明 細 書 免疫調節活性を有するタンパク質及び免疫疾患治療剤 技術分野
本発明は、 免疫調節活性を有するタンパク質及び免疫疾患治療剤に関する。 より詳細には、 蠕虫が産生するタンパク質に由来の宿主の免疫調節活性を有する タンパク質に関する。 背景技術
従来、 難病といわれる自己免疫疾患やアレルギー疾患の治療には、 ステロイ ド 剤ゃシクロスポリン等の免疫抑制剤等の薬剤が使用されてきた。 しかし、 これら の薬剤は対症療法的なものであり、 著効を示す有効な薬剤の開発はなされていな いのが現状である。 しかも、 ステロイ ドゃシクロスポリンなどは強い副作用や、 薬剤耐性の問題などがある。
近年、 分子生物学、 免疫学等の大幅な進歩に伴って、 免疫系の詳細なメカニズ ムゃこれに関連する各種の因子、 これらの因子に対するレセプター等が発見され、 それらの機能や役割が次々に明らかにされている。 こうした因子等の例としては、 各種インタ一ロイキン等のサイ トカイン、 それに対するレセプター及びそれらに 対する抗体、 接着分子やそれに対する抗体などが挙げられる。
自己免疫疾患やアレルギ一等の疾患においては、 例えば、 これらの因子の機能 の異常に端を発している場合には、 上記の因子を所謂バイオ医薬品として用いて それらの治療にあたる試みが精力的になされている。
しかし、 それらの試みは、 機能に異常をきたしている因子のみに対する治療で あり、 免疫系全体から見れば局所的な治療であって、 従来行われてきた対症療法 的な治療からの延長上にある。
したがって、 上記のような難病を根治するためには、 免疫系全体を視野に入れ た新しい概念に基づく治療薬が望まれている。
ところで、 従来、 寄生虫学者の間では、 疫学的相関から寄生性の蠕虫感染者に アレルギー患者が少ないことが示されている。 また、 全身性エリテマトーデスの 患者が寄生虫感染により症状の改善が見られたといった報告がある。
しかし、 このような寄生性の蠕虫感染者にァレルギ一が少ないという疫学的感染 が、 科学的に実証されていないことから、 アレルギー学者の中には、 「この様な 疫学的相関は根拠のないことであり、 事実無根である」 とまで言う者もいる。
—方、 蠕虫に由来する物質については、 藤田らがィヌ糸状虫由来アレルゲンを 発見したことを報告しており (藤田ら、 (1979) ) 、 また、 堀井らはィヌ糸状虫好 中球遊走因子 DiNCF を発見し、 そのアミノ酸組成を決定している (堀井ら、 (1986) ) 。 さらに、 C. B. Poole らが DiNCF をィヌ糸状虫の産生する Cuticular 抗原として単離し、 その遺伝子の部分配列をクロ一ニングして抗原分子がタンデ ムに繰り返した構造を有することを報告している( B. Poole, (1992) )。
また、 DiNCFの cDNAのクローニングに関しては、 J. Culpepper (J. Culpepper, (1992) )、 大橋ら (大橋ら、 (1993年))、 C. B. Pooleら(C. B. Poole, et al. , (1996) )などがある。
しかし、 これらの報告の中では、 蠕虫の産生物質は好中球の遊走活性を有する 分子であることや、 抗原分子として捉えられており、 本発明の免疫調節活性は見 出されていない。
また、 寄生性の蠕虫抽出物に Β細胞を増殖させる活性があることは、 すでに知 られており、 このような報告としては、 T. D. G. Lee らによるブタ回虫の可溶 性分子が IgE産生応答に関係するというもの(T. D. G. Lee, et al. , (1993) )、 犬尾らによるィヌ回虫の粗抗原にヒ ト末梢血細胞を増殖させる働きが有るという もの (大尾ら、 (1995) ) 、 T. D. G. Lee らによるブタ回虫抗原のマイ ト一ジェ ン活性など (T. D. G. Lee, et al. , (1995) ) がある。
しかし、 それらの実験はいずれも単離されたものではなく混合物を用いて行わ れたものであり、 単一物質刺激が B細胞を T細胞非依存的に増殖する活性を示す ことは報告されていない。
発明の開示
以上のように、 分野の異なる学者の間で論争があり、 明確な解決はついていな いが、 寄生性の蠕虫に感染すると宿主の免疫系にどのように影響するかという点 に着目して、 我々は鋭意努力を重ね、 寄生性の蠕虫由来の物質が免疫疾患に有効 であることを証明し、 本発明を完成したものである。
すなわち、 本発明は、 寄生虫が自らを宿主からの攻撃から回避する為に、 寄生 虫が赘億年をかけて身に付けてきた自衛手段の応用であり、 この様な概念の下で 形成された全く新規な発想に基づく薬剤である。
本発明は、 下記式 ( 1 ) で表される免疫調節活性を有するタンパク質である。
X - Y - Z ( 1 )
(式中、 Xは配列番号 1又は 2に記載のアミノ酸配列を表し、 Y及び Zは存在し ないか又は配列番号 1もしくは 2に記載のァミノ酸配列を表す) 。
また、 本発明は、 以下の(a)または(b)の組換えタンパク質であることを特徴と する。
(a)配列番号 7〜14のいずれかに記載のァミノ酸配列からなるタンパク質。
(b) 配列番号 7〜14 に記載のアミノ酸配列において、 1もしくは数個のアミ ノ酸が欠失、 置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、 かつ、 免疫調節活 性を有するタンパク質。
本発明はまた、 以下の(a)または(b)の組換えタンパク質であることを特徴と する。
(a)配列番号 15に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b) 配列番号 15 に記載のアミノ酸配列において、 1もしくは数個のアミノ酸 が欠失、 置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、 かつ、 免疫調節活性を 有するタンパク質。
本発明は、 さらに、 以下の(a)または(b)の組換えタンパク質からなる免疫調 節剤である。
(a)配列番号 1〜6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b) 配列番号 1〜 6に記載のアミノ酸配列において、 1 もしくは数個のアミ
ノ酸が欠失、 置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、 かつ、 免疫調節活 性を有するタンパク質。
本発明はさらに、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質を有効成分 とする免疫疾患治療剤である。
ここで、 前記免疫疾患は自己免疫疾患であることを特徴とする。 また、 前記免 疫疾患は、 多発性硬化症、 インスリ ン依存性糖尿病、 クローン病、 ブドウ膜炎、 慢性関節リューマチ、 及び全身性エリテマトーデスからなる群から選ばれる Thl 優位な自己免疫疾患であることを特徴とする。
また、 前記免疫疾患は、 強皮症、 多発性筋炎、 血管炎症候群、 混合性結合組織 病、 シユーダレン症候群、 甲状腺機能亢進症、 橋本病、 重症筋無力症、 ギラン · バレ症候群、 自己免疫性肝疾患、 潰瘍性大腸炎、 自己免疫性腎疾患、 自己免疫性 血液疾患、 突発性間質性肺炎、 過敏性肺炎、 自己免疫性皮膚疾患、 自己免疫性心 疾患、 自己免疫性不妊症、 及びベーチェッ ト病からなる群から選ばれる Thl優位 であるとは知られていない自己免疫疾患であることを特徴とする。
本発明はまた、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質を有効成分とす る IgE産生促進剤である。 さらに、 本発明は上記のいずれかに記載の 1種以上の タンパク質を有効成分とするアレルギー疾患治療剤である。
ここで、 前記アレルギー疾患は、 慢性気管支喘息、 アトピー性皮膚炎、 花粉症 (アレルギー性鼻炎) 、 アレルギー性血管炎、 アレルギー性結膜炎、 アレルギー 性胃腸炎、 アレルギー性肝障害、 アレルギー性膀胱炎、 及びアレルギー性紫斑病 であることを特徴とする。
本発明はまた、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質を有効成分と する免疫調節剤である。 ここで、 前記免疫調節剤は、 臓器移植時の拒絶反応を調 節するものである。
本発明はまた、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質の有効量を、 免疫調節を必要とする患者に投与することからなる免疫調節法である。
本発明はまた、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質の有効量を、 免疫疾患患者に投与することからなる免疫疾患治療法である。
本発明はまた、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質の有効量を、 I g E産生の促進を必要とする患者に投与することからなる I g E産生促進法で ある。
本発明はまた、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質の有効量を、 ァレルギ一疾患患者に投与することからなるァレルギ一疾患治療法である。
本発明はまた、 免疫調節剤製造における、 上記のいずれかに記載の 1種以上 のタンパク質の使用に関する。
本発明はまた、 免疫疾患治療剤製造における、 上記のいずれかに記載の 1種 以上のタンパク質の使用に関する。
本発明はまた、 I g E産生促進剤製造における、 上記のいずれかに記載の 1 種以上のタンパク質の使用に関する。
本発明はまた、 アレルギー疾患治療剤製造における、 上記のいずれかに記載の 1種以上のタンパク質の使用に関する。
以下に、 本発明を詳細に説明する。
本明細書において 「免疫調節活性」 とは、 B細胞による非特異的免疫グロプリ ンの産生を促進する活性と、 Thl及び Th2による免疫をモジュレーションする活 性の双方の活性をいう。
「B細胞による非特異的免疫グロブリ ンの産生を促進する活性」 とは、 B細 胞が特異的な抗原に対する免疫グロプリン(Ig)を産生するのではなく、 非特異的 に Ig、 特に IgEを産生することを促進する活性をいう。 通常、 B細胞が Igを産 生する場合には、 特定の抗原を提示した抗原提示細胞による刺激を受けて、 一度 幼若化し、 ブラスト細胞となるというプロセスが必要である。 しかし、 本発明の タンパク質を用いた場合には、 B細胞の幼若化は起こらず、 成熟 B細胞が増殖し て非特異的な Igが産生される。
「Thl及び Th2 による免疫をモジュレーションする活性」 とは、 Thl及び Th2 の各々の T細胞が産生するサイ トカインの産生を抑制したり、 相対するサブセッ トのサイ トカインを抑制するサイ トカインを誘導する活性により、 免疫パターン を細胞性免疫から液性免疫に、 またはその逆方向に変化させる活性をいう。
「免疫疾患」 とは、 生体防御機構の 1つである免疫系に異常をきたしている 疾患をいい、 液性免疫の異常又は細胞性免疫の異常の双方によって生じる疾患が 含まれる。 また、 自己抗体、 自己感作リンパ球もしくは免疫複合体によって引き 起こされる自己免疫疾患も含まれ、 さらに、 臓器移植等を行う場合に、 レシピエ ントが移植片を排除する宿主対移植片反応 (GVH 反応) によって生じる宿主対移 植片病も含まれる。 また、 アレルギー性疾患なども含まれる。
「Thl優位な自己免疫疾患」 とは、 Thl細胞が産生するサイ トカイン、 例えば、 IFN- IL- 2、 GM-CSF, TNF- a , IL- 3 等の産生が亢進している病態を有する自 己免疫疾患をいう。 具体的には、 多発性硬化症、 インスリン依存性糖尿病、 クロ —ン病、 ブドウ膜炎、 慢性関節リューマチ、 及び全身性エリテマトーデス等が挙 げられる。
「Thl優位であるとは知られていない自己免疫疾患」 とは、 前述の Thl細胞が 産生するサイ トカインの産生が亢進されることが知られていない自己免疫疾患を いう。 具体的には、 強皮症、 多発性筋炎、 血管炎症候群、 混合性結合組織病、 シ エーダレン症候群、 甲状腺機能亢進症、 橋本病、 重症筋無力症、 ギラン ·バレ症 候群、 自己免疫性肝疾患、 潰瘍性大腸炎、 自己免疫性腎疾患、 自己免疫性血液疾 患、 突発性間質性肺炎、 過敏性肺炎、 自己免疫性皮膚疾患、 自己免疫性心疾患、 自己免疫性不妊症、 及びべーチエツ ト病などが挙げられる。
「アレルギー疾患」 とは、 アレルギ一反応の関与する疾患をいう。 具体的に は、 慢性気管支喘息、 ア トピー性皮膚炎、 花粉症 (アレルギー性鼻炎) 、 アレル ギー性血管炎、 アレルギー性結膜炎、 アレルギー性胃腸炎、 アレルギー性肝障害、 アレルギー性膀胱炎、 及びアレルギー性紫斑病等が挙げられる。
また、 「 1もしくは数個のアミノ酸の置換 ·欠失 ·付加」 には、 天然に生じたも のと、 部位特異的変異誘発法(Nuclei c Ac i ds Research, vol. 10, No. 20, p6487 -6500 (1982) などの方法によって人工的に生じさせたものの双方が含まれる。 本発明の免疫調節活性を有するタンパク質は上記式 ( 1 ) で表わされる X— Y — Zである。 ここで、 Xは配列番号 1または 2に記載のアミノ酸配列を表わし、 Y及び Zは存在しないか又は配列番号 1 もしくは 2に記載のアミノ酸配列を表わ
す。 以下で、 配列番号 1に記載のアミノ酸配列を VI といい、 配列番号 2に記載 のアミノ酸配列を V2という。
上記の本発明のタンパク質を VI 及び V2 で表わすと、 VI (配列番号 1 ) 、 V2 (配列番号 2 ) 、 V1 + V 2 (配列番号 3 ) 、 V2+V1 (配列番号 4 ) 、 V1 + V2 + V1 (配列番号 5 ) 、 V2 + V1 + V2 (配列番号 6 ) 、 V1 + V1 (配列番号 7 ) 、 V2 + V2 (配列番号 8 ) 、 V1+V1+V1 (配列番号 9 ) 、 V1 + V1 + V2 (配列番号 10) 、 V1 +
V2 + V2 (配列番号 11) 、 V2+V2+V2 (配列番号 12) 、 V2+V2+V1 (配列番号 13) 、 および V2+V1+V1 (配列番号 14) である。
また、 VI と V2 との相同性を比較すると、 全アミノ酸は比較的相同性が高く、 アミノ酸番号 1 〜61 までは相同である。 これらの配列をそれぞれ、 配列番号 15 に示した。
本発明の VI及び V2は、 元々、 寄生性の蠕虫の一種であるィヌ糸状虫由来のタ ンパク質である。 このィヌ糸状虫由来タンパク質は、 ィヌ糸状虫からタンパク質 の抽出、 陰イオン交換クロマトグラフィー、 ゲルろ過クロマトグラフィーなどの 組み合わせにより得ることができる。
ィヌ糸状虫由来タンパク質 (以下、 DiNCFという) は、 好中球遊走活性を有し、 2種類の分子である DiNCF VI と DiNCF V2 とがタンデムに十数個並んだ繰り返し 配列からなる。 DiNCF の cDNA は大橋らによってクローニングされており (大橋 ら、 前出) 、 DiNCF VI と DiNCF V2のアミノ酸配列も決定されている。
これらは、 VI及び V2にそれぞれ該当し、 VI は 129個、 V2は 131個のアミノ 酸からなる (配列番号 1及び 2 ) 。
本発明のタンパク質には、 上述のように VI と V2 とがタンデムに並んだ構造 のへテロダイマー、 ヘテロ トリマー及びこれらのいずれか一方のみがタンデムに 結合した構造のホモダイマー及びホモトリマ一とが含まれ、 ホモダイマ一とホモ トリマーは自然界には存在しないタンパク質である。
これらの 2つのタンパク質においては、 N末端側、 すなわち、 アミノ酸番号 1 〜61までのアミノ酸配列は相同だが、 61番以降は、 やや相同性が低い。
本発明のタンパク質には、 上記のような VI 及び V2 全長からなるタンパク質
のみならず、 配列番号 15に記載のァミノ酸配列を有するタンパク質も含まれる。 配列番号 15に示すァミノ酸配列は、 VI及び V2のァミノ酸番号 1〜61 に該当 するものであり、 タンパク質が免疫調節能を有する限り、 1もしくは数個のアミ ノ酸の置換 ·欠失 ·付加が生じていてもよい。
さらに好ましくは、 配列番号 1又は 2に記載のァミノ酸配列の 1〜76 番まで のアミノ酸配列である。
これらのアミノ酸配列においては、 アミノ酸配列の配列番号 15 に示すタンパ ク質と同様の方法で、 1もしくは数個のアミノ酸の置換 ·欠失 ·付加を生じさせ てもよい。
本発明のタンパク質をコードする遺伝子を得るには、 DiNCF 遺伝子を有するベ クタ一を適当な制限酵素サイ トを含んだプライマ一を用い、 P C R法により 目的 遺伝子を增幅するか、 適当な制限酵素でベクタ一を処理して目的の分子量の D N A断片を得、 これに適当なリンカ一をライゲ一シヨンすることにより得る力、 又 は上記のようにして得られたィヌ糸状虫由来タンパク質をコードする遺伝子の塩 基配列もとに、 DiNCF VI と DiNCF V2 とをコードする D N Aを、 公知の方法に従 つて化学合成し、 これらを個別もしくは上述したような配列となるように結合さ せる。
このようにして得た本発明のタンパク質をコードする遺伝子である D N A断 片を、 制限酵素で処理した適当なベクタ一にライゲ一シヨンし、 タンパク質発現 用の組み換えベクターを得る。
この組み換えベクターで適当な宿主を形質転換して、 所望の形質転換体を選 択し、 これらを増殖させることにより、 目的のタンパク質を産生するべクタ一を 得ることができる。
DiNCF遺伝子を有するベクターとしては、 DiNCF をクローニングする目的で作 製されたクローン pD-4 (Maruyama, H. et al. , 30 (14): 1315- 1320 (1993)参照)と 同時に作製された、 DiNCF VI及び DiNCF V2 をコードする D N Aの塩基配列を有 するベクターである pDi6、 Di l8、 pD- 4等を挙げることができ、 pDi6を使用する ことが VI、 V2遺伝子を含むことから好ましい。
pDi6 i Owhashi (Owhashi M. et al. , Mol. Immunol. 30 (14) : 1315 - 1320 ( 1993) ) に記載された方法に準じて構築した。 すなわち、 自然にィヌ糸状虫 D. immi t i sに 感染したィヌの心臓から成虫を集め、 氷上で細かく切断し、 この切断物から、 mRNA Purification Ki t (Pharmac ia社製)を用いて mRNAを精製する。
この mRNA を用いて、 cDNA Synthesis Ki t (同社製) により cDNA を合成し、 λ gtl lベクタ一(Promega Biotec., Madison, WI, USA)の EcoRIサイ 卜に挿入す る。 この cDNA 挿入; L gt l l の D N Aを Gigapack (Stratagene, La Jol la, CA, USA)によって in vitroパッケージングし、 cDNAライブラリーを構築する。
この cDNAライブラリ一より 目的のクローンを、 抗 DiNCF抗体を用いて Huynhら の方法(Huynh, T. V. et al. , A Practical Approach, Vol. 1, p. 49-78, Glover D. M. ed. , IRL Press, Oxford)に従って選択する。
選択したクローンを EcoRI で消化してファージ D N Aから挿入遺伝子部分を 切り出し、 ファージミ ドベクター pBluescript SK (-)の EcoRI サイ トに揷入し、 プラスミ ド pDi6を構築する。
また、 これらがタンデムにつながった D N A、 例えば、 V1 + V2 などを得る場 合には、 制限酵素 NspV を使用することが、 共通配列における単一な認識部位で あるために好ましい。
また、 上記の D N A断片を化学合成する場合には、 ホスフアミダイ ド法、 ト リエステル法等の公知の方法に従って行えばよい。
タンパク質発現用組み換えベクターの作製に用いるベクタ一としては、 pET3a、 pTrc、 pKK2B- 3等のプラスミ ドベクター、 gt l l、 M 13等のファージベクタ一、 pBluescript II、 または pcDNA2. 1 などのファージミ ドベクター等を挙げること ができるが、 高い産生量が期待できるために pET3aを使用することが好ましい。 形質転換する宿主としては、 大腸菌等を挙げることができるが、 取り扱いの 容易さ等の理由から大腸菌を使用することが好ましく、 特に、 HMS174 (DE3)株を 用いるとタンパク質の発現効率が高い。
宿主の形質転換は、 通常用いられる方法で行えばよく特に限定されないが、 塩化カルシウム法又はエレク トロポレ一シヨン法によることが、 転換効率が高い
ために好ましい。
本発明のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換した形質 転換体は、 抗生物質耐性をマ一力一として選択する。 マーカ一とする抗生物質は、 アンピシリン、 テトラサイクリン、 カナマイシン等を挙げることができるが、 ベ クタ一として pET3aを用いることが好ましいことからアンピシリンを使用するこ とが好ましレ、。
以上のようにして選択した形質転換体を培養し、 本発明のタンパク質を得る ことができる。
上記の本発明のタンパク質をコードする塩基配列からなる D N A断片を部位特 異的突然変異誘発法(site- directed mutagenesi s 法)を用いることによって、 D N A断片中の任意の位置に変異を生じさせることができ、 このような D N Aの変 異によつて種々の修飾タンパク質を得ることができる。
以下に、 VIを得る場合を例にとって説明する。
DiNCF VI領域の遺伝子を含む pDi6プラスミ ドベクタ一 (徳島大学大橋眞教授 より分与された) を铸型とし、 制限酵素の切断部位及び停止コ ドンを含むプライ マーを用いて P C Rにより増幅を行う。 このような制限酵素切断部位を含んだプ ライマ一を用いることによって、 目的べクタ一の翻訳開始コ ドンの下流に、 目的 断片を目的方向にかつフレームを合わせて挿入することができ、 これによつて目 的のタンパク質を発現することができる。
このようなプライマーのうち N端プライマーとしては、
5 ' -GCATATGAATGATCATAATTTAGAAAGC-3' (配列表の配列番号 16)
力 また、 C端プライマ一としては、
5' -CTAAAGGATCCTATCACCGCTTACGCCGTTCATTCATTG-3' (配列表の配列番号 17) を用いると、 効率的に目的の塩基配列を増幅させることができる。
このようなプライマーは、 ホスフアミダイ ド法等によって化学合成により作製 することができ、 バイオロジカ社等の企業に合成を委託することもできる。
P C Rは、 上記のプライマーと、 铸型である DiNCF VI と、 Ex Taq DNAポリメ ラーゼと、 Ex Taq キッ ト(TAKARA 社製)添付のバッファー、 dNTP (dATP、 dGTP、
dCTP、 dTTPの等量混合物) 等とを使用して行うことができる。
得られた增幅断片を、 マイクロスピンカラム等で精製した後、 Ndel と BamHI とで消化して精製し、 発現用ベクターに組込むことができる。 このような発現用 ベクタ一として、 pET3a を Ndel と BamHI とで消化し、 ベクタ一の主要部分をマ イクロスピンカラム S400 (フアルマシア社製) で精製する。
このように消化した pET3aと上記 P C R増幅断片とを D N Aライゲーションキ ッ ト (TAKARA 社製) を用いて、 このキッ トに添付されたマニュアルに従ってラ ィゲ一シヨンし、 目的の環状 D N Aを得る。
こう して得た環状 D N Aを大腸菌 JM109 株に塩化カルシウム法で導入して J 109 株を形質転換し、 形質転換体を得る。 この形質転換体を、 アンピシリンを 含む L B培地中で培養し、 この培養液から菌体を遠心分離して集菌し、 アルカリ S D S法によりプラスミ ドを抽出精製して、 プラスミ ド pDP5を得る。
得られたプラスミ ドの塩基配列を、 Sequenase キッ ト (米国 United States Biochemical Corporation 社製) を用いて調べることによって、 挿入領域が目的 どおりに挿入されていること、 及びその前後に異常がないかを確認することがで さる。
ダイマー及びトリマーの本発明のタンパク質を得るためには、 以下のように 発現べクタ一を構築する。 V1 + V1 発現用ベクターを構築する場合を例に挙げて 説する。
上記のように構築した pDP5 を NspV で消化し、 常法に従ってフエノール処理 し、 ゥシ小腸アルカリフォスファターゼ(CIP)により脱リン酸化処理し、 その後、 フエノール処理により酵素を失活させた。
一方、 pDi6 を制限酵素で消化し、 消化物をァガロースゲル電気泳動にかけて 所定の分子量のバン ドを精製する。 この精製には、 ジーンクリーン II キッ ト (フナコシ社製) 等を使用することができる。
上記の CIP処理した直鎖状ベクターに、 前記の方法と同様に上記の精製断片を ライゲーシヨンする。 ライゲーシヨンした D N Aを用い、 大腸菌 JM109を形質転 換し、 形質転換体を得る。
得られた形質転換体クローンを適当に選び、 アンピシリン含有培地中で終夜培 養し、 培養液を遠心して集菌し、 菌体よりベクタ一 D N Aをアルカリ S D S法等 の方法で抽出、 精製する。 こうして得られた各ベクターを制限酵素で消化し、 電 気泳動により分析して目的のベクタ一を得る。
上記のように構築したベクターを用いて大腸菌 HMS 174 (DE3)を上記と同様に形 質転換する。 得られた各種の形質転換体を吸光度 A550が 0. 8になるまで培養し、 吸光度 A 550が 0. 8 となった時点で、 IPTG (イソプロピルチオガラク トシド) を 添加して、 さらに培養する。
この培養液を遠心して菌体を集め、 8 Mの尿素と 0. 1 Mの Tris- HCl (pH7. 0) を含む溶液に懸濁し、 超音波破砕して遠心分離し、 上清を得る。
この上清を、 ファース トシステム(Phast System (フアルマシア社製)を用いて、 S D Sポリアクリルアミ ド電気泳動する。 対照としては、 pET3a により形質転換 した大腸菌菌株を用いる。
以上の操作により、 目的タンパクが産生されていることを確認することができる, 以上のようにして得た各種の形質転換体を培養し、 この培養液を遠心分離して 集菌し、 所定量の培養菌体に塩酸を加えて抽出し、 塩酸抽出液を得る。
この抽出液を水酸化ナトリゥムで中和した後、 この液に硫酸アンモニゥムを加 えて、 遠心分離し、 沈殿を P B S (生理的りん酸緩衝液) に溶解し、 これをゲル ろ過クロマトグラフィーにアプライして、 分離精製し、 最終精製品を得る。
また、 以上のようにして得たタンパク質をから、 公知の種々の方法によってこれ をコ一ドする塩基配列で表される D N Aを得ることができる。 本発明においては、 これらの塩基配列を有する D N Aを、 部位特異的変異誘発法(Zoller ら、 Nucleic Acids Research, vol. 10, No. 20, p6487- 6500 (1982) )等に従って修飾し、 1以上の塩基が置換、 欠失、 付加または挿入が生じたものとしてもよく、 当業者 が容易に調製することができる。 このようにして得られた D N Aは、 それがコー ドするタンパク質が免疫調節活性を有する限り、 本発明の範囲内に包含される。 こうして得られた各タンパク質の生理作用は、 例えば、 以下のようにして検討 する。 マウスを頸椎脱臼により屠殺し、 脾臓を摘出してリ ンパ球を得る。 これを
遠心分離し、 上清を除去して洗浄し、 ACT溶液(0.83% NH4C1, 170mM Tris- HCl(pH7.6))を加えて再度洗浄した後に、 ゥシ胎児血清(FCS)を含む RPMI1640 培 地に懸濁して、 脾臓リンパ球溶液とする。
ついで、 B 細胞を以下のようにして調製する。 上記のようにして得た脾臓リン パ球溶液に、 抗 Thy-L2抗体を加えて 4°Cで放置し、 洗浄後に 5%ゥシ胎児血清 (FCS)を含む RPMI1640培地に懸濁する。 ここに、 市販のゥサギ等の補体溶液を加 えてよく攪拌し、 約 37°Cで約 1時間反応させた後に洗浄し、 所定の細胞濃度に なるように 5%FCS を含む RPMI1640 培地に懸濁し、 B細胞懸濁液とする。 細胞 濃度を 1 X105〜5 Xl06/mLとすると、 増幅刺激応答を試験する上で好適である。 増殖刺激応答は以下のようにして確認する。
上記のように調製した B細胞懸濁液を、 24 ゥエルプレートに分注し、 5%FCS を含む RPMI1640 培地で培養する。 培養開始後所定時間を経過した後に各種の本 発明のタンパク質を所定の濃度で添加し、 さらに 48 時間培養して MTTアツセ ィを行う。 本発明のタンパク質の濃度は、 0.1〜 1,000 μ g/mL とすることが応答 性を示す濃度範囲であることから好ましく、 10〜100 g/ml とすることが応答性 の高い濃度であることからさらに好ましい。
MTTアツセィは、 例えば以下のように行う。 500μί の細胞懸濁液に、 下記 の組成を有する MTT溶液を 50 し 添加し、 37°Cで 4時間放置し、 450μί の反 応停止液を加えた後に室温で 30分間放置し、 630nni、 570nmの吸光度 (それぞれ、 A630及び A570という) を測定して、 これらの値から増殖応答の程度を定量する。
MT T溶液とは MTT (3 - [4, 5- Dimethylthiazol- 2- yl] - 2, 5-diphenyltetrazolium bromide 、 シグマ社製) を 5 mg/mLの濃度に P B Sに溶解したものであり、 反応 停止液は 0.04N塩酸を含むィソプロパノールである。
空試験としては、 培地に同処理を行い、 630nm 及び 570nm で測定した吸光度
(それぞれ、 A063。及び A057。 という) を測定した。 これらの値から、 下記式より MTTアツセィ値を求める。
MTTアツセィ値 = (A570-A630) - (A0570-A063O)
陽性対照には、 リポポリサッカライ ド(LPS)等を使用するとよい。
本発明の各ぺプチドの IgE産生誘導は以下のように確認する。 マウスの腹腔内 に、 例えば、 所定量の DiNCF VI と水酸化アルミニウムアジュバント(ALUM)とを 混合したものを投与する。
投与前、 投与後 7日、 14 日、 21 日目にそれぞれ尾動脈よりへパリン採血管を 用いて血液を採取し、 血漿を分離し、 血漿中の IgEを酵素抗体法により測定する。 酵素抗体法による IgEの測定は、 以下の方法に従って行えばよいが、 この方法に 限定されるものではない。
標準 IgE として抗 DNPIgE、 一次抗体として抗マウス IgE Fc ε ラットモノク ローナル抗体、 二次抗体としてペルォキシダーゼ標識抗マウス IgEポリクロ一ナ ル抗体を使用する。 適当なブロッキング剤と、 0. 1%ゥシ血清アルブミンを含む P B S等の反応バッファー、 及び 0. 05% Tween20 を含む P B Sを PBS-Tween とし て使用する。
—次抗体を、 例えば、 所定の濃度になるよ う炭酸ナ ト リ ウムバッファ一 (pH9. 5)で調製し、 96 穴マイクロタイタープレートの各ゥエルに抗体を固相化す る。 ついでブロッキング溶液を用いてブロッキングし、 PBS- Tweenで洗浄する。 この各ゥエルに本発明のタンパク質又は標準 IgE を、 例えば、 100 /i L/ゥエル で入れ、 室温で適当な時間、 例えば、 3時間反応させ、 PBS- Tween で 2〜 3回プ レートを洗浄し、 二次抗体を反応バッファーで適宜希釈して、 100 L/ゥエルで 各ゥエルに入れる。 室温で約 3時間反応させ、 PBS- Tweenでプレートを洗浄する。 ついで、 各ゥエルに基質液を入れ、 室温で暗所に数分間静置し、 適当に発色し た時に反応停止液を加える。 マイク口プレートリ一ダーを用いて 490nmにおける 発色を測定し、 標準 IgEにより作製した標準曲線から血漿中の IgE濃度を算出す る。
in vivo における各ペプチドの免疫調節活性は、 自己免疫性脳脊髄炎モデルに よって評価する。
すなわち、 ラッ トの後肢フッ トパッ ドに本発明のタンパク質を 10〜l,000 /x g/ 匹、 好ましくは 100 z g/匹で投与し、 また、 対照群には P B Sを同様に投与する。 この投与を 41 日間行い、 投与開始後 41 日目に、 これらとともに、 ギニァビッグ
ミエリン塩基性タンパクべプチド(GPE)を約 2 〜10 μ g/匹、 好ましくは 5 μ g/匹 で適当なアジュバントと乳化させて、 両群に投与する。 好適なアジュバントとし ては、 結核死菌等を挙げることができる。
GPE 投与後 14 日目に、 両群の臨床症状の変化を、 下記の表 1に示す基準によ り評価する。
表 1
臨床症状のスコア一の基準
スコア' 臨床征状
0 正常
1 元気なく じっとしているが麻痺は無い
2 軽い麻痺があり、 立ち直り反射 *が異常である
3 明らかに後肢麻痺があり、 よたよたと歩く
4 完全に後肢麻痺があり、 後肢は動かないが前肢は動く
5 四肢が麻痺し、 死戦期にある
6 死亡
* :立ち直り反射は、 動物を横にしてみて、 すぐ立ち直れない場合、 又は尾を持 ち上げ、 離したとき尾がパタンと落ちる場合に異常とする。 以上のようにして、 免疫調節活性を調べた本発明の各タンパク質を、 製剤学的 に許容される各成分と混合して、 免疫疾患治療剤とする。 製剤学的に許容される 成分としては、 賦形剤、 結合剤、 崩壊剤、 着色剤、 芳香剤、 矯味 ·矯臭剤、 溶解 補助'剤、 乳化剤、 保存剤、 懸濁化剤、 安定剤、 等張化剤、 緩衝剤等を挙げること ができる。
賦形剤としては、 具体的には、 固形剤の場合のデンプンもしくは乳糖、 液剤 の場合の水等を挙げることができる。 結合剤としては、 アラビアゴム、 デンプン、 カルボキシメチルセル口一スナトリウム(CMC - Na)、 水、 エタノール、 単シロップ 等を挙げることができる。 また、 崩壊剤としては、 各種の界面活性剤、 炭酸塩そ の他のものを挙げることができ、 着色剤としては天然及び食品衛生法で許可され ている人工のものを挙げることができる。
芳香剤と しては、 オレンジ油、 レモン油、 コリアンダー油等の各種精油を挙 げることができ、 矯味 ·矯臭剤としては単シロップや白糖、 溶解補助剤としては
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、 安息香酸ナトリウム、 エチレンジアミ ン等を挙げることができる。
乳化剤としては、 Span20、 Span60等の Span類、 Tween20、 Tween80等の Tween 類などを挙げることができ、 保存剤としてはフヱノ一ル、 チメロサール、 クロ口 ブタノ一ル等を挙げることができる。
懸濁化剤としては、 CMC-Na、 メチルセルロース、 単シロップ、 グリセリン等 を挙げることができ、 安定剤としては、 アルブミン、 ゼラチン、 ソルビトール等 を挙げることができる。
等張化剤としてはブドウ糖、 塩化ナトリ ウム等を挙げることができ、 緩衝剤 としてはリン酸塩等を挙げることができる。
これらの各成分は、 単独で配合してもよく、 2種以上を組合わせて配合しても よい。
また、 本発明のペプチドを製剤にするにあたっては、 いかなる剤形としてもよ く、 特に限定されない。 具体的には、 錠剤、 顆粒剤、 カプセル剤、 注射剤その他 の製剤とすることができる。
本発明のタンパク質は、 上述したように T細胞のサブセッ トである Th2に作用 するため、 免疫疾患治療剤によって治療できる免疫疾患としては、 Thl 優位と考 えられる免疫疾患及び Thl優位であるとは知られていない免疫疾患のいずれをも 挙げることができる。 具体的には、 Thl 優位な自己免疫疾患と考えられる免疫疾 患としては、 多発性硬化症、 インスリン依存性糖尿病、 クローン病、 ブドウ膜炎、 慢性関節リユーマチ、 全身性エリテマトーデス等が挙げられる。
また、 Thl優位であるとは知られていない免疫疾患としては、 強皮症、 多発性 筋炎、 血管炎症候群、 混合性結合組織病、 シエーグレン症候群、 甲状腺機能亢進 症、 橋本病、 重症筋無力症、 ギラン · バレ症候群、 自己免疫性肝疾患、 潰瘍性大 腸炎、 自己免疫性腎疾患、 自己免疫性血液疾患、 突発性間質性肺炎、 過敏性肺炎、 自己免疫性皮膚疾患、 自己免疫性心疾患、 自己免疫性不妊症、 ベーチェッ ト病等 を挙げることができる。
また、 本発明のタンパク質は、 通常の IgE レベルの上昇時におけるような B細
胞の幼弱化によるモノクローナルな IgEの産生を促すのではなく、 成熟 B細胞、 すなわちポリクローナルな B細胞の増殖をさせる作用を有するため、 非特異的な IgE レベルの上昇が起こり、 ァレルギ一疾患治療のための IgE産生促進剤として 使用することができる。
本発明のタンパク質を IgE 産生促進剤としたときの対象疾患としては、 慢性 気管支喘息、 ア トピー性皮膚炎、 花粉症 (アレルギー性鼻炎) 、 アレルギー性血 管炎、 アレルギー性結膜炎、 アレルギー性胃腸炎、 アレルギー性肝障害、 アレル ギー性膀胱炎、 及びァレルギ一性紫斑病等を挙げることができる。
また、 本発明のタンパク質からなる IgE 産生促進剤は、 臓器移植時の拒絶反 応などの治療のためにも使用することができる。 ここで、 「臓器移植」 とは、 腎、 肝、 肺、 心臓等の臓器の他、 骨、 皮膚、 腱等の移植をも含む。 本発明の IgE産生 促進剤を使用することによって非特異的な IgE産生が促進されるため、 このよう な臓器移植の後に生じる拒絶反応が緩和される。
以下に本発明のタンパク質のうち、 V1+V1を製剤化したときの製剤例を示す。 (注射剤)
1 rag/mL の V1 + V1 の溶液に、 9 mL の緩衝剤と しての 10mM リ ン酸緩衝液 (pH7. 4)、 安定化剤として 10mg のヒ ト血清アルブミンを加えて溶解し、 5 mL 入 りのガラスバイアルに 1 mLずつ分注した。
V1 + V1 0. lmg
リン酸緩衝液 0. 9mL
ヒ ト血清アルブミン l mg
バイアルに分注した後に一 20°Cで凍結乾燥し、 その後アンプルを閉じて注射 剤とした。 投与にあたっては、 l mL の注射用蒸留水 (大塚製薬製) で溶解して 使用する。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願第平 10-87189 号の明細 書および または図面に記載される内容を包含する。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明のタンパク質を発現するためのベクタ一 pPD5の構築図である。 図 2は、 本発明のタンパク質を発現するためのベクタ一 pPD4の構築図である。 図 3は、 本発明のタンパク質を発現するためのベクタ一 pPD17及び本発明のタ ンパク質を発現するためのベクター PPD18の構築図である。
図 4は、 本発明のタンパク質を発現するためのベクター pPD7 の構築図及び本 発明のタンパク質を発現するためのベクタ一 pPD9の構築図である。
図 5は、 本発明のタンパク質を発現するためのベクタ一 pPD27の構築図である。 図 6は、 VIを投与したときの血中 IgE濃度の推移を示す図である。
図 7は、 本発明のタンパク質を投与したラッ トにおける受身アナフィラキシー 反応の抑制を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 実施例で本発明をさらに詳細に説明するが、 本発明はこれらに限定され るものではない。
(実施例 1 ) ィヌ糸状虫由来蛋白質 DiNCF産生菌株である大腸菌株の調製
DiNCF VI発現プラスミ ドベクタ一である pDP5の構築を以下のように構築した (図 1 ) 。
pDi6は Owhashi (Owhashi M. et al. , Mol. Immunol. 30 (14) : 1315-1320 (1993) )に 記載された方法に準じて構築した。 すなわち、 自然にィヌ糸状虫 D. i腿 itisに感染 したィヌの心臓から成虫 lOOmgを集め、 生理食塩水で洗浄し、 氷上で細かく切断し た。 この切断物から、 mRNA Purification Kit (Pharmacia社製) を用いて、 mRNAを 精製した。
この mRNAを用いて、 cDNA Synthesis Kit (同社製) により cDNAを合成した。 この cDNAをえ gt l lベクタ一(Promega Biotec. , Madison, WI, USA) の EcoRIサ ィ トに挿入した。 この cDNA挿入え gt l l の D N A 5 x gを Gigapack (Stratagene, La Jol la, CA, USA)によって in vitroパッケージングし、 cDNA ライブラリーを 構築した。
この cDNA ライブラリーより、 以下のようにして目的のクローンを選択した。 すなわち、 50mMの炭酸ナトリゥムバッファ一(pH9. 5)で 1 , 000倍に希釈したィヌ 糸状虫感染ィヌ血液から採取した抗 DiNCF 抗体を用いて、 2 X 105個のクローン 力 ら Huynh らの方法(Huynh, T. V. et al. , A Practical Approach, Vol. 1, pp. 49-78, Glover D. . ed. , IRL Press, Oxford)に従って行った。
具体的には、 プラスチックシャーレに抗体を固相化し、 ブロック A (大日本 製薬社製) 等を用いてブロッキングを行った。 ファージを 10 倍希釈したブロッ ク Aを含む溶液に懸濁してライゼートとし、 このシャーレに加えて 37°Cで 2時 間インキュベートした。 0. 1 %の Tween 20を含む P B Sでシャーレを洗浄し、 こ こに 100 mMのトリェチルァミンを加えて、 ファージを溶出させた。
以上のようにして得たファージを大腸菌に再度感染させ、 大腸菌とともにフ ァージを増殖させた。 この操作を数回繰り返すことにより、 陽性クローンを選択 した。
選択したクローン lO gを 100U/ Lの EcoRIで消化してファージ D N Aから 挿入遺伝子部分である DiNCFO. 1 μ gを切り出した。 1 /z gのファ一ジミ ドべク ター pBluescript SK (-)を 10U/ /i Lの EcoRI で消化して、 このサイ トに上記のよ うに切り出した DiNCF遺伝子 0. 1 μ gを挿入し、 プラスミ ド pDi6を構築した。 ( 1 ) 制限酵素切断部位を付加した DiNCF VI領域の増幅
PDi6 を錶型とし、 以下の 2種類のプライマーを用いて P C Rにより増幅を行 つた。
N端プライマーとしては、
5 ' -GCATATGAATGATCATAATTTAGAAAGC-3 ' (配列表の配列番号 16)
を、 また、 C端プライマ一としては、
5' -CTAAAGGATCCTATCACCGCTTACGCCGTTCATTCATTG-3' (配列表の配列番号 17) を用いた。 これら 2種類のプライマーは、 バイオロジカ社に合成を依頼して入手 した。
P C Rは、 PROGRAM TEMP CONTROL SYSTEM PC- 700 (アステック社製) を用い て、 以下の条件で行った。
5ュニッ 卜 の Ex Taq DNA pol ymerase ( TAKARA 社製) 0. 5 μ し、 また、 25nmol/ml になるように蒸留水で溶解した上記プライマーを使用した。 ノくッファ 一、 基質等は、 Ex Taq™ (TAKARA社製) 添付のものを使用した。
铸型 DNA : pDi 6 (徳島大学大橋真教授より分与) を l OOng/ml の濃度で使用 反応組成:
铸型 DNA 丄 /Z L
蒸留水 37. 5 μ L
dNTP 4 μし
N端プライマー 1 μし
C端プライマー 1 μ L
X 10PCRハ"ッファ- 5 / し
Ex Taq 0. 5 μ L
反応ステップ
ステップ 1 95°C 5分
ステップ 2 95°C 1分
ステップ 3 54°C 1分
ステップ 4 72°C 2分
ステップ 5 ステップ 2〜ステップ 4を 1サイクルとして 29サイクル行った。 ステップ 6 72°C 8分
N端プライマ一には制限酵素の Ndel サイ ト、 C端プライマ一には BamHI サイ トがそれぞれ付加してあるので、 増幅遺伝子を両制限酵素 (TAKARA 社製) によ り消化した。 消化は DNA 1 /Z gあたり制限酵素 10ユニッ トを使用し、 37°Cで 2 時間行つた。 反応組成は制限酵素に添付されている専用バッファ一を同社のマ二 ュアルに従って用いた。 これ以降、 特に記載のない限り、 制限酵素の消化条件は すべて同様として行った。
また、 V I 領域を含まない両端の D N Aは、 マイクロスピンカラム S400 (ファ ルマシア社製) を用いて除去した。
( 2 ) 目的の環状 D N Aの作製
発現用べクタ一 pET3a を Ndel と BamHI とで二重消化し、 ベクタ一の主要部分 を上記マイクロスピンカラム S400で精製した。
この Ndel, BamHI 消化 pET3a と上記 P C R増幅断片とを D N Aライゲーション キッ ト (TAKARA 社製) を用いて、 このキッ トに添付されたマニュアルに従って ライゲーシヨンし、 目的の環状 DN Aを得た。
(実施例 2) pDP5による大腸菌の形質転換
実施例 1で得た環状 DN Aを大腸菌 JM109株に導入して形質転換し、 形質転換 体を得た。 形質転換は塩化カルシウム法 (Hanahen D. , J. Mol.Biol., 166:557- 580(1983)参照) により行った。
この形質転換体を、 50 g/mL のアンピシリ ンを含む L B培地中、 37°Cのイン キュベータ一中で終夜培養し、 この培養液から菌体を 4°C、 10, 000 Xg で 10 分 間遠心分離して集菌した。
得られた菌体からアルカリ S D S法 (Birnboim, H. C. and Doly J., Nucleic Acid Research, 7:1513-1523(1979)) によりプラスミ ドを抽出精製した。 すなわ ち、 菌体をグルコースバッファーに懸濁し、 1 %S D S、 0.4 N NaOH溶液でこ れを溶解した。 この菌体溶解液を酢酸カリゥムで中和した後遠心分離して上清を とり、 フエノール処理後、 エタノールを添加してプラスミ ドを沈殿させた。
この得られたプラスミ ド pDP5の塩基配列を、 シーケナーゼ(Sequenase)キッ ト
(米国、 United States Biochemical Corporation 社製) ¾r用レヽ、 タづテオキシ 法によって調べ、 挿入領域が目的どおりに挿入されていること、 及びその前後で 異常が起こっていないことを確認した。 ここで、 この 「異常」 には挿入領域が短 縮されていること等の変化が生じていることも含まれる。
(実施例 3) DiNCF V2発現用ベクターの作製
DiNCF V2発現用ベクターは基本的に DiNCF VIの作製と同様の方法で作製した。 すなわち、 挿入遺伝子を P C Rで増幅する工程で用いたプライマ一のうち、 C端 側のプライマーが異なる点を除く他は DiNCF VI の作製法と全く同様にして作製
した。 以下に、 ここで使用した C端プライマーを示す。
5' -CTAAAGGATCCTATCACCGCTTACGCCTTTCATGTATCA-3' (配列番号 18)
このプライマ一を用いて得られた DiNCF V2発現用べクタ一を得て、 pDP4と命 名した。
なお、 遺伝子配列の確認も上記と同様の方法で実施した。 これ以降の発現べク ターの構築に関しても同様に行った。
(実施例 4 ) DiNCF V1+VKV1+V1) , DiNCF V2+V1 (V2+V1)発現用べクタ一の作製 5 の DiNCF VI の発現用べクタ一である pDP5 を、 50 ュニットの制限酵素 NspVで完全消化した。
この消化断片を定法に従ってフユノール処理し、 20 ユニッ トのゥシ小腸アル カリフォスファターゼ (CIP、 SIGMA 社製) により脱リン酸化処理を行った。 処 理後、 フエノールをタンパク質の変性剤として使用し、 消化断片を含む水層とフ ェノール層との二層に分離させ、 水層を分取した。 このフエノール処理によって 酵素を失活させた。
—方、 DiNCF 遺伝子の VI、 V2、 VI の領域がこの順番でタンデムに繫がった遺 伝子を持つベクターである pDi6の 5 gを、 20ュニットの制限酵素 NspVで消化 した。 消化物を 2 %ァガロースゲル電気泳動により電気泳動し、 およそ 400 bp のバンドをジーンクリーン I Iキッ ト (フナコシ社製) により精製した。
上記の CIP処理した直鎖状 pDP5に、 上記の 400 bp断片をライゲーシヨンした。 ライゲーションは前記の方法と同様に行った。 ライゲーションした D N Aを用い、 大腸菌 JM109を形質転換した。
得られた形質転換体クローンを数株適当に選び、 LB培地で 50 / g/mLのアンピ シリン存在下に 37°Cで終夜培養した。 培養液より菌体を 4 °C、 10, OOO X g で 10 分間遠心して集菌し、 菌体よりプラスミ ド D N Aをアルカリ S D S法 (前出) に より抽出し、 精製した。
得られた各プラスミ ドを Ndel、 BamHI で消化し、 1. 5%ァガロース電気泳動に より分析した。
目的どおりに、 V I又は V2に V2が結合した遺伝子の場合は、 およそ 800 bpに バンドが出現した。 800 bp のバンドが出現したクローン由来のプラスミ ドを、 10ュニッ トの制限酵素 AlwNIで消化した。 消化した D N Aを 1. 2%ァガ口一スゲ ル電気泳動により解析した。
この酵素処理によって、 V1 + V1では 2. 9kbp と 2. Ikbp と 0. 4kbpの 3本のバン ドが出現した。 一方、 V2 + V1では 3. 3kbpと 2. Ikbpの 2本のバンドが出現した。 これらのバンドが出現することを指標として分析し、 2種類の目的プラスミ ドを 得た。
得られた V1+V1発現用のベクターを pDP18、 V2+V1発現用ベクターを pDP17 と命 名した。
(実施例 5 ) DiNCF V1+V2 (V1+V2)、 DiNCF V2+V2 (V2+V2)発現用ベクターの作製
DiNCF Vl + V2、 DiNCF V2 + V2発現用ベクターは、 基本的に上記 DiNCF V1 + V1、 D iNCF V2 + V 1発現用ベクターの作製で示した方法と同様の操作により作製した。 異なっている点は、 最初のステップで上記方法が pDP5を NspVで消化したのに対 して、 pDP4を NspVで消化した点である。 それ以外は全て実施例 4で上記のベタ タ一を作製したのと同じ方法によって行った。
上記 DiNCF Vl + V2、 DiNCF V2 + V2 発現用ベクターを作製したときには、 最終 的なクローンの選択で行った電気泳動で見られたバンドは V1 + V1 では 3本で、 それらのサイズは、 2. 9kbp、 2. Ikbpおよび 0. 4kbp、 V2 + V1 で見られたバンドは 2本であり、 3. 3kbpと 2. Ikbpであった。
しかし、 DiNCF Vl + V2、 DiNCF V2 + V2 発現用べクタ一の場合には、 以下の通 りであった。 V1 + V2 では 2本のバンドが見られ、 それらの分子量は 2. 9kbp と 2. 5kbp、 V2+V2では 1本であった。
これらのバンドの出現を指標として、 2種類のプラスミ ドを得て、 V1+V2 発現 用のベクターを pDP7、 V2+V2発現用ベクターを pDP9 と命名した。
(実施例 6 ) DiNCF V1 + V2 + V1 (V1 + V2 + V1)発現用ベクターの作製
( 1 ) 挿入断片の作製
10μ gの pDi6を 8ュニッ トの制限酵素 NspVで、 25°C、 30分間の条件で部分消 化を行った。
この部分消化した pDi6を 1.5%ァガロースゲル電気泳動にかけ、 ゲル上に現れ た約 800 bpのバンドをジーンクリーン IIキッ ト (フナコシ社製) により精製し た。
精製したこの 800bpの断片と、 上記 DiNCF V1 + V1、 DiNCF V2 + V1 発現用べク ターの作製の方法で示した NspV消化 CIP処理済み pDP4とを、 ライゲ一シヨンキ ッ ト (TAKARA社製) を用いて、 実施例 1 と同様にライゲーシヨンした。
(2) 形質転換と目的のベクターの取得
このライゲーシヨンした DNAを用いて、 塩化カルシウム法により大腸菌 JM109 を形質転換した。 すなわち、 市販の大腸菌 JM109 コンビテントセル 0. lmL に DNAを lOng/mLの濃度で添加し、 水中で 30分間放置した。 次いで、 42°Cで 45 秒間インキュベートし、 氷中で 1〜 2分間放置した。 ここに 37°Cに温めてお いた SOC培地 (ライフテックオリエンタル酵母社製) を lmL になるように加 え、 37°Cで 1時間インキュベートした。 そして、 この溶液 100 xL を L B寒天培 地にまき、 一晚 37°Cで放置した。 このようにして形質転換体 D050株を得た。 得られた形質転換体 D050 株のうちの数株を適当に選び、 50μ§ のアンピシリ ンを含有する LB培地 (5mL) にて、 37°Cで終夜培養した。 この培養液を 4°C、 10, 000 Xg で 10 分間遠心して集菌し、 菌体を集めた。 この菌体より、 目的のプ ラスミ ド D N Aをアルカリ S D S法 (Birnboim, H.に and Doly J., Nucleic Acid Research, 7: 1513- 1523 (1979)参照) により抽出精製した。
得られた各プラスミ ドを Ndel、 BamHI で消化し、 1.5%ァガロース電気泳動に より分析した。
目的の V1 + V2 + V1 遺伝子を含む場合には、 約 l,200bp にバンドが出現するた め、 1, 200bpのバンドが出現したクローン由来のプラスミ ドを、 10ユニッ トの制 限酵素 AlwNIで、 37°Cで 2時間消化した。
ついで、 消化した DN Aを 1.2%ァガロースゲル電気泳動により解析した。
上記の方法では、 挿入断片が目的とする方向 (5'—3' ) にだけ挿入される訳で はなく、 逆方向 (3'→5' ) に揷入される場合もあり、 挿入された断片の向きによ つて分子量が相違する。 すなわち、 AlwNI 消化断片が目的挿入方向に挿入された 場合 2. 9kbp、 2. lkbp、 0. 8kbp の 3バンドが確認された。 一方、 逆方向に挿入さ れた場合には、 3. 2kbp、 2. lkbp、 0. 3kbp の 3バンドが確認された。 目的の方向 に断片が挿入され、 2. 9kbp、 2. lkbp、 0. 8kbp の 3バンドが確認されたクローン を選択し、 これを pDP27 と命名した。
(実施例 7 ) 各種発現用形質転換体の調製
(実施例:!〜 6 ) のように構築した 7個のベクター、 pDP4、 pDP5、 pDP7、 pDP9、 pDP17、 pDP18、 pDP27 を用いて大腸菌 HMS174 (DE3)を形質転換した。 形質転換は 上記実施例に記載の方法により行った。
この形質転換によって得られた形質転換体を、 それぞれ D025、 D012、 D027、 D029、 D037、 D038、 D057と命名した。
(実施例 8 ) 本発明のタンパク質発現の確認
実施例 7で得られた各種の形質転換体を、 l, 000mLの M9ZB培地中、 37°Cの C02 インキュベータ一で、 吸光度 A 550が 0. 8になるまで培養した。 M9ZB培地の組成 を以下に示す。
NZァミン 10 g
NaCl 5 g
NH4C1 1 g
KH2P04 3 g
Na2HP04 6 g
グノレコース 10 g
蒸留水 1 し
以上の成分のうち、 NZアミンは和光純薬社より購入した。
吸光度 A 550が 0· 8となった時点で、 終濃度が 0. 5mMになるように IPTG (イソプ
ロピルチオガラク トシド) を添加して、 その後 2.5時間培養した。
この培養液を 4°C、 10, OOOXgで 10分間遠心して菌体を集めた。 1.5mLの培養 液からの菌体を、 0. ImLの 8M尿素、 0.1Mの Tris- HCl(pH7.0)を含む溶液に懸濁 した。 この懸濁液をウルトラソニック等のソニケータ一を使用して超音波破砕し、 15,000rpm(10,000Xg)で 5分間、 4 °Cで遠心分離し、 上清を得た。
この上清を、 ファース トシステム (Phast System (フアルマシア社製) ) を 用いて、 同社のマニュアルに従い、 SDSポリアクリルアミ ド電気泳動した。 対 照として、 ベクター pET3aにより形質転換した大腸菌菌株を用いた。
両者を比較したところ、 以下のような相違が明らかになった。
D025、 D012株の培養菌体抽出物では、 分子量約 14, 000の位置に鮮明なバンド が確認されたが、 対照にはその位置にバンドが確認されなかった。 また、 0027、 D029、 D037、 D038株の培養菌体抽出物では、 分子量約 28, 000の位置に鮮明なバ ンドが確認されたが、 対照ではその位置にはバンドが確認されなかった。 D057 株の培養菌体抽出物では分子量約 43, 000の位置に鮮明なバンドが確認されたが、 対照にはその位置にバンドが確認されなかった。
以上の操作により 目的の本発明のタンパク質が産生されていることが確認され た。
(実施例 9) 本発明のタンパク質の生産及び精製
(1) 本発明のタンパク質の生産
実施例 8で得られた各種形質転換体を上記同様の方法によって培養し、 同様に IPTGを添加して発現の誘導を行った。
(2) 産生された本発明のタンパク質の抽出 ·精製
(2 - 1) 産生された本発明のタンパク質の抽出
この培養液 1 Lを 4°C、 10, OOOXg で 10 分間、 遠心分離して集菌し、 湿重量 で 10gの培養菌体に 20mlの 50raM塩酸を加えて懸濁し、 直ちに遠心分離 (4°C、 16, OOOXg, 5分間) して上清を除去した。 その後、 残った培養菌体に 100mL の lOOmM塩酸を加えて懸濁し、 4°Cで 15分間放置した。 ついで、 遠心分離 (4°C、
16,000Xg、 5分間) により上清 (塩酸抽出液) を得た。
(2 - 2) 産生された本発明のタンパク質の精製
この塩酸抽出液を 1 Nの NaOHで中和した後、 この液に 60%飽和になるよぅ硫 酸アンモニゥムを溶かしながら徐々に加えた。 完全に硫酸アンモニゥムが溶けた ら 4°Cで 2時間放置し、 4°Cで、 16, 000Xg、 10分間遠心分離し、 上清を得た。 この遠心上清に、 硫酸アンモニゥムを 90%飽和になるように徐々に溶かしなが ら更に加えた。 完全に硫酸アンモニゥムが溶けたら、 4°Cで 2時間放置し、 4°C、 16000Xgで 10分間遠心分離した。 上清を除去し、 沈殿を 5mLの PB S (生理的 りん酸緩衝液に溶解し、 これを Superdex 200 ゲルろ過クロマトグラフィー (フ アルマシア社製) にアプライし、 分離精製した。
クロマ トグラフィ一の条件を以下に示す。
溶出溶媒: P B S
流 ¾: 0.5ml/min
検 出 : UV280nm
カラム : 26mm φ X 600mm
上記の条件で各成分を分離し、 吸光検出されたフラクションを分取した。 分取 したフラクションを SD Sポリアクリルアミ ドゲル電気泳動により分析し、 目的 のバンドのみを含むフラクションを得た。 これを最終精製品とした。
(実施例 1 0) 本発明のタンパク質の生理作用の解明
( 1 ) リンパ球の調製
7 週令の BALBん 系雄性マウス (一群 3匹) を頸椎脱臼により屠殺し、 脾臓を 無菌的に摘出した。 脾臓を滅菌 PB Sで洗浄し、 すりガラス上ですりつぶして、 P B Sに懸濁し、 ナイロンメッシュで濾過して、 組織片等を除去した。
得られた濾液を遠心分離 (500Xg、 5分間、 4°C) し、 上清を除去して細胞を 集めた。 これに P B Sを加えて再懸濁した。 この操作を 3回繰り返すことにより 細胞を洗浄した。
脾臓 1 個分の細胞に対して、 4°Cに冷却した lmL の ACT溶液を加えてよく
攪拌し、 その後直ちに冷却遠心 (500Xg、 5分間、 4°C) し、 その後 P B Sで 3 回洗浄した。 洗浄の方法は、 上記と同様に行った。 洗浄した細胞は、 脾臓 1個あ たり 1 mLの 5 %ゥシ胎児血清(FCS)を含む RPMI1640培地 (GIBC0社製) に懸濁し た。 この操作により得られた細胞を脾臓リンパ球溶液とした。
(2) B細胞の調製
上記 ( 1 ) で得た脾臓リンパ球溶液に、 10 / L の抗 Thy- 1.2 抗体 (米国、 Becton Dickinson Labware 社製) を加えて、 4°Cで 1時間放置した。 P B Sで 1回洗浄し、 900 zL の 5 %FCS を含む RPMI1640培地に懸濁した。 ここに 100μ しの補体溶液 (低細胞毒性ゥサギ抗体(Cedarlane Laboratories社製)) を加えて よく攪拌した後、 37°Cで 1時間反応した。 反応中 15分おきに攪拌した。
反応終了後に P B Sで 2回洗浄し、 8 X105/mL の濃度になるように、 5 %FCS を含む RPMI1640培地に懸濁し、 B細胞懸濁液とした。
(3) 増殖刺激応答
上記 (2) によって調製した B細胞懸濁液を、 24 ゥエルプレートに 1ゥエル あたり 500μί ずつ分注し、 37°C、 5%炭酸ガス存在下に、 5%の FCS を含む RPMI1640 培地で培養した。 培養開始後 1時間の時点で本発明のタンパク質を 1 〜10/zg/ral の濃度で添加した。 本発明のタンパク質を添加した後、 上記の条件 の下で 48 時間培養し、 細胞の増殖の程度を MT Tアツセィ (Mosmann T., et al. , J. Immunol. Methods, 65:55-63(1983) ) により定量した。
すなわち、 500 L の細胞懸濁液に、 下記の組成を有する MTT溶液を 50μί 添加し、 37°Cで 4時間放置した。 下記の組成を有する 450 し の反応停止液を加 えた後に室温で 30分間放置し、 630nm、 570nmの吸光度 (それぞれ、 A63。及び A 570という) を測定した。
M T T溶液 : MTT(3-[4, 5-Dimethylthiazol-2-yl]-2, 5-diphenyltetrazolium bromide, シグマ社製) を 5 mg/mLの濃度に P B Sに溶解したもの。
反応停止液: 0.04N塩酸を含むィソプロパノール
空試験として、 培地に同処理を行い、 630nm及び 570nmで測定した吸光度 (そ れぞれ、 A063O及び A0570 という) を用いた。 これらの値から、 下記式より MTT
ァッセィ値を求めた。
MTTアツセィ値 = (A57。一 A63。) - (A0570-A0630)
以上の方法により測定した本発明のタンパク質の B細胞増殖応答の結果を表 2 に示す。 陽性対照には、 LPSを用いた。
また、 対照として、 (3) において本発明のタンパク質を添加せずに培養を 行い、 同様に MTTアツセィ値を測定した。
表 2
MTTァッセィの結果 本発明のタンパク質 MTTアツセィ
VI 0.588
V2 0.458
V1+V1 0.580
V2+V1 0.425
V1+V2+V1 0.374
対照 0.276
LPS 0.556
以上の結果から、 本発明のタンパク質に、 MTTアツセィ値の増加、 すなわち、 B細胞の増殖刺激応答があることが確認された。 V1+V1 がほぼ VI に匹敵する B 細胞増殖刺激応答を示した。 V2、 V2+V V1+V2+V1 においても B細胞増殖刺激応 答が確認された。
(実施例 11) IgE産生誘導の確認
(1) IgE産生誘導
7週令の BALBん系雄性マウス (一群 3匹) の腹腔内に、 1 /zgの DiNCF Vl と 200μ 1の ALUMとを混合したものを投与した。
投与前、 投与後 7 日、 14 日、 21 日目にそれぞれ尾動脈よりへパリン採血管を 用いて血液を採取し、 25°C、 10, 000Xg、 5分間遠心して血漿を分離した。
血漿中の IgEを酵素抗体法により測定した。 酵素抗体法による IgEの測定方法
を以下に示す。
( 2 ) IgE測定用試薬
測定用試薬として次の試薬を用いた。 標準 IgE としては抗 DNPIgE (ャマサ醤 油 (株) 製) を用いた。 一次抗体として抗マウス IgE FC E ラッ トモノクロ一ナ ル抗体 (コスモバイオ (ハーランセララボ) 社製) を、 また、 二次抗体としてべ ルォキシダ一ゼ標識抗マウス IgEポリクローナル抗体を使用した。 ブロッキング 剤としてはブロック A (大日本製薬製) を、 反応バッファ一としては 0. 1 %ゥ シ血清アルブミ ンを含む P B Sを使用した。 PBS- Tween と しては、 0. 05 % Tween20を含む P B Sを使用した。
( 3 ) IgE測定法
一次抗体を 5 μ g/ml の濃度になるよう 50mM 炭酸ナト リ ゥムバッファー (pH9. 5)で調製し、 これを 100 μ L/ゥエルで 96穴マイクロタイタ一プレートの各 ゥエルに入れ、 抗体を固相化した。
4 °Cで 16 時間放置し、 溶液を除去した後に、 蒸留水で 4倍に希釈したブロッ ク Aを 300 μ L/ゥェルで各ゥヱルに入れ、 プレートをブロッキングした。 37°Cで 1時間放置し、 PBS-Tweenで 3回プレートを洗浄した。
各ゥヱルに本発明のタンパク質又は標準 IgEを 100 / L/ゥエルで各ゥュルに入 れ、 25°Cで 3時間反応させた。 PBS- Tweenで 3回プレートを洗浄し、 二次抗体を 10, 000 倍に反応バッファーで希釈して、 100 // L/ゥエルで各ゥヱルに入れた。 25°Cで 3時間反応させ、 PBS- Tweenで 3回プレ一トを洗浄した。
各ゥエルに基質液を 100 /z L/ゥエルで入れ、 室温で暗所に数分間静置し、 適当 に発色した時に反応停止液を 100 し/ゥエルで加えた。 プレートリーダ一を用 いて 490nmにおける発色を測定し、 標準 IgEにより作製した標準曲線にから血漿 中の IgE濃度を算出した。
上述の方法で採取した血漿中の IgE濃度を図 6に示す。
(実施例 12) 自己免疫性脳脊髄炎モデルによる本発明のタンパク質の評価 ル イス系雌性ラッ トを一群 3匹に分け、 VI投与治療群の後肢フッ トパッ ドに DiNCF
VI を lOO g/匹で、 また、 対照群には P B Sを同様に投与した。 この投与を 41 日間行った。 投与開始後 41 日目に、 これらの投与とともに、 ギニァビッグミエ リン塩基性タンパクペプチド(GPE)を 5 μ g/匹で結核死菌と乳化したものを調製 して、 両群に投与した。
GPE投与後 14 日目に、 両群の臨床症状の変化をスコア一化し、 評価した。
スコア一は前記表 1に示す基準により評価した。
上記方法により評価した結果を下記表 3に示す。
表 3
自己免疫性脳脊髄炎モデルによる本発明タンパク質の評価 群 DiNCF VI投与量( μ g/匹) GPE免疫 発症頻度 臨床スコア
1回目 2回目 投与量 (%)
(d-41) (d0) ( g)
DiNCF VI 100 100 5 33(1/3) 0.7(2, 0, 0) 対照 0 0 5 100(3/3) 2.7(3, 2, 2) d - 41は、 GPE免疫前 41 日を表す。 d0は、 GPE免疫日を表す。 すなわち、 対照群では発症率 100%、 臨床スコア一 2.7であったのに対し、 DiNCF 投与群では発症率 33%、 臨床スコア一 0.7 であり、 DiNCF VI が自己免疫性脳脊 髄炎発症を有意に抑制していることが示された。
(実施例 13) I型アレルギーの抑制による本発明のタンパク質の評価
( 1 ) 薬物の投与
生後 6週令の Wistar系雄性ラッ トを入荷後 7 日間検疫、 馴化し、 エーテル麻 酔する。 背後部体毛を剪毛し、 皮膚を体側方向に切開し、 ピンセッ トにより皮下 に長さ 30mm 程度のポケッ トを作成する。 ここに、 生理的リン酸緩衝液に溶解し た lmgZmlの DiNCF VI 200 μ 1を注入 (対照群には生理的リン酸緩衝液を使用) したォスモティックポンプ (アルザ社製 2002 型) を挿入する。 挿入後切開部を
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縫合する。
(2) 受身アナフィラキシー反応の作成
薬物投与後 21 日目にエーテル麻酔し、 背前部体毛を剪毛、 皮内 10個所に生理 食塩水で 400倍に希釈した抗 DNP-ァスカリス抗体 (株式会社 LSL社製力価 256: 1) 0. lmlをそれぞれ 5個所づつに注射する。
抗体注射 48 時間後、 DNP-ァスカリス抗原 lmg を含む 0. 5%ェヴアンスブル一生 理食塩水溶液 lmlを尾静脈に注射する。
30 分後、 頸部脱臼により屠殺し、 背部皮膚を剥離し、 裏面から抗体投与部位の 青色色素漏出を写真撮影する。
(3) 評価
写真撮影した色素漏出部位の色素密度をデンシトメータ (アト一社製) で測定 し、 対照群と比較した。
(4) 結果
上記方法により評価した結果を図 7に示す。 本図に示した結果は、 各群 3匹で の平均値から算出したものである。
以上の結果より、 DiNCF投与群は対照群に比して受身アナフィラキシー反応に より生じた青色色素漏出を有意に抑制したことが示された。 このことから DiNCF は、 アトピー性皮膚炎、 慢性気管支喘息、 花粉症等の I型アレルギー疾患に効果 を示す事が確認された。
本明細書で引用した全ての刊行物、 特許および特許出願をそのまま参考とし て本明細書にとり入れるものとする。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 免疫調節活性を有するタンパク質が提供される。 また、 IgE 産生促進活性を有するタンパク質が提供される。 これらのタンパク質は免疫調節 剤として有用であり、 賦形剤その他の医薬組成物に通常使用される成分と混合し て、 免疫調節剤、 IgE 産生促進剤を調製し、 免疫の異常に関連する種々の疾患の 治療に適用することができる。