明 細 書 電磁誘導発熱ローラとその製造方法、 及び加熱装置と画像形成装置 技術分野
本発明は電磁誘導加熱により発熱昇温し、 シート状の被加熱材と連続 的に接触して被加熱材を加熱昇温させるための電磁誘導発熱ローラに関 する。 特に、 複写機、 プリンタ一等に用いられる電子写真方式、 または これに類する方式により トナーを用いて画像を形成する画像形成装置に おいて、 トナー像を被記録材上に加熱定着させるための加熱装置に用い られる電磁誘導発熱口一ラおよびその製造方法に関する。 更に、 本発明 はこのような電磁誘導発熱ローラを用いた加熱装置および画像形成装置 に関する。 背景技術
電子写真複写機やプリンタ一等の画像形成装置における定着装置 (加 熱装置) を例にして説明する。 画像形成装置に用いられる定着装置は、 電子写真ゃ静電記録等の適宜の画像形成プロセス手段により、 加熱溶融 性の樹脂等よりなるトナーを用いて被記録材上に形成した未定着のトナ 一画像を、 熱により被記録材面上に永久固着する装置である。
これらの定着装置に最も良く用いられる方式としては、 所定の定着温 度に加熱 ·温調した加熱ローラとこれに対向して圧接される加圧口一ラ とが形成するエップ部に被記録材を導入して挟持搬送させることで未定 着トナー画像を被記録材面上に加熱定着させるローラ定着方式がある。 そしてこのローラ定着方式の加熱ローラの熱源としてはハロゲンランプ が多用されている。
一方、 近年、 省電力化やウォームアップ時間の短縮の要求から、 加熱 ローラの熱容量を低減したベルト定着方式やその加熱源としてベルト自 体を電磁誘導により発熱させる誘導加熱方式が提案されている。 図 7に 電磁誘導により加熱されるェンドレスベルトを用いた従来の誘導加熱定 着装置の一例を示す (例えば特開平 1 0— 7 4 0 0 7号公報参照)。 図 7において、 1 6 0は高周波磁界を発生させる励磁手段としてのコ ィルアッセンプリである。 1 1 0はコイルアッセンプリ 1 6 0が発生す る高周波磁界によって発熱する金属スリーブ (発熱ベルト) であり、 二 ッケルやステンレスの薄層からなるェンドレスチューブの表面にフッ素 樹脂がコーティングされたものである。 金属スリーブ 1 1 0の内側に内 部加圧ローラ 1 2 0が挿入され、 金属スリーブ 1 1 0の外側に外部加圧 ローラ 1 3 0が設置され、 外部加圧ローラ 1 3 0が金属スリーブ 1 1 0 を挟んで内部加圧ローラ 1 2 0に押圧されることにより二ップ部 2 5 0 が形成される。 金属スリーブ 1 1 0、 内部加圧ローラ 1 2 0、 外部加圧 ローラ 1 3 0がそれぞれ矢印方向に回転しながらコイルアッセンプリ 1 6 0に高周波電流が流されると、 金属スリーブ 1 1 0が電磁誘導加熱さ れて急速に昇温し所定の温度に達する。 この状態で所定の加熱を継続し ながら被記録材 1 4 0を二ップ部 2 3 0に挿入し通過させることで、 被 記録材 1 4 0上に形成されたトナー像を被記録材 1 4 0上に定着させる 。
上記した従来の誘導加熱定着装置では、 発熱ベルトとしての金属スリ —ブ 1 1 0がニッケルやステンレスの金属製エンドレスベルト表面に離 型層を形成してなる。 このように、 金属製のエンドレスベルトをメツキ 法ゃ塑性加工法により形成すると生産性が上がらず高価となる。 また、 ベルトの材質が金属の場合、 厚みが 5 0〜6 0 m以下の場合は安定し た精度で加工しにくいし、 これ以上の場合は特にニップ部での繰り返し
の曲げに弱く耐久性が不十分である。 さらに、 発熱ベルトとこれを駆動 するローラとが別々の部材で構成されているため、 発熱ベルトの回転駆 動が不安定になる。
また、 上記の発熱ベルト方式とは異なり、 弾性ローラの外周に金属製 のエンドレスベルトを被せて作成し、 該エンドレスベルトを同様に電磁 誘導加熱するローラ加熱方式が知られている。 しかし、 エンドレスベル トを弹性ローラに被せて接着して発熱ローラを製造する方法は加工工程 が煩雑である。 発明の開示
本発明は、 従来の問題を解決し、 製造し易く安価でしかも耐久性があ る誘導加熱方式の発熱ローラとその製造方法を提供することを目的とす る。 また、 本発明は、 この発熱ローラを用いて被記録材上に形成した未 定着のトナー画像を被記録材面に永久固着する加熱装置、 およびこの加 熱装置を具備した画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の電磁誘導発熱ローラは、 表面から順に少なくとも離型層、 誘 導発熱層、 弾性層、 および芯材を有し、 加圧部材に圧接されて二ップ部 を形成し、 前記エップ部を通過する被加熱材を昇温させる電磁誘導発熱 ローラであって、 前記誘導発熱層が、 耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムからな る基材に導電体フィラーを分散した層を有することを特徴とする。 また、 上記の本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、 少なくとも 、 前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する 工程と、 前記誘導発熱層上に前記離型層を形成する工程とを含む。 また、 本発明の加熱装置は、 上記の本発明の電磁誘導発熱ローラと、 前記電磁誘導発熱ローラが圧接されて前記二ップ部を形成する加圧口一 ラと、 磁場を作用させて前記電磁誘導発熱ローラの前記誘導発熱層を誘
導発熱させる磁場発生手段とを有し、 前記ニップ部に導入された被加熱 材を前記電磁誘導発熱口一ラと前記加圧ローラとで加圧搬送することに より前記被加熱材を連続的に加熱することを特徴とする。
更に、 本発明の画像形成装置は、 被記録材上にトナー像を形成する画 像形成手段と、 上記の本発明の加熱装置とを備え、 前記画像形成手段が 前記被記録材上に形成した未定着のトナー像を前記加熱装置が前記被記 録材上に定着することを特徴とする。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の実施の形態 1に係る加熱装置の断面図である。 図 2は、 図 1の矢印 II方向からみた磁場発生手段の構成図である。 図 3は、 図 2の III一 ΙΠ線における本発明の実施の形態 1に係る加熱 装置の断面図である。
図 4 Aは図 1の定着装置に用いられる本発明の実施の形態 1に係る発 熱ローラの断面図、 図 4 Bは図 4 Aにおける部分 4 Bの拡大断面図であ る。
図 5は、 本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示した 断面図である。
図 6は、 本発明の実施の形態 2に係る発熱ローラの表面近傍の部分拡 大断面図である。
図 7は、 従来の誘導加熱定着装置の断面図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明の誘導発熱ローラは、 表面から順に少なくとも離型層、 誘導発 熱層、 弾性層、 および芯材を有し、 前記誘導発熱層が、 耐熱性樹脂又は 耐熱性ゴムからなる基材に導電体フィラーを分散した層を有する。
これにより、 誘導発熱層が金属の薄層ではなく柔軟性のある樹脂また はゴムを基材としているために、 誘導発熱層が変形しやすく、 幅の広い 二ップ部を形成できる。 また、 誘導発熱層の繰り返し曲げに対する耐久 性が向上する。
前記誘導発熱層が、 基材に導電体フィラーを分散した層と、 基材に前 記導電体フィラーよりも高抵抗の磁性体フィラーを分散した層とが積層 されてなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、 誘導発熱層が導電体フイラ一を分 散した単層のみからなる場合に比べ交番磁界による発熱効率をより増大 することができる。 また、 誘導発熱層を貫通して芯材に達する漏れ磁束 を少なくすることができるので、 芯材の発熱を考慮する必要がなく、 芯 材として安価で十分な機械的強度を備えた材料を使用できる。 また、 芯 材の発熱が抑えられるので、 芯材の軸受けの熱による損傷を防止できる 前記誘導発熱層の前記基材が、 シリコーンゴムからなることが好まし い。
かかる好ましい実施形態によれば、 誘導発熱層がシリコーンゴムを基 材としてこれに導電体フィラーを分散した層であるため、 弾性層上に塗 ェ等で容易に形成でき、 また誘導発熱層の柔軟性も向上する。
前記弾性層が発泡シリコーンゴムからなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、 弾性層が柔軟性と耐熱性に加え高 い断熱性を兼ね備えるため、 電磁誘導発熱ローラの表面温度を急速に昇 温できる。
前記誘導発熱層が前記弹性層の表面に塗工または吹き付けにより直接 形成されたものであることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、 従来のように、 誘導発熱層として
金属の薄層チューブ等を弹性層とは別に作成して、 その後、 金属チュー ブを弹性層に被せて形成される発熱ローラに比べて、 発熱ローラの製造 が容易である。 また、 チューブを接着する場合には、 接着のむらがある とこれがローラ表面の温度むらになり易いが、 誘導発熱層を弾性層上に 直接形成すれば接合むらも無くローラ表面の温度むらも発生しにくい。 前記離型層と前記誘導発熱層との間に第 2の弾性層を有しているのが 好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、 表面温度むらが緩和され、 また、 被記録材面との均一な接触が確保できる。
次に、 上記の本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、 少なくとも 、 前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する 工程と、 前記誘導発熱層上に前記離型層を形成する工程とを含む。
これにより、 工程が簡素で、 かつ耐久性、 温度むら等の良好な電磁誘 導発熱ローラが形成できる。
また、 前記第 2の弾性層を備える本発明の電磁誘導発熱ローラの製造 方法は、 少なくとも、 前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き 付けにより形成する工程と、 前記誘導発熱層上に前記第 2の弹性層を形 成する工程と、 前記第 2の弾性層上に前記離型層を形成する工程とを含 む。
これにより、 誘導発熱層、 第 2の弾性層、 離型層を順次、 形成するの で製造が容易である。
次に、 本発明の加熱装置は、 上記の本発明の電磁誘導発熱ローラと、 前記電磁誘導発熱ローラが圧接されて前記二ップ部を形成する加圧ロー ラと、 磁場を作用させて前記電磁誘導発熱ローラの前記誘導発熱層を誘 導発熱させる磁場発生手段とを有し、 前記ニップ部に導入された被加熱 材を前記電磁誘導発熱ローラと前記加圧ローラとで加圧搬送することに
より前記被加熱材を連続的に加熱することを特徴とする。
これにより、 ウォームアップ時間が極めて短く、 かつ耐久性、 均一加 熱安定性の高い加熱装置が実現できる。
また、 本発明の画像形成装置は、 被記録材上にトナー像を形成する画 像形成手段と、 上記の本発明の加熱装置とを備え、 前記画像形成手段が 前記被記録材上に形成した未定着のトナー像を前記加熱装置が前記被記 録材上に定着させることを特徴とする。
これにより、 ウォームアップ時間が短く、 耐久性があり、 しかも均一 なトナー像の定着ができる画像形成装置が実現できる。
以下に本発明を図面を参照しながら更に詳細に説明する。
図 5は本発明の一実施形態の加熱装置を定着装置として用いた画像形 成装置の断面図である。 以下にこの装置の構成と動作を説明する。
1は電子写真感光体 (以下、 感光ドラムと記す) である。 感光ドラム 1は矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、 その表面が帯電 器 2により所定の電位に一様に帯電される。 3はレーザビームスキャナ であり、 図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入 力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調された レ一ザビームを出力する。 上記のように一様帯電された感光ドラム 1の 表面が、 このレーザビームで選択的に走査露光されることにより、 感光 ドラム 1面上に画像情報に応じた静電潜像が形成される。 次いで、 この 静電潜像は、 回転駆動される現像ローラ 4 aを有する現像器 4により帯 電した粉体トナーを供給されて、 トナー像として顕像化される。
一方、 給紙部 1 0からは被記録材 1 1がー枚ずつ給送され、 レジスト ローラ対 1 2、 1 3を経て、 感光ドラム 1とこれに当接させた転写口一 ラ 1 4とからなるニップ部へ、 感光体ドラム 1の回転と同期した適切な タイミングで送られる。 転写バイアスの印加された転写ローラ 1 4の作
用によって、 感光ドラム 1上のトナー像は被記録材 1 1に順次転写され る。 二ップ部 (転写部) を通った被記録材 1 1は感光ドラム 1から分離 され、 定着装置 1 5へ導入され、 転写トナー像の定着が行われる。 定着 されて像が固定された被記録材 1 1は排紙卜レイ 1 6へ出力される。 被 記録材が分離された後の感光ドラム 1面はクリーニング装置 1 7で転写 残りトナー等の残留物が除去されて清浄にされ、 繰り返し次の作像に供 される。
次に、 上記の定着装置 1 5として使用可能な本発明の加熱装置の実施 の形態を実施例とともに詳細に説明する。
(実施の形態 1 )
図 1は上記画像形成装置に用いられる、 本発明の実施の形態 1の加熱 装置としての定着装置の断面図である。 図 2は図 1の矢印 II方向からみ た磁場発生手段の構成図、 図 3は図 2の III— III線 (発熱ローラ 2 1の 回転中心軸と励磁コイル 3 6の卷回中心軸 3 6 aとを含む面) での矢視 断面図である。 図 4 Aは図 1の定着装置に用いられる本発明の発熱口一 ラ 2 1の断面構成図、 図 4 Bは図 4 Aにおける部分 4 Bの拡大断面図で ある。 以下、 図 1〜図 4 Bを参照して本実施の形態の定着装置と発熱口 —ラを説明する。
図 4 A、 図 4 Bにおいて、 発熱ローラ 2 1は、 表面側から順に離型層 2 7、 薄肉の弾性層 (第 2の弾性層) 2 6、 薄肉の導電材よりなる誘導 発熱層 (以下、 単に 「発熱層」 という) 2 2、 断熱性の良好な弾性層 2 3、 及び回転軸となる芯材 2 4より構成されている。
図 3は図 2の III— III線での矢視断面図で、 定着装置全体を横方向か らみた断面構成をあらわしている。 発熱ローラ 2 1は外径が 3 O mmで あり、 その最下層である芯材 2 4の両端において軸受け 2 8、 2 8, に より側板 2 9、 2 9 ' に回転可能に支持されている。 発熱口一ラ 2 1は
、 図示しない装置本体の駆動手段によって芯材 2 4に一体的に固定され た歯車 3 0を介して回転駆動される。
3 6は磁場発生手段としての励磁コイルであり、 発熱口一ラ 2 1の外 周の円筒面に対向して配置され、 表面を絶縁した外径 0 . 1 5 mmの銅 線からなる線材を 6 0本束ねた線束を 9回周回して形成されている。 励磁コイル 3 6の線束は、 発熱ローラ 2 1の円筒面の回転中心軸 (図 示せず) 方向の端部ではその外周面に沿って円弧状に配置され、 それ以 外の部分では前記円筒面の母線方向に沿って配置されている。 また、 発 熱ローラ 2 1の回転中心軸と直交する断面図である図 1に示すように、 励磁コイル 3 6の線束は、 発熱ローラ 2 1の円筒面を覆うように、 発熱 ローラ 2 1の回転中心軸を中心軸とする仮想の円筒面上に、 重ねること なく (但し、 発熱ローラの端部を除く) 密着して配置されている。 また 、 発熱ローラ 2 1の回転中心軸を含む断面図である図 3に示すように、 発熱ローラ 2 1の端部に対向する部分では、 励磁コイル 3 6の線束を 2 列に並べて積み重ねて盛り上がつている。 従って、 励磁コイル 3 6は、 全体として鞍の様な形状に形成されている。 ここで、 励磁コイル 3 6の 卷回中心軸 3 6 aは、 発熱ローラ 2 1の回転中心軸と略直交し、 発熱口 ーラ 2 1の回転中心軸方向の略中心点を通る直線であり、 励磁コイル 3 6は前記卷回中心軸 3 6 aに対してほぼ対称に形成されている。 線束は 表面の接着剤により互いに接着され、 図示した形状を保っている。 励磁 コイル 3 6は発熱ローラ 2 1の外周面から約 2 mmの間隔を設けて対向 している。 図 1の断面図において、 励磁コイル 3 6が発熱ローラ 2 1の 外周面と対向する角度範囲は、 発熱ローラ 2 1の回転中心軸に対して約 1 8 0度と広い範囲である。
3 7は前記励磁コイル 3 6とともに磁場発生手段を構成する背面コア であり、 励磁コイル 3 6の卷回中心軸 3 6 aを通り、 発熱ローラ 2 1の
回転中心軸と平行に配置された棒状の中心コア 3 8と、 励磁コイル 3 6 に対して発熱口一ラ 2 1とは反対側に、 励磁コイル 3 6と離間して配置 された略 U字状の U字コア 3 9とからなる。 中心コア 3 8と U字コア 3 9とは磁気的に接続されている。 図 1に示すように、 U字コア 3 9は、 発熱ローラ 2 1の回転中心軸と励磁コイル 3 6の卷回中心軸 3 6 aとを 含む面に対して略対称な U字状である。 このような U字コア 3 9は、 図 2、 図 3に示すように、 発熱ローラ 2 1の回転中心軸方向に離間して複 数個配置されている。 本実施例では、 U字コア 3 9の、 発熱ローラ 2 1 の回転中心軸方向の幅は 1 0 mmで、 このような U字コア 3 9が 2 6 m m間隔で合計 7個配置されている。 U字コア 3 9は、 励磁コイル 3から の外部に漏れる磁束を捕捉する。
図 1に示すように、 各 U字コア 3 9の両先端は、 励磁コイル 3 6と対 向しない範囲まで延長され、 励磁コイル 3 6を介さずに発熱ローラ 2 1 と対向する対向部 Fが形成されている。 また中心コア 3 8は、 励磁コィ ル 3 6を介さずに発熱口一ラ 2 1と対向し、 かつ、 U字コア 3 9よりも 発熱ローラ 2 1側に突出して対向部 Nを形成している。 突出した中心コ ァ 3 8の対向部 Nは、 励磁コイル 3 6の卷回中心の中空部内に揷入され ている。 中心コア 3 8の断面形状は 4 mm X 1 0 mmである。
本実施例では、 背面コア 3 7の材料としては、 フェライトを用いた。 背面コア 3 7の材料としては、 フェライ トやパーマロイ等の高透磁率で 固有抵抗の高い材料が望ましいが、 透磁率が多少低くても磁性材であれ ば用いることができる。
4 0は厚さが l mmで、 P E E K (ポリエーテルエ一テルケトン) や P P S (ポリフエ二レンサルファイド) などの耐熱温度の高い樹脂から なる断熱部材である。 .
図 1において、 加圧部材としての加圧ローラ 3 1は、 金属軸 3 2の表
面にシリコーンゴムよりなる弹性層 3 3を被覆してなる。 弾性層は硬度 5 0度 (J I S— A ) である。 加圧ローラ 3 1は発熱ローラ 2 1に対し て全体で約 2 0 O Nの力で圧接され二ップ部 3 4を形成している。 加圧 口一ラ 3 1の外径は 3 0 mmで、 長さは発熱ローラ 2 1とほぼ同一で、 その有効長は発熱層 2 2より僅かに長い。
二ップ部 3 4では、 発熱ローラ 2 1の弾性層 2 3が圧縮変形し、 発熱 層 2 2が幅方向 (発熱ローラ 2 1の回転中心軸方向) において略均一な 圧力で押圧されている。 エップ部 3 4の、 被記録材 1 1の走行方向 Cに 沿った幅 Wは約 5 . 5 mmである。 発熱ローラ 2 1には非常に大きな力 が加えられており、 その表面の発熱層 2 2の厚さは薄いが、 弹性層 2 3 を介して中実の芯材 2 4がその圧力を支えているため、 回転中心軸に対 するたわみ量はわずかに抑えられ、 回転中心軸方向において幅 Wが略均 一な二ップ部 3 4が形成されている。 さらに、 二ップ部 3 4では発熱層 2 2および弹性層 2 3が加圧ローラ 3 1の外周面に沿って凹状に変形し ているため、 被記録材 1 1がこの二ップ部 3 4を通過して出てくるとき 、 被記録材 1 1の進行方向が発熱ローラ 2 1の外表面となす角度が大き くなり、 被記録材 1 1の剥離性が極めてよい。
加圧ローラ 3 1はこの状態で金属軸 3 2の両端を従動軸受け 3 5、 3 5 ' により回転可能に支持されている。 加圧ローラ 3 1の弹性層 3 3の 材質は、 上記のシリコーンゴムの他に、 フッ素ゴム、 フッ素樹脂等の耐 熱性樹脂や耐熱性ゴムで構成しても良い。 また加圧ローラ 3 1の表面に は耐摩耗性や離型性を高めるために、 P F A (四フッ化工チレンーパ一 フロロアルキルビエルエーテル共重合体)、 P T F E (四フッ化工チレ ン)、 F E P (四フッ化工チレン—六フッ化プロピレン共重合体) 等の 樹脂あるいはゴムを単独あるいは混合で被覆してもよい。 熱の放散を防 ぐため、 加圧ローラ 3 1は熱伝導性の小さい材料で構成されることが望
ましい。
図 1で 4 1は温度検知センサで、 発熱ローラ 2 1の表面に接触し、 二 ップ部 3 4に至る直前の発熱ローラ 2 1の表面の温度を検知し、 図示し ない制御回路にフィードバックする。 動作時はこれにより励磁回路 4 2 の励磁電力を調節することによって、 発熱ローラ 2 1の二ップ部 3 4直 前の表面温度を摂氏 1 7 0度にコントロールする。 本実施例では、 ゥォ ームアップ時間を短縮するという目的を達成するために、 発熱層 2 2及 びこれより外側に設けた弾性層 2 6及び離型層 2 7の熱容量を極力小さ く設定している。
以上の構成で発熱ローラ 2 1と加圧口一ラ 3 1とを回転させながら励 磁回路 4 2により励磁コイル 3 6に 2 0〜 5 0 k H zの高周波電流を流 す。 これによつて交番磁束が励磁コイル 3 6を取り巻く中心コア 3 8、 U字コア 3 9および励磁コイル 3 6に対向する発熱ローラ 2 1の発熱層 2 2を経由して流れ、 この交番磁束により発熱層 2 2に渦電流が発生し て発熱ローラ 2 1の表面温度が急速に上昇を始める。 発熱口一ラ 2 1の 表面温度は温度検知センサ 4 1で検知され、 所定の 1 7 0 °Cに温調され る。 そして、 未定着のトナ一像を担持した被記録材 1 1がエップ部 3 4 に挿入され、 二ップ部 3 4でトナー像と被記録材 1 1とは順次加熱され てトナー像が被記録材 1 1上に定着される。
次に発熱口一ラ 2 1の構成について詳しく述べる。
本実施例では芯材 2 4は直径 2 O mmの P P S (ポリフエ二レンサル ファイド) で構成した。 芯材 2 4の材料としては、 耐熱性が有り、 機械 的強度 (回転中心軸方向の曲げ剛性) が強い材料が好ましい。 更に、 で きるだけ芯材 2 4の内部を磁束が通りにくいように、 磁気抵抗が高い材 料が好ましく、 また、 漏れ磁束が芯材 2 4内部を通過したとしてもそれ によつて渦電流が発生しないように、 絶縁性の材料であることが好まし
い。 耐熱性の絶縁材料としてアルミナ等のセラミック材料を用いること もできる。
弾性層 2 3は、 低熱伝導性のシリコーンゴムの発泡体よりなり、 本実 施例では厚さ 5 mm、 硬度 4 5度 (A S K E R— C ) のものを用いてい る。 弹性層 2 3は発泡シリコーンゴムに限るものではないが、 適度の弹 力性を有することで二ップ部 3 4の幅 Wを確保し、 かつ発熱層 2 2から の熱の拡散を少なくするためには硬度は 2 0〜 5 5度 (A S K E R— C ) のものが望ましい。 また、 発泡体でない場合は硬度 5 0度 (J I S— A) 以下のシリコーンゴムを用いることが耐熱性、 柔軟性の点から望ま しい。
本実施例の発熱層 2 2は、 シリコーンゴムを基材として、 この中に鱗 片状のニッケル片を分散したものを弾性層 2 3上に 6 0 mの厚みで塗 布形成したものである。 励磁コイル 3 6によって発生された交番磁束は この発熱層 2 2内のニッケル片を伝って発熱層 2 2内を通過し、 それに よってニッケル片に渦電流が発生して発熱層 2 2は急速に加熱される。 なお、 本実施例では発熱層 2 2の基材としてシリコーンゴムを用いたが 、 これに代えてボリイミド樹脂、 フッ素樹脂、 フッ素ゴムのように柔軟 性のある耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムを用いることもできる。 また、 基材 中に分散させるフイラ一としては、 上記のニッケル片に限定されず、 磁 性金属の粉体や非磁性金属の粉体を用い、 これらを混合または積層して 基材中に分散させてもよい。 粉体の形状はファイバ一状、 球状、 鱗片状 などいずれでも良い。 分散させるフィラーとしては交番磁束により渦電 流が流れる導電性を有した材料であれば良いことは言うまでもないが、 本実施例ではフィラーとして磁性金属であるニッケルを用いた。 これに より励磁コイル 3 6によって発生される交番磁束を発熱層 2 2内に導き 、 励磁コイル 3 6を周回する磁気回路の磁気抵抗を低減し、 発熱層 2 2
を貫通して他層へ漏れる磁束 (漏れ磁束) を低減できるため、 効率の良 い加熱が可能となる。 なお、 発熱層 2 2の厚さは 1 0〜 2 0 0 / mが好 ましい。
弾性層 (第 2の弾性層) 2 6は被記録材 1 1との密着をよくするため に設けられており、 本実施例ではシリコーンゴムよりなる厚さ 2 0 0 m、 硬度 2 0度 ( J I S— A) の層である。 弾性層 2 6の厚さは 2 0 0 mに限定されるものではなく、 5 0〜 5 0 0 mの範囲が望ましい。 厚すぎると、 熱容量が大きくなりすぎて、 ウォームアップ時間が遅くな り、 薄すぎると被記録材 1 1との密着性の効果が低減する。 弾性層 2 6 の材質は、 シリコーンゴムに限らず、 他の耐熱性ゴムや耐熱性樹脂を使 用することも可能である。 なお、この弾性層 2 6は必ずしも設けなくて も支障はないが、 トナ一像がカラー画像の場合には設けることが望まし い。
離型層 2 7としては P T F E (四フッ化工チレン)、 や P F A (四フ ッ化エチレン一パーフロロアルキルビエルエーテル共重合体)、 F E P (四フッ化工チレン一六フッ化プロピレン共重合体) 等のフッ素系の樹 脂を用いることができ、 本実施例では厚さ 3 0 とした。
本実施例に用いた発熱ローラ 2 1は下記の製造方法によって形成する 。 弹性層 2 3を発泡成型 (表面にスキン層を有することが好ましい) し た後、 この弹性層 2 3上に導電体フイラ一を分散したシリコーンゴムの 原液をスプレー法またはディッピング法等により所定の厚みに付与する 。 その後これを加硫して弾性層 2 3上に発熱層 2 2を形成する。 なお、 このとき芯材 2 4は発熱層 2 2を形成する前に弹性層 2 3と接着固定さ れていても良いし、 また発熱層 2 2の形成後に芯材 2 4を揷入接着して もかまわない。 また、 芯材 2 4上に弾性層 2 3を直接成型することも可 能である。 また、 発熱層 2 2は多数回重ね塗りして形成しても良い。 弹
性層 2 3上に発熱層 2 2を形成した後に弾性層 (第 2の弹性層) 2 6の シリコーンゴムを発熱層 2 2と同様、 発熱層 2 2上に重ね塗りして加硫 する。 その後、 離型層 2 7を、 P F Aチューブを被せてプライマー層を 介して接着、 または P T F Eをコ一ティングし焼成するなどの方法で形 成する。 なお、 それぞれの層間にはそれぞれの材料に合わせたプライマ 一層を介在させても良い。 また、 発熱層 2 2の基材にポリイミド樹脂を 用いる場合にも上記と同様にポリイミドワニスを弾性層 2 3上に塗工形 成する。
本発明では、 このように発熱層 2 2を、 金属ベルトのようなチューブ を弾性層 2 3とは別体として形成するのではなく、 弾性層 2 3上に直接 形成するため、 製造工程が簡素で作業を集約しやすく、 安価に製造でき るという特徴を有する。
以上に述べた実施の形態 1によれば、 発熱層 2 2が金属の薄層ではな く柔軟性のある樹脂またはゴムを基材としているために、 発熱層 2 2が 変形しやすく、 幅 Wが大きな二ップ部 3 4を形成できる。 また、 発熱層 2 2の繰り返し曲げに対する耐久性が向上する。
また、 発熱層 2 2がシリコーンゴムなどの耐熱性樹脂又は耐熱性ゴム を基材としてこれに導電体フィラーを分散した層であるため、 弾性層 2 3上に塗工等で形成しやすく、 また柔軟性も高い。
弹性層 2 3が柔軟性と耐熱性に加え高い断熱性を兼ね備えるため発熱 ローラ 2 2の温度を急速に昇温できる。
発熱層 2 2が弹性層 2 3上に直接形成されるため、 従来のように誘導 発熱層として金属の薄層チューブ等を弾性層とは別に作成して、 その後 、 弹性層に金属チューブを被せて形成される発熱ローラに比べて、 加工 が容易である。 また、 チューブを接着する場合には、 接着のむらがある とこれがローラ表面の温度むらになり易いが、 本発明のように弾性層 2
3上に発熱層 2 2を直接形成すれば接合むらも無くローラの表面温度む らも発生しにくい。
なお、 上記の実施の形態においては発熱ローラ 2 1は芯材 2 4上に弹 性層 2 3、 発熱層 2 2、 第 2の弾性層 2 6、 離型層 2 7を順に備えた層 構成となっているが、 本発明は必ずしもこの層構成に限定されるもので はなく、 各層を多層の構成にしたり、 また、 各層間に接着層を設けたり 、 各層間に補助的な層を形成したりすることは差し支えない。
(実施の形態 2 )
図 6は、 本実施の形態 2の発熱ローラ 2 1の表面近傍の部分拡大断面 図である。 図 6において実施の形態 1と同一の機能を有する部材には同 一の符号を付してそれらについての詳細な説明を省略する。
本実施の形態 2が実施の形態 1と異なるのは、 発熱ローラ 2 1の発熱 層 2 2の構成のみである。
図 6に示すように、 本実施の形態では、 発熱層 2 2は、 シリコーンゴ ムの基材に導電体フイラ一として鱗片状の銀粉を分散させた導電層 2 2 aと、 同じくシリコーンゴム基材に磁性体フィラーとして鉄の粉体を分 散した磁性体層 2 2 bとの 2層で構成される。 励磁コイル 3 6の動作時 に励磁コイル 3 6を周回して発生する交番磁束の多くは図 6の破線 Dで 示すように導電層 2 2 aを貫通して磁性体層 2 2 b内を流れる。 これに よって導電層 2 2 aに渦電流が発生して発熱すると同時に、 磁性体層 2 2 bにも同様に渦電流が発生して発熱する。 導電層 2 2 aに分散させる フイラ一は固有抵抗ができるだけ小さい材料が好ましく、 例えば金、 銀 、 銅、 アルミニウム等が望ましい。
導電層 2 2 aを磁性体層 2 2 bよりも外側に設けると実施の形態 1に 示した発熱層 2 2を磁性体層単層とした場合より発熱効率を向上させる ことができる。
また、 導電層 2 2 aに渦電流が発生し、 且つ、 これより内周側に磁性 体層 2 2 bを備えることにより、 発熱ローラ 2 1の半径方向に磁性体層 2 2 bを貫通して漏れ出す漏れ磁束 Eを低減できる。 漏れ磁束 Eが芯材 2 4に達すると、 芯材 2 4が金属材料の場合、 芯材 2 4に渦電流が発生 して芯材 2 4が発熱するが、 本実施の形態では漏れ磁束 Eを低減できる ので芯材 2 4の発熱量を低減することができる。 なお、 実施の形態 1で 説明したように芯材 2 4を絶縁材料で構成すれば芯材 2 4が発熱するこ とはない。 しかし、 実施の形態 1で例示した P P Sは機械的強度が低く 、 アルミナは高価である。 本実施の形態によれば、 芯材 2 4に達する漏 れ磁束 Eを低減できるので、 芯材 2 4の材料として安価でかつ強度を確 保できる一般的な金属材料を用いても、 芯材 2 4の発熱を抑えることが できる。
このように、 本実施の形態によれば、 漏れ磁束 Eを少なくできるので 発熱層 2 2を効率よく発熱させることができる。 従って、 エネルギー口 スを低減できる。 また、 漏れ磁束 Eを低減できることにより、 芯材 2 4 に達する磁束を低減できる。 従って、 芯材 2 4として、 絶縁材料を用い る必要がなく、 一般的な金属材料を用いることができるので、 安価で十 分な機械的強度を確保できる。 更に、 芯材 2 4の発熱が抑えられるので 、 芯材 2 4の軸受け 2 8, 2 8 ' が加熱されて発生するトラブルも低減 できる。
以上に説明した実施の形態は、 いずれもあくまでも本発明の技術的内 容を明らかにする意図のものであって、 本発明はこのような具体例にの み限定して解釈されるものではなく、 その発明の精神と請求の範囲に記 載する範囲内でいろいろと変更して実施することができ、 本発明を広義 に解釈すべきである。