明 細 書
混合信号をブラインド分離する方法及び装置並びに混合信号の送信方 法及び装置
技術分野
[0001] 2点間で複数の信号を送信するための、複数入力 (multiple input)および複数出力( multiple output)チャネルを備える通信システムに関し、特に、混合された複数の信号 をブラインド分離するための方法及び装置と、そのようにブラインド分離するために適 した混合信号の送信方法及び装置に関する。
背景技術
[0002] 複数の送信機および複数の受信機(複数入力複数出力: MIMO(Multiple Input M ultiple Output))を備えるシステム力 S、ダイバーシチおよび/または高速データ伝送 速度を実現するために、通信システムにおいて用いられている。そのような MIMOシ ステムでは、複数のソース信号が 1つの混合信号 (mixed signal)に多重化されて伝送 されており、媒体から取り出された信号は、注目する信号の混合からなっている。 Ml MOシステムは、通信システムのみならず、高密度記録媒体への信号や情報の記録 に用いられている。
[0003] 受信側では、あるいは記録媒体からの信号の読み出し側では、混合信号から個々 のソース信号を分離し、ソース信号が媒体上に送信されまたは媒体に記憶されたの と同じ順序で取り出す必要がある。従来は、このようなシステムでは、トレーニングデ ータを用いてチャネル状態情報(CSI ; Channel State information)または逆方向チヤ ネル状態情報(ICSI ; Inverse Channel State information)が推定され、受信機側で、 概算の CSほたは逆方向チャネル状態情報 (ICSI)を用いて、混合信号が分離され 、あるいは、その係数を適応的に調整するブラインド適応アルゴリズムの係数が初期 設定される。概算の CSほたは逆方向チャネル状態情報 (ICSI)は、出力が常に分 離された信号からなることを保証する。し力 ながら後述するように、トレーニング信号 の使用は、通信システムのスループットの低下や、高密度記録媒体の記憶容量の低 減がもたらされる。
[0004] 本発明に直接的に関連する手法は、 MIMO CSIまたは MIMO ICSIの完全な ブラインド識別である [1]〜[5]。これらの方法では、受信信号だけが使用され、送信信 号の先験的(アプリオリ)な知識は仮定されない。この仮定に基づき、 MIMOチヤネ ルの CSほたは ICSIを推定するために使用されているレ、くつかの手法がある。基本 的に、これらの推定方法は、直交性、コンスタントモジュラス(constant modulus ;定包 絡線)、周期定常性などの元の信号特性と、信号源が独立であるという仮定と、部分 空間ベースの手法であるということとに基づくものと分類できる [1]〜[12]。これらの方 法すべてにおいて、混合信号の分離が可能である。し力、しながら、 CSIの完全なブラ インド識別は複数の解を持ち、そのそれぞれが別の解の置換配列であるため、分離 されたソース信号を送信機側の特定の信号源に割り当てることは不可能である [8]〜[ 12]。置換配列とは、解が配列として与えるときに、そのような解の要素の順番を入れ 替えた配列のことである。ソース信号の統計がコスト関数として用いられる場合には、 ブラインドアルゴリズムは、所与の信号源の同相 (in-phase)または直交 (quadrature)成 分が別の信号源の同相または直交位相の成分で置換された解を生じる可能性もある
[0005] たたみ込み混合信号源のブラインド信号源分離(BSS; Blind Source Separation)で は、周波数ドメインを利用することによって、時間ドメイン BSSに関連する計算量が最 小限に抑えられている [13]〜[15]。一例では、受信センサのそれぞれによって受信さ れた信号は、まず、 FFT (高速フーリエ変換)を用いて周波数ドメインに変換される。 ひとたびこれが行なわれると、たたみ込み混合問題 (convolutive mixture problem)力 S 、信号源のそれぞれのビン (bin)の瞬時混合問題 (instantaneous mixture problem)に 変換される [13], [15]。さらに、参考文献 [16]に記載される方法を利用すれば、各周波 数ビンで発生する置換をすベての周波数ビンに対して均一にすることが可能である。 一例として、図 1に、受信信号が周波数ドメインで処理される BSSのシステムを示す。
[0006] 図 1に示すシステムは、信号 X , Xを入力とし信号 y, yを出力とする MIMO媒体 1
1 2 1 2
01と、信号 yに対して N点の FFTを実行する FFF演算部 102と、信号 yに対して N
1 2
点の FFTを実行する FF演算部 103と、これら FFT演算部 102, 103の出力に対して ブラインド信号分離アルゴリズムを適用するブラインド分離演算部 104と、ブラインド
分離演算部 104の出力に対して N点の IFFT (高速フーリエ逆変換)を実行してそれ ぞれ信号 z , zを出力する IFFT演算部 105, 106とを備えている。そしてこのシステ
1 2
ムでは、
(a) Xおよび Xは、それぞれ、フーリエ変換 {X … X }および {X … X }
1 2 1,1 1,NF 2,1 2'NF を用いた元のソース信号である;
(b) yおよび yは、 MIMO伝送媒体 101を通過した後の受信信号である。 {Y …
1 2 1,1
Y }は、 FFT演算部 102から出力される、受信信号 yのフーリエ変換の周波数ビ
Ι,Ν 1
ンであり、同様に、 {Y …, Y }は、 FFT演算部 103から出力される、受信信号 y
2,1 2,N
のフーリエ変換の N個の周波数ビンに対応する;
2
(C)受信信号の周波数ビンについて対を生成して Sから Sまでの対にした後で、ブ
1 N
ラインド分離演算部 104によりブラインド分離アルゴリズムを用いて、元の信号 Xおよ
1 び Xにそれぞれ対応するビンが分離され、その後、 IFFT演算部 105, 106によって
2
フーリエ逆変換を適用することにより、信号 z , zを得る。参考文献 [16]で指定される
1 2
ようなビンの置換配列がない場合には、周波数ビン Z 力 Z は Xまたは Xのいず
1,1 Ι,Ν 1 2
れか一方だけに対応し、したがって信号 Ζも Xまたは Xのいずれか一方だけに対応
1 1 2
することになる。他方、置換配列がある場合には、最初のビン Ζ が X に対応し、次
1,1 1,1
のビン ζ 力 に対応する可能性がある。したがって、周波数成分が置換されること
1,2 2,2
なく信号源を分離することは可能であるが、信号源の置換の問題は依然として残る。 以下、本明細書中で引用する参考文献を列挙する。
特午文 ¾ 丄: [1] し hong— Yung Chi; し hu_Horng Chen, Cumulant—based inverse filt er criteria for MIMO blind deconvolution: properties, algorithms, and application to DS/CDMA systems in multipath," IEEE Transactions on Signal Processing, Volume: 49 , Issue: 7 , Pages: 1282-1299, July 2001
非特許文献 2 : [2] Chor Tin Ma; Zhi Ding; Sze Fong Yau, "A two-stage algorithm for MIMO blind deconvolution of nonstationary colored signals, IEEE Transactions on Signal Processing, Volume: 48, Issue: 4 , Pages: 1187 - 1192, April 2000
非特許文献 3 : [3] Ka Lok Yeung; Sze Fong Yau, "A super-exponential algorithm for blind deconvolution of MIMO system," Circuits and Systems, 1997. ISCAS '97·, Vo
lume: 4 , Pages: 2517-2520, 9-12 June 1997
非特許文献 4 : [4] Comon, P. ; Moreau, Ε·, 〃Blind MIMO equalization and joint- diago nalization criteria, Acoustics, Speech, and signal Processing, 2001. Proceedings. (I CASSP,01), Volume: 5 , Pages: 2749—2752, 7—11 May 2001
非特許文献 5 : [5] Kung, Xinying Zhang, An associative memory approach to blind signal recovery for SIMO/MIMO systems," Neural Networks for Signal Process ing XI, 2001. Proceedings of the 2001 IEEE Signal Processing Society Workshop, Pa ges: 343-362, 10-12 Sept. 2001
非特許文献 6: [6] T. L. Marzetta, "BLAST Training: Estimating Channel Characteri sties for High Capacity Space-Time Wireless,〃 Proc. 37th Annual Allertonし onferen ce on communication, Control, and Computing, pp. 958 - 966, September 1999 ^^特許文献 7: [7] Li Yuanjie and L. Yang, "Semi— blind mimo channel identification b ased on error adjustment, 2003. Proceedings of the 2003 International Conference on Neural Networks and Signal Processing, Vol. 2 , pp. 1429-1432, Dec. 14-17, 200 3
非特許文献 8 : [8] Υ· Li, K.J.R. Liu, "Adaptive Blind Source Separation for Multiple- Input/Multiple-Output Systems," IEEE Trans., Inform. , Theory, vol. 44, No. 7, pp. 2864-2876, Nov. 1998
非特言午文献 9 : [9] B. G. Agee, "Blind separation and capture of communication signa Is using a multitarget constant modulus beamformer / MILCOM '89. Conference Re cord. vol. 2, pp. 340—346, Oct. 1989
非特許文献 10 : [10] P. Sansrimahachai, D. Β· Ward, A. G. Constantinides, 〃Multipl e- input multiple-output least-squares constant modulus algorithms/' GLOBECOM ' 03. IEEE , vol. 4, pp. 2084-2088, Dec. 2003
非特許文献 11 : [11] J. J. Shynk, R. P. Gooch, "Performance analysis of the multista ge CMA adaptive beamformer," MILCOM '94. vol. 2, pp. 316—320, 2—5 Oct. 1994 非特許文献 12 : [12] M. Hajian, J. Fernandes, P. Cunha, L. P. Ligthart, "Adaptive e qualization for mobile communication systems based on constant modulus algorithm,
" Vehicular Technology Conference, 2001. IEEE VTS 53rd , vol. 3, pp. 1609-1613, May 2001
非特許文献 13 : [13] Belouchrani, A. ; Amin, M. G, "Blind source separation based o n time-frequency signal representations, Signal Processing, IEEE Transactions on, Volume: 46 , Issue: 11 , Pages: 2888-2897, Nov. 1998
非特許文献 14 : [14] M. Z. Ikram and D. R. Morgan, Ά beamforming approach to pe rmutation alignment for multichannel frequency-domain blind speech separation," Pr oc. ICASSP, pp. 881-884, May 2002
非特許文默丄 5 : [15] T. W. Lee, A. J. Bell, and R. Orglmeister, "Blind source separa tion of real world signals," Proc. ICNN, pp. 2129-2135, June 1997
非特許文献 16 : [16] H. Sawada, R. Mukai, S. Araki and S. Makino, "A Robust and P recise Method for Solving the Permutation Problem of Frequency-Domain Blind Sou rce Separation, lEEE Trans., Speech Audio Processing, vol. 12, no. 5, Sept. 2004 ^^特許文献 17: [丄(Ί D. Godard, "Self-Recovering Equalization and Carrier Tracking in Two—Dimensional Data Communication Systems," IEEt!, transactions on Commu nications, vol. 28, issue: 11, p. 1867—1875, Nov. 1980
非特許文献 18 : [18] K. Oh and Y. Chin, "Modified constant modulus algorithm: Blin d equalization and carrier phase recovery algorithm," Proc. IEEE ICC, vol. 1, p. 4 98-502, June 1995
非特許文献 19: [19] Van der Veen, A. -J., "Statistical performance analysis of the al gebraic constant modulus algorithm," Signal Processing, IEEE Transactions on, Volu me: 50 , Issue: 12, Pages: 3083-3097, Dec. 2002
非特許文献 20 : [20] Regalia, P. A. , "A finite-interval constant modulus algorithm," Acoustics, Speech, and Signal Processing, 2002. Proceedings. (ICASSP '02). IEEE I nternational Conference on, Volume: 3 , Pages: ΙΠ-2285 - ΙΠ-2288, 13-17 May 200 2
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] CSIのブラインド識別を使用する MIMOシステムには、それぞれが別の解の置換 配列である多数の解が存在する。混合信号をブラインド分離することは可能であるが 、信号源の位置や受信機から見た方向など、その他の情報を用いなければ、所与の 分離されたソース信号を送信機の特定の信号源に割り当てることは不可能である。さ らに、移動通信システムでは、信号源の位置や方向などの情報を利用することもでき ないし、たとえ、利用できたとしても、位置や方向は時々刻々と変化することがある。し たがって、通信システムにおける信号の完全な BSSを置換すなわち順番の置き換え なしで実現するためには、置換信号を生じる複数解の問題を解決する必要がある。
[0009] また、移動通信システムでは、アップリンク(上り回線)に割当てられる帯域幅を縮小 し、ユーザ間で共用させることができる。その場合、アップリンクの帯域幅の縮小分は 、ダウンリンク(下り回線)の帯域幅の増大に利用することができる。この種の実装形 態を用いる場合には、若干のモパイルユーザは、アップリンクチャネルを共用すること が必要になる。これは、基地局にある複数の受信側アンテナを統合して MIMOシス テムにすることにより、システムのスループットを犠牲にせずに実現され得る。そのよう なシステムでは、 MIMO CSIまたは MIMO ICSIは、同じアップリンクチャネルを 共用するユーザの信号を分離するように、推定される必要がある。この場合、トレー二 ング信号の使用は、すべての移動 (モパイル)端末をそれらの位置と関係なく同期さ せることが必要になるため、推奨することができない。他方、従来のブラインド信号源 分離 (BSS)技術の利用は、移動端末によって送信された信号の置換をもたらすこと になり、その場合、データのソートが必要になる。ソートを補助するための冗長ビットの 送信は、システムのスループットを低下させるため、推奨されない。
[0010] 2点間での信号の無線伝送において、複数台の送信機と複数台の受信機を用いて 信号を並列に送信する MIMOシステムを構成することにより、高い伝送速度を実現 すること力 Sできる。あるいは、単入力単出力(SISO)システムでは、直交周波数分割 多盧 (OFDM ; orthogonal frequency division multiplexing)を用レヽてテータ 1 号 並列に送信することができる。しかしながら、両方の場合とも、受信信号が混合されて しまう可能性がある。
[0011] そこで本発明の目的は、結果として生じる出力において置換すなわち順番の入れ
替えが起こることなぐ混合信号を適切に分離することができるブラインド分離方法及 び装置を提供することにある。
[0012] 本発明の別の目的は、このようなブラインド分離のために適した信号の送信方法及 び装置とを提供することにある。
課題を解決するための手段
[0013] 本発明の第 1の様相によれば、複数の信号源からの信号が、各信号源が最終的に 異なる周波数帯域またはタイムスロットで送信されることになるように、スペクトルまた は時間を細分化することなぐ同一のチャネルと、同一の周波数帯域、タイムスロット または拡散符号とを用いてデータを送信する方法であって、少なくとも 1つの信号源 に関し、信号源ごとにその信号源に対して一意に定まる特性を有するフィルタを用い て、その信号源からの信号をフィルタ処理してタグ付けする段階と、タグ付けされたデ ータを、複数の送信機またはオーバーラップする周波数帯域を用いて送信する段階 と、を有する方法が提供される。
[0014] 本発明の第 2の様相によれば、複数出力システムとして表わされる受信信号から各 信号源からの信号をブラインド分離する方法であって、少なくとも 1つの信号源に関し 、信号源ごとにその信号源に対して一意に定まるフィルタが定められており、フィルタ の逆に対応する逆フィルタを、対応する信号源の特性を復元するように、受信信号の 複数出力のうちの 1または複数に適用する段階と、逆フィルタによってフィルタ処理さ れた出力に対し、同じ周波数帯域または送信時間間隔を占める他の信号源または 干渉信号を除去するために、重み付けされた多重フィルタリング出力信号の和が対 応する信号源の元の信号と同じ特性を有するという制約条件の下で、それぞれの利 得を調整する段階と、を有する方法が提供される。
[0015] 本発明の第 3の様相によれば、複数の信号源からの信号が、各信号源が最終的に 異なる周波数帯域またはタイムスロットで送信されることになるように、スペクトルまた は時間を細分化することなぐ同一のチャネルと、同一の周波数帯域、タイムスロット または拡散符号とを用いてデータを送信する送信装置であって、少なくとも 1つの信 号源に関し、その信号源からの信号をフィルタ処理してタグ付けする、信号源ごとに その信号源に対して一意に定まる特性を有するフィルタと、タグ付けされたデータを、
複数の送信機またはオーバーラップする周波数帯域を用いて送信する手段と、を有 する送信装置が提供される。
[0016] 本発明の第 4の様相によれば、複数出力システムとして表わされる受信信号から各 信号源からの信号をブラインド分離する装置であって、少なくとも 1つの信号源に関し 、信号源ごとにその信号源に対して一意に定まるフィルタが定められており、受信信 号の複数出力のうちの 1または複数に適用され、対応する信号源の特性を復元する 、フィルタの逆に対応する逆フィルタと、逆フィルタによってフィルタ処理された出力に 対し、同じ周波数帯域または送信時間間隔を占める他の信号源または干渉信号を 除去するために、重み付けされた多重フィルタリング出力信号の和が対応する信号 源の元の信号と同じ特性を有するという制約条件の下で、それぞれの利得を調整す る調整手段と、を有する装置が提供される。
[0017] 本発明において、「送信」とは、電気的、音響的あるいは光学的に信号が伝搬する 媒体を用いて信号を第 1の位置から第 2の位置に伝送することを指すだけのものでは ない。信号を、磁気記録媒体、光記録媒体などの記録媒体に記録することも、「送信 」の範疇に含んでいる。したがって、「受信」には、そのような記録媒体力 信号を読 み出すことも含まれる。
[0018] 本発明によれば、結果として生じる出力が置換されることなぐ混合信号を分離する ことが可能になる。
図面の簡単な説明
[0019] [図 1]周波数ドメインブラインド信号源分離を示すブロック図である。
[図 2]送信前に一意のフィルタを用いてデータにタグ付けする、本発明に基づく MIM Oシステムの基本構成を示すブロック図である。
[図 3A]送信機装置と受信機装置からなる従来の OFDMシステムで使用される送信 機装置のベースバンドモデルを示すブロック図である。
[図 3B]送信機装置と受信機装置からなる従来の OFDMシステムで使用される受信 機装置のベースバンドモデルを示すブロック図である。
[図 4A]本発明に基づく OFDMシステムで使用される送信機装置のベースバンドモ デルを示すブロック図である。
園 4B]本発明に基づく OFDMシステムで使用される受信機装置のベースバンドモデ ルを示すブロック図である。
[図 5]単一の送信アンテナまたはチャネルを有するシステムでの、極およびゼロ点の 位置を示すグラフである。
[図 6]2つの送信アンテナまたはチャネルを有するシステムでの、極およびゼロ点の位 置を示すグラフである。
[図 7]4つの送信アンテナまたはチャネルを有するシステムでの、極およびゼロ点の位 置を示すグラフである。
[図 8]3つの受信アンテナ R_ l, R- 2, R_ 3を有する共通の基地局端末 BTにリンク されている移動端末 T_ l , T- 2, T— 3を示す図である。
[図 9]タグ付けフィルタの揷入位置の詳細を示す、図 8に示す移動端末のベースバン ドモデルの図である。
[図 10]タグ付けフィルタを用いてフィルタ処理され、同じ周波数帯域、タイムスロットま たは符号を用いて送信されている信号を搬送する、 N空間ベースのチャネルを有す る送信機のベースバンドモデルのブロック図である。
符号の説明
101 , 202, 305 MIMO媒体
102, 103 FFT演算部
104 ブラィンド分離演算部
105, 106 IFFT演算部
201 , 203, 308 信号処理部
204, 311, 402, 503 タグ付けフィノレタ
205, 312 逆タグ付けフィルタ
301 , 401, 501 , 502 シリアノレ/ノ ラレノレ:
302, 403, 504 OFDM変調器
303, 309, 404, 505 ノ ラレノレ/シリアノレ:
304, 306, 405, 506 帯域制限フィノレタ
307 OFDM復調器
発明を実施するための最良の形態
[0021] 次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
[0022] 図 2は、本発明によって提案された MIMOシステムの基本モデルを示すブロック図 である。この MIMOシステムは、信号 X,■· - , Xが入力し、 MIMOシステム用の信号
1 N
処理を行なう信号処理部 201と、信号処理部 201の出力側に設けられた MIMO媒 体 202と、 MIMO媒体 202から出力された信号を処理して信号 x' ,…, x'を生ずる
1 N 信号処理部 203とを備えている。そして、信号処理部 201と MIMO媒体 202の間の 位置「A」には、タグ付け (tagging)フィルタ 204が配置され、 MIMO媒体 202と信号処 理部 203との間の位置「B」には、逆タグ付け (inverse tagging)フィルタ 205が設けられ ている。
[0023] このシステムにおいて、送信機側と受信機側とは、 MIMO媒体 202によって接続さ れることになるが、 MIMO媒体 202は、例えば、送信機側と受信機側とを接続する電 波、音波または光に基づくリンクを含んでいる。また、このシステムでは、データは、複 数の信号源からの信号が、各信号源が最終的に異なる周波数帯域またはタイムス口 ットで送信されることになるように、スペクトルまたは時間を細分化することなぐ同一 のチャネルと、同一の周波数帯域、タイムスロットまたは拡散符号とを用いて、送信さ れる。
[0024] ここでは、説明のために、信号は長さ Nのバッファ(信号処理部 201)に一時的に蓄 積されるものと仮定する。次に、バッファの内容が並列に読み出され、バッファの各出 力(Xまたは X,…, X )にそれぞれ一意に割り当てられたユニークフィルタ(タグ付け
1 2 N
フィルタ 204)を用いてフィルタ処理される。ここで取り上げているユニークフィルタは
、補間信号の帯域幅を制限するための帯域制限フィルタではないことに留意すべき である。ユニークフィルタでフィルタ処理して得られた出力信号 z,…, zは、 MIMO
1 n 媒体 202に与えられ、 MIMO媒体 202からは信号 y,…, yが得られ、これらの信号
1
y , · · · , y は、逆タグ付けフィルタ 205によってフィルタ処理され、その後、信号処理
1
部 203に供給されて、信号処理部 203から信号 x' , · · · , x'が生ずることになる。
1 N
[0025] 本実施形態では、元の信号 X ,…, Xがコンスタントモジュラスである場合を考える
1 N
。ただし、この仮定は、ユニークフィルタからの出力信号 Z , · · · , Zの前述の置換問題
を解決するための必要条件ではない。
[0026] ここで、本発明による方法を理解するために、図 3A及び図 3Bに、複数の送信およ び受信アンテナを備える従来の直交周波数分割変調(OFDM ; orthogonal frequenc y division modulation)システムを示す。図 3Aは送信機側の構成を示し、図 3Bは受 信機側の構成を示している。送信機側には、元の信号 X ,…, Xをそれぞれシリアル
1 N
データからパラレルデータに変換するシリアル Zパラレル(SZP)変換器 301と、パラ レルデータに基づいて直交周波数分割変調を行なう OFDM変調器 302と、変調後 の信号を再びシリアルデータに変換するパラレル/シリアル (P/S)変換器 303と、 パラレル Zシリアル変換器 303の出力の帯域を制限する帯域制限フィルタ 304とが 設けられており、帯域制限フィルタ 304の出力が MIMO媒体 305に入力する。 MIM O媒体 305からは出力信号 y , ·■·, yが得られる。受信機側には、 MIMO媒体 305
1
力 の信号 y,…, yの帯域を制限する帯域制限フィルタ 306と、帯域制限後の受信
1
フィルタを復調する OFDM復調器 307と、各 OFDM復調器 307からの信号を処理 する信号処理部 308と、信号処理部 308からのパラレル信号をシリアル信号に変換 するパラレル/シリアル変換器 309とが設けられており、パラレル/シリアル変換器 3 09力ら、信号 X' ,…, X'力 S得られるようになってレヽる。なお、 OFDM復調器 307は、
1 N
シリアルデータとして与えられた入力信号を復調することによって、パラレルデータを 生成する。
[0027] この従来の OFDMシステムでは、送信機側において、
(1) 元の信号 {x · · · X }は、まず、シリアル/パラレル変換器 301によって、シリ
1 N
アルデータからパラレルデータに変換され;
(2) 次に、パラレルデータが OFDM変調器 302を用いて変調され、その結果生じ た出力が、パラレル/シリアル変換器 303によって、パラレルからシリアルに変換され る;
(3) 次に、シリアルデータが、帯域制限フィルタ 304を用いて帯域制限され;
(4) 最後に、帯域が制限された信号が MIMO媒体 305の複数入力チャネルを介 して送信される。
[0028] 受信機では、
(5) 帯域フィルタ 306によって、受信信号が帯域制限され;
(6) 帯域制限された信号が OFDM復調器 307に渡される。 OFDM復調器 307 は、入力したシリアルデータから、(6)の周波数ビンに対応するパラレルデータを生 成する;
(7) その後、信号処理部 308において、他にも方法はある力 特にマルチターグ ット CMAなどのブラインド適応アルゴリズムを用いて、混合信号が分離される;
(8) 分離された信号は、最終的に、パラレル Zシリアル変換器 309によって、パラ レルデータ形式からシリアル形式 { χ' … χ' }に変換される。
1 Ν
[0029] 以上、従来の OFDMシステムについて説明した力 本実施形態のシステムでは、 図 3に示した従来の OFDMシステムとは異なり、各コンスタントモジュラスソース信号( すなわち、元の信号 { x ■·■ X })は、送信前に、ユニークフィルタによってフィルタ処
1 N
理される。このユニークフィルタは、各フィルタが所与の信号源に対してそれぞれ一 意であるため、タグ (tag) (送信タグ付けフィルタ: TT(transmit tagging)フィルタ)と呼ば れる。すなわち、信号源ごとに異なるフィルタ特性を有するフィルタが用いられるよう にしている。本実施形態のシステムでは、受信機側において、送信側で用いたュニ ークフィルタの逆フィルタ (inverse filter)を用いて非コンスタントモジュラス信号がコン スタントモジュラス信号に逆変換される。
[0030] 次に、送信側におけるタグ付けフィルタ(ユニークフィルタ)の挿入位置、及び受信 側における対応するタグ付け逆フィルタ (inverse tagging filter)の挿入位置を説明する 。図 4A及び図 4Bは、送信機装置と受信機装置とを有する本発明に基づく OFDMシ ステムを示す図であって、図 4Aは送信機側の構成を示しており、図 4Bは受信機側 の構成を示している。これらの図において、図 3A及び図 3Bにおけるものと同じ構成 要素には、同一の参照符号が用いられている。
[0031] 本実施形態では、タグ付けフィルタ(ユニークフィルタ) 311は、図示 < 2 >の位置 で示すように、シリアル/パラレル変換器 301と OFDM変調器 302との間に設けられ ている。し力 ながらタグ付けフィルタ 311を設けることができる場所は、これに限られ るものではなぐ図 4Aにおける図示く 1 >の位置としてもよいし、図示く 3 >の位置と してもよレ、。実際には、位置 < 1 >と位置 < 2 >とでは、データ転送速度が異なるため
、これら 2つの位置で使用されるタグ付けフィルタもその特性を異ならせる必要がある 。パラレル/シリアル変換を行なったために見かけ上のデータ転送速度が増大する と、タグ付けフィルタのインパルス応答は、ゼロを挿入することによってアップサンプリ ングされる必要がある。同様に、逆タグ付けフィルタ 312は、図 4Bのく 7 >の位置で 示したように、 OFDM復調器 307と信号処理部 308との間に設けられているが、この 位置に限らず、例えば、図 4Bにおける図示 < 6 >の位置や図示 < 8 >の位置として あよい。
[0032] 本実施形態では、各信号源にそれぞれ一意に関連付けられた各フィルタは、それ ぞれ、極とゼロ点の位置とが異なっている。すなわち、信号源ごとに設けられるこのよ うなユニークフィルタを実装するときは、所与の信号源に対応するフィルタの極とゼロ 点は、異なる信号源のタグ付けに使用されるフィルタの極とゼロ点とは離れているは ずである。ここでは、説明のために、タグ付けフィルタとして、線形フィルタ、例えば、 1 次全通過 (allpass)フィルタを用いるものとする。そのような 1次全通過フィルタは、例え ば、平坦な周波数応答を有している。ただし、多数の送信アンテナがあるときや、パラ レル /シリアル変換のためにデータ転送速度が変化するとき、あるいはスクランブル コードによりデータが多重化されるときには、より高次のフィルタが用いられ得ることに 留意すべきである。
[0033] 送信機「1」に関連付けられた 1次全通過フィルタの一般的事例では、線形タグ付け フィルタが式 (1)によって与えられる。
[0034] [数 1]
H {:) _ r x exp{ x (2^ / N) x (/ - 1)} + z-1 ( 1 )
1 1 + r exp{z x (2π / N) χ (/ - 1)} ζ"1
[0035] 異なる数の送信アンテナでのフィルタの極/ゼロ点のグラフの一例を図 5〜図 7に 示す。図 5は、単一の送信アンテナまたはチャネルを有するシステムでの、極および ゼロ点の位置を示している。この場合は、 1個のフィルタ(フィルタ 1)が用いられる。図 6は、 2つの送信アンテナまたはチャネルを有するシステムでの、極およびゼロ点の位 置を示している。この場合は 2個のフィルタ(フィルタ 1およびフィルタ 2)が用いられる 。図 7は、 4つの送信アンテナまたはチャネルを有するシステムでの、極およびゼロ点
の位置を示している。この場合は 4個のフィルタ(フィルタ 1〜フィルタ 4)が用いられる [0036] 受信機側では、受信フィルタは、所与の送信アンテナについてそのチャネルの全 体としての伝達関数が Z Dになるように、実装される。 Dは、送信機での非最小位相系
(non-minimum phase system)の利用により生じる待ち時間 (latency)である。
[0037] 送信フィルタ(タグ付けフィルタ)の害jり当てのための別の方法は、 1つの送信アンテ ナにはどの TTフィルタも割り当てられず、残りの送信アンテナには、式 (1)にしたがつ て TTフィルタが割り当てられるようにするものである。この場合、 Nは、送信アンテナ の実際の数から 1を引いたものである。
[0038] 信号に、それら信号が個々の送信アンテナと関連付けられるようにタグ付けすると、 標準 SISO等化アルゴリズムを用いる分離適応アルゴリズムを実装することが可能で ある。一例としては、コンスタントモジュラスアルゴリズムおよびその派生のァルゴリズ ムを、他の制約条件を必要とせずに使用することができる。ここでは、組み合わせコン スタントモジュラスアルゴリズム(CMA) [17]と変形コンスタントモジュラスアルゴリズム( MCMA ; modified constant modulus algorithm) [18]を検討する。 CMAは、 MCMA との対比で大きな収束速度を有するために、組み込まれている。また、解析的コンス タントモジュラスァノレゴリズム (ACMA; analytic constant modulus algorithm) [19]や有 限間隔 (Finite Interval)CMA[20]など、他のアルゴリズムを用いることも可能である。
[0039] 以下の記号を定義する。
[0040] [数 2] u, = Hx, + n, e CMxl (2)
[0041] ここで、 kは時間インデックスであり、
[0042] [数 3]
H e CMxN
[0043] は、 CSIを伴う行列である。
[0044] [数 4]
X およひ uA
[0045] は、それぞれ、 MIMOシステムの入力および出力でそれぞれ見られる信号べクトノレ を表わす。
[0046] [数 5]
[0047] は、付カ卩的雑音であり、これは白色ガウス雑音 (AWGN)であるものと想定される。
[0048] [数 6] uバ ) =["/,1( ) "/,2( ) … "/,Μ ( ) f (3)
[0049] [数 7] ベクトル ( )
[0050] は、複数の受信機によって受信されたすベての信号をフィルタ処理することにより得 られるベクトルである。この場合に使用されるフィルタは、その伝達関数が、 H (z)の逆
1 数であるフィルタである。
[0051] CMAベースの適応アルゴリズムは式 (4)によって与えられる。
+ x {im。gC¾(A:))2— lj¾'w。g(i/(A:)))— ,,2u ) x(| ( ) —2 ) (4)
[0053] ここで、 μ および/ 1 は、適応のステップサイズであり、
1,1 1,2
[0054] [数 9] xi(k) = wj (k)ui(k) (5)
および
w i(k) = [w
l {(k) w
l 2{k) ...
(6)
[0055] である。他の任意の CMAベースのアルゴリズムと同様に、上記のアルゴリズムも、出 力
[0056] [数 10] / ( )
[0057] 力 S、コンスタントモジュラス信号になるように収束する。
[0058] 各ユーザ「1」がコンスタントモジュラス信号 を送信しょうとする場合を考える。雑音 レベルがあまり高くないときには、 16QAM (直交振幅変調)やそれ以上のレベルの 変調を考えることも可能である。
[0059] 説明を簡単にするために、種々のユーザからの電波が基地局に到達する直接伝搬 経路だけが存在し、基地局の各受信アンテナは全てのアクティブユーザからの信号 の重み付け和である信号を受信するような場合を考える。そのような場合には、 N人 のユーザがおり、「1」はユーザインデックスを示す添字であるとすると、各ユーザから のフィルタ処理されたベースバンド信号力 Sxである。第 1のアンテナによって受信され る信号は、式 (7)で与えられる。
[0060] y =h *x +h *x +〜+h *x (7)
1 11 1 12 2 IN N
ここで、 h , ·■·, h は、それぞれ、ユーザ 1,■·-, Nと、受信アンテナ 1との間の利得
11 1N
である。
[0061] 同様に、第 2のアンテナによって受信される信号は式 (8)で与えられる。
[0062] y =h *x +h *x +〜+h *x (8)
2 21 1 22 2 2N N
ここで、 h , ···, h は、それぞれ、ユーザ 1, ···, Nと、受信アンテナ 2との間の利得
21 2N
である。一般に、アンテナ「m」により受信されるベースバンド信号は、式 (9)で与えら れる。
[0063] y =h *x +h *x +〜+h *x (9)
m ml 1 m2 2 mN N
ここで、 h , ···, h は、それぞれ、ユーザ 1, ···, Nと、受信アンテナ mとの間の利
ml mN
得である。本実施形態によれば、各ユーザの信号 uは、ユニークフィルタ H(z)によつ てフィルタ処理され、コンスタントモジュラス信号ではない信号 Xを生じる。受信機で は、信号 y ,…, y 信号源に関連付けられた逆フィルタによってフィルタ
1 M 、注目する
処理される。したがって、注目する信号源が uである場合には、 y ,…, yがそれぞ
1 1
れ 1/H (z)によってフィルタ処理され、 z , …, z を生じる。逆フィルタ 1/H (z)を揷
1 11 1 1 入することにより、信号 Xだけがコンスタントモジュラス信号 uに逆変換され、その他
1 1
のすベての信号 X, …, Xは、非コンスタントモジュラス信号のままとなる。
2 N
[0064] 次に、生じた信号 z ,…, z が適応係数 w ,■·-, w によって重み付けされ、合計
11 1 11 1
されて信号 Vが生成される。このように重み付けを行なって加算するのは、同じ周波
1
数帯域または送信時間間隔を占める他の信号源または干渉信号を除去するためで あり、この重み付けの結果、重み付けされた多重フィルタリング出力信号の和が対応 する信号源の元の信号と同じ特性を有するという制約条件の下で、それぞれの利得 が調整されることになる。
[0065] コンスタントモジュラスアルゴリズムの適用により、誤差( I V I 2_ 1)が確実に最小
1
にされる。この誤差の最小化は、 I V
1 I力^であるときに起こり、それは、すべての非 コンスタントモジュラス信号 X,…, Xがアレイアンテナのゼロ点(ヌル)によって零化さ
2 N
れていることを示す。
[0066] 前述の説明では、各移動端末と基地局との間に直接の伝搬経路だけが存在し、そ の結果、瞬時混合問題を生じる場合について検討した。実際には、これは、特に複 数経路での伝搬 (マルチパス伝搬)が存在するときには、当てはまらないことがある。 そのような状況では、ユーザからの各信号は、シリアルからパラレルに変換される。次 に、並列 (パラレル)ライン内の各信号は、各移動端末にそれぞれ一意のフィルタを 用いてフィルタ処理される。フィルタ処理されたパラレル信号は、次に、 IFFT (高速フ 一リエ逆変換)などのフィルタバンクを用いてフィルタ処理され、パラレル信号が生成 される。次いで、そのパラレル信号がシリアルに変換され、必要に応じてアップサンプ リングされるとともに空間時間符号ィヒによって処理され、さらに、送信の前に、帯域制 限フィルタを用いたフィルタ処理および生じた信号の変調が行われる。
[0067] 受信機では、逆の信号処理動作が行われ、 FFTを適用する前に、受信信号をパラ レルに変換する。時間ドメインの場合と同様に、周波数ドメインの各ビンも、瞬時混合 問題である。したがって、所望のユーザに関連付けられたタグ付けフィルタの逆フィ ルタを用いて各ビンをフィルタ処理し、すべてのビンに分離アルゴリズムを適用するこ とにより、注目する信号だけが生成されることになる。
[0068] 要するに、送信機のタグ付けフィルタは、送信されるべき信号の特性にロックするキ 一として動作する。受信機では、逆タグ付けフィルタが、注目する信号の特性だけを 復元する。この信号特性としては、コンスタントモジュラス、あるいは、直交性、さらに は周期定常性を用いることができる。この特性を用いて、次に、注目する信号だけが
取り出されることになる。
[0069] 次に、本発明が適用される具体的な用途を説明する。図 7は、本発明が適用可能 な用途の一例を示している。図において、符号 Τ—1、Τ—2および T—3は、単一ま たは複数のアンテナを有する移動端末を表している。符号 R_ l、 R_ 2および R_ 3 は、基地局端末 BTのアンテナを表わしている。基地局端末は、移動端末 T_ l、 Τ- 2、 Τ_ 3からの信号を分離するのために使用される複数の受信アンテナを有する。こ こでは、説明のために、アンテナの数を 3つだけに限定してあるが、一般的な場合に は、 T_ l、 Τ— 2から Τ—Νまでの Ν個の移動端末があり、基地局端末には、 R_ l、 R— 2から R— Mまでの M個の受信アンテナ(M≥N)があるはずである。
[0070] 各移動端末には、移動端末ごとに一意のタグ付けフィルタが割り当てられる。さらに 、マルチパス環境では、タグ付けフィルタを用いた信号のフィルタ処理後に、フィルタ 処理された信号が、移動端末 T_ lの場合について図 9に示すように、 OFDMを用 いて変調される。図 9は、移動端末の構成例を示しており、この移動端末は、チヤネ ル符号化されたシリアルデータをパラレルデータに変換するシリアル/パラレル(S/ P)変換器 401と、変換後のパラレルデータに対してフィルタ処理を行なうタグ付け (T T)フィルタ 402と、タグ付けフィルタ 402の出力側に設けられた OFDM変調器 403と 、 ODFM変調器の出力をシリアルデータに変換するパラレル/シリアル (P/S)変 換器 404と、変換後のシリアルデータの帯域を制限する帯域制限フィルタ 405と、を 備えている。タグ付けフィノレタ 402は、シリアル/パラレル変換器 401から出力される パラレルデータの各ラインにそれぞれ設けられている。
[0071] 受信機すなわち基地局端末 BTでは、まず、複数のアンテナから受信した信号が、 帯域通過フィルタ処理、増幅およびベースバンドへのダウンコンバージョンによって 前処理される。また、前処理装置(不図示)内では、 OFDMフレーム同期およびサイ クリックプレフィックスの除去が行われる。次に、上述の図 4Bに示すように、各アンテ ナまたは受信機からのベースバンド信号力 OFDM復調器 307によってシリアルか らパラレルに変換され、パラレルで生成された信号すべてが、注目するユーザまたは 端末に関連付けられた逆フィルタ 312によってフィルタ処理される。端末 T—1からの 信号が取り出される場合には、端末 T—1に対応するフィルタをフィルタ Hとして、シリ
アル/パラレル変換後のアンテナからの信号すベて力 フィルタ Hの逆をモデル化
1
するフィルタによってフィルタ処理される。
[0072] 各移動端末では、ユニークフィルタを用いて、パラレルに変換されているデータがフ ィルタ処理される。したがって、端末 T—1に関連付けられたベースバンド信号が uで
1 ある場合には、シリアル Zパラレル変換後の対応する信号は、 υ に
1,1 , υ 1,2 ,■·-, u 1,NF なる。次いで、これらの信号は、 OFDMを用いて変調され、サイクリックプレフィックス の取り込み、パルス整形およびアップコンバージョンによってさらに処理される。
[0073] FFT変換後の第 1のアンテナの第 1の周波数ビン中の信号は式 (10)によって与えら れる。
[0074] Y =H * X +H * X H—— hH * X (10)
1,1 11,1 1,1 12,1 2,1 1N,1 N,l
ここで、 H , ·■·, H は、それぞれ、ユーザ 1, ·■·, Nと受信アンテナ 1との間の、
11.1 ΙΝ,Ι
第 1の周波数ビンにおける利得である。同様に、第 1のアンテナによって受信された 第 2の周波数ビンに関連付けられた信号は式 (11)によって与えられる。
[0075] Υ =Η * Χ +Η * Χ Η—— hH * Χ (11)
1,2 11,2 1,2 12,2 2,2 IN, 2 Ν,2
ここで、 Η , · · ·, Η は、それぞれ、ユーザ 1 , · · ·, Νと受信アンテナ 1との間の、
11.2 1N.2
第 2の周波数ビンにおける利得である。
[0076] 同様にして、第 2のアンテナによって受信されている第 1の周波数ビン中の信号は 式 (12)によって与えられる。
[0077] Υ =Η * Χ +Η * Χ Η—— hH * Χ (12)
2,1 21,1 1,1 22,1 2,1 2Ν,1 Ν,Ι
ここで、 Η , · · ·, Η は、それぞれ、ユーザ 1 , · · ·, Νと受信アンテナ 2との間の、
21,1 2N.1
第 1の周波数ビンにおける利得である。一般に、番号 mのアンテナ、番号 bの周波数 ビンによって受信されたベースバンド信号は、式 (13)で与えられる。
[0078] Y =H * X +H * X 十… +H * X (13)
m,b ml,b l,b m2,b 2,b mN,b N,b
次に、すべての周波数ビンが、注目する端末に関連付けられたフィルタの逆フィル タを用いてフィルタ処理される。 FFTのサイズを Nとすると、端末 T—1の信号を取り
F
出すために、すべての周波数ビン {Y : m = l, ·■·, M (受信アンテナ数)かつ b =
m,b l,
…, N }力 フィルタ Hの逆フィルタによってフィルタ処理され、 Z を生じる(m= l,
F 1 ml.b
…, Mかつ b= l, …, N )。 64ポイント FFTの場合には、 Nは 64になる。
F F
[0079] 次に、周波数ビン内の信号がグループ化されて、それぞれのサイズが Mである N
F
個のベクトルが作成される。例をあげると、第 bの周波数ビンに関連付けられている第 bのベクトルは、 {Z , z , · · ·, Z }で与えられる。このベクトルの各要素に、次に
l l,b 21,b l,b
、適応重み付け係数 {w , w ,■· - , W }を乗じて、ユーザ「1」に関連付けられ
l l,b 21,b Ml'b
たコンスタントモジュラス信号とその他すベてのユーザまたは端末に関連付けられた 非コンスタントモジュラス信号の混合である信号 V を生じる。
l,b
[0080] 最後に、モジュラス誤差 { I V — I }2を最小にする任意の適応アルゴリズムを適
l,b
用することにより、すべての干渉信号が消去されることが保証される。次いで、前述の プロセスを、第 2の周波数ビン、第 3の周波数ビンから第 Nの周波数ビンまで反復す
F
ること力 sできる。他のユーザの信号も同様に生成することができる。
[0081] 本発明の他の実施形態では、送信機と受信機の両方が、データ伝送速度を増大さ せるという究極的な目的のために、複数のアンテナを備えている。送信されるデータ「 s」は、まず、複数のアンテナによって送信されるべきパラレルデータ {u , · · · , u }に
1 N 変換される。ひとたびこれがなされると、パラレルデータを、前述したように、複数の独 立した端末力 発信されるデータとみなすことができる。次いで、これらの信号は、 O FDMを用いて変調され、サイクリックプレフィックス取り込み、パルス整形およびアツ プコンバージョンによってさらに処理される。図 10に、そのようなシステムのベースバ ンドモデルを示す。このモデルでは、一般のシリアル/パラレル(S/P)変換を考え ている。したがって、空間時間符号化(STC ; space time coding)技術または単純な データバッファリングを用いてこの S/Pを実装することが可能である。
[0082] 図 10に示すように、このシステムは、送信されるべきチャネル符号化データ sをパラ レルデータ {u , …, u }に変換するシリアル
1 N Zパラレル変換器 501を備えており、パ ラレルデータの各要素 u, …, uごとに、その要素をシリアルデータと見てさらにこれ
1 N
をパラレルデータに変換するシリアル Zパラレル(SZP)変換器 502と、変換後のパ ラレルデータに対してフィルタ処理を行なうタグ付け(TT)フイノレタ 503と、タグ付けフ ィルタ 503の出力側に設けられた OFDM変調器 504と、 ODFM変調器の出力をシ リアルデータに変換するパラレル/シリアル (PZS)変換器 505と、変換後のシリアル データの帯域を制限する帯域制限フィルタ 506と、を備えている。タグ付けフィルタ 5
03は、シリアル/パラレル変換器 502から出力されるパラレルデータの各ラインにそ れぞれ設けられている。ここでパラレルデータの要素 uに対応するタグ付けフィルタ
1
の伝達関数は H (z)であり、パラレルデータの要素 uに対応するタグ付けフィルタの
1 N
伝達関数は H (z)である。各帯域制限フィルタ 506からの出力は、例えば、アップコン
N
バージョンや増幅などのさらなる信号処理を経て、それぞれの送信アンテナに送られ る。
[0083] 受信機では、まず、複数のアンテナから受信した信号が、帯域通過フィルタ処理、 増幅およびベースバンドへのダウンコンバージョンによって前処理される。また、前処 理装置(不図示)内では、 OFDMフレーム同期およびサイクリックプレフィックスの除 去が行われる。次に、図 4Bに示すように、各アンテナまたは受信機からのベースバン ド信号が OFDM復調器 307によってシリアルからパラレルに変換され、パラレルに生 成されたすべての信号が、注目するユーザまたは端末に関連付けられた逆フィルタ 3 12によってフィルタ処理される。第 1の送信機からの信号が取り出される場合には、 第 1の送信機に対応するタグ付けフィルタが Hで表わされるとして、シリアル/パラレ
1
ル変換後のすべてのアンテナからのすべての信号は、フィルタ Hの逆フィルタをモ
1
デル化するフィルタによってフィルタ処理される。
[0084] 次に、すべての周波数ビン {Y : m= l, · · ·, M (受信アンテナ数)かつ b= l,…,
m,b
N (FFTのサイズ) }力 フィルタ Hの逆フィルタによってフィルタ処理され、 Z を生
F 1 ml'b じる(m= l,…, M、かつ、 b = l,…, Nである)。 64ポイント FFTの場合には、 Nは
F F
64になる。これに続いて、周波数ビンがグループ化される。例をあげると、第 bの周波 数ビンに関連付けられた第 bのベクトルは、 {Z , Z , · · · , Z }で与えられる。次
l l'b 21,b Ml'b
いで、このベクトルの各要素に、適応重み付け係数 {W , W ,…, W }を乗じて
l l,b 21'b Ml,b
、ユーザ「ι」に関連付けられたコンスタントモジュラス信号とその他すベてのユーザま たは端末に関連付けられた非コンスタントモジュラス信号の混合である信号 V を生
i,b じる。
[0085] 次いで、モジュラス誤差 { I V _ 1 }2を最小にする任意の適応アルゴリズムを適
l,b
用する。その後、前述のプロセスを第 2の周波数ビン、第 3の周波数ビンから第 Nの
F
周波数ビンまで反復することができる。他の送信アンテナの信号も同様に生成するこ
とができる。生じた信号 {V · · · V }はシリアルデータ Vに変換される。同じ処理
1,1 l'NF 1
力 S {V · · · V }にも適用され、 Vを生じる。一般に、 {V · · · V } ttvを生じる
2,1 2,NF 2 m'l m,NF m
。最終的に、信号 {v V … V }はシリアルデータ S'に変換される。
1 2 N
[0086] 図 10のモデルの動作原理は、基本的に、図 8および図 9に示したものと同じである
[0087] したがって、図 9に示したモデルで説明したように、すべての混合周波数ビンを分離 することが可能である。各分離時には、注目する送信アンテナに関連付けられた信 号を取り出すことが可能である。最後に、結果として生じた信号は、いかなる置換配 歹 IJも持たず、パラレルデータからシリアルデータに容易に変換され得る。
[0088] この結果は、所与の送信アンテナに対して一意のフィルタを用いることによって実 現される。受信機では、注目する送信アンテナに対応する逆フィルタを用いるため、 注目する信号の特性だけが復元されることになる。次に、注目する信号の特性に応 答し、またはそれに制約されるブラインド適応アルゴリズムを用いて、置換なしに、信 号をそれらの注目する順序で取り出すことが可能である。
産業上の利用可能性
[0089] 本発明の技術は、例えば周波数チャネル、時間チャネルまたは符号チャネルであ る同一のチャネルを何人かのユーザが共用する移動無線通信の分野に適用すること が可能である。これは、他の LAN (ローカルエリアネットワーク)からの干渉がトレー二 ング信号を用いずに最小にされ、または除去され得る無線 LANに、特に、当てはま る。さらに、タグ付けフィルタを用いることによって、信号が送信前に変調されるために 、セキュリティが強化される。
[0090] 本発明が適用できる他の分野は、複数のセンサあるいはヘッドを用いた磁気記録 媒体または光記録媒体への記録である。そのような用途では、すべての並列トラック のデータを、配列の置き換えなしに、ブラインド取得することが可能になる。
[0091] また、本発明を単入力単出力(SISO)システムに適用することも可能である。そのよ うなシステムは、単純な QPSKベースの送信機と、ブラインド適応等化器を備える受 信機とすることができるであろう。この種の用途では、 2ポート送信機および 2ポート受 信機を生じる、実数部および虚数部チャネルがチャネルとして考えることができる。本
発明で提示する概念を適用すると、常に、実数成分信号は実数部チャネル上で取り 出され、虚数成分信号は、常に、虚数部チャネル上で受信されることになる。