (濃度 3011¾/700 1、溶媒 D〇、測定温
2
度 24°C)により得られた13 C— NMRのチャートである。
[図 37]図 36における δ 111. 0- 149. 0の部分を拡大したものである。
[図 38]図 36のチャートの各検出ピークに対応する測定 である。
符号の説明
[0015] 各図において、共通に横(及び縦)軸は、 NMR測定におけるケミカルシフト値を表し 、卓 は ppmでめる。
発明を実施するための最良の形態
[0016] 本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物のアンモニゥム塩またはナトリウム塩、 特に、前記表 105及び 106に記載の1 H— NMRの値を有するトリアンモニゥム塩また はトリナトリウム塩である。
なお本明細書においては特に断りのない限り、便宜上、本発明の上記式(1)の化 合物のアンモニゥム塩、好ましくはトリアンモニゥム塩を「本発明のアンモニゥム塩」、 同様にナトリウム塩、好ましくはトリナトリウム塩を「本発明のナトリウム塩」、および両者 をさす場合には「本発明の化合物」と以下、表記する。
[0017] 本発明のナトリウム塩およびアンモニゥム塩の合成法について記載する。
本発明の化合物は下記式(2)の化合物を中間体とし、これをスルホン化した後、所 定の塩を形成することにより合成することが可能である。下記式(2)の中間体は、特 許文献 1に記載の方法に従!、容易に合成できる。
[0018]
[0019] すなわち、オルソジクロ口ベンゼン中に 1 メチルアミノー 4ーァニリノアントラキノン 、炭酸ナトリウム、ベンゾィル酢酸ェチルエステルを加え、 HPLCで反応が完了する まで加熱攪拌する。この加熱反応は、生成するエタノール及び水を反応系外へ留去 しながら行う。反応終了後、反応溶液を水冷し、メタノールを加えることにより析出する 結晶を濾取し、メタノールおよび水で順次洗浄し、乾燥することにより目的とする上記 式 (2)の中間体が得られる。
[0020] 上記のようにして得られた式(2)の中間体を原料とし、発煙硫酸中、加熱下にスノレ ホン化反応を行うことにより得ることができる。
硫酸中における発煙硫酸の濃度は通常 2から 20重量%、好ましくは 5から 15重量 %、特に好ましくは 7から 15重量%である。
スルホン化の反応温度は上記式(1)の化合物を得る上で極めて重要である。この 反応温度は通常 60°Cから 120°C、好ましくは 70°Cから 120°C、特に好ましくは 80°C 力、ら 90°Cである。この温度でスルホン化反応を行うことにより、 HPLC (高速液体クロ マトグラフィー)の面積比で 95%以上の高い純度を有する上記式(1)の化合物を得 ること力 Sでさる。
上記スルホン化の反応温度が低すぎる場合にはスルホン化反応が充分に進行しな い。特許文献 1にはスルホン化の反応温度として通常 0〜; 100°C、好ましくは 10〜50 °Cと記載されており、各実施例においては後者の好ましい範囲、すなわち 10〜50°C にてスルホン化が行われている。そのため、特許文献 1においては本発明のナトリウ ム塩を高純度で得ることができず、下記式(3)で表されるジスルホン酸体と、トリスル ホン酸体との混合物のみが得られる。
また反応温度が高すぎる場合には副反応が生じたり、また原料や生成物の分解など が生じ、 目的とする式(1)の化合物純度を低下させる要因となる。
反応時間については通常 15分〜 10時間、好ましくは 30分〜 5時間、特に好ましく は 1時間〜 3時間である。 80〜120°Cの温度範囲でスルホン化を行う場合、反応の 進行を追跡すると、 20分後でおよそ 95%以上、 30分後では 99%以上の上記式(2) の中間体が消費され、さらに 1時間後には上記式(2)は検出されず、 目的の上記式( 1)の化合物が 95%以上の純度で検出される。この反応をさらに 3時間後まで継続し ても特に目的物の純度が低下することは無!/、。なお 30分後までの反応追跡は TLC ( 薄層クロマトグラフィー)で行い、これ以降の反応追跡は HPLCを用いて行った。なお HPLCにおける純度は面積比である力 TLCでの反応追跡の場合には定量は行つ ていない。
上記式(1)の化合物の造塩方法を記載する。
上記のスルホン化反応の反応液を、氷水中に注ぎ、塩化アンモニゥムを加えて塩析 し、析出固体を濾取することにより、本発明のアンモニゥム塩がウエットケーキとして 得られる。塩化アンモニゥムのかわりに塩化ナトリウムを使用すれば、本発明のナトリ ゥム塩のウエットケーキを得ることができる。
得られたウエットケーキ中に不純物として含有される硫酸塩などの無機物、例えば硫 酸アンモンなどの含有量が多い場合には、必要に応じて次の操作を行い、不純物の 含有量を低下させることもできる。すなわち水あるいは温水、さらに必要に応じて含水 有機溶剤に上記のウエットケーキを溶解し、塩化アンモニゥム又は塩化ナトリウムを加 えて塩析を行い、不純物である無機物を除去することができる。ここで含水有機溶剤 とは水と混和する有機物と水との混和物を意味する。有機物としては水と混和するこ とが可能であればいずれのものをも使用可能である力 S、通常水溶性有機溶剤、例え ばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類などをあげることがで きる。
上記の塩析以外に、ウエットケーキを水、温水、あるいは含水有機溶剤などで洗浄 する方法でも無機不純物を除去することが可能である。例えば得られたウエットケー キを物理的に、あるいは空気などを介して圧搾し、水分を良く切ったのち、これを水、 温水などで洗浄することにより上記の塩析方法と同様の精製効果が得られる。洗浄 に使用する水などには、例えば塩化アンモニゥムなど、塩析に用いる塩を含有させて
もよ!、。アンモニゥム塩を得た!/、場合には塩化アンモニゥムなどのアンモニゥム塩を、 ナトリウム塩を得たい場合には塩化ナトリウムなどのナトリウム塩を、それぞれ目的とす る塩に対応して用いればょレ、。
[0022] 本発明化合物において形成されている塩の数は 1〜3が好ましいが、特に好ましい ものは全てのスルホ基が塩を形成している場合、すなわち式(1)の化合物のトリアン モニゥム塩またはトリナトリウム塩が特に好ましい。
上記のようにして得られた本発明の化合物は、 HPLC (高速液体クロマトグラフィー )の面積比で 95%以上と!/、う高!/、純度を示した。
[0023] 本発明の化合物の構造解析について述べる。
本発明の化合物は、その質量及び、 ¾および13 C— NMR (核磁気共鳴)スペクトル を測定し、測定結果の解析によりその平面構造式を決定した。なお質量の測定は LC — MSによる質量分析により行った。測定に使用した本発明のアンモニゥム塩は、トリ アンモニゥム塩であり、本発明のナトリウム塩は同様にトリナトリウム塩である。
なおデータ解析の便宜上、下記式(101)に記載の位置番号を以下使用する。
[0024]
式(101)中、 14位については窒素原子を、 14位を除く 1位から 15位については炭 素原子の位置番号を示すが、 ¾— NMRの解析においては、便宜上、特に断りの無 い限り各窒素原子又は炭素原子に結合した水素原子の位置番号として使用する。 b 、 f及び kについては、それぞれカルボニル炭素の位置番号を示す。
またケミカルシフトの単位は ppmであり、 δ「数値」として表記する。例えば δ 3. 00 と表記した場合には、そのピークのケミカルシフトは 3. OOppmであることを示す。な お「数値」は、特に必要である場合を除き、原則として小数点以下 2桁で記載する。但
し図の説明において数値軸の範囲を表すような場合には、便宜上、小数点以下 1桁 で記載する。また小数点以下 2桁では同値となってしまうような場合には、それらを区 別するため、必要に応じて小数点以下 3桁目まで記載する。
ケミカルシフトは原則として IS (内部標準物質)として使用した TMS (テトラメチルシ ラン)、および TSP (3—トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム)を基準とした値である 。前者は有機溶媒を用いた NMR測定の ISであり、後者は重水を用いた場合の ISと してそれぞれ使用した。
なお、当業者であれば明らかなように、高分解能の NMR測定装置を用い、測定機 器を含めて同一の条件で NMR測定を行った場合であっても、例えば、秤量した試 料の質量の誤差、測定に用いた重溶媒中に含まれる水等の不純物の影響等により、 測定結果のケミカルシフト値は、小数点以下を全て含めて考慮した場合、完全に一 致しない場合が多い。
従って、本明細書中に記載したケミカルシフト値については、四捨五入して小数 点以下 1桁目までの数値を求めた場合に、該 1桁目の数値に対して、 ± 0. lppmの 範囲の誤差は許容するものとする。具体例を挙げると、測定値が 3· 764ppmである 場合、四捨五入して求めた小数点以下 1桁目までの数値は 3. 8ppmであるため、 3. 8 ± 0. lppmの範囲、すなわち 3. 7ppmから 3. 9ppmは誤差として許容の範囲であ ifi— NMRは通常測定の他に、 2次元として COSY、 HOHAHAおよび NOESY の各スペクトルを測定することにより、得られた各スペクトルチャートから水素原子の 結合位置を解析した。
13C— NMRは通常測定の他に DEPT (90度パルス)、 2次元として HSQCおよび H MBCの各スペクトルを測定することにより、得られた各スペクトルチャートから炭素原 子および炭素原子一水素原子の結合位置を解析した。
各測定は本発明のアンモニゥム塩を 15mg/700 1の濃度とし、 24°Cで測定した。 測定機器はヴアリアン社製、商品名 UNITY INOVA 400である。
測定溶媒は DMSO— d6 (ジメチルスルホキシド— d6)である。
なお13 C— NMRについては重 DMSOの中央のピークを検出して、これを δ 39. 45
99とし、ケミカルシフトの測定基準とした。
下記に説明する図 1から図 26は本発明のアンモニゥム塩の NMR測定チャートであ 図 1は本発明のアンモニゥム塩の通常測定(15mg/70011 1の濃度、溶媒 DMSO
— d6、測定温度 24°C)により得られた1 H— NMRのチャートである。
図 2は図 1における δ 6. 7- 8. 5の部分を拡大したものである。
図 3は図 1における δ 7. 3- 8. 6の部分につき、 COSYの測定により得られたチヤ一 トである。 16回積算を行った結果である。
図 4は図 1における δ 7. 3- 8. 6の部分につき、 COSYの測定により得られたチヤ一 トである。図 3における積算回数を 64回まで行った結果である。
図 5は図 1におけるき分のうち、横車由を δ 7. 3- 8. 1、縦車由を δ 12. 0- 12. 3とした 部分につき、 COSYの測定により得られたチャートである。
図 6は図 1における δ 7. 3- 8. 6の部分につき、 ΗΟΗΑΗΑの測定により得られた チャートである。
図 7は図 1における δ 7. 3- 8. 6の部分につき、 NOESYの測定により得られたチヤ ートである。
図 8は本発明のアンモニゥム塩の通常測定(15mg/700 μ 1の濃度、溶媒 DMSO d6、測定温度 24°C)において得られた13 C— NMRのチャートである。
図 9は図 8における S O. 0- 100. 0の部分を拡大したものである。
図 10は図 8における δ 100. 0- 120. 0の部分を拡大したものである。
図 11は図 8における δ 120. 0- 140. 0の部分を拡大したものである。
図 12は図 8における δ 140. 0- 160. 0の部分を拡大したものである。
図 13は図 8における δ 180. 0- 200. 0の部分を拡大したものである。
図 14は図 8における δ 100. 0- 200. 0の部分を拡大したものである。
図 15は DEPTの測定により得られたチャートである。
図 16は図 15における δ 120. 0- 140. 0の部分を拡大したものである。
図 17は図 15における δ 100. 0- 200. 0の部分を拡大したものである。
図 18は HMQCの測定により得られたチャートであり、横軸は1 H— NMR( δ—0. 2
力、ら 12· 5)、縦車由 (ま C NMR( 5— 5· 0力、ら 200· 0)である。
図 19は図 18において、横車由として δ 7. 0- 9. 0、縦車由として δ 120. 0— 140. 0の 部分を拡大したものである。
図 20は HSQC— HOHAHAの測定により得られたチャートであり、横軸は1 Η— ΝΜ R ( δ 7. 3- 8. 6)、縦軸は13 C— NMR( δ 120. 0— 135. 0)である。
図 21は HMBCの測定により得られたチャートであり、横軸は1 H— NMR( δ 3. 0— 1 3. 0)、縦軸は13 C— NMR ( δ 100· 0- 200. 0)である。
図 22は図 21において、横車由として δ 3. 6 - 3. 9、縦車由として δ 129. 0— 134. 0の 部分を拡大したものである。
図 23は図 21において、横車由として δ 11. 0- 13. 0、縦車由として δ 105. 0— 130. 0 の部分を拡大したものである。
図 24は図 21において、横車由として δ 3. 6 - 3. 9、縦車由として δ 129. 0- 161. 0の 部分を拡大したものである。
図 25は図 21において、横車由として δ 7. 0- 9. 0、縦車由として δ 105. 0— 155. 0の 部分を拡大したものである。
図 26は図 21において、横車由として δ 7. 0- 9. 0、縦車由として δ 180. 0— 200. 0の 部分を拡大したものである。
[0027] 上記の測定結果のうち、 DEPT、 HMBC及び HMQCスペクトルの解析結果からそ の相関関係を一覧表にしたものが、下記表 101である。
[0028] [表 101]
DEPT,HMBC,HMQC相関
太字: Hを持った C (DEPT) S : HMQC 交差ピーク
B : HMBC交差ピーク
上記の各種測定結果を解析することにより、本発明のアンモニゥム塩が上記式(101
)の化学構造式を持つ化合物のアンモニゥム塩であることを決定した。決定に至る各 水素原子および炭素原子の帰属は以下の通りである。
図 1より δ 3. 76のピークは 15位の水素原子であると帰属を決定した。
図 3&び図 4J:り、 δ 7. 42力 l lf立、 δ 7. 58力 12f立、 δ 8. 14力 13f立、 δ 8. 21力 1 位、 δ 7. 89力 2位、 δ 7. 50力 3位、および δ 7. 89力 4位の水素原子であるとそれ ぞれ帰属を決定した。なお 2位および 4位にっレ、てはピークがオーバーラップしてレヽ るためケミカルシフトは同値である。
また図 3より δ 7. 76または 8. 00が 9位または 10位に対応することが判明した。ここ で図 7より 11位水素原子と交差するピークが δ 7. 76であることが確認できたため、こ のピークが 10位であり、 6 8. 00が 9位であると帰属を決定した。
また図 3より δ 7. 81、 7. 63、 7. 71および 8. 46力 塞続した(炭素原子に結合した)
水素原子であり、 5位から 8位または 8位から 5位のいずれかに対応することが判明し た。ここで表 101から下記する理由により、それらがそれぞれ炭素原子 b、 kおよび fに 帰属できること力、ら、 δ 181. 79の炭素原子 fと交差する δ 8. 46が 8位と帰属が決定 し、上記 4つのピークを 5位から 8位の連続した水素原子にそれぞれ帰属させた。 なお、炭素原子 b、 kおよび fは以下のように帰属を決定した。 13C— NMRにおいて 、これらのピーク ίまカノレポ二ノレ炭素の領域である δ 158. 44、 196. 39および 181. 79に 3本のピークとして確認された。表 101より、 15位水素原子と交差する δ 158. 4 4のピークが b、同様に 1位及び 4位(2位とオーバーラップ)水素原子と交差する δ 19 6. 39が kと帰属が決定した。従って第 3番目のピーク、すなわち δ 181. 79は fであ ると帰属を決定した。
また図 5により、 11位、 12位および 9位の各水素原子と、 δ 12. 12のピークが交差 することから、このピークは 14位水素原子であると帰属が決定した。
最後に δ 7. 12のピークは、式(101)の化合物と塩を形成しているアンモニア分子の 水素原子であると帰属が決定した。
[0030] 本発明のアンモニゥム塩は共鳴構造をとり得ることから、炭素原子 fの関与するカル ボニル基がエノール型の互変異性体となり得る可能性がある。この場合、 14位窒素 原子は共鳴に関与するため、 14位に水素原子は結合しない。し力もながら上記の帰 属により、 14位には水素原子が存在することが確認されたため、本測定条件におい てはェノール型の互変異性体ではなぐ上記の式(101)に示すケト型で存在するこ とが確認された。
[0031] 以上の結果から、本発明のアンモニゥム塩は、上記式(101)で表される化合物の アンモニゥム塩であると構造決定した。
[0032] 本発明のナトリウム塩の構造解析について述べる。
本発明のナトリウム塩を 511¾/700 1の濃度で DMSO— d6中に溶解し、 'Η-Ν
MRを測定した。使用したサンプルは、トリナトリウム塩である。
[0033] 本発明のトリナトリウム塩の1 H— NMRスペクトルは、本発明のトリアンモニゥム塩の ものとほぼ一致したため、アンモニゥム塩で行った詳細な解析はせず、両者のデータ を下記表 102に示すに留める。
[0034] また今回の測定データのみでは水素原子が結合していない炭素原子の帰属が決 まらない。このため炭素原子については帰属の決定が可能だったもののみを表 102 に §ΰ載した。
[0035] [表 102]
特許文献 1および 2には、式(1)の化学構造式を持つ化合物のナトリウム塩として、 その化学構造式が開示されてレ、る。
即ち、特許文献 1の表 1には、その化学構造式が化合物 No. 36として開示されて いる。し力もながら、その合成例である実施例 7には、得られた化合物が、 o. 36の 化合物 9. 1部及び No. 26の化合物 3. 2部から成るものであることが記載され、実際 にはベンゾィル基上に置換基を有しない下記式(3)の化合物との混合物として得て いるのみであることがわかる(特許文献 1の表 1の化合物 Νο· 26参照)。
[0038] 更に、特許文献 1には実施例 10及び 11として、式(1)の化合物のスルホベンゾィ ルが、エトキシカルボニル及びカルボキシル基である化合物の混合物について、具 体的にインクの調製及びそのインクの評価について開示されている力 S、上記実施例 7 で得られた化合物 No. 36及び化合物 No. 26の混合物を用いたインクの具体的な 開示も、該混合物を用いた着色物、およびその評価等についての具体的な記載は 全くない。
後述するように、本発明者らは、特許文献 1に記載の化合物 No. 36及び化合物 N o. 26の混合物を実際に合成し、この混合物を用いたインクを調製し、これらのインク にっき評価を行った結果、特許文献 1に記載の混合物では耐水性が著しく悪ぐ問 題のあるものであった。
[0039] また特許文献 2には「色素 1」として、上記式(1)の化合物のトリナトリウム塩の化学 構造式が記載され、重水中における1 Hおよび13 C— NMRスペクトルのデータが記載 されている。し力、しながら、下記するように、該特許文献 2に記載の重水中における1 H NMRスペクトルのデータは、本発明で合成された式( 1 )で示される化合物のトリナ トリウム塩の重水中における1 Hおよび13 C— NMRスペクトルのデータと明らかに相違 しており、特許文献 2に記載の「色素 1」が、本発明で合成され、かつ前記のように構 造決定された式(1)化合物のトリナトリウム塩とは異なるものであることが確認された。 以下、便宜上、特許文献 2に記載の「色素 1」を、単に「色素 1」と表記する。 なお、該「色素 1」については前記したように、具体的な合成法は開示されていない ため、合成して、特許文献 2記載の化合物が実際にどのような化合物であるかは確認 することはできなかった。
以下に、本発明で合成された式(1)で示される化合物のトリナトリウム塩の重水中で
H及び13 C— NMRスペクトルの値及び、特許文献 2に記載の「色素 1」のデータの比 較を下記する。
[0040] 本発明の化合物の構造決定は、上記の通りに行ったため、重水中での測定につい ては解析は行わず、データを記載するに留める。
なお位置番号を記載する場合、その位置番号は重 DMSOを用いた測定結果との 比較から推定されるものである。この場合の位置番号は上記式(101)に記載の番号 を引続き使用する。
[0041] 下記の図 27から図 38は本発明のナトリウム塩の重水中における NMR測定チヤ一 トである。以下にそれらについて、簡単に説明する。括弧中の記載は測定条件を示し 、「(サンプル量/重水量、測定温度)」をそれぞれ記載した。
図 27は本発明のナトリウム塩の1 H— NMRのチャートである(1211^/700〃 1、 24°C
)。
図 28は図 27における δ 7. 2- 8. 6の部分を拡大したものである。
図 29は図 27のチャートの各検出ピークに対応する測定値である。
図 30は、図 27のものとサンプル量を変えてえられた本発明のナトリウム塩の1 Η— Ν
MRのチヤ一卜である(3011¾/700 1、 24。C)。
図 31は図 30における、おおよそ δ 7. 1 - 8. 5の部分を拡大したものである。
図 32は図 30のチャートの各検出ピークに対応する測定値である。
図 33は、図 30のものと測定温度を変えて得られた本発明のナトリウム塩の1 Η— ΝΜ
Rのチヤ一卜である(3011¾/700 1、 60。C)。
図 34は図 33における、おおよそ δ 7. 0- 8. 6の部分を拡大したものである。
図 35は図 33のチャートの各検出ピークに対応する測定値である。
図 36は本発明のナトリウム塩の13 C— NMRのチャートである(3011^/700〃 1、 24
。C)。
図 37は図 36における δ 111. 0- 149. 0の部分を拡大したものである。
図 38は図 36のチャートの各検出ピークに対応する測定値である。
[0042] 重水中の測定結果を解析しない理由の一つとして、特に、 NMRの測定チヤ ートにおけるピークのブロード化が挙げられる。重水および重 DMSO中でのそれぞ
れの測定チャートにっき、おおよそ δ 7. 2- 8. 6の領域における各ピークの分離状 態などを比較すると、明らかに重 DMSO中での測定チャートの方がピークがシヤー プであり、またピークの分離状態が優れて!/、る。
従って、少なくとも本発明のナトリウム塩を構造解析する上で、 NMRの測定溶媒とし て重水を用いることは適当ではないと結論し、上記の通り重 DMSO中での測定結果 を構造解析のデータとして使用した。
重水中における本発明のナトリウム塩の1 H— NMR測定の結果、および「色素 1」の 対応するデータを下記表 103に併記した。
[表 103]
上記より、特許文献 2に記載の「色素 1」の
1 H— NMRスペクトルのデータと、本発明 で合成され、かつ前記のように構造決定された式(1)化合物のトリナトリウム塩の該ス ベクトルのデータとは全く異なっており、明らかに両者が異なる化合物であることが確 認された。以下に、異なる点につき、説明する。
「色素 1」に存在し、本発明のナトリウム塩に存在しないピークは、 δ 2. 78 (3Η, s) 、 δ 4· 0 (1H, s)、 δ 6. 42 (1H, d)および δ 7. 02 (1H, d)の 4ピークである。ケミカ
ルシフトおよびそのプロトン数の解析から、 δ 2· 78は上記式(101)における 15位の メチル、 δ 6. 42および δ 7. 02は芳香族プロトンかと思われるが、 S 4. 0のピークに ついては該当する水素原子が見当たらない。
該スペクトルデータ中、注目すべき点の一つは 15位のケミカルシフトである。「色素 1Jにおいて、その値は上記の通り δ 2. 78である。一方、本発明のナトリウム塩では その値がおよそ δ 3. 7を示し、明らかな相違が見られる。
NMRにおいては測定溶媒に加え、測定溶液中の化合物濃度および測定温度 によってもケミカルシフトが変動することが知られている。このため本発明においては 化合物濃度が 12mgおよび 3011¾/700 1である測定条件、また化合物濃度は 30 11¾/700 1に固定し、測定温度を室温および 60°Cへ過熱した測定条件の合計 3 条件にて測定を行った。その結果、この 15位メチルプロトンについては大きなケミカ ノレシフトの変動カ見られず、それぞれ δ 3. 72、 δ 3. 70、 δ 3. 73と、いずれの場合 にもおよそ δ 3. 7と一定値を示した。これらの結果は図 29、 32及び 35により確認で きる。
また上記 3種の測定条件のいずれにおいても、「色素 1」にのみデータが記載されて いる上記の δ 2. 78、 4. 0、 6. 42および 7. 02に対応するピークは、本発明のナトリ ゥム塩の測定データから検出されな力 た。これらのことは「色素 1」と、本発明のナト リウム塩が異なる化合物であることを明確に示している。本発明者らの構造解析の結 果からすれば、「色素 1」に関して特許文献 2に記載された上記の NMRデータは、「 色素 1」の化合物が特許文献 2に記載された構造式を有する化合物ではないことを明 確に示す。
[0045] 本発明のナトリウム塩の13 C— NMR実測値のケミカルシフト値(室温、化合物濃度 3 Omg/700 1の条件で測定したもの)及び特許文献 2に記載された「色素 1」の13 C NMRデータ値を下記表 104にそれぞれの値を対応させて示す。
なお、本発明のナトリウム塩の実測値は、原則として小数点以下 2桁を四捨五入し て記載した力 33. 51と 33. 53、および 134. 98と 135. 00についてはこの方法で 同値となるため、例外的に小数点以下 2桁までを記載した。
[0046] [表 104]
本発明の 「色素 1」のデータ
ナ Jゥム塩
33.51 一
33.53 35.0
112.4 117.0
120.2 119.8
124.5 120.5
126.6 124.9
127.0 125.0
128.3 125.1
128.5 ―
129.9 125.9
130.2 127.4
131.1 127.5
132.0 129.3
132.6 130.0
133.0 130.3
133.9 131.0
134.4 132.1
134.6 ―
134.98 133.5
135.00 134.2
135.6 134.3
137.4 135.5
137.9 136.5
138.8 138.0
140.5 144.0
141.7 140.3
146.6 144.8
147.5 161.1
162.3 162.3
186.2 187.0
200.4 ― 本発明のナトリウム塩は、分子内に 30個の炭素原子が存在する。従って基本的に は 30本のピークが検出される。
表 104の結果から明らかなように、「色素 1」は、検出されたピークが 27本しかない。 本発明のナトリウム塩はピークが 31本検出されている力 S、これは測定条件が最適化さ れていないものと推定される。すなわち、図 38を見ると、「INDEX」と見出しのある欄
が検出ピークを意味する力 その番号から検出ピークは 33本あることが確認される。 このうち INDEX32および 33は、 ISである TSPであり、通常は 1本のピークとして観測 される。し力も本測定にお!/、てはこれが 2本とカウントされて!/、ることから上記の最適 化が行えなかったものと推定される。
し力、し本発明のアンモニゥム塩の場合には、図 9から 13より明らかなように、測定溶媒 のピークを除き、 30本のピークのあることが確認できることから、上記の化学構造式の 決定には何らの問題も無!/、ものと考える。
検出されたピークの本数と、そのピークが検出されたケミカルシフト領域との関係を下 記表 107に示す。
[表 107]
検出されたピークの本数
ケミカルシフト領域 本発明のナトリウム塩 「色素 1」
0 < δ < 120 3 3
120≤δ < 130 7 8
130≤δ < 140 14 10
140≤δ< 150 4 3
150≤δ<200 2 3
200≤ δ 1 0
[0049] 表 104および表 107から明らかなように、各ケミカルシフト値及び各ケミカルシフト領 域に分布するピークの本数は、本発明のナトリウム塩と「色素 1」とでは明らかに異なり 、 13C— NMRにおいても本発明のナトリウム塩と「色素 1」とは全く異なる化合物であ ることが明らかである。
[0050] 本発明のインク組成物に含有される本発明の化合物は、その原体中に不純物とし て含有される金属陽イオンの塩化物および硫酸塩等の無機物量の少ないものを用 いるのが好ましぐその含有量の目安は例えば 1重量%以下程度である。無機物の 少ない色素原体を製造するには、例えば逆浸透膜による方法等通常方法で脱塩処 理すればよい。
本発明のインク組成物は、本発明の化合物を水又は水性溶媒 (後記する水溶性有
機溶剤を含有する水)に溶解したものである。例えば本発明の化合物を合成した際 には、当然、その合成反応の反応液中に本発明の化合物を含む。従って、そのよう な反応液であれば、インク組成物の製造に直接使用する事が出来る。又、反応液か ら目的物を単離し、乾燥、例えばスプレー乾燥させ、次にインク組成物に加工するこ ともできる。
さらに言えば、上記式(1)の化合物を合成し、その化合物をアンモニア水、あるい は水酸化ナトリウムなどのアンモニア源やナトリウム源を含む組成物中に溶解すること により、本発明のインク組成物を調製することもできる。
本発明のインク組成物は、式(1)で表される化合物のアンモニゥム塩又はナトリウム 塩、好ましくは前記 NMRスペクトルを有するトリアンモニゥム塩又はトリナトリウム塩、 特に好ましくはトリアンモニゥム塩を通常 0· ;!〜 20重量%、より好ましくは 1〜; 15重量 %、更に好ましくは 2〜; 10重量%含有する。本発明のインク組成物には、水溶性有 機溶剤 0〜30重量%、インク調製剤 0〜5重量%をそれぞれ含有しても良い。好まし くは水溶性有機溶剤 5〜30重量%含むものが好ましい。
[0051] 本発明のインク組成物に含有する本発明の化合物は、 HPLCによる面積比で 85 %以上、より好ましくは 90%以上、更に好ましくは 95%以上含有するのが良い。上限 については不純物の含有量が検出限界以下、すなわち 100%でも良い。
後述する本発明のインク組成物が示す効果を発揮するためには、本発明の化合物 の純度の下限は上記の通り 85%以上であるのが良ぐ特に上記式(3)のようなジス ルホ体が混在する場合、ジスルホ体の混合比率は 15%以下であるのが好ましぐより 好ましくは 10 %以下、特に好ましくは 5 %以下である。
[0052] インク組成物の調製に使用しうる水溶性有機溶剤の具体例としては、例えばメタノ 一ノレ、エタノール、 n プロパノーノレ、イソプロパノール、 n ブタノール、イソブタノー ノレ、第二ブタノール、第三ブタノール等の C1〜C4アル力ノール; N, N ジメチルホ ルムアミド又は N, N ジメチルァセトアミド等のカルボン酸アミド; 2—ピロリドン、 N— メチルー 2 ピロリドン等のラタタム; 1 , 3 ジメチルイミダゾリジンー2 オン又は 1 , 3 —ジメチルへキサヒドロピリミド— 2—オン等の環式尿素類;アセトン、メチルェチルケ トン、 2 メチルー 2 ヒドロキシペンタンー4 オン等のケトン又はケトアルコーノレ;テ
トラヒドロフラン、ジォキサン等の環状エーテル、エチレングリコール、 1 , 2 又は 1 , 3 プロピレングリコール、 1 , 2 又は 1 , 4ーブチレングリコール、 1 , 6 へキシレング リコーノレ、ジエチレングリコーノレ、トリエチレングリコーノレ、テトラエチレングリコーノレ、ジ プロピレングリコーノレ、チォジグリコーノレ、ポリエチレングリコーノレ、ポリプロピレングリ コール等の(C2〜C6)アルキレン単位を有するモノ—、オリゴ—又はポリ—アルキレ ングリコール又はチォグリコール、グリセリン、へキサン 1 , 2, 6 トリオール等のポ リオ一ノレ(トリオ一ノレ) ;エチレングリコーノレモノメチノレエーテノレ、エチレングリコーノレモ ノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール モノエチノレエーテノレ、ブチノレカノレビトーノレ(ジエチレングリコーノレモノブチノレエーテノレ )、トリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノェチルェ 一テル等の多価アルコールの(C1〜C4)アルキルエーテル; γ—ブチロラタトン又は ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合 して用いられる。
これらのうち好ましいものは 2—ピロリドン、 Ν メチルー 2—ピロリドン、モノ、ジ又は トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプロピルアルコールおよびプチ ルカノレビトーノレであり、より好ましくは 2—ピロリドン、 Ν メチル 2—ピロリドン、ジェ チレングリコール、イソプロピルアルコールおよびプチルカルビトールである。
以下本発明のインク組成物を調製するに当たり使用しうるインク調製剤につ!/、て説 明する。インク調製剤の具体例としては、例えば防腐防黴剤、 ρΗ調整剤、キレート試 薬、防鯖剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、界面活性 剤などが挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハ ロアリルスルホン系、ョードプロパギル系、 Ν ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾー ル系、二トリル系、ピリジン系、 8—ォキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾ リン系、ジチオール系、ピリジンォキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フエノー ル系、第 4アンモニゥム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、ァニリド系、ァダマンタン 系、ジチォカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機 塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロ
フエノールナトリウムが挙げられ、ピリジンォキシド系化合物としては、例えば 2—ピリ ジンチオール 1 オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては 、例えば 1 , 2 ベンズイソチアゾリン一 3 オン、 2— n ォクチル一 4 イソチアゾリ ン一 3 オン、 5 クロ口一 2 メチノレ一 4 イソチアゾリン一 3 オン、 5 クロ口一 2 —メチル一 4 イソチアゾリン一 3 オンマグネシウムクロライド、 5 クロ口一 2 メチ ル一 4 イソチアゾリン一 3 オンカルシウムクロライド、 2 メチノレ一 4 イソチアゾリ ンー 3—オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤として無水酢 酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ又は安息香酸ナトリウム等の有機酸の無機塩化合物が あげられる。
[0054] pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクの pHを 8. 0〜 11. 0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば
、ジエタノールァミン、トリエタノールァミンなどのアルカノールァミン、水酸化リチウム 、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニ ゥム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸 塩などが挙げられる。
[0055] キレート試薬としては、例えばエチレンジァミン四酢酸ナトリウム、二トリ口三酢酸ナト リウム、ヒドロキシェチルエチレンジァミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢 酸ナトリウム、ゥラシルニ酢酸ナトリウムなどがあげられる。
[0056] 防鯖剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チォ硫酸ナトリウム、チォグリコール酸ァ ンモニゥム、ジイソプロピルアンモニゥムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジ
[0057] 水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化されたベンゾフエノン又はスルホ ン化されたベンゾトリアゾール等があげられる。
[0058] 水溶性高分子化合物としては、例えばポリビュルアルコール、 セルロース誘導体、 ポリアミン、ポリイミン等があげられる。
[0059] 染料溶解剤としては、例えば尿素、 ε—力プロラタタム、エチレンカーボネート等が あげられる。
[0060] 界面活性剤としては、例えばァユオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界
面活性剤、ノユオン界面活性剤などがあげられる。
[0061] ァニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、 α—ォレフインスルホ ン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、 Ν ァシルアミノ酸およびそ の塩、 Ν ァシルメチルタウリン塩、ロジン酸石鹼、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリル アルコール硫酸エステル塩、アルキルフエノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸 エステル、アルキルァリルスルホン酸塩、ジェチルスルホ琥珀酸塩、ジェチルへキル シルスルホ琥珀酸、ジォクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。
[0062] 両性界面活性剤としてはラウリルジメチルァミノ酢酸べタイン、 2—アルキル Ν— カルボキシメチルー Ν ヒドロキシェチルイミダゾリニゥムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミ ドプロピルジメチルァミノ酢酸べタイン、ポリオクチルポリアミノェチルグリシン、その他 のものとしてイミダゾリン誘導体などがある。
[0063] カチオン界面活性剤としては 2 ビュルピリジン誘導体、ポリ 4 ビュルピリジン誘 導体などがある。
[0064] ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノユルフェニルエーテル、ポリオキ シエチレンォクチノレフエニノレエーテノレ、ポリオキシエチレンドデシノレフエニノレエーテ ノレ、ポリオキシエチレンォクチルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンォレイルエー テノレ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルな どのエーテル系、ポリオキシエチレンォレイン酸、ポリオキシエチレンォレイン酸エス テル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモ ノステアレート、ソルビタンモノォレエート、ソルビタンセスキォレエート、ポリオキシェ チレンモノォレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、 2, 4, 7, 9 ーテトラメチルー 5—デシン 4, 7—ジオール、 3, 6—ジメチルー 4ーォクチン 3, 6—ジオール、 3, 5—ジメチルー 1一へキシンー3—オールなどのアセチレングリコー ノレ(アルコール)系(例えば、 日信化学社製、商品名:サーフィノール R™104、 82、 4 65、オルフイン R™STGなど)などが挙げられる。
これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。
[0065] 本発明の水性インク組成物は、本発明の化合物を水又は上記水性溶媒又は水溶 性有機溶剤を含有する水などに、上記インク調製剤などと共に溶解することによって
製造できる。
[0066] 上記製造法において、各成分を溶解させる順序には特に制限はない。あらかじめ 水又は上記水性溶媒又は水溶性有機溶剤を含有する水などに本発明の化合物を 溶解させ、インク調整剤を添加して溶解させてもよいし、本発明の化合物を水に溶解 させたのち、水性溶媒、インク調整剤を添加して溶解させてもよい。またこれと順序が 異なっていてもよい。
さらに上記の通り本発明の化合物を合成した際の反応液、又は逆浸透膜を用い本 発明の化合物から不純物である無機塩を脱塩処理した際の処理液に、水性溶媒、ィ ンク調製剤を添加してインク組成物を製造してもよレ、。インク組成物を調製するにあ たり、用いられる水はイオン交換水又は蒸留水など不純物が少ない物が好ましい。さ らに、必要に応じメンブランフィルターなどを用いた精密濾過を行うことにより夾雑物 を除いてもよぐ特にインクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過 を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常 1ミクロン〜 0. 1ミクロ ン、好ましくは、 0. 8ミクロン〜 0. 2ミクロンである。
[0067] 本発明の化合物を含有するマゼンタインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆 記、製図、スタンビング、又は記録法、特にインクジェット記録における使用に適する 。この場合、 日光、オゾン、摩擦および、特に水に対する良好な耐性を有する高品質 のマゼンタ印捺物が得られる。また、本発明の化合物に、さらに公知公用のイェロー 、マゼンタ等の染料を配合することによって、オレンジ味、又は、赤味など好みの色調 に調整することもできる。また、他色、特にブラック用の調色色素として用いることもで きる。
[0068] 本発明の着色体とは、本発明の化合物により着色されたものを意味する。着色され るものとしては、特に制限は無ぐ例えば紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛 等)、皮革、カラーフィルター用基材等があげられるがこれらに限定されない。着色法 としては、例えば浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェットプリンタ による方法等があげられる力 S、インクジェットプリンタによる方法が好ましい。
[0069] 本発明のインクジェット記録方法を適用しうる被記録材 (メディア)としては例えば紙 、フィルム等の情報伝達用シート、繊維及び皮革等が挙げられる。情報伝達用シート
については、表面処理されたもの、具体的にはこれらの基材にインク受容層を設けた ものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸ある いは塗工することにより、また多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等インク 中の色素を吸収し得る多孔性白色無機物をポリビュルアルコールやポリビュルピロリ ドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することにより設けられる。このよ うなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙 (フィルム)あるいは光沢紙 (フィルム)と呼ばれ、例えば商品名:ピクトリコ R™ (旭硝子株式会社製)、商品名:プ 口フェツショナノレフオトぺーノ 一. スーノ 一フォトぺーノ 一、マットフォトぺーノ 一 (い ずれもキャノン株式会社製)、商品名:写真用紙 (光沢〉)、フォトマット紙、スーパーフ ァイン専用光沢フィルム(いずれもエプソン株式会社製)、商品名:アドバンスフォト用 紙(光沢)、プレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム、フォト用紙(いずれも 日本ヒュ—レットパッカード株式会社製)、商品名:フォトライク RTMQP (コニ力株式会 社製)等がある。なお、普通紙も当然利用できる。
[0070] これらの被記録材のうち、多孔性白色無機物を表面に塗工したものに記録した画 像のオゾンガスによる変退色が特に大きくなることが知られている力 本発明の化合 物はガス耐性が優れて!/、るため、このような被記録材へ記録した際には、特にその効 果を発揮する。
[0071] 上記の目的で使用される多孔性白色無機物としては、炭酸カルシウム、カオリン、タ ルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪 酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトボン、ゼォライト、硫酸バリウム、硫 酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。
[0072] 本発明のインクジェット記録方法で、被記録材に記録するには、例えば本発明のィ ンク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方 法で、被記録材に記録すればよい。本発明のインクジェット記録方法を用いれば、そ れぞれ公知のイェローインク組成物、シアンインク組成物に加えて、グリーンインク組 成物、オレンジインク組成物、ブルー(又はバイオレット)インク組成物及び本発明の マゼンタインク組成物、さらに必要に応じて公知のブラックインク組成物等と併用する こと力 Sでさる。
各色のインク組成物は、それぞれの容器に該インク組成物を注入した後、そのそれ ぞれの容器を本発明のインク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタ の所定の位置にセット (装填)して使用すればよい。インクジェットプリンタとしては、例 えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタや加熱により生ずる泡を利用したバ ブルジェット (登録商標)方式のプリンタ等があげられ、レ、ずれにお!/、ても使用するこ と力 Sできる。
[0073] 本発明のインク組成物は、鮮明なマゼンタ色であり、特にインクジェット光沢紙にお いて高い鮮明な色相を有し、記録画像の堅牢度も高い。又、人に対する安全性も高 い。
[0074] 本発明のインク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、本発明のイン クをインクジェット記録において使用した場合、噴射器 (インクヘッド)を閉塞することも ない。本発明のインクは連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間一定の再 循環下又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物 理的性質の変化を起こさなレ、。
実施例
[0075] 以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」と あるのは、特別に記載のない限りそれぞれ重量基準である。
[0076] 目的化合物の純度は、 HPLCを使用し、その面積比により決定した。分析機器なら びに分析条件は以下の通りである。
HPLC使用機器および測定条件
装置 ; HP 1100 (HP社製)
カラム ; YMC— Pack ODS— A(5〃m)、
3. 0 X 150mm (YMC社製)
カラム温度 ; 40°C
移動相 ; A液 5mM AcONH4、 B液 CH3CN
グラジェント; Bconc 5% (30min) 50%
流量 ; 0. 25ml/min
サンプル濃度; lOOOppm
注入量 ; 5 ^ 1
[0077] および13 C— NMRは、以下の機器を使用して測定した。
装置 1 : UNITY INOVA 400 (ヴアリアン社製)
装置 2 : Avance 400 (ブルカー社製)
装置 3 : Varian NMR System 500M (ヴアリアン社製)
内部標準物質は重有機溶剤の場合には TMS (テトラメチルシラン)、重水の場合に は TSP (3—トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム)を用いた。
装置 3は測定溶液中の化合物濃度および測定温度を変えた場合、すなわち化合物 濃度力 s 12mg/700 a 1 (室温)、 30mg/700 μ 1 (室温)および 30mg/700 μ 1 (60 °C)の 3種類の条件下での測定に使用した。なおこの測定の際の室温は 24°Cである
〇
本発明のアンモニゥム塩の構造決定に際しては、 NMRでは通常測定のほかに COSY, HOHAHAおよび NOESYスペクトルをそれぞれ測定した。
また13 C— NMRにおいても通常測定のほかに DEPT、 HMQCおよび HMBCスぺク トルをそれぞれ測定した。
上記の各種スペクトルを総合的に解析し、各水素原子及び炭素原子の帰属を行った 。なお水素原子が結合していない炭素原子については、本解析では帰属が行えな いが、以下に示す合成方法によりアントラピリドン構造が構築できることは周知である ため、本発明の化合物の化学構造の決定において、上記の解析は充分なデータを 与えるものであると考える。
[0078] LC MSは以下の条件にて測定した。
; LCT (JASCO INTERNATIONAL製)
; Inertsil ODS— II、 2. lmm X 250mm、 (5 μ m
; A液 5mM CH3COONH4/H2〇、 B液 CH3CN
; B cone 5 % 30min 50%
; 0. 2ml/ min
; 40。C
/e 100〜2000
Sample Cone; 30V
Rf Lens ; 300V
イオン化法 ; ESI (nega)
[0079] 実施例 1
本発明のアンモニゥム塩の合成
(1)特許文献 1に記載の方法に従い、前記式 (2)の中間体を得た。
(2) 次に 96. 0%硫酸 384. 6部に、攪拌下、水冷しながら 31. 9%発煙硫酸 575. 4 部を添加して、 12%発煙硫酸 960部を調製した。水冷下、前記式(2)の化合物 136
. 8部を 50°C以下で添加し、昇温し、 80〜90°Cにて 3時間反応(スルホン化)を行つ た。次に、氷水 1200部中に、氷を加えながら、上で得たスルホン化反応液を添カロし 、その間温度を 40°C以下に保持した。そこに水を加えて液量を 2600部とした後、濾 過して、不溶解分を除去した。次に、母液に温水を加えて 3000部とし、温度を 40〜 45°Cに調整した後、塩化アンモニゥム 690部を添加して 1時間攪拌し、析出結晶を 濾取することにより、上記式(1)の化合物のアンモニゥム塩を含むウエットケーキ 895 部を赤色結晶として得た。
(3)上記(2)で得られたウエットケーキを温水に溶力、して 1500部に調製し、液温を 50 °Cとした後、塩化アンモニゥム 330部を添加して 6時間攪拌した。析出結晶を濾取す ることにより、式(1)の化合物のトリアンモニゥム塩を含むウエットケーキ 290部を赤色 結晶として得た。
最大吸収波長( λ max): 534nm (水溶液中)
HPLC純度 : 99. 5%
(4) (3)で得られた赤色結晶 290部を水に溶解し、 28%アンモニア水を加えて溶液 の pHを 7〜; 10に調整し、逆浸透膜により脱塩処理をした。脱塩処理後の不純物無 機分の含有量は、イオンクロマトグラフ法を用いて SO 2_イオンを測定し、これを(NH
4
) SOの重量に換算して算出した結果、 1 %以下であった。
4 2 4
得られた脱塩処理溶液にイオン交換水を加えて、式(1)の化合物のトリアンモニゥム 塩の濃度を 10%に調整し、インク用の色素濃度 10%水溶液 (2465部)を得た。
[0080] 実施例 2
本発明のナトリウム塩の合成
(1)実施例 1 (2)で得られたウエットケーキを水に溶解し、総量で 1500部に調整後、 これに塩化ナトリウム 300部を添加して室温で 1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、 得られたウエットケーキを 20%塩化ナトリウム水溶液 400部で洗浄し、本発明のトリナ トリウム塩を含むウエットケーキ 377部を赤色結晶として得た。
最大吸収波長( λ max): 534nm (水溶液中)
HPLC純度 : 99. 0%
LC-MS : m / z 695 = [(696— H+)]—
m / z 347 = [(696—2H+) / 2 ] 2—
m / z 231 = [(696— 3H+) / 3 ] 3—
(2) (1)で得られた赤色結晶 290部を水に溶解し、 25%水酸化ナトリウムを加えて溶 液の pHを 7〜; 10に調整し、逆浸透膜により脱塩処理をした。脱塩処理後の不純物 無機分の含有量は、イオンクロマトグラフ法を用いて C1一のイオンを測定し、これを N aClの重量に換算して算出した結果、 1 %以下であった。得られた脱塩処理溶液にィ オン交換水を加えて、式(1)の化合物のトリナトリウム塩の濃度を 10%に調整し、イン ク用の色素濃度 10 %水溶液 (2465部)を得た。
[0081] 実施例 3
(A)インクの調製
上記実施例 1で得た色素濃度 10%のインク用水溶液(アンモユウム塩水溶液)を用 いて表 1に示した組成の液状組成物を調製し、 0. 45 mのメンブランフィルターで 濾過する事により実施例 3のインク組成物を得た。このインク組成物を用いて、インク ジェット記録を行い、記録画像の評価を行った。色相及び鮮明性についての評価結 果を表 2に、耐光性、耐オゾン性及び耐水性についての評価結果を表 3に示した。
[0082] [表 1]
(インク組成物)
実施例 1のインク用の色素濃度 1 0 %水溶液 3 5 .
グリセリン 5 .
尿素 5 .
N—メチル一 2—ピロリ ドン 4 .
イソプロピルアルコール 3 .
ブチルカルビトール 2 .
商品名 :サーフイノ一ル 1 0 4 P G 5 0 0 .
(ノニオン界面活性剤、 日信化学工業株式会社製)
イオン交換水 4 5 . 9部 計 1 0 0 . 0部
[0083] 実施例 4
実施例 1で得たインク用の色素濃度 10%水溶液を、実施例 2で得たインク用の色 素濃度 10%水溶液に代える以外は実施例 3と同様にして本発明の実施例 4のインク 組成物を得た。得られたインク組成物を用いて実施例 3と同様に各種の評価を行つ た。その結果を表 3に示す。
[0084] 実施例 5
インク組成物中に本発明のアンモユウム塩を含有する実施例 3で得たインク組成物 に、後述の比較例 2で得たインク組成物を加えることにより、本発明のアンモニゥム塩 の純度が 93 %および 86 %であるインク組成物をそれぞれ得た。 93 %純度のインク 組成物を実施例 5— 1、 86%純度のインク組成物を実施例 5— 2とし、実施例 3と同様 に評価を行った。その結果を表 3に示す。なおこれらのインク組成物中の総色素量は 、それぞれ 10%である。
[0085] 比較例 1
比較対象として、特許文献 1の実施例 7に従い、特許文献 1の化合物 No. 36およ び No. 26の混合物を得た。この混合物はナトリウム塩であり、合成法は以下の通りで ある。
(1) 1—メチルァミノ一 4—ァニリノアントラキノン 23· 6部、炭酸ナトリウム 0· 75部、ベ ンゾィル酢酸ェチルエステル 36. 0部及びオルソジクロ口ベンゼン 75部を混合し、 17 0°Cに過熱して 3時間反応した。この反応は、生成するエタノール及び水を反応系外
に留去させながら行った。反応の完了を HPLCにて確認後、反応液を水冷し、メタノ ール 150部を加えて 1時間撹拌した。析出結晶を濾取し、メタノール 200部及び水で 順次洗浄し、さらに得られた個体を乾燥することにより、 28. 8部の赤色固体を得た。 (2)氷水冷却下、 96%硫酸 24. 0部に 30%発煙硫酸 39. 6部を加えて 12%発煙硫 酸を調製した。この溶液に上記(1)にて得られた赤色個体 8. 8部を、反応液の液温 力 ¾0°C以上にならないように加え、 40〜45°Cの温度で 5時間スルホン化反応を行つ た。得られた反応液を、氷水 400部中に撹拌下に加え、次いで塩化ナトリウム 80部を 加えてさらに 2時間撹拌した。析出固体を濾取し、乾燥することにより、特許文献 1に 記載の No. 36の化合物と No. 26の化合物との混合物 12. 3部を赤色粉末として得 た。得られた混合物の分析値は以下の通りである。
化合物 No. 36の HPLC純度: 77. 3%
LC-MS : m / z 695 = [(696— H+)]—
m / z 347 = [(696—2H+) / 2 ] 2—
m / z 231 = [(696— 3H+) / 3 ] 3—
化合物 No. 26の HPLC純度: 16. 2%
LC-MS : m / z 615 = [(616— H+)]—
m / z 307 = [(616—2H+) / 2 ] 2—
得られた混合物(色素)を用いて調製した色素濃度 10%水溶液を用いる以外は、 実施例 3と同様にして比較例 1のインク組成物を調製し、実施例 3と同様の評価を行 つた。
[0086] 比較例 2
比較例 1で得た混合物を水に溶解し、 28 %アンモニア水を加えて pHを約 10に調 整した後、イオン交換水を加えて色素濃度が 10%の水溶液を調製した。実施例 3で 使用した実施例 1の色素濃度 10 %水溶液の代わりに、上記で得た色素濃度 10 %水 溶液を用いる以外は実施例 3と同様にして比較例 2のインク組成物を得た。得られた インク組成物を用いて実施例 3と同様に各種の評価を行った。その結果を表 3に示す
〇
[0087] (B)インクジェットプリント
インクジェットプリンタ(キャノン株式会社製 Pixus 4100i)を用いて、多孔性白色 無機物を含有したインク受像層を有する光沢紙 2種、すなわちエプソン社製、商品名 :クリスピア RTMと、 HP社製、商品名:アドバンスフォト用紙 (光沢)、にインクジェット記 録を行った。インクジェット記録の際、印刷濃度が数段階の諧調が得られるように画 像パターンを作り印字物を作成した。
(C)記録画像の評価
1.色相評価
1-1.光沢紙での色相評価
記録画像の色相、鮮明性:記録紙を測色システム(GRETAG SPM50: GRETA G社製)を用いて測色し、 L*、 a*、 b*値を算出し、鮮明性は色度(a*、 b*)力 C* = (
(a* )2+ (b* )2)1/2を算出した。実施例 3と比較例 1の色相の結果を表 3に示す。な お L*値が大きレ、ほど明度が高ぐまた C*が大き!/、ほど鮮明性が高!/、ことを意味する
〇
[0088] [表 2]
色相 鮮明性
L* b* C*
エブソン社製光沢紙
実施例 3 50. 3 83. 8 25, 2 87. 7 比較例 1 47. 9 83. 9 -22. 5 86. 9
HP社製光沢紙
実施例 3 49. 8 83. 3 26. 7 87. 5 比較例 1 46. 9 82. 9 27. 9 87. 4
[0089] 表 2より、本発明の実施例 3の画像は、いずれの光沢紙においても、鮮明性を示す C*値は比較例 1とほぼ同等であるものの、 L*値は比較例 1に比べて、エプソン社製 光沢紙を用レ、た場合には 5 %、また HP社製光沢紙を用レ、た場合には 6 %も比較例 1 より高値を示し、この結果から、本発明のインク組成物は鮮明性が高いうえに、明度 が比較例 1の混合物よりも優れた記録画像を与えることが判明した。
[0090] (D)記録画像のキセノン耐光性試験
エプソン社製光沢紙と HP社製光沢紙にプリントした試験片上に空気層ができるよう に、 2mm厚のガラス板を設置して、キセノンゥェザォメータ Ci4000 (ATLAS社製) を用い、 0. 36W/m2照度で、湿度 60%RH、温度 24°C、 50時間照射し、試験前 後の色差( Δ E)を測定し、評価を行った。
結果を表 3に示す。
[0091] (E)記録画像の耐オゾンガス性試験
エプソン光沢紙と HP社製光沢紙にプリントした試験片をオゾンウエザーメーター(ス ガ試験機株式会社製)を用いてオゾン濃度 12ppm、湿度 60%RH、温度 24°Cの環 境下に 4時間放置し、試験前後の色差(Δ Ε)を測定し、評価を行った。結果を表 3に 示す。
[0092] (F)記録画像の耐水性試験
エプソン社製光沢紙と HP社製光沢紙にプリントした試験片に、水を一滴落とし、室 温下で 1時間放置後に拭き取り、ふき取り後の滲みを目視にて判定し、下記の 5段階 で評価した。結果を表 3に示す。
〇 :滲みが認められない
〇△:〇と八の中間程度のごく僅かな滲みが認められる
△ :わずか滲みが認められる
△ X:△と Xの中間程度の比較的大きな滲みが認められる
X :大きな滲みが認められる
[表 3]
エプソン社製光沢紙
耐光性 耐オゾンガス性 耐水性
実施例 3 3. 6 1. 5 〇△
実施例 4 3. 6 1. 5 〇△
実施例 5— 1 3. 8 1. 5 〇△
実施例 5— 2 3. 8 1. 5 〇△
比較例 1 4. 0 2. 5 X
比較例 2 3. 9 2. 2 X
HP社製光沢紙
耐光性 耐オゾンガス性 耐水性
実施例 3 3. 6 2. 4 〇
実施例 4 3. 8 2. 6 〇
実施例 5 - 1 3. 5 1. 6 〇
実施例 5— 2 3. 3 1. 7 〇
比較例 1 4. 9 2. 7 X
比較例 2 4. 4 2. 7 X
表 3より、エプソン社製光沢紙を用いた場合、本発明のインク組成物は、耐光性に ぉレ、て、各比較例に比して少し優れて!/、る程度である力 耐オゾンガス性にぉレ、ては 各比較例が 2.2および 2.5であるのに対して、本発明の各実施例はいずれも 1.5で あり、 0.7から 1ポイントの色差の改善が見られる。
また HP社製光沢紙を用いた場合、耐オゾンガス性にお!/、ては各比較例に比してわ ずかに優れている程度である力 耐光性においては大きな差が認められ、各比較例 が 4.4および 4.9であるのに対して本発明の各実施例は 3.3力、ら 3.8であり、最小 でも 0.6、最大では 1.6ポイントの色差 (ΔΕ)の改善が見られた。
注目すべきは耐水性であり、いずれの光沢紙を用いた場合にも、各比較例では、 目 視により大きな滲みが認められたのと比較して、本発明の各実施例では、 HP社製光 沢紙を用いた場合には全く滲みが認められず、エプソン社製光沢紙を用いた場合に お!/、てもごく僅かな滲みが認められたのみであり、本発明のインク組成物は耐水性に 極めて優れた画像を与えるものであることがわかる。
比較例 1の混合物は、親水性基であるスルホ基が 2つしか導入されていない上記式(
3)の化合物を含むため、本発明の化合物より水に対する親和性が低いものと考えら れた。従って耐水性については、本発明の化合物より良好な結果を示すものと予想 された。し力もながら耐水性試験の結果から明らかなように、より親水性が高いと思わ れる本発明のインク組成物は、各比較例よりはるかに耐水性に優れ、特にこの点に おいて、各比較例よりもインクジェット記録に好適に用い得るものであることが判明し た。
さらに実施例 5— 1および 5— 2は、本発明の化合物に、比較例 2で得た混合物を添 加することにより、インク組成物中の色素の総量に対する本発明のアンモニゥム塩の 含有量を、 HPLCの面積比で、それぞれ 93%および 86%へと調整したものである。 比較例 1は本発明のナトリウム塩を、また比較例 2は本発明のアンモニゥム塩をそれ ぞれ HPLCの面積比で 77%含有するインク組成物である。
表 3の結果から明らかなように、インク組成物中の色素の総量に対して本発明のアン モニゥム塩をそれぞれ 93%および 86%含有する実施例 5— 1および 5— 2も、耐水 性及び耐オゾン性にぉレ、て各比較例より優れることが判明した。従ってインク組成物 中の色素の総量に対して、本発明の化合物の含有量は必ずしも 100%である必要 は無ぐおおよそ 85%以上の含有量であれば、優れた耐水効果を有することが明ら 力、となった。またインク組成物中における本発明の化合物の含有量が 70%程度であ る場合には、少なくとも耐水性において、本発明の化合物が有する効果は得られな いことが証明された。
実施例 6
本発明のアンモニゥム塩とナトリウム塩の性能をさらに比較するため、下記表 4に記 載の組成を有するインク組成物をそれぞれ調製し、下記の耐光性および耐水性試験 を行った。アンモニゥム塩 (実施例 1の化合物)を用いて調製したインク組成物を実施 例 6— 1、ナトリウム塩 (実施例 2の化合物)を用いたものを実施例 6— 2とする。
[表 4]
(インク組成)
実施例 1又は 2のインク用の色素濃度 10%水溶液 70. グリセリン 5. 尿素 5.
N—メチル一 2—ピロリ ドン 4. イソプロピルアルコール 3. ブチルカルビトール 2. 商品名:サーフィノール 104 PG 50 0.
(ノニオン界面活性剤、 日信化学工業株式会社製)
イオン交換水 10. 9部
計 100. 0部
[0095] (G)記録画像のキセノン耐光性試験
エプソン社製光沢紙と HP社製光沢紙に加え、キャノン社製光沢紙(商品名プロフ エツショナルフォトペーパー PR— 101)を使用し、これらの光沢紙にプリントした試 験片上に空気層ができるように、 2mm厚のガラス板を設置して、キセノンゥェザオメ ータ Ci4000(ATLAS社製)を用い、 0.35W/m2照度で、湿度 60%RH、温度 24 °C、 100時間照射し、試験前後の色差(ΔΕ)を測定し、評価を行った。
結果を表 5に示す。
¾ ¾ ώな ¾Εab
[0096] [表 5]
HP社製光沢紙
耐光性
実施例 6— 1 7. 3
実施例 6— 2 10. 2 キャノン社製光沢紙
耐光性
実施例 6— 1 7. 6
実施例 6— 2 16. 7 エプソン社製光沢紙
耐光性
実施例 6— 1 13. 8
実施例 6— 2 18. 5
表 5から明らかなように、いずれの光沢紙を用いた場合にも本発明のアンモニゥム 塩を含有する実施例 6— 1は、本発明のナトリウム塩を含有する実施例 6— 2よりもさら に優れた堅牢性を示す。
すなわち、耐光性におレ、ては色素残存率が最小値でもエプソン社製光沢紙を用い た場合に 1.3倍、最大値ではキャノン社製光沢紙を用いた場合に実に 2.2倍も実 施例 6— 1が優れて!/、ることが判明した。
また HP社製光沢紙を用い、上記の条件で耐水性試験を行った。試験の結果、実施 例 6—1は〇△、実施例 6— 2は ΔΧと判定され、アンモニゥム塩とナトリウム塩の比較 にお!/、てはアンモニゥム塩の方が 2ランクほど滲みの度合!/、が改善され、ナトリウム塩 よりもさらに優れた耐水性能を有することが明らかとなった。
産業上の利用可能性
本発明のアンモニゥム塩又はナトリウム塩、特にトリアンモニゥム塩又はトリナトリウム 塩を色素として含むインク組成物で、多項性無機物質でインク受容層を設けたインク ジェット専用紙又は光沢紙上にインクジェットでプリントされた印字物は、耐光性及び 耐オゾン性において優れている上に、耐水性にも優れるといった、種々の堅牢性に おいて優れるので、本発明のアンモニゥム塩又はナトリウム塩、特にトリアンモニゥム 塩又はトリナトリウム塩、更には該アンモニゥム塩又はナトリウム塩を 85%以上含む色 素はインク用色素、特にインクジェット用インクのための色素として極めて有用であり、 該色素を用いたインクは、インクジェットプリントに極めて有用である。