明 細 害 象牙質知覚過敏症用歯科用組成物 技術分野
本発明は、 象牙質細管を封鎖するための歯科用組成物に関する。 さらに詳しく は、 冷 ·温水痛、 甘味痛、 酸味痛および擦過痛など疼 痛が生じる象牙質知覚過敏を象牙質钿管を封鎖して抑制するための 歯科用組成物に関する。 さらには、 本発明は安定して衛生的に保存 し得る歯科用組成物に関する。 背景技術
体温と異なる温度の空気や水などに接触した際に生じる冷温感痛、 甘い食物や酸味のある食物を口にした際に感じる甘味痛および酸味 痛、 ハブラシなどが接触した場合に生じる擦過痛などの疼痛が象牙 質知覚過敏症または歯 ¾炎によって発生する。
歯髄炎は歯髄に細菌などが感染し炎症を起こした結果として発生 するので、 この疼痛は比較的持続して発生し抜髄するしか治療法は ない。
—方、 象牙質知覚過敏は、 物理的もしくは化学的刺激に対して発 生する一過性の誘発痛である。 従って、 刺激に対する反応が過敏と なっている歯 ¾神経を緩和する手法と歯 ¾への外的刺激を遮断する 手法が象牙質知覚過敏症対策として提案されている。
P a s h 1 e y らは米国特許第 4 , 0 5 7 , 6 2 1号明細書におい て、 2重量%〜飽和液までの濃度範囲にある、 1または 2置換のァ ルカリ金属もしくはアンモニゥムのシユウ酸からなる知覚過敏症抑 制用組成物と知覚過敏症抑制方法を提案している。
特開平 4一 2 1 7 9 0 4号公報において、 今井らは混合すること によって難溶性の沈殿を生じる物質を含む Aおよび Bの 2液を順次
- z - 塗布して沈殿を形成させる歯科用処置材組成物を提案している。 該 提案では、 A液が無機または有機酸のナトリウム塩、 カリウム塩、 リチウム塩の 1〜 70 %水溶液であり、 B液がカルシウム、 亜 、 ス トロンチウム、 マグネシウム、 アルミニウム、 バリ ウム、 鉄、 銅、 銀、 鉛もしく はスズの塩化物、 硝酸塩、 硫酸塩および舴酸塩から選 択される 1種以上の物質を含有する混合物あるいは塩化カルシウム、 塩化亜鉛または塩化ス トロンチウムの 1〜70%含有水溶液である。 特開平 6— 1 45020号公報においては、 1〜 35%シユウ酸 カリ ウム溶液 (A) 、 シユウ酸アルミニウム (B) 、 2%硝酸 (C) からなる結晶生成性歯質前処理剤を提案している。
特開平 5 - 70358号公報においては、 下記 (A) 成分と (B) 成分を含有する象牙質知覚過敏治療剤で、 (A) 成分は、 水溶性亜 鉛塩とポリオールリ ン酸エステルおよび/またはその塩とを水性媒 体中で混合することにより得られる水酸化亜鉛および または酸化 亜鉛のコロイ ド、 (B) 成分はボリオール酸エステルの亜鉛塩であ ることを提案している。
特開平 5— 255029号公報において、 今井らは混合すること によって速やかにフルォロアパタイ トを生じることが可能な物質を 含む A、 Bの 2液を順次塗布して沈殿を形成させる歯科用処理用組 成物を提案している。 ここで、 A液は水溶性リ ン酸塩を 1〜3 %濃 度範囲で含有し、 かつ水溶性のフッ化物を 0.01〜5重量%含有し、 B液は水溶性のカルシウム塩を 1〜 30重量%含有する。
特開平 6— 1 1 61 53号公報においては、 アルミニゥム化合物 を含有する第一液とリ ン酸化合物、 シユウ酸化合物、 ゲイ酸化合物、 フッ化物およびアル力リ性を与える化合物から選ばれる 1種以上の 化合物を含有する第二液とからなる知覚過敏症用塗布剤が提案され ている。 この提案は、 歯質表面で沈殿が生成する化合物や組成物の 溶液を塗布することによって露出した象牙質表面で開口した象牙質 細管内に沈殿を析出させ封鎖することを目的としている。 また、 力
リウムイオンなどのある種の化合物によって知覚神経の活動を緩和 させる効果も併用している。
しかしながら、 直径 1〜 3 mと言われる象牙質钿管を封鎖する だけの大きさの沈殿を一定量象牙質表面で新たに形成させることは、 歯の性質や象牙質表面の衛生状態などの阻害条件によって困難であ つた。 また、 この目的を達成するために処置に長時間を要したり何 度も処置を繰り返すなどの方法が採用され、 それに伴って患者への 苦痛が多くなっていた。
歯髄神経を緩和する手法は、 薬剤などによって過敏になっている 神経を麻痺または緩和させることが目的であるが、 そのメカニズム は十分に解明されていない。 歯 «への外的刺激を遮断する手法とし て、 外界と歯 Kをつなぐ象牙質細管を塞ぐ方法があり、 既に記載し たように歯質表面に沈殿を発生させ形成した沈殿物によって象牙質 細管を封鎖する提案がある。 しかしながら、 象牙質表面付近の象牙 質钿管の開口具合いや性質などによって、 沈殿め発生や象牙質細管 内への沈着を十分に行うことができず、 長期的に安定して封鎖状態 を維持できなかった。
中林らは、 特開平 6 - 5 7 0 8 0号公報において (メタ) ァクリ ル酸エステルから誘導される緣返し単位、 および官能基一 S 0 3 R ( Rは水素、 アルカリ金厲またはアンモニゥムイオン) を有するビ ニル化合物から誘導される操返し単位からなる乳化重合体のェマル ジョ ンとこれを使用した象牙知覚過敏抑制の方法を提案した。 高分 子ェマルジョ ンを象牙質知覚過敏症に適用する利点と して、 比較的 粘性の低い液体で多量の高分子重合体を塗布できること、 さらに乾 燥して成膜すると水に不溶になることである。 特に、 高分子重合体 の水性ェマルジョ ンでは溶媒が水であるので毒性や換気などの取扱 いに問題が極めて少ない。 発明の開示
本発明者らは、 上記中林らの提案を追試験した桔果、 象牙知覚過 敏症を有する患者 1 7名中 1 5名に知覚過敏抑制効果が認められた c し力、し、 残る 2名には顕著な抑制効果が認められなかった。 本発明 者らは、 効果が得られなかった原因について鋭意研究したところ、 患者の象牙質钿管の開口状態および象牙質の部位と性質の相違によ つて象牙質細管に充墳されるェマルジョ ンの量ならびに形成被膜の 安定性 (維持力) が異なることを見い出した。 すなわち、 象牙質細 管の開口度合いが小さい場合はェマルジョ ンは十分に充壙されない ことがある。 また、 深部象牙質や歯根象牙質のようなハイ ドロキシ ァパタイ ト含量が少ない歯質の場合には形成被膜の象牙質表面への 密着性や密着性の維持が十分でないときがあることを見い出した。 本発明の目的は、 象牙質知覚過敏症を象牙質細管を封鎖すること により抑制するために用いられる歯科用組成物を提供することにあ る。
本発明の他の目的は、 象牙質細管の開口度合いが小さい場合でも、 象牙質細管を封鎖し得る歯科用組成物を提供することにある。
本発明のさらなる他の目的は、 象牙質知覚過敏症の抑制を即効的 および長期的に行うことができ、 かつ保持安定性に優れた歯科用組 成物を提供することにある。
本発明の上記目的および利点は、 第 1に、
( A ) カルシウム化合物と反応することによって水不溶性ないし水 難溶性の沈殿を生じ得る低分子化合物を含有することを特徴とする 象牙質知覚過敏症を抑制するための歯科用組成物によって達成され る。
また、 本発明の上記目的および利点は、 第 2に、
( A ) カルシウム化合物と反応することによって水不溶性ないし水 難溶性の沈殿を生じ得る低分子化合物、 および
( B ) カルシウム化合物、 および Zまたは
( C ) 象牙質細管怪よりも小さい粒子径を有し、 カルシウム化合物
と反応して象牙質钿管径よりも大きな凝集体を形成する重合体粒子 をェマルジョ ン粒子と して含有する水性ェマルジョ ン、
を含有することを特微とする象牙質知覚過敏症を抑制するための歯 科用組成物
によって達成される。
以下、 本発明を詳述するが、 それにより本発明の別の目的、 利点 が明らかとなろう。 発明を実施するための最良の形態
本発明における (A ) 成分は、 カルシウム化合物と反応すること によって水不溶性ないし水難溶性の沈殿を生じ得る低分子化合物で ある。 水不溶性ないし水難溶性の沈殿である目安として、 一般的に は ( A ) 成分のカルシウム塩の 2 5でにおける水への溶解度が 0 . 5 g / l 0 O m 1未溝であることが好ましい。
本発明における (A ) 成分のカルシウム塩は、 水不溶性あるいは 難溶性塩である。 水不溶性または難溶性は、 (A ) 成分を含む溶液 とカルシウムイオンを含む溶液を混合した際の沈殿生成の有無で判 別される。 沈殿生成の有無は、 一般的に溶解度積とイオン積の関係 で知ることができる。 すなわち、 (A ) 成分のカルシウム塩のィォ ン積が溶解度積と等しい場合、 もしくはイオン積が溶解度積よりも 大きい場合に水難溶性および水不溶性とすることができる。 簡便な 沈殿生成の目安として、 水溶性有機酸またはその水溶性塩の 1〜5 重量%の濃度範囲の水溶液と同濃度範囲の塩化カルシウム水溶液を 混合した場合に肉眼的に沈殿の生成を確認する方法がある。
本発明において (A ) 成分としては、 リ ン酸、 リ ン酸三アンモニ ゥム、 リ ン酸水素二アンモニゥム、 リ ン酸二水素アンモニゥム、 リ ン酸三カリウム、 リ ン酸水素二カリウム、 リ ン酸二水素カ リウム、 リ ン酸三ナト リウム、 リ ン酸水素ニナト リ ウム、 リ ン酸二水素ナト リウム、 リ ン酸三リチウム、 リ ン酸水素二リチウム、 リ ン酸二水素
リチウム、 リ ン酸水素アルミニウム、 リ ン酸水素アンモニゥムナト リウム、 リン酸二水素ス トロンチウム、 リ ン酸水素バリウム、 リン 酸二水素マグネシウム、 リ ン酸ヒ ドロキシルアンモニゥム、 リ ン酸 フッ化ナ トリゥムなどのリ ン酸またはリ ン酸化合物; 亜リ ン酸、 亜 リ ン酸カリウム、 亜リ ン酸水素カリウム、 亜リ ン酸ナトリウム、 亜 リ ン酸水素ナトリゥム、 亜リン酸水素マグネシウムなどの亜リ ン酸 または亜リ ン酸化合物 ; 炭酸アンモニゥム、 炭酸カリ ウム、 炭酸水 素アンモニゥム、 炭酸水素カリ ウム、 炭酸水素ナ ト リ ウム、 炭酸水 素マグネシウム、 炭酸水素マグネシウムカリウム、 炭酸ナ トリ ウム、 炭酸カリウム、 炭酸ナトリウムカリウムなどの炭酸化合物、 さらに は硫酸、 硫酸アンモニゥム、 硫酸水素アンモニゥム、 硫酸ナ 卜 リウ ムアンモニゥム、 硫酸カリ ウムアンモニゥム、 硫酸亜鉛アンモニゥ ム、 硫酸アルミニウムアンモニゥム、 硫酸コバルトアンモニゥム、 硫酸鉄アンモニゥム、 硫酸銅アンモニゥム、 硫酸マグネシウムアン モニゥムなどの硫酸または硫酸化合物を挙げることができる。 この 中では、 硫酸化合物、 特に硫酸アンモニゥム化合物が好ま しく用い られる。 水溶性の目安としては 2 5 eCにおける水への溶解度が 0 . 5 g / 1 0 O m 1以上であることが好ましい。
本発明の組成物は、 (A ) 成分のみを含有する場合には、 (A ) 成分の濃度は、 好ましくは 1 . 0重量%〜飽和港度までの範囲にある 水溶性もしく は水性溶液であることが好ましい。 水性とは水および 水と混合できる溶媒を含む水溶液を示し、 水と混合できる溶媒とし ては、 例えばメタノール、 エタノール、 ブロバノール、 イソブロビ ルアルコールなどのアルコール類; アセ トン、 メチルェチルケ トン などのケ トン類; テトラヒ ドロフラン (T H F ) などのエーテル類 ; N , N —ジメチルホルムアミ ドなどのア ミ ド類; ジメチルスルフォ キサイ ド (D M S O ) などを挙げることができる。 これらのうちの エタノール、 アセ トンおよび D M S 0が好ま しく用いられる。 ここ で使用できる水としては、 例えば蒸留水、 イオン交換水または生理
食塩水などが挙げられる。 ここでは蒸留水およびイオン交換水が好 ましく用いられる。 歯牙へ用いる場合に生体への毒性や刺激性を考 慮して、 水単独でも、 もしくは水とエタノールやアセ トンの混合液 として用いることが特に好ましい。
本発明において、 (A ) 成分のみを含有する場合、 水溶性も しく は水性溶液中に液体の粘度を増加させるために增粘剤を加えること ができる。 增粘剤としては、 水もしくは水性溶液に溶解もしく は分 散するものが好ましく、 具体的にはポリ ビニルアルコール、 ポリ ビ 二ルビ口リ ドン、 ポリアク リル酸またはその金属もしくはアンモニ ゥム塩、 ポリエチレングリコール、 ポリプロピレングリコール、 ポ リスチレンスルホン酸およびノまたはその共重合体の金属塩もしく はァンモニゥム塩などの水溶性の重合体 ; グリセロールやエリスリ トールなどの多価アルコールなどを挙げることができる。
また、 (A ) 成分もしく は (A ) および (B ) 成分との反応によ つて歯質上に形成するカルシウム化合物は、 種 の形態を有する結 晶であり、 一般的には球状、 比較的丸みのあるラウン ド状、 板状お よび針状などの形態を示し、 その大きさは結晶形態によって異なる が、 球状あるいはラウンド状では平均直径 0 . 1〜 1 0 // mの範囲、 板状では平均的な 1辺の長さが 0 . 1〜 1 0 mの範囲、 針状では太 さが 0 . 1〜5 〃 m、 長さが 1〜; L 0 # mの範囲である。 このような 形状のカルシウム塩は、 歯質表面および象牙質細管内に (A ) 成分 から生成する水不溶性ないし水難溶性沈殿によって象牙質細管を封 鎖する役割を果たす。
本発明において、 (B ) 成分はカルシウム化合物である。
( B ) 成分は必ずしも (A ) 成分といっしょに使用しなくても良 いが、 (A ) 成分の水不溶性ないし水難溶性沈殿の生成を促進する 作用を有し、 また (B ) 成分自体が象牙質細管を封鎖する役割を有 する。 従って、 (B ) 成分は好ましくは水または水性溶媒中に溶解 もしく は分散していることが望ましい。 さらに、 (B ) 成分自体が
象牙質細管を封鎖するためには、 象牙質钿管径よりも小さなサイズ であることが好ま しい。
象牙質細管の直径は、 位匿や深さ、 また個体差があるものの通常 1〜 3 mの範囲にある。
なお、 象牙質細管の直径は、 通常、 抜去した歯牙のエナメル質を 削り取って露出した象牙質表面を歯磨剤と歯ブラシを使って 1分以 上ブラッシングを行った後、 水中で超音波洗浄を施し、 走査型電子 顕微鏡 (S EM) にて観察することによって計測できる。
(B) 成分として、 水溶性、 水不溶性、 水難溶性のカルシウム化 合物を使用することができる。 水溶性のカルシウム化合物としては、 塩化カルシウム、 次亜塩素酸カルシウム、 硝酸カルシウム、 水硫化 カルシウム、 チォシアン化カルシウム、 チォ硫酸カルシウム、 ヨウ 化カルシウムなどを挙げることができる。 (A) 成分と水溶性の (C) 成分のみを使用する場合には、 (A) と (B) 成分の合計 1 00重量部において (A) 成分が 50~ 99.9重量部、 好ましくは 60〜 99.9重量部、 さらに好ましくは 80〜 99.9重量部の範 囲が適している。 水不溶性のカルシウム化合物としては、 炭酸カル シゥム、 水酸化カルシウム、 酸化カルシウム、 硫酸カルシウム、 リ ン酸水素カルシウム、 リ ン酸カルシウム、 ハイ ドロキシアパタイ ト などの無機カルシウム化合物; ギ酸カルシウム、 酢酸カルシウム、 シユウ酸カルシウム、 酒石酸カルシウムなどの有機カルシウム化合 物を挙げることができる。 (A) 成分と水不溶性または水難溶性の (B) 成分のみを使用する場合には、 (A) と (B) の合計 1 00 重量部において (A) 成分が 0.5〜99.9重量部、 好ま しく は 1 0〜90重量部、 さらに好ましく は 20〜 80重量部の範囲である。 水溶性カルシゥム化合物と水不溶性または水難溶性のカルシウム化 合物とを組合せて用いることもできる。
(A) 成分および (B) 成分からなる組成物の使用方法として、 ① (A) 成分と (B) 成分を一緒に含む一つの容器中に混合して保
存し、 塗布により被膜を形成して使用する方法、
② (A ) 成分を含む組成物の入った容器 Aと (B ) 成分を含む組成 物の入った容器 Bによって保存して、 それぞれの組成物を逐次的に 塗布するかまたは使用直前に混合し、 塗布することにより被膜を形 成して使用する方法、
などを例示することができる。
①および②の方法において、 (B ) 成分は (A ) 成分と混合して 歯面に塗布する以前に、 (A ) 成分の水不溶性ないし水難溶性の沈 殿を完全に生成させない量で使用する。
すなわち、 歯面に塗布する以前にはカルシウム化合物と反応して いない (A ) 成分が存在していることが好ま しい。
( A ) 成分と (B ) 成分の反応速度を調整し、 カルシウム化合物 の生成量をコン トロールすることによって、 象牙質細管中に形成さ れる水不溶性または水難溶性化合物の生成量および結晶サイズを調 整することが可能である。
本発明における (C ) 成分は、 高分子ェマルジヨ ン (ラテックス と呼ぶ場合もある) であり、 天然樹脂や合成樹脂を水中に乳化また は分散させたものである。 そして (C ) 成分は乳化または分散して いる重合体が象牙質細管径 (直径) より も小さい粒子径を有するェ マルジヨ ン粒子を含み、 しかも該ェマルジヨ ン粒子がカルシウム化 合物と反応することによって象牙質細管径よりも大きな径の凝集体 を形成することができることに特徴がある。
象牙質钿管を封鎖するのに十分な深さにまで水性ェマルジヨ ンを 侵入させるために、 重合体のェマルジョ ン粒子の粒径は象牙質細管 の直径よりも小さいことが必要である。 象牙質細管の直径は、 位置 や深さ、 また個体差があるものの通常 1〜3 # mの範囲にある。 従 つて、 (C ) 成分中の重合体のェマルジヨ ン粒子の平均粒径は 3 m以下であることが好ましく、 より好ま しく は 1 m以下である。 なお、 象牙質細管の直径は、 通常、 抜去した歯牙のエナメル質を
削り取って露出した象牙質表面を歯磨剤と歯ブラシを使って 1分以 上ブラッ シングを行った後、 水中で超音波洗浄を施し、 走査型電子 顕微鏡 ( S E M ) にて観察することによって計測できる。
また、 (C ) 成分のェマルジヨ ン粒子の粒径には分布があり、 す ベてのェマルジョ ン粒子の粒径が象牙質細管径よりも小さい必要は ない。 (C ) 成分中のェマルジヨ ン粒子のうち、 粒径が 3 m未満 のものが 5 0重量%以上占めることが好ましく、 そしてすベてのェ マルジョ ン粒子の粒径が 3 m未満であることがより好ま しい。 上 記の条件に加えて、 (C ) 成分のェマルジヨ ン粒子のうち、 粒径が 1 m以下のものが 6 5重量%以上占めることが特に好ま しく、 7 5重量%以上占めることがとりわけ好ま しい。 ェマルジョ ン粒子が 上記のような粒径分布を有することにより本発明の目的が優れて達 成される。
本発明の (C ) 成分として使用できる重合体としては、 ラジカル 重合性単量体から合成される単独重合体または共重合体を挙げるこ とができる。 ラジカル重合性単量体としては、 例えばブタジエン、 イソプレンなどの共役ジェン単量体類; スチレン、 α —メチルスチ レン、 ク口ルスチレンなどの芳香族ビニル単量体類; ァク リ ロニト リル、 メ タク リ ロニト リルなどのシァン化ビニル単量体類 ; (メ タ) ァク リル酸 (以下、 アク リル酸とメタク リル酸の総称としてこのよ うに記載する) メチル、 (メタ) アク リル酸ェチル、 (メ タ) ァク リル酸ブチルなどの (メタ) アク リル酸アルキルエステル類: 塩化 ビニル、 臭化ビニル、 塩化ビニリデン、 臭化ビニリデンなどのハロ ゲン化ビニルおよびビニリデン類 ; 酢酸ビニル、 プロピオン酸ビ二 ルなどのビニルエステル類などを挙げることができる。 これらの単 量体は単独であるいは 2種以上併用して重合に用いられる。
上記ラジカル重合性単量体から合成される重合体は、 カルシウム 化合物と反応する官能基と化学結合していることが好ましい。 カル シゥム化合物と反応する官能基としては、 例えばカルボキシル基、
少なく とも 1個の水酸基がリ ン原子に結合している基およびスルホ ン酸基よりなる群から選択される少なく とも 1種が挙げられる。 上 記官能基を導入する方法として、 例えばボリスチレンをスルホン化 する方法で代表されるポリマーへ官能基を導入する方法、 カルボン 酸エステルまたはリン酸エステルを含有するポリマーを加水分解す る方法を挙げることができる。 さらに、 上記のラジカル重合性単量 体と上記官能基あるいは上記官能基に水中で容易に変換し得る官能 基を有するラジカル重合性単量体を共重合させる方法があり、 この 方法が好ましい。 カルシウム化合物と反応する官能基を有するラジ カル重合性単量体として、 以下の化合物を例示することができる。 力ルボキシル基あるいはカルボキシル基に水中で容易に変換し得 る官能基を有するラジカル重合性単量体としては、 例えばモノカル ボン酸、 ジカルボン酸、 ト リカルボン酸およびテトラカルボン酸、 これらの塩および無水物を挙げることができる。 具体的には (メタ) アク リル酸、 マレイン酸、 P—ビニル安息香酸、 1 1 — (メタ) ァ クリロイルォキシー 1 , 1ーゥンデカンジカルボン酸 (M A C— 1 0 ) 、 1 , 4ージ (メタ) ァク リロイルォキシェチルビロメ リ ッ ト酸、 6— (メ タ) ァク リロイルォキシェチルナフタレン一 1 , 2 ,6— ト リ力 ルポン酸、 4一 (メタ) ァクリロイルォキシメチルト リメ リ ッ ト酸 およびその無水物、 4— (メタ) ァクリ ロイルォキシェチルト リメ リ ッ ト酸およびその無水物、 4一 (メタ) ァクリロイルォキシブチ ノレト リメ リ ッ ト酸およびその無水物、 4 - [ 2—ヒ ドロキシー 3— (メ タ) ァク リロイルォキシ] ブチルトリメ リ ッ ト酸およびその無 水物、 2 , 3—ビス ( 3 , 4—ジカルボキシベンゾィルォキシ) ブロ ビル (メタ) ァク リ レー ト、 Ν , Ο—ジ (メタ) ァク リ ロイルォキシ チロシン、 0— (メタ) ァクリ ロイルォキシチロシン、 Ν— (メタ) ァク リ ロイルォキシチロシン、 Ν— (メタ) ァク リロイルォキシフ ェニルァラニン、 Ν— (メタ) ァク リロイル ρ—ァミ ノ安息香酸、 Ν— (メタ) ァク リロイル 0—ァミ ノ安息香酸、 2または 3または
4 - (メ タ) ァク リロイルォキシ安息香酸、 2—ヒ ドロキシェチル (メ タ) ァク リ レートとビロメ リ ツ ト酸ニ無水物の付加生成物 (P MDM) 、 2—ヒ ドロキシェチル (メタ) ァクリ レー トと無水マレ イン酸または 3 , 3 ', 4 , 4 '—ベンゾフヱノ ンテトラカルボン酸ニ無 水物 (B TDA) または 3 , 3 ', 4.4 '—ビフエニルテ トラカルボン 酸二無水物の付加反応物、 2— (3, 4—ジカルボキシベンゾィル ォキシ) 1.3—ジ (メタ) ァク リロイルォキシプロパン、 N—フエ ニルグリ シンまたは N—ト リルグリ シンとグリ シジル (メ タ) ァク リ レー トとの付加物、 4一 [ (2—ヒ ドロキシー 3— (メ タ) ァク リロイルォキシブロビル) ァミ ノ] フタル酸、 3または 4一 [N— メチル N— (2—ヒ ドロキシー 3— (メタ) ァク リロイルォキシブ 口ビル) ァミ ノ] フタル酸などを挙げることができる。 これらのう ち、 1 1ーメ タク リロイルォキシー 1.1一ゥンデカンジカルボン酸 (MAC— 1 0) および 4ーメタク リロイルォキシェチルト リメ リ ッ ト酸 (4一 ME T) またはその無水物 (4一 ME T A) が好まし く用いられる。
少なく とも 1個の水酸基がリ ン原子に結合している基および水中 で容易に該基に変換し得る官能基として、 例えばリ ン酸エステル基 で水酸基を 1個または 2個有する基およびその塩を好ましく例示す ることができる。 このような基を有する重合性単量体としては、 例 えば 2— (メタ) ァク リロイルォキシェチルァシ ドホスフエ一 卜、 2および 3— (メ タ) ァク リロイルォキシブロビルァシドホスフエ ー ト、 4一 (メタ) ァク リロイルォキシブチルァシ ドホスフェー ト、 6 - (メ タ) ァク リロイルォキシへキシルァシドホスフェー ト、 8 一 (メタ) ァク リ ロイルォキシォクチルァシ ドホスフェー ト、 10 一 (メタ) ァク リ ロイルォキシデシルァシドホスフェー ト、 1 2— (メ タ) ァク リ ロイルォキシドデシルァシ ドホスフェー ト、 ビス {2— (メタ) ァクリ ロイルォキシェチル} ァシ ドホスフェー ト、 ビス { 2または 3— (メタ) ァク リロイルォキシブロビル } ァシド
ホスフェート、 2— (メタ) ァクリ ロイルォキシェチルフエニルァ シドホスフェー ト、 2— (メタ) ァクリ ロイルォキシェチル p—メ トキシフヱニルァシドホスフヱ一 トなどを挙げることができる。 こ れらの化合物におけるリ ン酸基を、 チォリ ン酸基に置き換えた化合 物も例示することができる。 これらのうち、 2— (メ タ) ァク リロ ィルォキシェチルフエ二ルァシ ドホスフエー ト、 1 0— (メタ) ァ クリ ロイルォキシデシルァシドホスフヱ一 卜が好ましく用いられる。 スルホン酸基あるいはスルホン酸基に容易に水中で変換し得る官 能基を有する重合性単量体として、 例えば 2—スルホェチル (メタ) ァク リ レート、 2または 1ースルホー 1または 2—ブロビル (メタ) ァク リ レー ト、 1または 3—スルホー 2—ブチル (メ タ) ァク リ レ ート、 3—ブロモー 2—スルホー 2—プロビル (メタ) ァク リ レー ト、 3—メ トキシー 1ースルホー 2—ブロビル (メタ) ァク リ レー ト、 1 , 1ージメチルー 2—スルホェチル (メタ) ァク リルァミ ド、 スチレンスルホン酸などの酸およびそれらの塩を挙げることができ る。 これらのうち、 2—メチルー 2— (メタ) アク リルアミ ドブロ バンスルホン酸またはスチレンスルホン酸およびこれらの塩が好ま しく用いられる。
(C) 成分に含まれる重合体の数平均分子量 Mnは、 G P C法で 測定して通常 3 ,000以上であり、 好ま しく は 7.000以上、 さ らに好ま しく は 1 0 , 000以上である。 数平均分子量の上限は通常 500万である。 (C) 成分はェマルジョ ン粒子としての重合体を 0.1〜60重量%、 好ましくは 0.5 ~ 40重量%、 さらに好まし くは 1〜 20重量%の範囲で含有することができる。
好ま しい (C) 成分は、 炭素数 4〜8の (メタ) アクリル酸アル キルエステル単位とスチレンスルホン酸単位をモル比 (ァク リル酸 アルキルエステル単位 Zスチレンスルホン酸単位) で 50/50〜 99.5/0.5含有する共重合体をェマルジヨン粒子として含有す るェマルジヨ ンである。 この共重合体のェマルジヨ ンは、 特開平 6
- 5 7 0 8 0号公報に提案したものを使用することができる。 例え ば該共重合体のェマルジョ ン粒子を高速ミキサーやホモジナイザー などの分散 ·粉砕器で直径 3 // m以下、 好ま しくは直径 1 z m以下、 最も好ま しくは直径 0 . 5 μ m以下のェマルジョン粒子となし、 この ェマルジヨン粒子が (C ) 成分の中に 0 . 5重量%以上存在するよう に調製した (C ) 成分を好ましく使用することができる。 また、 粒 径が 1 . 0 m以下の上記共重合体のェマルジョン粒子が、 ェマルジ ョ ン粒子全体の 5 0重量%以上、 特には 7 5重量%以上占めること が好ましく、 そしてェマルジョ ン粒子の全体を占めることが最も好 ましい。
( C ) 成分に含まれる象牙質細管怪より も小さい粒子径を有する ェマルジヨ ン粒子は、 (B ) 成分であるカルシウム化合物、 例えば 塩化カルシウムを (C ) 成分中に添加したときに、 該カルシウム化 合物と反応して象牙質钿管径よりも大きな径を有する凝集体を形成 し得る。
上記カルシウム化合物を、 ェマルジョ ン中の不揮発性成分 1 0 0 重量部に対して 1 0〜 1 0 0重量部の範囲で加えると、 通常、 該凝 集体の怪は 3 mを超え、 好ま しく は 1 0 m以上、 より好ま しく は 5 0〜数千 mに達する。
このような性質を有する成分 (C ) を本発明の組成物に用いるこ とにより、 象牙質細管に侵入した小さい怪のェマルジョン粒子は、 主に象牙質細管を形成する歯周象牙質中に存在するハイ ドロキシァ パタイ 卜から溶出したカルシウムイオンや象牙質中に含まれる髄液 中のカルシウムイオン、 さらには (B ) 成分と反応して、 大きな凝 集体が多数形成される。
この形成された多数の大凝集体は、 象牙質細管内の長さ方向に連 続的に充塡された状態 (被膜) となる。 このような状態が形成され ることにより、 該細管は封鎖される。 該細管が封鎖された状態は、 本発明の (A ) ないし (B ) 成分を使用することにより速かに形成
される。 またこの状態は、 凝集体と象牙質の密着性が長く維持され るので、 長期間保持される。
(C) 成分 1 00重量部中の不揮発性成分は 0.1 ~60重量部、 好ま しく は 0.5〜 40重量部、 さらに好ま しくは 1 ~ 20重量部の 量割合にあるのが望ましい。
(A) 成分および (C) 成分からなる組成物の使用方法として、
① (A) 成分と (C) 成分を一緒に含む一つの容器に混合して保存 し、 塗布することによって被膜を形成して使用する方法、
② (A) 成分を含む組成物の入った容器 Aと (C) 成分を含む組成 物の入った容器 Cによって保存して、 それぞれの組成物を逐次的に 塗布するかまたは使用直前に混合し、 塗布することにより被膜を形 成して使用する方法、
などを例示することができる。
本発明におけて、 (A) 成分および (C) 成分のみを使用する場 合には、 (A) 成分と (C) 成分の合計重量 100重量部のうち、 (A) 成分が 0.01〜 99重量部の範囲、 好ましくは 0.1〜 50 重量部、 さらに好ましくは 0.5〜 30重量部の範囲が望ま しい。
また、 (C) 成分中にあるエマルジョ ン粒子である重合体が (A) および (C) 成分の合計重量 1 00重量部のうち 0.1〜6 0重量部、 好ま しく は 0.5 ~40重量部、 さらに好ま しくは 1〜 20重量部の 範囲であるのが有利である。
(A) 成分と (C) 成分を混合して使用する、 例えば先に述べた 使用方法①および②の使用直前に混合する場合には、 混合直後に (C) 成分を著しく凝集させない範囲で (A) 成分を配合させるこ とが好ま しい。 混合直後に著しく凝集させてしまうと、 大凝集体が 多数形成するため、 ェマルジョ ン粒子が象牙質細管内部にまで入り 込めなく なり、 その結果、 象牙質細管封鎖率を低下させてしまう場 合がある。
また、 (A) 、 (B) および (C) 成分からなる組成物の使用方
法として、
① (A) 〜 (C) 成分を一緒に含む一つの容器に混合して保存し、 塗布することによって被膜を形成して使用する方法、
② (A) 成分を含む組成物の入った容器 A、 (B) 成分を含む組成 物の入った容器 Bおよび (C) 成分を含む組成物の入った容器 Cに よって保存して、 それぞれの組成物を逐次的に塗布するかまたは使 用直前に混合し、 塗布することにより被膜を形成して使用する方法、
③ (A) 成分および (C) 成分を一緒に含む組成物を一つの容器 A じに、 (B) 成分を含む組成物の入った容器 Bによって保存し、 そ れぞれの組成物を逐次的に塗布するかまたは使用直前に混合し、 塗 布することによって被膜を形成して使用する方法、
などを例示することができる。
本発明において、 (A) 、 (B) および (C) のすベての成分を 使用する場合には、 (A) 、 (B) および (C) 成分の合計 1 00 重量部に対して、 (C) 成分が 50〜99.9重量部、 好ま しく は 7 0〜99.9重量部、 さらに好ましく は 80〜 99.9重量部の範囲 となるように、 (A) 成分と (B) 成分の合計を調整することが好 ましい。
ここでも (A) 成分と (B) 成分の割合は、 先に記載した比率で 使用することができる。 また、 (C) 成分中にあるェマルジヨ ン粒 子である重合体が (A) 、 (B) および (C) 成分の合計 1 00重 量部のうち、 0.1〜60重量部、 好ましくは 0.5〜 40重量部、 さらに好ましくは 1〜 20重量部の範囲であるのが有利である。
本発明の歯科用組成物には、 発明の効果を損なわない濃度範囲に おいて凝集促進剤を添加することができる。 沈殿促進剤の具体的な 例と して、 塩酸、 硝酸などの無機酸 ;鉄、 銅、 亜鉛、 ストロンチウ ム、 銀、 スズなどの塩化物および酸化物 ;纔酸、 酢酸、 乳酸、 クェ ン酸、 ィ タコ ン酸、 マレイ ン酸、 コハク酸、 リ ンゴ酸、 タ ンニン酸、 トルエンスルホン酸、 アジビン酸、 酒石酸、 ァスコルビン酸、 有機
酸およびその金厲塩; さらには E D T Aなどが挙げられる。 また、 必要に応じてフッ化ナトリゥムゃフッ化カリゥムなどのフッ化物を 使用することもできる。
本発明者らのさらなる研究によれば、 本発明の (A ) 、 (B ) お よび Zまたは (C ) 成分からなる組成物によって象牙質表面上に形 成された被膜の耐久性は、 ェマルジョンの分散媒に含まれている金 厲イオンの濃度によって影響を受け、 金属イオン濃度が高いほど被 膜の耐久性は低下することが明らかになった。 そのため、 ェマルジ ヨ ンの分散媒中の金属イオンと被膜の耐久性を検討したところ、 ェ マルジヨ ンを精製し、 金属イオン濃度を好ま しく は 1 0 0 0 p p m 以下、 より好ましくは 8 0 0 p p m以下、 最も好ま しくは 5 0 O p p m以下にすることによって良好な被膜の耐久性が得られることが 判明した。
金属イオン濃度を上記のように低濃度にする方法と して、 加水限 外 ¾過法および透析法を用いることができる。 なかでも、 加水限界 «過法が好ま しい方法である。
加水限外 «過法は膜 «過や膜分離手法のひとつとして食料品、 医 薬をはじめ工業的にも使用されている。 限外濂過装置および膜は、 編集幹事 ·清水博、 監修 · 中垣正幸、 「膜処理技術大系」 (フジテ クノ システム出版) において記載されている。
本発明においては、 上記の害物記載の装置を使用することができ、 月刊フー ドケ ミカル' 9 0 1 2月号、 日笠勝著 「平膜型 U F装置の 最近の応用」 に記載の U F装置および膜を使用することも出来る。 さらに具体的には、 例えば、 ローヌ ·プーラン製 P Cカセッ トシス テムを使用することができる。 また、 カセッ ト状になった膜の素材 としては、 ポリアクリ ロニ トリル共重合体、 ポリ フッ化ビニリデン、 スルホン化ポリスルホンおよびボリエーテルスルホンなどを挙げる ことができ、 特にスルホン化ポリスルホンが好ま しく使用できる。 本発明において、 ェマルジョ ンの分散媒中の金属イオン濃度を減
少するために使用できる水として、 通常の蒸留水、 脱イオン水、 精 製水などを挙げることができる。 さらに、 例えば水の電気分解など によって得られる強酸化水や強酸性水などと呼ばれる水も使用する ことができる。 上記の水は、 含有する金属イオン濃度が、 好ま しく は l O O p p m以下、 より好ま しく は 1 0 p p m以下、 最も好まし くは 1 p p m以下であることが望ま しい。
さらに、 本発明においては、 口腔内で使用される組成物であるこ とを考慮して、 日本薬局法の基準に適合した水および食品添加物と して認可された水など医療、 医薬および食品などの基準に適合した 水を使用することが好ましい。
本発明の (C ) 成分は、 分散媒中の金属イオン濃度を 1 0 0 0 p p m以下にすることによって良好な被膜の耐久性が得られる効果の 他に、 驚くべきことには、 微生物の繁殖を抑制できることを新たに 見いだした。 (C ) 成分の分散媒中の金属イオン濃度を 1 0 0 0 p p m以下にすることによって、 カビの発生が認められなく なり、 さ らにカビを混入させても生育しないことが明らかになった。 このよ うな力ビなどの微生物の発生および繁殖は、 衛生的でないばかりで なく、 悪臭の発生ゃェマルジョ ン粒子の凝集によってェマルジョ ン が破壊されやすいので好ま しくない。
ェマルジヨ ン中の微生物の発生を防ぐために、 防腐剤成分 (D ) を使用することができる。 ここで、 防腐剤は防ばい剤を含む概念で ある。
使用しうる防腐剤としては、 工業的に使用しうる一般的な防腐剤 を挙げることができる。 しかしながら、 本発明の目的に好適な防腐 剤としては、 人体に対して毒性が低く、 衛生的なものであり、 エマ ルジョ ン粒子を短期的、 長期的に著しく凝集させずに知覚過敏抑制 効果を損なわないものを選択すべきである。 ェマルジョン粒子の凝 集性は防腐剤の化学構造や使用量によって強く影響を受ける。 一方、 防腐剤の防腐効果はェマルジョ ンを構成する重合体の成分や組成、
ェマルジョン中の種々のカチォンゃァ二オンなどの溶解成分の濃度 およびェマルジヨ ンの p Hなどによって強く影響を受ける。 従って、 人体に対する毒性 ·衛生、 ェマルジョン粒子が凝集しないことおよ び防腐効果の 3要素を满たす組合せを選定する。
本発明の歯科用組成物に好適に使用しうる防腐剤 (D) 成分とし て、 具体的にはエタノール、 n—ブロバノール、 イソブロパノール などの脂肪族アルコール類 ; クロロブタノールや 2—プロモー 2— ニトロ一ブロパノール一 1 ,3—ジオール (以下、 ブロノポールと略 記する) などのハロゲン化脂肪族アルコール類; 2.4—ジクロ口べ ンジルアルコール、 2—フエノキシエタノール、 フエノキシィロブ ロバノール、 フエニルエチルアルコール、 3— (4ークロロフエノ キシ) 一 1 , 2—プロパンジオールなどの芳香族アルコール ; 5—ブ 口モー 5—二トロー 1, 3—ジォキサン、 ホルムアルデヒ ド、 バラホ ルムアルデヒ ド、 グルタルアルデヒ ドなどのアルデヒ ド類およびへ キサメチレンテトラミ ン、 モノメチロールジメ手ルヒダン トイ ン、 ジメチロールメチルヒダン トイ ンなどの酸性条件下でアルデヒ ド類 を生成させうるアルデヒ ド徐放剤類; クロロアセ トアミ ドなどのァ ミ ド類; Ν,Ν' —メチレン一ビス (Ν' — (1一 (ヒ ドロキシメチ ル) 一 2.5—ジォキソー 4一イ ミダゾリ ジニル) ゥレア、 Ν— (ヒ ドロキシメチル) 一 Ν— ( 1 , 3—ジヒ ドロキシメチルー 2 ,5—ジ ォキソ一 4一イ ミ ダゾリ ジニル) 一 N' — (ヒ ドロォキシメチル) ゥレアなどのウレァ類 ; 亜硫酸ナト リウム、 亜硫酸カリウム、 重亜 硫酸ナト リウム、 重亜硫酸カリウム、 ピロ亜硫酸ナト リウム、 ピロ 亜硫酸力 リゥムなどの無機亜硫酸塩類、 重亜硫酸塩類およびピロ亜 硫酸塩類 ; ホウ酸などの無機酸類; ギ酸、 ブロビオン酸、 1 0—ゥ ンデセン酸、 ソルビン酸、 安息香酸、 サリチル酸、 2—ァセチルー 5—ヒ ドロキシ一 3—ォキソ一 4一へキサン酸 <5ラク トンなどの有 機酸化合物類 ; 2.6—ジァセチルー 7.9—ジヒ ドロキシー 8.9 b 一ジメチルー 1.3— (2 H、 9 b H) ージベンゾフランジオンなど
の抗生物質類 ; P—ヒ ドロキシ安息香酸メチル、 P—ヒ ドロキシ安 息香酸ェチル、 P—ヒ ドロキシ安息香酸 n—プロビルならびにィソ ブロビル、 p—ヒ ドロキシ安息香酸 n—ブチルまたはイソブチルま たは tーブチル、 p—ヒ ドロキシ安息香酸べンジルなどの p—ヒ ド ロキシ安息香酸エステル化合物類 ; 4一クロル一 3—メチルフエノ ール、 4一クロル一 3.5—キシレノール、 3.4 , 5.6—テ トラブ 口モー o—ク レゾール、 2.4—ジクロロー 3 , 5—キシレノール、 2—べンジルー 4一クロローフエノール、 2,2' —メチレン一ビス 一 (4—クロ口フエノール) 、 3.3' —ジブロモ一 5 ,5' —ジク ロロ一 2 ,2' —ジヒ ドロキシージフエニルメ タン、 2 ,2' —メチ レンビス (3 , 4.6— ト リ クロ口フエノール) などのハロゲン化フ エノール化合物類; 4一クロル一 5—メチルー 2— ( 1ーメチルェ チル) フエノール、 1ーメチルー 2—ヒ ドロキシー 4一イ ソブロビ ルべンゼン、 2—フエニルフエノール、 4—イソブロビル一 3—メ チルーフエノールなどのフエノール化合物類; 2 , 4 , 4 ' — 卜 リク ロロ一 2 ' — ヒ ドロキシジフエニルエーテルなどのジフエニルエー テル化合物類 ; 3 , 4.4, 一ト リ クロロカルバニリ ド、 4 ,4' ージ クロロー 3— (3—フルォロメチル) カルバニリ ドなどのカルバニ リ ド化合物類 ; 4 ,4' ージアミ ジノ ー α , ωジフエノキシプロバン イセチォネー ト、 4.4' 一 ( ト リ メチレンジォキサン) 一ビス一 ( 3—ブロモベンザミ ジン) ジイセチォネー ト (以下、 ジブロモブ ロバミ ジンと略記する) 、 1 ,6—ジ (4一ア ミ ジノフヱノキシ) 一 η—へキサン (以下、 へキサミ ジンイセチォネ一 トと略記する) な どのべンザミ ジン化合物類 ; ビリ ジン一 1—ォキサイ ドー 2—チォ 一ルーナ ト リ ウム塩、 ジンクビス一 ( 2—ビリ ジンチオール一 1一 オキサイ ド) ビス一 ( 2—ピリ ジルチオ) ジンクー 1 , 1 ' 一ジォキ サイ ド (ジンク ビリ ジオン) などの環状チォヒ ドロキサム酸類また はその塩類; 5 アミ ノー 1, 3—ビス ( 2—ェチルへキシル) 一 5 一メチルへキサヒ ドロビリ ミ ジン (ヘイセチジン) 、 ト リス一ヒ ド
口キシェチルへキサヒ ドロ トリァジンなどの N—ァセタール化合物 類; N— (ト リクロロメチルチオ) 一 4ーシクロへキサン一 1 , 2— ジカルボキシミ ド (カブタン) などのフタルイ ミ ド誘導体類; 6— ァセ トキシー 2 , 4—ジメチルー m—ジォキサン (ジメ トキサン) な どの o—ァセタール化合物類; 4 , 4一ジメチルー 1 , 3—才キサゾ リ ジン (ォキサジン A ) などのォキサゾリ ジン化合物類; 8—ヒ ド 口キシキノ リ ンなどのキノ リン化合物類; ビス (p—クロ口フエ二 ルジグァナイ ド) へキサン、 ボリへキサメチレンビグアナィ ド塩酸 塩などの陽ィォン性物質類; アルキルト リメチルァンモニゥムブ口 マイ ド、 N— ドデシルー N . N—ジメチルベンジルアンモニゥム、 N N—ジメチルー N— (2— (2— ( 4— (1 . 1 , 3 , 4—テトラメチ ルブチル) フエノキシ) エトキシ) ェチル) ベンゼンメタンアンモ ニゥムクロライ ドなどの 4級塩化合物類;ェチルマーキュリーチォ サリ シレート、 酢酸フユニル水銀などの有機水銀化合物類 ; よう素 酸ナ ト リウムなどのよう素化合物類; グリセリルモノラウレー ト類 ; 1 ーヒ ドロキシー 4ーメチルー 6— ( 2 . 4 , 4—ト リメチルペン チル) 一 2— ( 1 H ) ビリ ドンエタノールア ミ ン塩などのピリ ドン 誘導体類などを挙げることができる。 これらの防腐剤は使用するェ マルジョ ンの著しい凝集または象牙質細管封鎖性を阻害しないもの を選択使用することが好ま しい。
(メタ) ァクリル酸アルキルエステルとスチレンスルホン酸の共 重合体からなるェマルジョ ンと好適に組合せる防腐剤としては、 2 一フエノキシエタノール、 安息香酸およびフヱネチルアルコールを 挙げることができる。 これらの防腐剤 · 防ばい剤についての毒性に ついては、 安息香酸が香粧品用に最終的に認可されており、 2—フ ェニルアルコールおよびフヱネチルアルコールは、 香粧品用に暫定 的に認可を受けている化合物である (香粧品 ·医薬品、 防腐殺菌剤 の科学、 ジョ ン · J · カバラ雇、 フレグランスジャーナル社を参照 のこ と) 。
防腐剤成分 (D) は、 使用する化合物とェマルジヨ ンによって使 用量が異なるが、 (C) 成分および (D) 成分の合計量 1 00重量 部に対して 0.01〜 50重量部、 好ましくは 0.01〜 20重量部、 最も好ま しくは 0.01〜1 0重量部用いられる。
実施例
以下、 本発明を実施例により説明するが、 本発明はこれら実施例 に限定されるものではない。
(知覚過敏象牙質モデルの作製)
抜去して冷凍保存した牛歯前歯を使用直前に解凍し、 低速回転式 ダイャモン ドカッター ( I S OME T、 B UHL E R) にて注水下 で、 約 1 0 X 1 0 X 2 mmの象牙質板を切り出した。 象牙質表面の 片面をハミガキ清掃剤 (ホワイ トサンスター F、 サンスター) のつ いたハブラシ (GUM、 バトラー) を用いて注水下約 20〜30 g Z c m2の力で約 2〜 3分間ブラッシングした。 十分に水洗して、 さ らに水中で超音波を 1 0分間かけることによって洗浄し、 ブラッシ ングした表面を知覚過敏象牙質モデルとした。 その後、 以下の実験 に使用するまでの間水中で保管した。 ただし、 調製した知覚過敏象 牙質モデルは 24時間以内に使用した。
(知覚過敏抑制効果の評価方法)
水中から取り出した知覚過敏象牙質モデル表面からエアブローに よって見かけ上の水分を取り除き乾燥した。 1ケのスポンジ球 (ス —パーボンド C&B附属スポンジ、 サイズ S) をビンセッ 卜で挟ん で、 本発明の歯科用組成物を十分に浸したスポンジにて知覚過敏象 牙質モデル表面に塗布して 20秒間静置、 さらに液が飛散しないよ うにエアブローによって乾燥することによって、 象牙質知覚過敏抑 制のための被膜を形成した。
被膜形成した知覚過敏象牙質モデルは、 下記条件 ( i ) 、 (ii) ( i ) 水中において超音波を 5分間かける、
(ii) ハブラシを用いて注水下 1 00 gの荷重で 1000回ブラッ シングし水洗する、
を行った後、 象牙質細管の封鎖状態を 1 000倍に拡大した走査型 電子顕微鏡 (S EM) 写真にて観察した。 象牙質細管の封鎖伏態は、 次式の象牙質細管の封鎖率によって評価した。
(封鎖している象牙質細管)
象牙質細管封鎖率 (%) = 1 00
(確認できる全てに象牙質細管) 吉山らは J.dDent .Res.68 (11) .1498-1502, November, 1989において、 象牙質細管の開口率を算出しており、 象牙質知覚過敏症の象牙質細 管は約 75%開口しており、 知覚過敏症状のない象牙質の象牙質細 管は約 25%しか開口していないことを報告している。 該報告をも とに評価すると、 本発明における象牙質細管封鑌率が約 75 %以上 の場合には象牙質知覚過敏症を十分に抑制しており、 約 25%以下 の場合には抑制できていないと評価できる。
(水性高分子ェマルジョン合成実施例)
蒸留水 5 Om 1を 60°Cに昇温し、 窒素ガスを 1時間バブリ ング した。 窒素雰囲気下、 メチルメ タク リ レー ト (MMA) 2.0 g、 ス チレンスルホン酸ソーダ ( S S N a ) 0.54 g、 過硫酸力 リ ウム 3 Om g、 亜硫酸水素ナ ト リ ウム 1 Omgを添加し、 2.5時間60°〇 で激しく擾拌した。 MMA 1.0 g、 過硫酸カリウム 1 5m g、 亜硫 酸水素ナトリウム 7m gを 30分間隔で 4回添加した後、 さらに 1 9.5時間激しく撹拌した。 室温に冷却後、 濃塩酸 0.1 9m lを加 えて 2時間搛拌し、 透析チューブに入れて蒸留水を 5日間毎日交換 しながら透析を繰り返した。 このチューブを常温、 常圧下、 乾燥し て、 固形分 1 0.9重量%のェマルジヨ ンを得た。 元素分析からこの 重合体の MM Aュニッ 卜の含量は 96.9モル%であった。 得られた
重合体を分子量既知のポリメタク リル酸メチルを標準試料として G P Cを用いて分析したところ数平均分子量 (Mn) は 1.0 X 1 06 であった。 透過型顕微鏡観察より、 この乳化重合体ェマルジヨ ン粒 子は直径 0.1〜0.5 /zmであり、 レーザ回折 散乱式粒度分布測 定装置 (L A— 9 10、 ホリバ) により全ての高分子重合体が 1 μ m以下であることが確認された。 以下、 このェマルジヨ ンを MS E と略記する。
上記エマルジョ ン MS Eを蒸留水で希釈して、 不揮発性成分 5重 量%のェマルジヨ ン M S Eに、 カルシウム化合物としての塩化カル シゥムを 1重量%溶解する水溶液を等重量添加し、 撹拌した後、 粒 度分布測定装置 L A- 9 1 0にて同様に粒径を測定した。 ェマルジ ヨ ン MS Eに存在していた重合体ェマルジョ ン粒子は、 凝集してお り、 その粒径は 0.1〜 700 mの広範囲に分布し、 約 0.3およ び約 40 にビークを有していた。
実施例 1
本発明の歯科用組成物として、 30重量%の硫酸アンモニゥム水 溶液を使用した。 その結果、 ( i ) の条件では 90%の象牙質細管 封鎖率が得られ、 (ii) の条件では約 80%であった。
実施例 2
本発明の歯科用組成物として、 A液: 1 0重量%の硫酸アンモニ ゥム水溶液、 B液 : 1重量%の塩化カルシウム水溶液を使用直前に 0.05 gずつ混合し、 液混合から 30秒以内の組成物を使用した。 その結果、 ( i ) の条件では 1 00%の象牙質細管封鎖率が得られ、 (ii) の条件では約 95%であった。
実施例 3
本発明の歯科用組成物として、 5重量%の高分子重合体 (M S E) を含む水溶液と 1重量%の硫酸アンモニゥム水溶液を別の容器に保 存し、 使用直前に 0.05 gずつ取り出して十分に混合し、 液の混合 から 1分以内の処置材組成物を使用した。 その結果、 ( i ) の条件
における象牙質細管封鎖率は 1 0 0 %、 (ii) の条件においては約 9 5 %であった。
実施例 4
本発明の歯科用組成物として、 2 . 5重量%の高分子重合体 (M S E ) および 1重量%の硫酸アンモニゥムを同時に含む水溶液と 0 . 5 重量%の塩化カルシウム水溶液を別の容器に保存し、 使用直前に 0 .
0 5 gずつ取り出して十分に混合し、 液の混合から 1分以内の歯科 用組成物を使用した。 その結果、 ( i ) および (ii) の条件におけ る象牙質細管封鎖率はいずれも 1 0 0 %であった。
実施例 5
患部が過度のハブラシ使用によって歯牙が摩耗した状態である、 主に冷水痛を誘発する象牙質知覚過敏症に悩むボランティァ患者 2 0名に対して、 実施例 4の歯科用組成物を適用した。 象牙質表面は 比較的清潔であったため、 表面を緩やかなエアブローによって乾燥 し、 実施例 4の歯科用組成物を同様の手順で適用し被膜を形成した。 その結果、 全患者において冷水痛は適用直後および約 3力月経過後 の現在に至っても感じられていない。
実施例 6
患部が歯肉後退によって露出した歯根部分であり、 主に冷水痛を 誘発する象牙質知覚過敏症に悩むボランティァ患者 1 0名に対して、 実施例 4の歯科用組成物を適用した。 象牙質表面は比較的清潔であ つたため、 表面を緩やかなエアブローによって乾燥し、 実施例 4の 歯科用組成物を同様の手順で適用し被膜を形成した。 その結果、 全 患者において冷水痛は適用直後および約 3力月経過後の現在に至つ ても感じられていない。
比較例 1
実施例 1において本発明の歯科用組成物を使用せずに、 ( i ) お よび (i i) の条件で象牙質細管封鎖率を調べた結果、 両条件ともに 0 %であり、 全ての象牙質細管が全て開口していた。
比較例 2
実施例 2において本発明の歯科用組成物の代わりと して、 (B ) 成分のみ用いるものとして 3 0重量%の塩化カルシウム水溶液を使 用した。 その結果、 ( i ) の条件における象牙質钿管封鎖率は約 1 0 %であり、 (ii) の条件における象牙質細管封鎖率は 0 %であつ
/ o
比較例 3
実施例 3において本発明の歯科用組成物の代わりと して、 (C ) 成分のみ用いる 5重量%の高分子重合体を含む M S Eを使用した。 その結果、 ( i ) の条件における象牙質細管封鎖率は約 1 0 %であ り、 (ii) の条件においては象牙質細管封鎖率は 0 %でほぼ全ての 象牙質細管は開口していた。
比較例 4
実施例 3における本発明の歯科用組成物の代わりに、 比較例 1の 5重量%の M S E水溶液を使用した。 すなわち、 患部が歯肉後退に よって露出した歯根部分であり、 主に冷水痛を誘発する象牙質知覚 過敏症に悩むボランティァ患者 5名に対して、 M S E水溶液を実施 例 3に準じて適用した。 その結果、 4名の患者において冷水痛は適 用直後に抑制され知覚過敏は感じなくなったものの、 約 3〜 4日後 には象牙質知覚過敏症が再発した。 1名は適用直後にも効果が認め られなかった。 従って、 歯根部分には十分な適用効果は得られない ことが明らかになった。
実施例 7
前記ェマルジョ ン合成例において、 透析チューブの代わりに加水 限外濾過装置を用いる他は、 該合成例を繰返し、 ェマルジヨ ンを合 成した。 加水限外據過装置として限外濂過装置 P Cカセッ トシステ ム (ローヌ · ブーラン製) とスルホン化ポリスルホン膜の IRI S3026 を用いて加水倍率 5倍まで精製をおこなった。 ここで加水限外濾過 条件は、 本装置の使用条件の範囲で行うことができる。 本実験は、
膜面積が 0 . 5 0 6 m 2で平均操作圧 0 . 5 ~ 3 k g f c m 2の範囲 で加水しながら行った。 以下、 限外 «過装置および «過膜は同じ物 を使用し実験に供した。 該ェマルジョンを不揮発成分濃度 5重量% まで蒸留水で希釈した。 サンブルの一部を取り出して、 ェマルジョ ン粒子を限外慮過装置にて a通して «液中の金属イオン濃度を卓上 型プラズマ発光分光分析装置 (S P S 7 7 0 0、 セイコー電子工業 株式会社製) にて行った。 以下の実験においても同測定装置を使用 した。 測定した分散媒中の金属イオンは、 モノマーや重合開始剤由 来のナ ト リウムおよびカリウムィォンが大部分を占め、 その他の金 厲はほとんど検出されなかったため、 N aと Kに限定して定量した。 その結果、 金属イオン濃度 (N a + K ) は 2 3 0 p p mであった。 該ェマルジョ ンをふた付ポリ容器中に移し、 約 3 ヶ月間室温暗所中 で保存した。 その結果、 カビの発生は認められなかった。 該観察に 用いた容器は、 容器内のに付着した微生物の影響をなくするために、 あらかじめエタノールにて洗浄し乾燥した物を使用した。 以下、 容 器は同様に洗浄して実験に供した。
上記で合成した 5重量%の重合体を含むエマルジョ ンと 1重量% 硫酸アンモニゥム水溶液を別の容器に保存し、 使用直前に 0 . 0 5 g ずつ取り出して混合し、 液の混合から 1分以内の本発明の歯科用組 成物を使用して、 知覚過敏抑制効果の評価および耐久性評価を行つ た。 その結果、 条件 ( i ) および条件 (ii) の試験における象牙質 細管封鎖率はいずれも 1 0 0 %であり、 条件 ( i ) において超音波 を 5分間かける代わりに 3 5分間かける処理 (以下、 「条件 (i ii) 」 という) による試験においては約 2 0 %であった。
条件 (ii) では、 象牙質表面に形成した被膜の歯ブラシ磨耗耐久 性と細管封鎖性を調べることができる。 し力、し、 歯ブラシの毛先の 直径が通常 1 0 0〜4 0 0 mであるので、 細管内部に形成された 被膜の封鎖耐久性を評価できない。 そこで、 実際には超音波が照射 されることがないけれども、 細管内部の封鎖耐久性を評価する目安
として、 超音波を 35分照射する試験 (条件 (iii) ) を行った。 力ビ発生実験および防腐剤の適正実験
実験 N o .1
ェマルジョ ン合成実施例に準じて新たに合成し透析チューブにて 精製したェマルジヨ ンを、 不揮発成分濃度 5重量%まで蒸留水で希 釈した。 サンブルの一部を取り出して、 ェマルジヨ ン粒子を実施例 4に準じて «液の金属イオン濃度を測定した。 その結果、 金厲ィォ ン濃度 (N a +K) は 1 200 p pmであった。 該ェマルジョ ンを ふた付ポリ容器中に移し、 約 3ヶ月間室温暗所中で保存した。 エマ ルジョ ン中には 0.1〜 3 mm程度の黒色の力ビが多数発生していた c 実験 N 0.2
実験 N 0.1の精製直後の 5重量%の重合体を含むェマルジヨ ンと 1重量%の硫酸ァンモニゥム水溶液を別の容器に保存し、 使用直前 に 0.05 gずつ取り出して混合し、 液の混合から 1分以内の本発明 の歯科用組成物を使用して、 知覚過敏抑制効果の評価および耐久性 評価を行った。 その結果、 条件 ( i ) および条件 (ii) の試験にお ける象牙質細管封鎖率はいずれも約 100%であったが、 条件 (ii i) の試験においては 0%であった。
実験 N o .3
ェマルジョ ン合成実施例に準じて新たに合成し透析チューブにて 精製したェマルジョンを、 不揮発成分濃度 5重量%まで蒸留水で希 釈した。 サンブルの一部を取り出して、 ェマルジヨ ン粒子を実施例 7に準じて據液の金属イオン濃度を測定した。 その結果、 金属ィォ ン濃度 (N a +K) は 300 p p mであつた。 該ェマルジョ ンをふ た付ボリ容器中に移し、 約 3ヶ月間室温暗所中で保存した。 ェマル ジョ ン中には 0.1〜 3 mm程度の黒色の力ビが数個発生していた。 実験 N 0.4
ェマルジョ ン合成実施例に準じて合成し、 加水限外濂過装置を用 いて加水倍率 0.3倍で精製をおこなった。 該ェマルジョンを不揮発
成分濃度 5重量%まで蒸留水で希釈した。 サンブルの一部を取り出 して、 ェマルジョ ン粒子を実施例 7に準じて濂液の金属イオン濃度 を測定した。 その結果、 金属イオン濃度 (N a + K) は約 1500 p pmであった。 該ェマルジヨ ンをふた付ポリ容器中に移し、 約 3 ヶ月間室温暗所中で保存した。 その結果、 カ ビの発生は認められな かった。 しかし、 知覚過敏抑制効果の評価および被膜の耐久性評価 の結果、 条件 ( i ) および条件 (Π) の試験ではいずれも約 80% であったが、 条件 (iii) の試験では 0%であった。 本実験と実験 N o .3との対比によって、 加水限外濂過装置を用いることによるカビ 発生の防止効果が確認できた。 しかし、 被膜の耐久性は不十分であ つた 0
実験 N 0.5
ェマルジョ ン合成実施例に準じて合成し、 加水限外濂過装置を用 いて加水倍率 2倍で精製をおこなった。 該ェマルジョ ンを不揮発成 分濃度 5重量%まで蒸留水で希釈した。 サンブルの一部を取り出し て、 実施例 7に準じて ¾液の金厲イオン濃度を測定した。 その結果、 金属ィォン濃度 (N a +K) は約 970 p p mであった。 該ェマル ジョ ンをふた付ポリ容器中に移し、 約 3ヶ月間室温暗所中で保存し た。 その結果、 カ ビの発生は認められなかった。 また、 知覚過敏抑 制効果の評価および耐久性評価の結果、 ( i ) および (ii) の試験 ではいずれも約 90%であり、 (iii) の試験でも約 20%であった c 本実験と実験 N o .4との対比によって、 分散媒中の金属イオンの削 減による被膜耐久性の向上が確認できた。
実験 N o .6
ェマルジョ ン合成実施例に準じて合成し、 加水限外濾過装置を用 いて加水倍率 5倍で精製をおこなった。 該ェマルジョ ンを不揮発成 分濃度 5重量%まで蒸留水で希釈した。 サンブルの一部を取り出し て、 ェマルジョ ン粒子を実施例 7に準じて濂液の金属ィォン濃度を 測定した。 その結果、 金属イオン濃度 (N a +K) は約 300 p p
mであった。 該ェマルジヨ ンをポリ容器中に移し、 約 3ヶ月間室温 暗所中で保存した。 その結果、 カビの発生は認められなかった。 ま た、 知覚過敏抑制効果の評価および耐久性評価の結果、 条件 ( i ) および条件 (ii) の試験ではいずれも 1 00%であり、 条件 (iii) の試験では約 20%であった。
実験 N o .7
実験 N 0.5に記載のェマルジョン (金厲ィォン : 970 p p m) をそれぞれブラスチックねじ蓋付き 20 c c容量の褐色ガラス瓶に 10 入れ、 このサンブルを各ェマルジョ ンにつき 3本ずつ作製し た。 さらに、 実験 N 0.1のェマルジヨンに発生したカビを 1〜 2 m mサイズにして各サンブル中に入れ、 サイズをノギスにて測定後、 室温暗所で 2ヶ月間静置してカビを生育させた。 その結果、 3本の サンブル中 1本のェマルジョンにおける力ビのサイズが約 25 %大 きく なっていたが、 他の 2本のェマルジョ ンにおける力ビのサイズ に変化がなかった。 この結果は、 加水限外據過後にカビなどの微生 物が混入しても生育を抑制することができることを示唆する。
実験 N 0.8
実験 N 0.6に記載のェマルジョ ン (金属ィオン : 300 p pm) をそれぞれブラスチックねじ蓋付き 20 c c容量の褐色ガラス瓶に 10 g入れ、 このサンブルを各ェマルジヨ ン 3本ずつ作製した。 さ らに、 実験 N 0.1のェマルジョ ンに発生した力ビを 1〜 2mmサイ ズにして各サンブル中に入れ、 サイズをノギスにて測定後、 室温暗 所で 1 ~ 2ヶ月間静置してカビを生育させた。 その結果、 3本のサ ンブル中のすべてのェマルジヨ ンに力ビのサイズに変化は認められ なかった。
実験 N o · 9
実験 N 0.4に記載のェマルジョ ン (金属ィォン : 1 500 p pm) をそれぞれブラスチックねじ蓋付き 20 c c容量の褐色ガラス瓶に 10 g入れ、 このサンブルを各ェマルジヨ ン 3本ずつ作製した。 さ
らに、 実験 N o · 1のェマルジョ ンに発生したカビを 1〜 2mmサイ ズにして各サンブル中に入れ、 サイズをノギスにて測定後、 室温暗 所で 1〜2ヶ月間静置してカビを生育させた。 その結果、 3本のサ ンブル中のすべてのェマルジョ ンにカビのサイズ 1 0〜50%の拡 大が認められた。 この結果は、 加水陌外 «過後にカビなどの微生物 が混入すると生育してしまい、 本発明の組成物における衛生性を損 なうので好ま しく ないことを示す。
実験 N o .1 0
実験 N o .4におけるェマルジヨ ン (1 500 p pm) に防腐剤と して 3重量%の 2—フエニルアルコールを添加し、 実験 N o .7と同 様に力ビを加え 1ヶ月間室温暗所で保管したところ、 全てのサンブ ルにカビのサイズ拡大は認められず、 さらにェマルジョンの状態に も変化がなかった。
実験 N o .1 1
実験 N 0 · 4におけるェマルジヨ ン ( 1 500 p p m) に防腐剤と して 0.3重量%の安息香酸を添加し、 実験 N o .7と同様に力ビを 入れて 1 ヶ月間室温暗所で保管したところ、 全てのサンブルにカビ のサイズ拡大は認められず、 さらにェマルジョンの状態にも変化が な力、つた。
実験 N 0.1 2
実験 N o .4におけるェマルジヨ ン (1 500 p pm) に防腐剤と して 2重量%のフエネチルアルコールを添加し、 実験 N o .7と同様 に力ビを入れて 1ヶ月間室温暗所で保管したところ、 全てのサンブ ルにカビのサイズ拡大は認められず、 さらにェマルジョ ンの伏態に も変化がなかった。
実験 N 0.1 3
実験 N 0.4におけるェマルジヨ ン (1 500 p pm) に防腐剤と し 0.5重量%サリチル酸を使用したところ、 サリチル酸がェマルジ ョ ンには溶解しなかった。
実験 N o .1 4
実験 N 0.4におけるェマルジヨ ン (1 500 p pm) に防腐剤と して 0.5重量%ホルムアルデヒ ドを使用したところ、 ェマルジヨ ン が 1週間以内に凝集した。
実験 N o .1 5
実験 N 0.4におけるェマルジヨン (1 500 p pm) に防腐剤と して 0.5重量%グルタールアルデヒ ドを使用したところ、 ェマルジ ョンが 1週間以内に凝集した。
実験 N o .1 6
実験 N 0.4におけるェマルジヨ ン (1 500 p p m) に防腐剤と して 0.5重量%ジンクビス一 ( 2—ビリ ジンチオール一 1一ォキサ イ ド) ビス一 (2—ビリ ジルチオ) ジンクー 1.1 ' —ジオキサイ ド (ジンクピリ ジオン) を使用したところ、 ェマルジョ ンが直ちに凝 集した。