明 細 書 基板収納容器用ガスケット部材及びこれを用いた基板収納容器 技術分野
本発明は、 半導体ゥエーハゃフォトマスク用のガラス板などの基板材料を輸 送、 保管する際に使用する基板収納容器に用いるガスケット部材に関するもの である。 背景技術
基板を輸送、 保管する際に使用する基板収納容器に関しては、 従来、 日本国 実開平 1一 5 1 0 5 8号公報に記載されているような、 複数枚の基板を支持す る収納溝を対向する位置に有するキヤリア、 これを収納する基板収納容器本体、 基板収納容器本体とその外周に沿って嵌合し、 開閉可能な蓋体および基板を固 定する押さえ部材、 基板収納容器本体と蓋体との間に外周に沿って挟持される ガスケット部材などから構成される基板収納容器が知られており、 実用に供さ れている。
これらの基板収納容器には、 従来、 軽量性、 成形性などのバランスの良さか ら、 それぞれの構成部品の要求特性に応じて、 例えば、 ポリプロピレン、 ポリ エチレン、 ポリカーボネート、 ポリブチレンテレフ夕レートなどの合成樹脂材 料が使用されてきた。
これらの構成部品のうち、 ガスケット部材は、 通常、 基板収納容器本体と蓋
体との嵌合部の間に、 外周に沿って挟持され、 基板収納容器本体と蓋体との嵌 合によって弹性的に圧縮されることで基板収納容器の内外部の環境を遮断し、 保管ないし輸送中に基板収納容器の外部からのパーティクルを主とする汚染物 質の侵入を防止する。 さらに、 ガスケット部材によって航空機輸送に際しての 外圧変化に伴う基板収納容器内の圧力変動を緩和し、 結果的に基板収納容器内 へのパーティクルの侵入や基板収納容器内での気流の動きによるパーティクル の移動を防止し、 収納する基板の汚染を低減する効果が得られる。
ガスケット部材には、 上述の通.り、 弾性的に圧縮されて変形し、 それによつ て気密封止状態を確保し、 しかも、 蓋をあけたときに圧力が取り除かれると元 の形状に復帰する性能が要求されるため、 適当なゴム弾性および表面硬度を有 することが必要である。 要求される表面硬度を満足する材料として、 従来はポ リスチレン、 ポリオレフインなどをべ一ス樹脂として、 その表面硬度を調整す るため、 パラフィンオイルをはじめとする外部軟化剤を配合した、 比較的高い 柔軟性を有する熱可塑性のエラストマ一材料が使用されてきた。
しかしながら、 これらの軟化剤は、 一般に、 ベース樹脂との間に化学結合を 形成せず、 単に物理的に混合されているだけであるので、 ガスケットの成形条 件、 使用環境におけるさまざまな要因によって表面へのブリード、 揮散、 揮発 などによってガス状の有機物成分を放出する。 ベース樹脂に使用される樹脂材 料の劣化によって、 その可能性がさらに高くなるだけでなく、 材料自身から発 生する放出ガス量が増加するので、 結果的にそれら有機物成分が原因となって 発生する基板類に対する汚染の影響が問題となってきた。
本発明の課題は、 このような状況に鑑みて、 揮散放出される有機物成分が少
なく、 収納された基板材料の有機物による汚染を極力低減することを主目標と し、 かつ蓋の開閉時の操作性を損なうことなく基板収納容器の封止性を確保す るに十分な柔軟性を有する基板収納容器用ガスケット部材を提供することにあ る。 発明の開示
本発明の基板収納容器用ガスケット部材は、 J I S K 6 3 0 1の A型スプ リング式かたさ試験法による表面硬度が 8 O A以下で、 ダイナミックヘッドス ペース法において 8 0 °C、 6 0分の加熱条件で測定される放出ガス量が材料重 量に対して 1 O p p m以下であり、 かつ軟化剤をまったく含まない熱可塑性ポ リエステル系エラストマ一樹脂からなる。 本発明はさらにそのようなガスケッ ト部材を装着した基板収納容器を提供する。 - 図面の簡単な説明
図 1は本発明のガスケット部材が使われる基板収納容器を表す分解斜視図で
'め
図 2は本発明のガスケット部材と基板収納容器本体および蓋体との配置関係 を示す部分断面図である。 図 2 ( a )は蓋体を閉じる前の状態を示し、 図 2 ( b ) は篕体を閉じた状態を示す。
図 3は試料から放出されるガスを捕集するダイナミックへッドスペース法の 原理およびその方法を用いてガスを分析する装置を説明する概略図である。 図 4は某板収納容器の封止性能を測定するための装置を示す概略図である。
発明を実施するための最良の形態
初めに、 本発明のガスケット部材が用いられる基板収納容器について、 図 1、 図 2を用いて説明する。
図 1は、 本発明のガスケット部材が使われる基板収納容器を表す分解斜視図 である。 図 2は、 本発明のガスケット部材と基板収納容器本体および蓋体との 配置関係を示す部分断面図であり、 図 2 ( a ) は蓋体を閉じる前の状態を示し、 図 2 ( b ) は蓋体を閉じた状態を示す。
図 1に示すように、 基板収納容器本体 1内に嵌合設置したキヤリア 5に基板 (図示せず) を载置収納し、 これに蓋体 2を嵌合する。 その際、 まず蓋体 2内 面に嵌合設置した基板押さえ部材 4のクッションが収納した基板の上部周縁部 に接触し、 さらに蓋体 2を基板に対して押し込んでいくと、 クッションの各基 板に接触する個別のパネ部分が伸縮して収納枚数分のばね力を発生しながら基 板を押さえ、 固定していく。 . この後、 蓋体 2の外周部が予め基板収納容器本体 1外周のガスケット溝 1 1 に設置されたガスケット部材 3へ接触した以降は、 更に引き続くクッションの バネ力にガスケット部材 3の圧縮力が加わり、 ガスケット部材 3の圧縮スト口 ークに相当する距離だけ進行して最終的にフック 1 3を係り止め 1 5に作動さ せて蓋閉め操作が完了する。
蓋開け操作は、 前述の逆となる。 すなわち、 フック 1 3を係り止め 1 5から 外すと、 ガスケット部材 3の圧縮力が解放され、 基板押さえ部材 4のクッショ ンの反力も作用して、 蓋体 2が開くことになる。
更に細かく説明すると、 前記ガスケット部材 3が使用される基板収納容器は、 複数枚の半導体素子用基板 (図示せず) を一定間隔を置いて配列担持し得る基 板支持リブ 1 4をひだ状に複数並列突設し、 該基板支持リブ 1 4、 1 4間に V 断面溝状の基板収納溝を形成したケース状のキャリア 5、 キャリア 5を収納し 開口部の外周に上記ガスケット部材を収納するガスケッ卜溝 1 1と、 外側に蓋 体のフック 1 3を嵌合するための相対する一組の係り止め 1 5とを有する基板 収納容器本体 1、 さらに該基板収納容器本体 1の係り止め 1 5に嵌合可能な相 対する一組のフック 1 3を側面に有する蓋体 2、 さらに該蓋体 2の内面に嵌装 され、 キャリア 5に収納された各基板の外周の一部を個別にかつ弾性的に保持 可能な櫛溝を有する基板押さぇ部材 4からなるものである。
図 2において、 基板収納容器本体 1の開口部の外周に設けられたガスケット 溝 1 1と、 蓋体 2の基板収納容器本体 1に対向する外周に設けられたガスケッ ト溝 1 2との間にガスケット部材 3が配置され (図 2 ( a ) ) 、 蓋体が閉めら れると、 ガスケット部材 3は、 基板収納容器本体 1と蓋体 2との間で圧縮変形 された状態で挟持される (図 2 ( b ) ) 。
このガスケット部材を含む基板収納容器内に基板を収納し、 蓋体と基板収納 容器本体とを嵌合する基板収納容器の組み立て工程、 または逆にこれを開封す る工程は、 自動機または人手によって行うが、 この時の組み立て、 開封に対す る操作性は、 主に蓋体と本体との嵌合方式と、 嵌合に必要な締め付け力 (また はこれの反力としての開封に必要な力) とによって影響を受ける。
前者にはフック '係り止め機構やその位置、 数などが、 後者には 2つの部材 が関連し、 ひとつはガスケット部材の形状や材料特性による圧縮力、 他方は基
板収納容器内で基板と接して衝撃吸収機能を有する押さえ部材のクッションの 形状とその材料特性による基板の押さえ力 (ばね力) であり、 基板収納容器全 体としての締め付け力は、 結果としてこれらの総体的な和となる。
このように、 基板収納容器の締め付け力は、 押さえ部材のクッションの基板 押さえ力とガスケット部材の圧縮力との和からなる。 押さえ部材のクッション については、 基板を衝撃や振動から保護するために必要不可欠なクッションカ を予め設定して設計する。 基板収納容器の開閉の操作性の観点から、 基板収納 容器全体としての締め付け力に占めるガスケット部材の圧縮力は、 押さえ部材 のクッシヨンのそれに対して小さいことが望ましい。
ガスケット部材の圧縮力は、 およそ基板収納容器の封止に必要な圧縮スト口 ークとゴム弾性との積からなると考えた場合、 圧縮力を小さくするには圧縮ス トロ一クを小さくするか、 ゴム弾性を小さくする必要がある。 ストロークを極 端に小さくするとガスケット部材と蓋体、 または本体との接触面が不均一、 不 完全となって封止性能が不安定になる傾向があるため、 適当なストロークを確 保できるようにすることが必要で、 適宜の材料のゴム弾性 (硬度) を選択する ことが必要となる。
特に基板の口径が大きくなるにつれ、 クッションカがそれに応じて増大する ので、 実用的な操作性の範囲に納めるためにはガスケット部材の圧縮応力、 す なわち材料硬度を最適な値に選定する必要性が高くなつてくる。
以上のような理由から、 ガスケット部材に使用される材料の硬度は、 収納す る基板の大きさや形状にもよるが、 これまでの直径 2 0 0 mm ( 8インチ) ま での基板に用いる基板収納容器のガスケット部材としては、 経験的に J I S K
6 3 0 1の A型スプリング式かたさ試験法で測定される表面硬度において、 8 O A以下、 特には 7 0 A以下の材料が選択されてきた。 これらの表面硬度を満 足する材料として、 前述のとおり、 従来はポリスチレン、 ポリオレフインなど がべ一ス樹脂として用いられてきた。 しかし、 これらの材料は、 ベース樹脂単 独で 8 O A以下の硬度を得ることは不可能であり、 その硬度を調整するため、 パラフィンオイルをはじめとする外部軟化剤を配合することが必須となってい た。
本発明では、 外部軟化剤をまったく含まないで、 表面硬度が 8 O A以下、 好 ましくは 7 O A以下の材料、 またさらに大口径の基板、 例えば、 直径 3 0 0 m m ( 1 2インチ) の場合には、 好ましくは 6 O A程度以下の材料を得ることを 目指している。
ガスケット部材として使用する熱可塑性エラストマ一については、 基板とは 直接には接触しないものの封止条件におかれて使用され、 また、 既述のような 外圧変化を受けた場合には基板収納容器の内外気がガスケット部材の表面に沿 つて移動するので、 ガスケット部材自身から揮発する有機物成分が基板の有機 物汚染に及ぼす影響はきわめて大きい。 近年の、 半導体デバイスの集積密度の 高密度化に伴って、 従来よりもさらに微量の有機物成分までが問題となってき ている。
特に、 近年における分析技術の発達と共に、 ダイナミックヘッドスペース法 により樹脂材料からの放出ガス量の定量的測定が精度良く行われるようになり、 8 0 °C, 6 0分の加熱条件において不活性ガス流通下で捕集、 測定されるガス ケット部材から揮発する有機物成分の放出ガス量が材料重量に対して 1 0 p P
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mを超える場合には、 基板表面への有機物の付着量が多くなり、 基板表面を汚 染し、 それから作製される素子の特性不良や歩留まりに悪影響を与えることが 解ってきた。
従来、 熱可塑性ポリエステル系エラストマ一としては、 芳香族ポリエステル 樹脂からなる高融点で結晶性のハード成分 (セグメント) と、 脂肪族ポリエー テルや脂肪族ポリエステル等からなる低融点で非晶性のソフト成分 (セグメン ト) とからなるものが知られている。
本発明者らは、 上記した熱可塑性ポリエステル系エラストマ一のハード成分 とソフト成分とを好適な割合で組み合わせ配合することにより、 軟化剤をまつ たく含まずにガスケット部材の表面硬度を基板収納容器に使うときに極めて望 ましい値とすることが可能であることを見出し、 ガスケット部材から揮発する 有機成分の放出ガス量が少なく、 かつ、 蓋体の容器本体への取り付け取り外し の操作性が好適なガスケッ卜部材及びこれを使用した基板収納容器を開発した。 すなわち、 本発明のガスケット部材の材料は、 パラフィンオイルや、 フ夕ル 酸ジ 2ェチルへキシル (D O P ) 、 フタル酸ジブチル (D B P ) 、 フタル酸ジ ヘプチル (D H P ) などの各種可塑剤、 あるいはブタジエン、 E P D Mゴム、 天然ゴム等のゴム成分等の軟化剤をまつたく含まない熱可塑性ポリエステル系 エラストマ一からなるものである。
本発明のガスケット部材の材料となる熱可塑性エラストマ一は、 ハード成分 とソフト成分とからなるブロック共重合体であることが好ましい。
前記したハード成分としては、 芳香族ジカルボン酸の残基とジオール残基と からなるポリエステル、 またはこれらの 2種類以上の組み合わせからなるコポ
リエステル、 さらに他のォキシ酸を組み合わせてなる共重合ポリエステルなど が挙げられるが、 特にはポリブチレンテレフ夕レートが好ましい。 また、 これ らのハ一ド成分セグメントの平均分子量は特に制限されるものではない。
一方、 ソフト成分としては、 ポリエーテルグリコール類およびこれらの混合 物、 共重合ポリェ一テルダリコール類、 さらに脂肪族ポリエステルおよびその 共重合ポリエステル類が挙げられるが、 特にはポリオキシテトラメチレンダリ コールが好ましい。 これらのソフト成分セグメントの平均分子量は 4 0 0から 1 0 0 0 0の範囲にあることがが好ましい。
ポリエステルエラストマ一中の両成分の組成割合としては、 ガスケットの形 状に応じてハード成分/ソフト成分の重量比が 3 Z 9 7から 9 5 / 5の範囲内、 より好ましくは 4 / 1から 3 Z 1の範囲内で適宜調整することによって、 流動 パラフィン等の外部軟化剤や可塑剤をまったく使用することなく、 硬度 8 O A 以下のポリエステルエラストマーからなるガスケット部材を得ることができる。 ガスケット部材の成形材料の配合組成については、 酸化防止剤や紫外線吸収 剤などの各種安定剤、 着色剤、 加工助剤、 帯電防止剤など必要に応じて添加す ることができる。
放出ガス量については、 例えば、 成形前の樹脂材料 (ペレット) を真空加熱 するなどポリエステルエラストマ一樹脂の製造段階における脱ガス処理、 射出 または押出し成形中に、 押出機のシリンダー部またはペレツト供給部において 真空脱気するなどガスケット成形段階での処理、 さらにガスケット成形後にこ れを加熱処理するなどの方法によって、 その発生量を低減することができる。 本発明のガスケット部材の試験に適用されるダイナミックへッドスペース法
は、 試料から発生するガスを分析装置に導入する方法の 1つである。 図 3に示 すとおり、 まずチャンバ一 2 1内に適宜のサイズに切断された試料片 2 2を入 れ、 チャンバ一 2 1をオーブン 2 3内で所定温度 加熱保持して試料型 2 2か ら放出されるガスをヘリゥムゃ窒素等のキヤリァガス 2 4を通気しながら連続 的に捕集管 2 5へ導入する'(吸引装置 2 6を用いる場合もある) 。 捕集管 2 5 には、 ポーラスポリマービーズや活性炭等の吸着剤が収納されていて、 試料 2 2から発生するガスは、 吸着剤によって一定時間濃縮捕集される。 その後、 捕 集管 2 5を取り外し、 これを加熱して、 吸着剤から脱離するガスをガスクロマ トグラフ質量分析装置 2 7 (以下、 G C— M Sと記す) へ注入し、 試料から発 生した揮発性有機物量 (放出ガス量) を測定する方法である。 揮発性有機物量 の定量は、 予め n—デカンの標準溶液について測定を行って有機物量とチヤ一 ト上のピークの積分値との検量線を作成し、 この検量線から揮発性有機物量を 求めるものである。
本発明の実施例および比較例においては、 以下の諸項目について試験を行つ た。
ガスケット部材そのものから放出される放出ガス量については、 成形したガ スケット部材から約 0 . l gの試料片を採取し、 G C— M S分析装置を用い、 ダイナミックヘッドスペース法により、 ヘリウムガスの流通下、 8 0 °C、 6 0 分の加熱条件で発生、 捕集された放出ガスの全量を n—デカン換算で定量測定 した。
基板の有機汚染に関しては、 ガスケット部材を使用して既述の 2 0 0 mmシ リコンウェハー搬送用の基板収納容器を組み立て、 内部に洗浄済のシリコンゥ
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ェ八一 1枚を保持し常温にて 1 0日間保管した後、 市販の基板表面有機物分析 器 S WA— 2 5 6 (G. L Sc i ence社製) を用いて、 ウェハ一表面に付着した有 機物の総量をへキサデカン換算して求めた。
ガスケット部材の封止性能の試験方法は以下のとおりである。
図 4に示すように、 ガスケット部材を使用して組み立てた基板収納容器 3 6 内にテレメーター式圧力計 (圧力センサ) 3 2を収容し、 この基板収納容器 3 6をステンレス製の耐圧容器 3 1内に設置し、 耐圧配管により耐圧容器 3 1内 の圧力を測定する圧力計 3 3と耐圧容器 3 1内の圧力を調節する圧力調整バル ブ 3 5を介して真空ポンプ 3 4に接続する。
真空ポンプ 3 4を作動させて耐圧容器 3 1内の圧力を減少させていき、 ボン プ作動後適宜の時間、 例えば約 2分経過した後に、 圧力計 3 3が— 2 9 . 4 2 k P aを示した時点で真空ポンプ 3 4の運転を止める。
このとき、 基板収納容器 3 6内部の圧力は、 基板収納容器 3 6の外部すなわ ち耐圧容器 3 1内部の圧力に対して相対的に高圧状態となるが、 ガスケットの 封止性能に応じて時間経過とともに徐々に基板収納容器 3 6内部の空気は基板 収納容器 3 6外へ漏出して圧力が低下し、 最終的に基板収納容器 3 6の外部す なわち耐圧容器 3 1の圧力と等しくなる。 ガスケット部材に全く封止性能がな い場合は、 基板収納容器内の圧力は基板収納容器外、 すなわち耐圧容器内の圧 力変化と同時に変化する挙動となる。 基板収納容器内外の圧力が等しくなるま でに要する時間を測定し、 基板収納容器内の加圧状態に対する封止性として評 価する。
逆に、 耐庄容器内を高圧にし、 基板収納容器内の圧力が基板収納容器 3 6外
すなわち耐圧容器 3 1内の圧力よりも低圧となり、 時間の経過と共に圧力差が 減少していき、 両圧力が最終的に等しくなるまでに要した時間を、 基板収納容 器内の減圧状態に対する封止性として評価することもできる。
ここで、 ガスケット部材の封止性が全くない、 または不足していると基板収 納容器内部の圧力変化は、 外部の圧力変化に追随して短時間での変化速度が大 きくなり、 基板収納容器内の気流が乱れ、 収納基板の清浄度に悪影響を与える 可能性が高くなる。
封止性が過度に高いと、 飛行機による移送の場合など、 移送先に到着しても 基板収納容器内の圧力が長時間の経過後も外部より低圧または減圧状態となつ ていて、 蓋を開けることが困難になる場合がある。
したがって、 基板収納容器内の圧力が外部圧力に対して高圧、 低圧いずれの 場合も基板収納容器内部の圧力が容器外圧力に等しくなるまでの所要時間は最 長でも 6 0分程度まで、 また、 短くても、 約 1 0分以下にはならないことが望 ましいことが経験的に知られている。
以下に、 本発明を実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、 本 発明はここに記載する実施例等に限られるものではない。
[実施例 1 ]
ジメチルテレフタレート、 1 , 4 -ブタンジオールおよびポリテトラメチレン グリコールを反応原料とし、 触媒としてテトラブチルチタネート、 安定剤とし てフエノール系酸化防止剤 (1, 3 , 5 —トリメチルー 2 , 4 , 6 —トリス (3, 5—ジー tーブチルー 4ーヒドロキシベンジル) ベンゼン) をそれぞれ添加し た反応混合物を加熱して、 エステル交換反応させた後、 真空重合反応機におい
て重縮合反応を行い、 ハ一ド成分がポリブチレンテレフ夕レート、 ソフト成分 が平均分子量約 3 0 0 0 リコールで、 それらの重量比 が 3 : 1、 J I S硬度が 6 3 Aのブロック共重合体を得た。
この重合物をスクリユー径 3 0 mmの二軸押し出し機を使用して押し出して ペレット化した後、 これを真空乾燥機によって 1 0 0 °Cで 8時間、 真空乾燥し 成形用ペレツトとした。
ガスケット部材から発生する放出ガス量、 ガスケット部材の操作性、 基板収 納容器を組み立てたときの封止性能、 および収納した基板への有機物汚染性に 関する評価を行うため、 上記で得られた成形用ペレットを用いて、 図 1、 図 2 に示すような口径 2 0 O mmシリコンウェハ一収納容器用のガスケット部材を 通常の射出成形条件によって作製した。
得られたガスケット部材の放出ガス量は 1 . 8 p p m ( n—デカン換算重量) であった。
試験用に製作したキャリア、 基板収納容器の本体、 蓋体、 基板押さえに使用 した各樹脂材料は、 いずれも基板収納容器としての使用に適する低ガス放出性、 金属およびイオン溶出による低汚染性および機械特性の要求を満足する合成樹 脂材料であった。 具体的には、 それぞれ、 ポリプロピレン、 ポリプロピレン、 ポリ力一ポネートおよびポリエステル系エラストマ一を成形材料料として使用 し、 適宜の条件下で射出成形によって成形した。
得られたガスケット部材を使用して、 2 0 0 mmシリコンウェハー搬送用の 基板収納容器を組み立て、 内部に洗浄済のシリコンウェハー 1枚を収容し常温 にて 1 0日間保管した後、 前述の基板表面有機物分析器 S WA— 2 5 6を用い
て、 基板表面に付着した有機物総量をへキサデカン換算して求めたところ、 1. 4ng/cm2であった。 この値は比較のために該ガスケット部材を使用しない 以外は同一の基板収納容器で同一の条件下で測定して得られた汚染量 1. 1 n gZ cm2に対して極く僅かな増加に留まった。
蓋開閉の操作性を評価するために、 上記ガスケット部材を基板収納容器本体 の開口部外周のガスケット収納溝に嵌入し、 上方から蓋体をかぶせて蓋体側面 のフックを基板収納容器本体の係り止めに係合する際に要する押圧力を測定し たところ、 蓋体の両側のフックを両手のひらで下方に軽く押し込む程度で容易 に基板収納容器本体の係り止めに確実に係合させることができ、 操作性は極め て良好であった。
基板収納容器内圧力は、 基板収納容器外圧力 (耐圧容器内の圧力) の変化(一 0. 3 k gZcm2に達するのに 2分所要) に対し徐々に減少する挙動を示し、 最終的に基板収納容器外と同じ圧力— 29. 42 kP aに達するまでの所要時 間は約 1 5分であり、 基板収納容器内の加圧状態に対しての封止性は良好であ つた。
上記試験に続いて、 基板収納容器内および耐圧容器内の圧力がいずれも一 2 9. 42 kP aの減圧状態から、 耐圧配管に接続されたバルブを大気圧に開放 し、 約 1分間で耐圧容器内の圧力を常圧に戻した。 "
基板収納容器内圧力は基板収納容器外圧力 (耐圧容器内の圧力) が常圧に戻 つた時点から約 10分後に常圧に達し、 基板収納容器外圧力の変化に対し遅れ て徐々に圧力差が減少する挙動を示した。 最終的に基板収納容器外と同じ圧力 (常圧) に達するまでの所要時間は約 10分で、 基板収納容器内の減圧状態に
対して封止性は良好であった。
これらの結果を表 1に示す。 実施例 2および比較例 1および 2の結果も併せ て表 1に示す。 表 1
[実施例 2 ]
'一卜、 1, 4一ブタンジオールおよびポ
ングリコールの配合割合を変え、 ペレツト段階での真空加熱処理を行わなかつ たほかはエステル交換反応、 重縮合反応を実施例 1と同様に行い、 ハード成分 がポリブチレンテレフタレート、 ソフト成分が平均分子量約 2 0 0 0のポリテ トラメチレングリコールでそれらの組成比が 4: 1、 J I S硬度 7 O Aのブロッ ク共重合体からなる成形用ペレツトを得た。
得られた成形用ペレツトを用いて実施例 1と同様のガスケット部材を成形し、 これを 60°Cの加熱オープン中で 4時間加熱処理を行った。
得られたガスケット部材について実施例 1と同様の評価試験を行ったところ、 成形品から発生する放出ガス量および基板表面に付着した有機物総量は、 それ ぞ !2. 6 ppm、 1. Sn gZcir C?めった。
蓋開閉の操作性は良好であり、 また、 封止性能についても基板収納容器内の 加圧状態、 減圧状態に対して、 それぞれ約 11分および 8分の満足すべき測定 結果が得られた。
[比較例 1]
ジメチルテレフ夕レート、 1, 4 _ブタンジオールおよびボリテトラメチレ ングリコ一ルの配合割合を変えた以外は実施例 1と同様に、 エステル交換反応 および重縮合反応を行い、 ハード成分がポリブチレンテレフタレ一ト、 ソフト 成分が平均分子量約 1000のポリテトラメチレングリコールでそれらの組成 比が 5 : 1、 J I S硬度が 89 Aのブロック共重合体ペレツトを得、 これを真空 乾燥機によって 100°Cで 8時間、 真空乾燥した成形用ペレットから、 射出成 形によってガスケット部材を作成した。
得られたガスケット部材について実施例 1と同様の評価試験を行ったところ、 ガスケット部材から発生する放出ガス量および基板表面に付着した有機物総量 はそれぞれ 2. 0 111ぉょび1. 8 n g/ cm2と良好であった。
蓋開閉の操作性については蓋閉め時に蓋体のフック両端部分に両腕を置いて 上体をあずける程度の押し付け力が必要であった。 この蓋を開ける際にも実施 例 1に比較し、 およそ 2倍沂ぃ力を要し、 蓋体の開閉操作性は不良であった。
封止性能については蓋体を閉じた時にガスケットが蓋体の外周に対して不均 一な接触状態となったためにリーク経路が生じ、 加圧、 減圧状態ともに外圧変 化に対する追随時間があまりにも短く、 事実上ガスケットに要求される封止機 能がない結果となった。
[比較例 2 ]
比較例 1と同様に、 ジメチルテレフタレート、 1, 4一ブタンジオールおよ びポリテトラメチレングリコールの原料混合物のエステル交換反応および重縮 合反応を行い、 ハード成分がポリブチレンテレフ夕レート、 ソフト成分が平均 分子量約 1 0 0 0のポリテトラメチレングリコールでそれらの組成比が 5: 1、 J I S硬度が 8 9 Aのブロック共重合体を得た。 硬度調整のために該共重合体 に軟化剤として流動パラフィン (J I S 4号) を重量比で 2 0 %添加し、 押出 し機にてペレットを作製し、 これを真空乾燥機によって 1 0 0 °Cで 8時間、 真 空乾燥して J I S硬度 7 O Aの成形材料を得た。 この成形材料を用いて射出成 形によってガスケット部材を作成した。
ト部材について前例と同様の評価試験を行つたところ、 ガスケ ット部材から発生する放出ガス量および基板表面に付着した有機物総量は、 真 空乾燥処理を行った成形材料を使用したのにもかかわらず、 それぞれ 2 4 . 0 p p mおよび 5 . 1 n g / c m 2とという高い値となり、 基板を汚染するおそれ があるという結果であった。
のガスケット部材を使用して組み立てた基板収納容器の蓋開閉の操作性は 良好であり、 封止性能についての試験結果は基板収納容器内の加圧状態、 減圧 状態に対してそれぞれ約 1 0分、 7分と概ね良好であった。
産業上の利用可能性
表面硬度 (J I S K 6 3 0 1の A型スプリング式かたさ試験法による) が 8 O A以下で、 8 0 °C、 6 0分の加熱条件においてダイナミックヘッドスぺー ス法により測定される放出ガス量が 1 0 p p m以下であり、 かつ軟化剤をまつ たく含まないポリエステル系エラストマ一樹脂からなるガスケット部材を基板 収納容器に使用することにより、 基板収納容器の封止性、 蓋操作性を確保しな がら収納基板の有機物汚染を低減することが可能となる。 本発明のガスケット 部材は、 ガスケット部材として十分な柔軟性を有しながら、 有機物汚染の原因 となることが少ないため、 特に高い清浄度を要求される線幅の小さい高密度、 高集積度素子用の基板材料を収納する基板収納容器に使用するガスケット部材 として好適である。