詳細な説明
本明細書において、少なくとも1つの標的リガンド同族結合パートナー(カウンター構造体リガンドタンパク質とも呼ばれる)に対する変化した結合活性または親和性を示す、CD86のバリアントまたは変異体およびその特異的結合断片であるかまたはそれを含有する、免疫調節タンパク質が提供される。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、非改変または野生型CD86ポリペプチドと比較して1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、アミノ酸置換、欠失、または付加)を含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、非改変または野生型CD86ポリペプチドと比較して1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有する。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、非改変または野生型CD86ポリペプチドの細胞外ドメインにあり、例えばIgSFドメイン(例えば、IgCのIgV)にある。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して変化(例えば、向上または低下)した、CD28またはCTLA-4の1つまたは複数に対する結合活性または親和性を示す。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して向上した、CD28に対する結合親和性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して、少なくともCD28に対する向上した結合親和性を示す。いくつかの態様では、前記結合親和性は、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して、少なくとも1.2倍、1.4倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、10.0倍、20.0倍、30.0倍、40.0倍、50.0倍、60.0倍、70.0倍、80.0倍、90.0倍、100.0倍、124.0倍、またはそれより大きく変化(例えば、向上)している。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して低下した、変化のない、またはより大きくはない、CTLA-4に対する結合親和性を示す。いくつかの態様では、CTLA-4に対する結合親和性は低下している。いくつかの態様では、前記結合親和性は、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して、少なくとも1.2倍、1.4倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、10.0倍、またはそれより大きく変化(例えば、低下)している。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドおよび免疫調節タンパク質は、免疫学的免疫応答を調節する、例えば、免疫応答を増強または低減する。特定の調節は、バリアントCD86ポリペプチドのフォーマットに基づくことができ、特定のフォーマットがアンタゴニスト活性もしくは遮断活性を提供するかアゴニスト活性を提供するかに依存する。また、提供されるバリアントポリペプチドの様々な免疫調節タンパク質フォーマットも提供される。本明細書において示すように、選択可能なフォーマットは、免疫応答の操作、ひいては治療的適用を促進することができる。バリアントポリペプチドを、状況に応じて、免疫応答に拮抗(アンタゴナイズ)するかまたはそれを刺激(アゴナイズ)するように様々な形状にフォーマットする能力は、結合パートナーに対するバリアントCD86の同様に向上した結合性および活性に基づき、治療的適用においてフレキシビリティをもたらす。一例として、バリアントCD86タンパク質をある表面に繋ぐことで、限局的な共刺激シグナルを伝達することができる一方で、他の場合では、CD86を非限局的な可溶性形態で提示することで、アンタゴニスト活性を付与することができる。いくつかの態様では、本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドおよび免疫調節タンパク質を、調節不全になった免疫応答と関連する疾患または病態の処置に使用することができる。
いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は可溶性である。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、細胞の表面上に発現可能な膜貫通型免疫調節タンパク質である。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、それを発現する細胞から分泌されることができる分泌可能な免疫調節タンパク質である。いくつかの態様では、また、本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドおよび1つまたは複数の他の部分またはポリペプチドを含有するコンジュゲートまたは融合体である、1つまたは複数の他の免疫調節タンパク質も本明細書において提供される。いくつかの局面では、膜貫通型免疫調節タンパク質または分泌可能な免疫調節タンパク質を含有する改変された細胞が提供される。いくつかの局面では、発現のために膜貫通型免疫調節タンパク質または分泌可能な免疫調節タンパク質を細胞(感染性物質が感染する)に送達可能な感染性物質が提供される。いくつかの態様では、また、本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドおよび1つまたは複数の他の部分またはポリペプチドを含有するコンジュゲートまたは融合体である、1つまたは複数の他の免疫調節タンパク質も本明細書において提供される。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、その同族結合パートナーCD28のアゴニスト活性を示し、かつ/またはCD28を介した共刺激シグナル伝達を刺激するもしくは開始させる、フォーマットで提供される。そのような免疫調節タンパク質フォーマットに含まれるものの中には、バリアントCD86ポリペプチドを膜貫通型免疫調節タンパク質として発現する改変細胞がある。他の場合では、免疫調節フォーマットは、別の分子との融合体を含むことができ、例えば、腫瘍局在化ドメインを含めた他のIgSFドメインを有する特定の「スタック分子」(例えば、vCD86-NkP30構築物)、ならびに抗体コンジュゲートフォーマットを有する特定の「スタック分子」(例えば、vCD86-抗HER2またはvCD86-抗HER1構築物)によって提供されるものを含むことができる。そのようなバリアントCD86免疫調節タンパク質およびそのフォーマット(例えば、改変された細胞または融合構築物)を、がん、ウイルス感染、または細菌感染を治療するために使用することができる。いくつかの態様では、バリアントCD86免疫調節タンパク質およびそのフォーマット(例えば、改変された細胞または融合構築物)は、増強された共刺激活性を示し、それによって、例えば初代T細胞アッセイにおいて、野生型または非改変CD86対照と比べて増強されたT細胞活性(例えば、インビボまたはインビトロ)をもたらす。いくつかの局面では、T細胞活性は、IL-2、IFN-γ、またはTNFαなどのサイトカインの産生を評価することによって評価することができる。いくつかの局面では、増加(例えば、IFN-γ、IL-2、またはTNFαの増加)は、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して、1.1倍以上もしくは約1.1倍以上、1.2倍以上もしくは約1.2倍以上、1.3倍以上もしくは約1.3倍以上、1.4倍以上もしくは約1.4倍以上、1.5倍以上もしくは約1.5倍以上、1.6倍以上もしくは約1.6倍以上、1.7倍以上もしくは約1.7倍以上、1.8倍以上もしくは約1.8倍以上、1.9倍以上もしくは約1.9倍以上、2.0倍以上もしくは約2.0倍以上、2.5倍以上もしくは約2.5倍以上、3.0倍以上もしくは約3.0倍以上、3.5倍以上もしくは約3.5倍以上、4.0倍以上もしくは約4.0倍以上、5.0倍以上もしくは約5.0倍以上、6.0倍以上もしくは約6.0倍以上、7.0倍以上もしくは約7.0倍以上、8.0倍以上もしくは約8.0倍以上、9.0倍以上もしくは約9.0倍以上、10.0倍以上もしくは約10.0倍以上、またはそれより大きい増加である。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、その同族結合パートナーCD28のアンタゴニスト活性を示すおよび/またはCD28を介した共刺激シグナル伝達を遮断するか阻害する、フォーマットで提供される。そのような免疫調節タンパク質フォーマットに含まれるものの中には、可溶性であるバリアントCD86ポリペプチド(例えば、バリアントCD86-Fc融合タンパク質)がある。そのようなバリアントCD86免疫調節タンパク質を、炎症性または自己免疫性障害を処置するために使用することができる。いくつかの態様では、バリアントCD86免疫調節タンパク質およびそのフォーマット(例えば、可溶性バリアントCD86-Fc融合タンパク質)は、共刺激シグナル伝達を阻害または遮断し、それによって、例えば初代T細胞アッセイにおいて、野生型または非改変CD86対照と比べて低下したT細胞活性(例えば、インビボまたはインビトロ)をもたらす。いくつかの局面では、T細胞活性は、IL-2、IFN-γまたはTNFαなどのサイトカインの産生を評価することによって評価することができる。いくつかの局面では、減少、例えば、IFN-γ、IL-2、TNFαの減少は、1つまたは複数の改変を含有しない非改変または野生型CD86と比較して、1.1倍以上もしくは約1.1倍以上、1.2倍以上もしくは約1.2倍以上、1.3倍以上もしくは約1.3倍以上、1.4倍以上もしくは約1.4倍以上、1.5倍以上もしくは約1.5倍以上、1.6倍以上もしくは約1.6倍以上、1.7倍以上もしくは約1.7倍以上、1.8倍以上もしくは約1.8倍以上、1.9倍以上もしくは約1.9倍以上、2.0倍以上もしくは約2.0倍以上、3.0倍以上もしくは約3.0倍以上、4.0倍以上もしくは約4.0倍以上、5.0倍以上もしくは約5.0倍以上、6.0倍以上もしくは約6.0倍以上、7.0倍以上もしくは約7.0倍以上、8.0倍以上もしくは約8.0倍以上、9.0倍以上もしくは約9.0倍以上、10.0倍以上もしくは約10.0倍以上、またはそれより大きい減少である。
いくつかの態様において、提供されるバリアントCD86ポリペプチドは、共刺激シグナル伝達分子との相互作用を介して、T細胞の活性化、拡大増殖、分化、および生存を調節する。一般に、抗原特異的T細胞活性化は、2つの別個のシグナルを概して必要とする。第一のシグナルは、T細胞受容体(TCR)と抗原提示細胞(APC)上に存在する主要組織適合性複合体(MHC)関連抗原との相互作用によって提供される。第二のシグナルは、TCR会合に対する共刺激シグナル(例えば、CD28共刺激シグナル)であり、かつ、T細胞アポトーシスまたはアネルギーを回避するために必要である。
いくつかの態様において、正常な生理学的条件下で、T細胞媒介性免疫応答は、T細胞受容体(TCR)による抗原認識によって開始され、共刺激シグナルおよび抑制シグナル(例えば、免疫チェックポイントタンパク質)のバランスによって調節される。免疫系は、自己免疫を防止する(すなわち、自己寛容)および免疫応答の間(例えば、病原性感染に対する攻撃の間)の過度の損傷から組織を保護する、免疫チェックポイントに依拠する。しかしながら、いくつかの場合では、これらの免疫調節タンパク質は、免疫系を回避するための機序として、腫瘍を含む疾患および病態において調節不全になる可能性がある。
いくつかの態様において、公知のT細胞共刺激受容体の中にはCD28があり、CD28は、APC上に共に存在するリガンドB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)に対するT細胞共刺激受容体である。これらの同じリガンドはまた、CD28に対するよりも高い親和性で抑制性T細胞受容体CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)に結合することができ;CTLA-4への結合は、免疫応答を下方調節するように作用する。
CD28受容体およびCTLA-4受容体の活性の増強または抑制は、炎症性および自己免疫性障害、がん、ならびにウイルス感染の治療に対する臨床的有意性を有する。しかしながら、いくつかの場合では、両受容体の共刺激効果に介入してそれを変化させる治療は、免疫シナプスの限局によって課せられる空間定位要件ならびにサイズ制限の制約を受ける。いくつかの局面において、抗体薬を含む既存の治療薬は、これらの相互作用の調節に関与する複数の標的タンパク質と同時に相互作用し得ない。加えて、いくつかの場合では、既存の治療薬は、免疫応答に拮抗(アンタゴナイズ)する能力だけを有し、免疫応答を刺激(アゴナイズ)する能力を有し得ない。追加的に、これらの2つの受容体のうちの一方または他方を独立して標的とする薬物の間の薬物動態の差異は、処置過程を通して、このような薬物の組み合わせの所望の血中濃度を適切に維持することに困難を生じる可能性がある。
提供されるバリアントCD86ポリペプチドおよび免疫調節タンパク質、ならびに記載されている他のフォーマットは、かかる問題に対処する。また、これらのCD86バリアントポリペプチドおよび免疫調節タンパク質を製造する方法および使用する方法も提供される。
本明細書において言及される全ての刊行物(特許、特許出願、科学論文、およびデータベースを含む)は、それぞれ個々の刊行物(特許、特許出願、科学論文、およびデータベースを含む)が参照によって組み入れられると具体的にかつ個別に示されたかのように同程度に、参照によってその全体が全ての目的において本明細書に組み入れられる。本明細書に示されている定義が参照によって本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願および他の刊行物に示されている定義に反しているかまたは他に矛盾している場合、本明細書に示されている定義が参照によって本明細書に組み入れられる定義より優先される。
本明細書において使用される項目の見出しは、単に構成を目的としたものであって、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
I.定義
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての専門用語、注記、ならびに他の技術および科学用語または関連用語は、請求される主題が属する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有することを意図する。いくつかの場合では、通常理解されている意味を有する用語は、明確化のためおよび/またはすぐに参照できるように本明細書において定義され、そして、本明細書におけるこのような定義の包含は、必ずしも一般に当技術分野において理解されているものと大きな差異をなすと解釈されるべきではない。
本明細書を通して使用される用語は、特定の事例において別段限定されない限り、以下のとおり定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、その文脈が他のことを明確に指示しない限り、複数形の指示対象を含む。別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語、頭字語、ならびに略称は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。別段の指示のない限り、化学名および生化学名の略称および記号は、IUPAC-IUB命名法による。別段の指示のない限り、全ての数値範囲は、その範囲を規定する値だけでなくその間の全ての整数値も含む。
用語「親和性が改変された(親和性改変)」は、免疫グロブリンスーパーファミリードメインの文脈において使用される場合、親の野生型または非改変の(すなわち、親和性が改変されていない)IgSF対照ドメインと比較してその同族結合パートナー(あるいは「カウンター構造体」)のうちの少なくとも1つに対する結合親和性またはアビディティが(対応する野生型の親または非改変IgSFドメインと比べて)向上または低下するように変化したアミノ酸配列を有する哺乳動物免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインを意味する。この文脈において、親和性が改変されたCD86 IgSFドメインが含まれる。いくつかの態様において、親和性改変IgSFドメインは、野生型または非改変のIgSFドメイン中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上のアミノ酸の差異(例えば、アミノ酸置換)を含有することができる。結合親和性またはアビディティの向上または低下は、フローサイトメトリーなどの周知の結合アッセイを使用して決定することができる。Larsen et al., American Journal of Transplantation, Vol 5: 443-453 (2005)。また、Linsley et al., Immunity, Vol 1(9): 793-801 (1994) も参照されたい。その同族結合パートナーに対するタンパク質の結合親和性またはアビディティの向上は、野生型IgSFドメイン対照よりも少なくとも10%大きい値、いくつかの態様において、野生型IgSFドメイン対照値よりも少なくとも20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、500%、1000%、5000%、または10000%大きい値になる向上である。その同族結合パートナーのうちの少なくとも1つに対するタンパク質の結合親和性またはアビディティの低下は、対照の90%以下であるが野生型IgSFドメイン対照値の10%以上の値、いくつかの態様において、野生型IgSFドメイン対照値の80%、70%、60%、50%、40%、30%、または20%以下であるが10%以上の値になる低下である。親和性が改変されたタンパク質は、アミノ酸残基の置換、付加、または欠失によって一次アミノ酸配列が変化している。用語「親和性改変IgSFドメイン(親和性改変IgSFドメイン)」は、親和性改変IgSFドメインが作製された任意の特定の出発組成物または方法のあらゆる条件を強要するものと解釈されるべきではない。したがって、本発明の親和性改変IgSFドメインについては、任意の特定の親和性改変プロセスによって野生型IgSFドメインが親和性改変IgSFドメインへと変換されるのに限定されない。親和性改変IgSFドメインポリペプチドは、例えば、野生型哺乳動物IgSFドメイン配列情報から開始して生成され、次いで、その同族結合パートナーに対する結合性についてインシリコでモデル化され、そして、最後に組換えまたは化学合成されて、主題の親和性改変IgSFドメイン組成物を生成することができる。別の一例として、親和性改変IgSFドメインは、野生型IgSFドメインの部位特異的変異誘発によって作製することができる。したがって、親和性改変IgSFドメインは、任意の所与のプロセスによって生産されるが必ずしもその必要はない、生成物を表す。組換え法、化学合成、またはその組み合わせを含む様々な技術を用いてもよい。
用語「同種(の)」は、本明細書において使用される場合、ある生物から取り出され、次いで同じ種の遺伝的に異なる生物に注入または養子移入される、細胞または組織を意味する。本発明のいくつかの態様において、種はネズミまたはヒトである。
用語「自家(の)」は、本明細書において使用される場合、同じ生物から取り出され、後に前記生物に注入または養子移入される、細胞または組織を意味する。自家の細胞または組織を、例えば、組換えDNA法によって、生物から取り出される天然の細胞または天然の組織とはもはや遺伝的に同一ではないように改変することができる。例えば、天然の自家T細胞を、膜貫通型免疫調節タンパク質および/またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現する自家の改変細胞となるように組換えDNA技術によって遺伝的に改変することができ、これは、いくつかの場合では、T細胞またはTIL(腫瘍浸潤性リンパ球)を改変することを包含する。次いで、改変細胞を、天然のT細胞が単離された患者へ注入する。いくつかの態様において、生物は、ヒトまたはマウスである。
用語「結合親和性」および「結合アビディティ」は、本明細書において使用される場合、それぞれ、特異的結合条件下での、あるタンパク質のそのカウンター構造体に対する、特異的結合親和性および特異的結合アビディティを意味する。生化学速度論では、アビディティは、例えばCD86とそのカウンター構造体であるCD28および/またはCTLA-4との間のような、個々の非共有結合相互作用の複数の親和性の累積強度を指す。このように、アビディティは、単一の相互作用の強度を表す親和性とは異なる。親和性が改変されたCD86のIgSFドメインを含有するバリアントCD86のそのカウンター構造体に対する結合親和性の向上または低下は、非改変CD86(例えば、天然型または野生型IgSFドメイン(例えばIgVドメイン)を含有する非改変CD86)の結合親和性と比べて決定される。結合親和性またはアビディティを決定するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Larsen et al., American Journal of Transplantation, Vol 5: 443-453 (2005) を参照されたい。いくつかの態様において、バリアントCD86(例えば、親和性改変IgSFドメインを含有するCD86)は、フローサイトメトリーによって測定した場合に、結合アッセイにおいて、非改変CD86対照よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%大きい平均蛍光強度(MFI)値をもたらす結合親和性で、CD28および/またはCTLA-4に特異的に結合する。いくつかの態様では、バリアントCD86(例えば、親和性改変されたIgSFドメインを含有するもの)は、フローサイトメトリーによる測定で、結合アッセイにおいて非改変CD86対照よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%大きい平均蛍光強度(MFI)値をもたらす結合親和性でCD28に特異的に結合し、かつ、結合アッセイにおいて非改変CD86対照と比較して変化がないまたはより大きくはない、CTLA-4に対する結合親和性結合親和性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86(例えば、親和性改変IgSFドメインを含有するもの)は、フローサイトメトリーによる測定で、結合アッセイにおいて非改変CD86対照よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%大きい平均蛍光強度(MFI)値をもたらす結合親和性でCD28に特異的に結合し、かつ、フローサイトメトリーにより測定されるCTLA-4に対する結合親和性の低下を示し、当該結合親和性は、結合アッセイにおける非改変CD86対照と比較して結合アッセイにおける非改変CD86対照よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%小さい平均蛍光強度(MFI)値をもたらす結合親和性である。
用語「生物学的半減期」は、ある物質(例えば、本発明のバリアントCD86ポリペプチドを含有する免疫調節ポリペプチド)が、その薬理学的または生理学的活性または濃度の半分を喪失するのに要する時間を指す。生物学的半減期は、物質の排除、排出、分解(例えば、酵素的分解)、または体内の特定の臓器もしくは組織における吸収および濃縮によって影響を受ける可能性がある。いくつかの態様において、生物学的半減期は、物質の血漿中濃度がその定常状態レベルの半分に達するのに要する時間(「血漿半減期」)を決定することによって評価することができる。本発明のポリペプチドを誘導体化してその生物学的半減期を延長するために使用することができるコンジュゲートは、当技術分野において公知であり、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、XTEN(伸長組換えペプチド;WO 2013130683を参照のこと)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、脂質(アシル化)、ポリ-Pro-Ala-Ser(PAS)、およびポリグルタミン酸(グルタミル化)を含む。
用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、本明細書において使用される場合、少なくともエクトドメイン、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインを含有する、哺乳動物細胞上に発現する人工の(すなわち、人造の)膜貫通型タンパク質を指す。任意で、CARタンパク質は、エクトドメインを膜貫通ドメインに共有結合により連結する「スペーサー」を含む。スペーサーは、多くの場合、ペプチド結合を介してエクトドメインを膜貫通ドメインに連結するポリペプチドである。CARは、典型的には、哺乳動物リンパ球上に発現する。いくつかの態様において、CARは、T細胞または腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)などの哺乳動物細胞上に発現する。T細胞上に発現するCARは、本明細書において「CAR T細胞」または「CAR-T」と称される。いくつかの態様において、CAR-Tは、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、またはγδT細胞である。例えば養子細胞移入において臨床的に使用される場合、患者の腫瘍に対する抗原結合特異性を有するCAR-Tは、典型的には、患者から得られる天然のT細胞上に発現するように改変されている。CARを発現する改変されたT細胞は、次いで注入により患者に戻される。したがって、CAR-Tは、多くの場合、自家CAR-Tではあるが、同種CAR-Tも本発明の範囲内に含まれる。CARのエクトドメインは、生理学的条件下で標的抗原(例えば、腫瘍特異的抗原)と特異的に結合する抗原結合領域(例えば、抗体またはその抗原結合断片(例えば、scFv))を含有する。特異的結合によって、一連の生化学的事象(すなわち、シグナル伝達)は、CAR-Tの免疫活性の調節をもたらす。したがって、例えば、CAR-Tの抗原結合領域によるその標的抗原への特異的結合によって、細胞傷害性、増殖、またはサイトカイン産生の変化によって反映されるように、T細胞活性の免疫活性の変化を導くことができる。いくつかの態様において、CAR-T活性化によるシグナル伝達は、天然の哺乳動物T細胞におけるシグナル伝達に関与するCD3ζ鎖(「CD3-z」)によって達成される。CAR-Tは、T細胞の免疫調節応答をさらに調節する複数のシグナル伝達ドメイン(例えば、CD28、4-1BB、またはOX40)をさらに含有することができる。CD3-zは、T細胞受容体シグナル伝達に関与する免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)として知られている保存されたモチーフを含有する。
用語「総合して」または「総合的」は、インビトロアッセイにおいて2つ以上のバリアントCD86ポリペプチドの存在によって誘導されるサイトカイン産生に関して使用されるとき、個々のバリアントCD86ポリペプチドによって誘導されるサイトカイン産生に関係なくサイトカイン発現レベル全体を意味する。いくつかの態様において、アッセイされるサイトカインは、インビトロ初代T細胞アッセイにおけるIFN-γまたはIL-2である。
用語「同族結合パートナー」(「カウンター構造体(対抗構造体)」と互換的に使用される)は、ポリペプチド(例えば、バリアントCD86のIgSFドメイン)に関して、言及されているポリペプチドが特異的結合条件下で特異的に結合する少なくとも1つの分子(典型的には、天然型の哺乳動物タンパク質)を指す。いくつかの局面において、親和性改変IgSFドメインを含有するバリアントCD86は、対応する天然型または野生型のCD86のカウンター構造体に、向上または低下した親和性で特異的に結合する。特異的結合条件下で認識されてその同族受容体に特異的に結合するリガンドの一種は、その受容体のカウンター構造体または同族結合パートナーの一例である。「細胞表面同族結合パートナー」は、哺乳動物細胞表面上に発現する同族結合パートナーである。「細胞表面分子種」は、免疫シナプス(IS)を形成する細胞(例えば、哺乳動物細胞)上に発現するまたは該細胞が発現する、免疫シナプスのリガンドの同族結合パートナーである。
本明細書において使用される場合、「コンジュゲート」、「コンジュゲーション」またはそれらの文法上の変形は、当技術分野において公知の任意の接続または連結法によって、2つ以上の化合物を一緒に接続または連結して、別の化合物の形成をもたらすことを指す。それはまた、2つ以上の化合物を一緒に接続または連結することによって生成される化合物を指すこともできる。例えば、1つまたは複数の化学部分またはポリペプチドに直接的または間接的に連結されたバリアントCD86ポリペプチドが例示的なコンジュゲートである。そのようなコンジュゲートは、融合タンパク質、化学的コンジュゲートによって生産されるもの、および任意の他の方法によって生産されるものを含む。
用語「競合的結合」は、本明細書において使用される場合、あるタンパク質が、少なくとも2種の同族結合パートナーに特異的に結合することができるが、1つの同族結合パートナーの特異的結合が第二の同族結合パートナーの同時結合を阻害する(例えば、妨害するまたは妨げる)ことを意味する。したがって、いくつかの場合では、あるタンパク質が2つの同族結合パートナーに同時に結合することはできない。一般に、競合結合物は、特異的結合のための同じまたは重複した結合部位を含有するが、これは必須要件ではない。いくつかの態様において、競合的結合は、第二の同族結合パートナーの特異的結合に起因して、その同族結合パートナーの1つへのタンパク質の特異的結合の測定可能な(部分的または完全な)阻害を引き起こす。ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)などの競合的結合を定量する様々な方法が公知である。
用語「保存的アミノ酸置換」は、本明細書において使用される場合、あるアミノ酸残基が類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を備える側鎖R基を有する別のアミノ酸残基によって置換されている、アミノ酸置換を意味する。類似の化学特性を備える側鎖を有するアミノ酸の群の例は、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンを含む。保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。
タンパク質の位置に関する「対応する」という用語、例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸の位置が(例えば、配列表に示されている)開示されている配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の位置に「対応する」という記述は、構造配列アライメントに基づいてまたは標準的なアライメントアルゴリズム(例えば、GAPアルゴリズム)を使用して、開示されている配列とのアライメントによって同定される、ヌクレオチドまたはアミノ酸の位置を指す。例えば、本明細書に記載の構造アライメント法による、SEQ ID NO:29に示される野生型CD86の配列(ECDドメイン)を有する参照配列とのアライメントによって、対応する残基を同定することができる。配列をアライメントすることによって、当業者は、例えば保存されているアミノ酸残基および同一のアミノ酸残基を規準として使用して、対応する残基を同定することができる。図3は、対応する残基を同定するための、SEQ ID NO:29に示される参照配列との配列アライメントを例示している。例えば、図3に示されている例示的なアライメントにおいて、SEQ ID NO:29の13番目の残基は、SEQ ID NO: 122の4番目の残基に対応する。
用語「低下させる」もしくは「減少させる」または「減弱させる」または「抑制する」は、本明細書において使用される場合、統計的に有意な量の低下または減少を意味する。低下または減少は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のまたは減少であることができる。
用語「誘導体」または「誘導体化されている」は、その治療的恩恵を保持または増強させながら、生物学的半減期、バイオアベイラビリティ、免疫原性、溶解性、毒性、効力、または有効性などの特性を変化させるために、タンパク質を直接または間接的に組成物に共有結合させることによる、タンパク質の修飾を指す。本発明の免疫調節ポリペプチドの誘導体は、本発明の範囲内であり、例えば、グリコシル化、ペグ化、脂質化、またはFc融合によって製造することができる。
本明細書において使用される場合、検出には、(目視または機器による)タンパク質の可視化を可能にする方法が含まれる。タンパク質は、当該タンパク質に特異的な抗体を使用して可視化することができる。また、タンパク質の検出は、当該タンパク質と、検出可能な標識を含むタグとの融合によって、または検出可能な標識を含む、当該タンパク質に特異的な第2の試薬(例えば、二次抗体)との接触によって、容易にすることができる。
本明細書において使用される場合、ドメイン(典型的には、3以上、概して5または7またはそれ以上のアミノ酸、例えば10~200のアミノ酸残基の配列)は、分子の他の部分と構造的および/または機能的に異なりかつ同定可能な分子(例えば、タンパク質またはコーディング核酸)の一部分を指す。例えば、ドメインは、1つまたは複数の構造モチーフで構成されているタンパク質内で独立して折り畳まれた構造を形成することができ、かつ/または結合活性などの機能活性によって認識される、ポリペプチド鎖の一部分を含む。タンパク質は、1つまたは複数の別個のドメインを有することができる。例えば、ドメインは、関連ファミリーメンバーに対する一次配列または構造の相同性、例えばモチーフに対する相同性によって、同定、定義、または識別することができる。別の例では、ドメインは、その機能(例えば、同族結合パートナーなどの生体分子と相互作用する能力)によって識別することができる。ドメインが独立してまたは別の分子に融合して、活動(例えば、結合)を遂行することができるように、ドメインは、独立して、生物学的機能または活性を示すことができる。ドメインは、線形のアミノ酸配列または非線形のアミノ酸配列であることができる。多くのポリペプチドは、複数のドメインを含有する。このようなドメインは、公知であり、かつ、当業者が同定することができる。本明細書における例示のため、定義が提供されるが、名称によって特定のドメインを認識することは十分に当技術分野の技能の範囲内であると理解される。必要であれば、ドメインを同定するために適切なソフトウェアを採用することができる。
用語「エクトドメイン」は、本明細書において使用される場合、膜タンパク質(例えば、膜貫通型タンパク質)の、小胞膜の外側にある領域を指す。エクトドメインは、多くの場合、リガンドまたは細胞表面受容体に、例えば当該リガンドまたは当該細胞表面受容体に特異的に結合する結合ドメインを介して特異的に結合する、結合ドメインを含有する。細胞の膜貫通型タンパク質のエクトドメインは、代替的に細胞外ドメイン(ECD)と称される。
用語「有効量」または「治療有効量」は、単独(すなわち、単剤療法として)または追加の治療剤との組み合わせのいずれかでエクスビボ(患者由来の細胞との接触による)またはインビボ(患者への投与による)で投与されたとき、例えば、疾患の症状および/または病因を改善または排除することによって、疾患進行の統計的に有意な低下をもたらす、本発明の治療用組成物(タンパク質組成物または細胞組成物を含む)の量および/または濃度を指す。有効量は、疾患または障害と関連する少なくとも1つの症状または生物学的応答もしくは影響を緩和する、低下させる、または軽減する、疾患または障害の進行を防止する、あるいは患者の身体機能を改善する量であり得る。細胞療法の場合、有効量は、養子細胞療法により患者に投与される細胞の有効用量または有効数である。いくつかの態様において、患者は、哺乳動物の患者、例えば非ヒト霊長類またはヒトの患者である。
用語「エンドドメイン」は、本明細書において使用される場合、いくつかの膜タンパク質(例えば、膜貫通型タンパク質)において見いだされる、細胞表面膜によって画定される内部空間内に延びる領域を指す。哺乳動物細胞では、エンドドメインは、膜タンパク質の細胞質領域である。細胞内において、エンドドメインは、細胞内構成成分と相互作用し、かつ、シグナル伝達においてある役割を果たすことができ、したがって、いくつかの場合では、細胞内シグナル伝達ドメインであることができる。細胞の膜貫通型タンパク質のエンドドメインは、代替的に細胞質ドメインと称され、これは、いくつかの場合では、細胞質シグナル伝達ドメインであることができる。
用語「増強された」または「増加した」または「向上した」は、本明細書において哺乳動物リンパ球の免疫活性の増強の文脈で使用される場合、リンパ球の1つまたは複数の活性の増強を意味する。活性の増強は、細胞生存、細胞増殖、サイトカイン産生、またはT細胞の細胞傷害性のうちのうちの1つまたは複数の(例えば、統計的に有意な量の)増強であり得る。いくつかの態様において、増強された免疫活性への言及は、インターフェロンγ(IFNγ)、IL-2、またはTNFαの産生を(例えば、統計的に有意な量だけ)増加させることを意味する。いくつかの態様において、免疫活性を、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて評価することができる。MLRアッセイを実行する方法は、当技術分野において公知である。Wang et al., Cancer Immunol Res. 2014 Sep: 2(9):846-56。リンパ球の活性を評価する他の方法は、本明細書に記載されているいずれかのアッセイを含め、当技術分野において公知である。いくつかの態様において、増強は、非ゼロ対照値よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、200%、300%、400%、または500%大きい増加または向上であることができる。
用語「改変された細胞」は、本明細書において使用される場合、ヒトによる介入(例えば、組換えDNA法またはウイルス形質導入法)によって遺伝的に改変された哺乳動物細胞を指す。いくつかの態様において、細胞は、免疫細胞、例えばリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)または抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)である。細胞は、患者由来の初代細胞であってもよいし、細胞株であってもよい。いくつかの態様において、本発明の改変細胞は、バリアントCD86が特異的に結合するCD28もしくはCTLA-4を発現するT細胞の免疫活性を調節するように改変された本発明のバリアントCD86を含有する。いくつかの態様において、バリアントCD86は、膜貫通ドメイン(例えば、CD86膜貫通ドメイン)に連結されたIgVドメインを含有する細胞外ドメインまたはその一部分を含有し、任意で細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、膜貫通型免疫調節タンパク質(本明細書で以降「TIP」と称される)である。いくつかの場合では、TIPは、異種の細胞質シグナル伝達ドメインまたはエンドドメインを含有するキメラ受容体としての形態をとる。いくつかの態様において、改変細胞は、本明細書に記載の免疫調節タンパク質を発現および分泌することができる。提供される改変細胞の中には、改変されたT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含有する細胞もある。
用語「改変されたT細胞」は、本明細書において使用される場合、ヒトによる介入(例えば、組換えDNA法またはウイルス形質導入法)によって遺伝的に修飾(改変)されたT細胞(例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞(あるいは、細胞傷害性Tリンパ球またはCTL)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、メモリーT細胞、またはγδT細胞)を指す。改変されたT細胞は、該T細胞上に発現している本発明のバリアントCD86膜貫通型免疫調節タンパク質(TIP)または分泌型免疫調節タンパク質(SIP)を含有し、該TIPは、改変されたT細胞自体の免疫活性を調節するか、または該T細胞上に発現するバリアントCD86が特異的に結合する哺乳動物細胞の免疫活性を調節するように改変されている。
用語「改変されたT細胞受容体」または「改変されたTCR」は、選択され、クローニングされ、かつ/またはその後T細胞の集団に導入される(当該T細胞の集団は多くの場合、養子免疫療法に使用される)、主要組織適合複合体(MHC)/ペプチド標的抗原に対して所望の親和性で特異的に結合するように改変されたT細胞受容体(TCR)を指す。
用語「~上に発現する」は、本明細書において使用される場合、細胞(例えば哺乳動物細胞)の表面に発現するタンパク質に関して使用される。したがって、当該タンパク質は膜タンパク質として発現する。いくつかの態様において、発現する当該タンパク質は、膜貫通型タンパク質である。いくつかの態様において、当該タンパク質は、低分子部分(例えば、薬物または検出可能標識)にコンジュゲートされる。細胞の表面に発現するタンパク質は、哺乳動物細胞上に発現する細胞表面タンパク質(例えば細胞表面受容体)を含むことができる。
用語「半減期延長部分」は、ポリペプチド融合体または化学的コンジュゲートの一部分であって、そのように該部分にコンジュゲートされていないタンパク質の半減期と比較して哺乳動物血清中に循環するタンパク質の半減期を延長する部分を指す。いくつかの態様において、半減期は、1.2倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、もしくは6.0倍より大きく、または約1.2倍、約1.5倍、約2.0倍、約3.0倍、約4.0倍、約5.0倍、もしくは約6.0倍より大きく延長される。いくつかの態様において、半減期は、半減期延長部分を有さないタンパク質と比較して、インビボ投与後、6時間超、12時間超、24時間超、48時間超、72時間超、96時間超、または1週間超延長される。半減期は、タンパク質がその濃度、量、または活性の半分を喪失するのに要する時間を指す。半減期を、例えば、ELISAアッセイまたは活性アッセイを使用することによって決定することができる。例示的な半減期延長部分には、Fcドメイン、多量体化ドメイン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、XTEN(伸長組換えペプチド;WO 2013130683を参照のこと)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、脂質(アシル化)、ポリ-Pro-Ala-Ser(PAS)、およびポリグルタミン酸(グルタミル化)が含まれる。
用語「免疫シナプス」は、本明細書において使用される場合、MHC I(主要組織適合性複合体)またはMHC IIを発現する哺乳動物細胞(例えば、抗原提示細胞または腫瘍細胞)と、哺乳動物リンパ球(例えば、エフェクターT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞)との間の界面を意味する。
免疫グロブリン分子(Fcポリペプチドとも呼ばれる)のFc(結晶性断片)領域またはドメインは、主に免疫グロブリン重鎖の定常領域に相当し、かつ、抗体のエフェクター機能を含む種々の機能に関与している。Fcドメインは、免疫グロブリン分子のヒンジドメインの一部分または全てとCH2ドメインおよびCH3ドメインとを含有する。Fcドメインは、1つまたは複数のジスルフィド結合によって接続された2つのポリペプチド鎖の二量体を形成することができる。いくつかの態様において、Fcは、エフェクター機能を促進する活性が低減された(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またそれより大きく低減された)バリアントFcである。いくつかの態様において、Fc領域中のアミノ酸置換への言及は、特定のSEQ ID NOを基準に記載されない限りは、EUナンバリングシステムによる言及である。EUナンバリングは、公知であり、最近更新されたIMGT Scientific Chart(IMGT(登録商標)、すなわちinternational ImMunoGeneTics information system(登録商標) http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.html(作成日:2001年5月17日、最終更新日:2013年1月10日)およびKabat, E.A. et al. Sequences of Proteins of Immunological interest. 5th ed. US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242 (1991) に報告されているとおりのEUインデックスに従う。
免疫グロブリンFc融合体(「Fc融合体」)、例えば免疫調節Fc融合タンパク質は、免疫グロブリンのFc領域に機能的に連結された1つまたは複数のポリペプチド(または1つまたは複数の低分子)を含む分子である。Fc融合体は、例えば、抗体のFc領域(いくつかの場合では、薬物動態を促進する)およびバリアントCD86ポリペプチドを含み得る。免疫グロブリンFc領域は、1つまたは複数のバリアントCD86ポリペプチドまたは低分子(融合パートナー)に間接的または直接的に連結され得る。種々のリンカーが当技術分野において公知であり、任意でこれを使用して、Fcを融合パートナーに連結させてFc融合体を生成することができる。同一種のFc融合体を、二量体化して、Fc融合ホモ二量体を形成することも、非同一種を使用して、Fc融合ヘテロ二量体を形成することもできる。いくつかの態様において、Fcは、哺乳動物Fc、例えばネズミ、ウサギ、またはヒトのFcである。
用語「宿主細胞」は、組換え発現ベクターによってコードされているタンパク質を発現させるために使用することができる細胞を指す。宿主細胞は、原核生物、例えば、大腸菌(E. coli)であることができるか、または、宿主細胞は、真核生物、例えば、単細胞真核生物(例えば、酵母または他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、または昆虫細胞)またはハイブリドーマであることができる。宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはそれらの誘導体、例えば、無血清培地で成長するVeggie CHO、DG44、Expi CHO、もしくはCHOZN、および関連細胞株、またはDHFR欠損CHO系統DX-B11が含まれる。いくつかの態様において、宿主細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、または昆虫細胞)であってもよい。
用語「免疫グロブリン」(「Ig」と略記される)は、本明細書において使用される場合、5種のヒトクラスの抗体:IgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、およびIgMのいずれかを含む哺乳動物免疫グロブリンタンパク質を指す。該用語はまた、完全または部分的合成(例えば、組換えまたは化学合成)であるか天然に産生されるかにかかわらず全長未満である免疫グロブリン、例えば、抗原結合断片(Fab)、VHおよびVLを含有する可変断片(Fv)、1つの鎖中で一緒に連結されたVHおよびVLを含有する単鎖可変断片(scFv)、ならびに他の抗体V領域断片(Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、dsFvダイアボディ、Fc、およびFdポリペプチド断片)を含む。ホモ二重特異性およびヘテロ二重特異性の二重特異性抗体は、該用語の範囲内に含まれる。
用語「免疫グロブリンスーパーファミリー」または「IgSF」は、本明細書において使用される場合、細胞の、認識、結合、または接着プロセスに関与する、細胞表面タンパク質および可溶性タンパク質の群を意味する。分子は、免疫グロブリン(すなわち、抗体)と共通の構造的特徴に基づいて、このスーパーファミリーのメンバーとして類別され;これらは全て、免疫グロブリンドメインまたはフォールドとして公知のドメインを保有する。IgSFのメンバーは、免疫系の、細胞表面抗原受容体、共受容体および共刺激分子、リンパ球への抗原提示に関与する分子、細胞接着分子、特定のサイトカイン受容体ならびに細胞内筋タンパク質を含む。これらは、通常、免疫系における役割と関連する。免疫シナプス中のタンパク質は、IgSFのメンバーであることが多い。IgSFはまた、機能のような共通の特性に基づいて「サブファミリー」に分類することができる。このようなサブファミリーは、典型的には、4~30のIgSFメンバーからなる。
用語「IgSFドメイン」または「免疫グロブリンドメイン」または「Igドメイン」は、本明細書において使用される場合、IgSFタンパク質の構造ドメインを指す。Igドメインは、免疫グロブリン分子に因んで命名されている。これらは、約70~110アミノ酸を含有し、それらのサイズおよび機能に従って類別される。Igドメインは、逆平行β鎖の2つのシートによって形成されるサンドイッチ様構造を有する、特徴的なIgフォールドを保有する。サンドイッチの内側の疎水性アミノ酸間の相互作用ならびにBおよびF鎖中のシステイン残基間で形成される高度に保存されているジスフィルド結合は、Igフォールドを安定化させる。Igドメインの一端は、抗体のそれらのリガンドに対する特異性に重要な相補性決定領域と呼ばれる部分を有する。Ig様ドメインは、IgV、IgC1、IgC2、またはIgIとして(クラスに)分類することができる。ほとんどのIgドメインは、可変(IgV)ドメインまたは定常(IgC)ドメインのいずれかである。9つのβ鎖を有するIgVドメインは、概して、7つのβ鎖を有するIgCドメインより長い。IgSFのいくつかのメンバーのIgドメインは、アミノ酸配列中のIgVドメインと似ているが、なおIgCドメインとサイズが類似している。これらは、IgC2ドメインと呼ばれ、一方で、標準的なIgCドメインは、IgC1ドメインと呼ばれる。T細胞受容体(TCR)鎖は、細胞外部分における2つのIgドメイン(1つはN末端におけるIgVドメインおよび1つは細胞膜に隣接するIgC1ドメイン)を含有する。CD86は、2つのIgドメイン:IgVおよびIgCを含有する。
用語「IgSF種」は、本明細書において使用される場合、同一のまたは実質的に同一の一次アミノ酸配列を有するIgSFメンバータンパク質の集団を意味する。各哺乳動物免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)メンバーは、そのIgSFメンバーに属する全てのIgSF種にユニークの同一性を規定する。したがって、各IgSFファミリーメンバーは、他のIgSFファミリーメンバーと比べてユニークであり、したがって、特定のIgSFファミリーメンバーの各種は、別のIgSFファミリーメンバー種と比べてユニークである。それにもかかわらず、同じIgSF種の分子間の相違が、グリコシル化、リン酸化、ユビキチン化、ニトロシル化、メチル化、アセチル化、および脂質化などの翻訳後修飾の差異が原因で生じ得る。さらに、遺伝子多型性が原因の単一のIgSF種内の小さな配列差異は、例えばタンパク質分解的切断が原因のIgSF種の野生型短縮形態と同様、単一のIgSF種内の別の形態の相違も成す。「細胞表面IgSF種」は、細胞(概して哺乳動物細胞)の表面に発現するIgSF種である。
用語「免疫活性」は、本明細書においてT細胞のような哺乳動物リンパ球の文脈で使用される場合、1つまたは複数の細胞生存、細胞増殖、サイトカイン産生(例えば、インターフェロン-γ)、またはT細胞傷害性活性を指す。いくつかの場合では、免疫活性は、ケモカインまたはインターロイキン等のサイトカインの発現を意味することができる。免疫活性の増強または抑制を決定するためのアッセイは、培養上清中のインターフェロン-γまあはIL-2などのサイトカインレベルを測定するMLR(混合リンパ球反応)アッセイ(Wang et al., Cancer Immunol Res. 2014 Sep: 2(9):846-56)、SEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB(staphylococcal enterotoxin B))T細胞刺激アッセイ(Wang et al., Cancer Immunol Res. 2014 Sep: 2(9):846-56)、および抗CD3 T細胞刺激アッセイ(Li and Kurlander, J Transl Med. 2010: 8: 104)を含む。T細胞活性化は、IFN-γまたはIL-2サイトカインなどのサイトカインの分泌と関連するので、これらのインビトロヒトT細胞アッセイからの培養上清中のかかるサイトカインレベルの検出は、市販のELISAキットを使用してアッセイすることができる(Wu et al, Immunol Lett 2008 Apr 15; 117(1): 57-62)。免疫応答の誘導は、静止リンパ球と比べて免疫活性の増強をもたらす。本明細書において提供されるとおりの免疫調節タンパク質(例えば、親和性改変IgSFドメインを含有するバリアントCD86ポリペプチド)は、いくつかの態様において、初代T細胞アッセイにおいて、野生型IgSFメンバーまたはIgSFドメイン対照と比べてIFN-γ(インターフェロン-γ)またはIL-2の発現を増加させることができ、または、代替態様において減少させることができる。当業者は、IFN-γまたはIL-2の発現の増加を決定するために使用される初代T細胞アッセイのフォーマットが、IFN-γまたはIL-2の発現の減少についてアッセイするために採用されるフォーマットと異なることを認識するだろう。初代T細胞アッセイにおいてIFN-γまたはIL-2の発現を減少させる本発明の免疫調節タンパク質または親和性改変IgSFドメインの能力についてアッセイする際に、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを実施例6に記載されるとおり使用することができる。好都合なことに、本発明の可溶性形態の親和性改変IgSFドメインを採用して、IFN-γまたはIL-2の発現に拮抗することによりその発現を減少させるその能力をMLRにおいて決定することができる。あるいは、初代T細胞アッセイにおいてIFN-γまたはIL-2の発現を増加させる本発明の免疫調節タンパク質または親和性改変IgSFドメインの能力についてアッセイする際に、同時固定アッセイを使用することができる。同時固定アッセイでは、T細胞受容体シグナル(いくつかの態様において、抗CD3抗体によって提供される)を同時固定された親和性改変IgSFドメイン、例えばバリアントCD86と併用して、野生型IgSFドメイン対照と比べてIFN-γまたはIL-2の発現を増加させる能力を決定する。バリアントCD86膜貫通型免疫調節タンパク質の活性を評価することを含め、改変細胞の免疫活性をアッセイする方法は、当技術分野において公知であり、限定されないが、抗原刺激後にT細胞を増殖させる能力、再刺激の非存在下でT細胞の増殖を持続する能力、および適切な動物モデルにおける抗がん活性を含む。アッセイはまた、標準的な51Cr放出アッセイ(例えば、Milone et al., (2009) Molecular Therapy 17: 1453-1464 を参照のこと)もしくはフローベース細胞傷害性アッセイ、またはインピーダンスベース細胞傷害性アッセイ(Peper et al. (2014) Journal of Immunological Methods, 405:192-198)を含む、細胞傷害性を評価するアッセイを含む。
「免疫調節ポリペプチド」または「免疫調節タンパク質」は、免疫活性を調節するポリペプチドまたはタンパク質分子である。免疫応答の「調節」とは、免疫活性の増強または抑制のいずれかを意味する。免疫調節タンパク質は、単一のポリペプチド鎖であるか、または(例えば、鎖間ジスフィルド結合によって)互いに共有結合された少なくとも2つのポリペプチド鎖の多量体(二量体またはより高次の多量体)であることができる。したがって、単量体、二量体、およびより高次の多量体ポリペプチドは、その定義された用語の範囲内である。多量体ポリペプチドは、(同一のポリペプチド鎖の)ホモ多量体または(異なるポリペプチド鎖の)ヘテロ多量体であることができる。本明細書における免疫調節タンパク質には、バリアントCD86ポリペプチドが含まれる。
用語「増加させる」または「向上させる」は、本明細書において使用される場合、統計的に有意な量だけ増加または向上させることを意味する。増加または向上は、非ゼロ対照値よりも少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、またはより大きい増加または向上であることができる。
CD86の「アイソフォーム」は、アミノ酸配列が異なる、複数の天然に存在するCD86ポリペプチドのうちの1つである。アイソフォームは、単一の遺伝子によって発現されるRNA転写産物のスプライスバリアントの産物であることも、遺伝子重複から生じ得るような機能的に類似のタンパク質を生成する高度に類似するが異なる遺伝子の発現産物であることもできる。本明細書において使用される場合、CD86の「アイソフォーム」なる用語は、CD86遺伝子の異なるアレルの産物も指す。
用語「標識」は、検出可能シグナルを発生させるために直接的または間接的に付着または連結させることができるか、検出可能シグナルを変更するために第2の標識と相互作用することができる、化合物または組成物のことを指す。標識は、標識されたポリペプチドを生成するためにポリペプチドに直接的または間接的にコンジュゲートさせることができる。標識は、それ自体検出可能(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)であるか、酵素標識の場合には、検出可能である基質化合物組成物の化学変化を触媒することができる。標識の非限定例は、蛍光発生部分、緑色蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼを含む。
用語「リンパ球」は、本明細書において使用される場合、哺乳動物免疫系の白血球の3つのサブタイプのいずれかを意味する。これらは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)(細胞媒介性の細胞傷害性自然免疫において機能する)、T細胞(細胞媒介性の細胞傷害性獲得免疫に関する)、およびB細胞(体液性の抗体による獲得免疫に関する)を含む。T細胞は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、またはγδT細胞を含む。また、自然リンパ球(ILC)もリンパ球の定義の範囲内に含まれる。
用語「哺乳動物」または「患者」は、具体的には、ヒト、チンパンジー、アカゲザル、カニクイザル、イヌ、ネコ、マウス、またはラットのうちの少なくとも1つへの言及を含む。
用語「膜タンパク質」は、本明細書において使用される場合、生理的条件下で脂質二重層に直接または間接的に付着(結合)するタンパク質を意味する。膜を形成する脂質二重層は、生体膜、例えば真核生物(例えば、哺乳動物)の細胞膜または人工の(すなわち、人造の)膜、例えばリポソーム上に見いだされる膜であることができる。脂質二重層への膜タンパク質の結合は、共有結合による結合であるか、または非共有相互作用(例えば、疎水性相互作用もしくは静電相互作用)による結合であることができる。膜タンパク質は、内在性膜タンパク質または表在性膜タンパク質であることができる。表在性膜タンパク質である膜タンパク質は、脂質二重層に非共有相互作用により結合されるか、または内在性膜タンパク質に非共有相互作用により結合される。表在性膜タンパク質は、哺乳動物において生理的な範囲の条件下で表在性膜タンパク質が脂質二重層と相互作用するおよび/または脂質二重層から解離することができるように、脂質二重層への一時的な結合を形成する。表在性膜タンパク質とは対照的に、内在性膜タンパク質は、哺乳動物において生理的な範囲の条件下で内在性膜タンパク質が脂質二重層への結合から解離しないように、膜の脂質二重層への実質的に恒久的な結合を形成する。膜タンパク質は、脂質二重層の一層による膜への結合を形成することができる(モノトピック型)か、または膜の両方の層によって結合することができる(ポリトピック型)。1つの脂質二重層とだけ相互作用する内在性膜タンパク質は、「内在性モノトピック型タンパク質」である。脂質二重層の両方と相互作用する内在性膜タンパク質は、「内在性ポリトピック型タンパク質」である。あるいは、本明細書において「膜貫通型タンパク質」と称される。
用語「調節」または「調節する」は、本明細書において免疫応答(例えば哺乳動物の免疫応答)の文脈で使用される場合、本発明のバリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドの投与の結果としてまたは本発明の免疫調節タンパク質(例えば、バリアントCD86膜貫通型免疫調節タンパク質)を発現する改変細胞の投与の結果として起こる、既存のまたは潜在的な免疫応答の任意の変化(例えば、増強または低減)を指す。したがって、調節は、バリアントCD86を含む免疫調節タンパク質の投与の非存在下で起こるまたは存在する免疫応答と比較して、免疫応答の変化(例えば、増強または低減)を指す。そのような調節は、免疫細胞の免疫活性のある度合いもしくは程度の任意の誘導、活性化、抑制、または変化を含む。免疫細胞は、B細胞、T細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、NK T細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)、非プロフェッショナル抗原提示細胞、ならびに炎症細胞(好中球、マクロファージ、単球、好酸球、および好塩基球)を含む。調節は、既存の免疫応答、発生段階にある免疫応答、潜在的な免疫応答に、または免疫応答を誘導する、調節する、それに影響を及ぼす、もしくは応答する能力に与えられる、任意の変化を含む。調節は、免疫応答の一部としての、免疫細胞における遺伝子、タンパク質および/または他の分子の発現および/または機能の任意の変化を含む。免疫応答の調節または免疫活性の調節は、例えば、以下を含む:免疫細胞の排除、欠失、または隔離;自己反応性リンパ球、抗原提示細胞、または炎症細胞のような他の細胞の機能的能力を調節することができる、免疫細胞の誘導または生成;免疫細胞における無応答状態の誘導(すなわち、アネルギー);免疫細胞の活性または機能を増強または抑制すること(これらの細胞によって発現されるタンパク質のパターンを変化させることを非限定に含む)。例は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、転写因子、キナーゼ、共刺激性分子、もしくは他の細胞表面受容体などの特定の分子クラスの産生および/もしくは分泌の変化、またはこれらの調節事象の任意の組み合わせを含む。調節を、例えば、初代T細胞アッセイにおける野生型または非改変CD86対照と比べたIFN-γ(インターフェロンγ)またはIL-2の発現の変化によって評価することができる(Zhao and Ji, Exp Cell Res. 2016 Jan1; 340(1): 132-138 を参照のこと)。調節を、例えば、野生型CD86膜貫通型タンパク質で改変された細胞と比べた、改変細胞の免疫活性の変化、例えば改変細胞の細胞傷害性活性の変化または改変細胞のサイトカイン分泌の変化によって、評価することができる。
用語「多量体化ドメイン」は、同じまたは異なる多量体化ドメインであることができる相補的多量体化ドメイン(例えば、第1の多量体化ドメインおよび第2の多量体化ドメイン)を各々含有するポリペプチド分子と1つまたは複数の追加のポリペプチド分子との安定した相互作用を促進するアミノ酸配列のことを指す。相補的多量体化ドメイン間の相互作用、例えば、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインとの間の相互作用は、安定したタンパク質-タンパク質相互作用を形成して、ポリペプチド分子と追加のポリペプチド分子との多量体を産生する。いくつかの場合では、多量体化ドメインは、同じであり、それ自体が相互作用して、2つのポリペプチド鎖間で安定したタンパク質-タンパク質相互作用を形成する。概して、ポリペプチドは、多量体化ドメインに直接的または間接的に接続される。例示的な多量体化ドメインは、免疫グロブリン配列またはその部分、ロイシンジッパー、疎水性領域、親水性領域、および適合性のタンパク質-タンパク質相互作用ドメインを含む。多量体化ドメインは、例えば、免疫グロブリン定常領域またはドメイン、例えば、IgG(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプを含む)、IgA、IgE、IgD、IgM、およびその改変型由来の、Fcドメインまたはその部分であることができる。
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態の核酸残基(例えば、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド)のポリマーを指す。別段の限定されない限り、該用語は、公知の天然型ヌクレオチドの類似体を含有する核酸、およびそれと類似の結合特性を有する核酸、および天然に存在するヌクレオチドと同様な様式で代謝される核酸を包含する。他に指定のない限り、特定の核酸配列はまた、明示的に示されている配列(「参照配列」)だけでなく、保存的に改変されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換)および相補的ヌクレオチド配列も暗黙のうちに包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第三の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成してもよい。核酸またはポリヌクレオチドという用語は、遺伝子によってコードされているcDNAまたはmRNAを包含する。
用語「分子種」は、本明細書において使用される場合、同一のまたは実質的に同一の一次アミノ酸配列を備えたタンパク質の集団を意味する。各哺乳動物免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)メンバーは、同一のまたは実質的に同一の分子種の集合体を規定する。したがって、例えば、ヒトCD86はIgSFメンバーであり、各ヒトCD86分子はCD86の一分子種である。同じ分子種の分子間の相違が、グリコシル化、リン酸化、ユビキチン化、ニトロシル化、メチル化、アセチル化、および脂質化のような翻訳後修飾の差異が原因で起こり得る。さらに、遺伝子多型性が原因の単一の分子種内の小さな配列差異は、例えばタンパク質分解的切断が原因の単一の分子種の野生型短縮形態と同様、単一の分子種内の別の形態の相違も成す。「細胞表面分子種」は、哺乳動物細胞の表面に発現する分子種である。各々がISを形成する2つの哺乳動物細胞のうちのうちの一方のみ又はもう一方のみに存在する(しかし両方ではない)、2つ以上の異なるタンパク質種は、互いに「シス」または「シス配置」にあると言われる。第一のものがISを形成する2つの哺乳動物細胞のうちの第一の細胞のみに存在し、第二のものがISを形成する2つの哺乳動物細胞のうちの第二の細胞のみに存在する、2つの異なるタンパク質種は、「トランス」または「トランス配置」にあると言われる。各々がISを形成する2つの哺乳動物細胞の両方に存在する、2つの異なるタンパク質種は、これらの細胞上でシス型およびトランス型の両配置にある。
用語「非競合的結合」は、本明細書において使用される場合、少なくとも2つの同族結合パートナーに同時に特異的に結合するタンパク質の能力を意味する。したがって、タンパク質は、少なくとも2つの異なる同族結合パートナーに同時に結合することができるが、結合相互作用は、同じ期間である必要はないので、いくつかの場合では、タンパク質は、同族結合パートナーの1つにのみ特異的に結合される。いくつかの態様において、結合は、特異的結合条件下で起こる。いくつかの態様において、同時結合は、1つの同族結合パートナーの結合が第二の同族結合パートナーへの同時結合を実質的に阻害しないようなものである。いくつかの態様において、非競合的結合は、タンパク質上のその結合部位への第二の同族結合パートナーの結合が、タンパク質上のその結合部位への第一の同族結合パートナーの結合に置き換わらないことを意味する。非競合的結合を評価する方法は、Perez de La Lastra et al., Immunology, 1999 Apr: 96(4): 663-670 に記載されている方法など、当技術分野において周知である。いくつかの場合では、非競合的相互作用において、第一の同族結合パートナーは、第二の同族結合パートナーの相互作用部位と重複しない相互作用部位で、第二の同族結合パートナーの結合が第一の同族結合パートナーの結合と直接干渉しないように、特異的に結合する。したがって、第二の同族結合パートナーの結合による同族結合パートナーの結合へのあらゆる影響は、第一の同族結合パートナーの結合との直接的な干渉以外の機序を介するものである。例えば、酵素-基質相互作用の状況では、非競合的阻害剤は、酵素の活性部位以外の部位に結合する。非競合的結合は、第二の同族結合パートナーが、第一の同族結合パートナーの結合と重複しない相互作用部位で特異的に結合するが、第一の相互作用部位が第一の同族結合パートナーに占有されているときだけ第二の相互作用部位に結合する、非競合的な結合相互作用を包含する。
用語「薬学的組成物」は、哺乳動物対象、しばしばヒトにおける、薬学的用途に好適な組成物を指す。薬学的組成物は、典型的には、有効量の活性剤(例えば、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドまたはバリアントCD86膜貫通型免疫調節タンパク質を発現する改変細胞)と担体、賦形剤、または希釈剤とを含む。担体、賦形剤、または希釈剤は、それぞれ、典型的には、薬学的に許容し得る担体、賦形剤または希釈剤である。
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、かつ、ペプチド結合を介して連結されている2つ以上のアミノ酸の分子鎖を指す。該用語は、その産物の特定の長さを指すわけではない。したがって、「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、ポリペプチドの定義の範囲内に含まれる。該用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。該用語はまた、合成するかまたは公知のタンパク質改変技術を使用して組換え発現することができる分子であって、1つまたは複数のアミノ酸がアミノ酸類似体または非標準もしくは非天然型アミノ酸である、分子も含む。加えて、タンパク質は誘導体化されていてもよい。
用語「初代T細胞アッセイ」は、本明細書において使用される場合、T細胞活性、例えばサイトカインの産生、例えば、インターフェロン-γ(「IFN-γ」)、IL-2、または腫瘍壊死因子α(TNFα)の発現を測定するための、インビトロアッセイを指す。様々なこのような初代T細胞アッセイが当技術分野において公知である。いくつかの態様において、使用されるアッセイは、抗CD3同時固定アッセイである。このアッセイでは、初代T細胞が、追加の組換えタンパク質と共にまたはそれなしで固定された抗CD3によって刺激される。ある時点(通常24~72時間)で培養上清を収集する。別の態様において、使用されるアッセイは混合リンパ球反応(MLR)である。このアッセイでは、初代T細胞が、同種異系APCで刺激される。ある時点(通常24~72時間)で培養上清を収集する。標準的なELISA技術によって培養上清中のサイトカインレベル、例えば、IFN-γ、IL-2、またはTNFαのレベルを測定する。市販のキットが供給業者から入手可能であり、製造業者の推奨に従ってアッセイを実施する。
用語「精製されている」は、核酸(例えば、本発明の免疫調節タンパク質をコードする核酸)に適用される場合、一般に、当技術分野において周知の分析技術によって決定したときに他の成分を実質的に含まない核酸またはポリペプチドを表す(例えば、精製されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、電気泳動ゲル、クロマトグラフ溶出液、および/または密度勾配遠心分離に供された媒体中で、離散バンドを形成する)。例えば、電気泳動ゲル中で基本的に1つのバンドを生じる核酸またはポリペプチドは、「精製されている」。精製された本発明の核酸またはタンパク質は、少なくとも約50%純粋、通常、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、99%またはそれ以上純粋(例えば、重量パーセントまたはモルベース)である。
用語「組換え」は、物質(例えば、核酸またはポリペプチド)がヒトの介入によって人工的に(すなわち、非天然に)変化していることを示す。該変化は、その天然の環境もしくは状態内のまたはそこから取り出された物質に対して実施することができる。例えば、「組換え核酸」は、例えば、クローニング、親和性改変、DNAシャッフリングまたは他の周知の分子生物学的手順の間に、核酸を組換えることによって製造されるものである。「組換えDNA分子」は、このような分子生物学的技術によって一緒に接合されたDNAのセグメントから構成される。用語「組換えタンパク質」または「組換えポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、組換えDNA分子を使用して発現されるタンパク質分子を指す。「組換え宿主細胞」は、組換え核酸を含有するおよび/もしくは発現する細胞であるか、またはそうではなく(例えば、組換えタンパク質(例えば、本明細書において提供される膜貫通型免疫調節タンパク質)をコードする核酸分子を細胞に導入することによって)遺伝子工学により改変された細胞である。真核生物における転写制御シグナルは、「プロモーター」および「エンハンサー」エレメントを含む。プロモーターおよびエンハンサーは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する短いDNA配列アレイからなる。プロモーターおよびエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫および哺乳動物細胞ならびにウイルス中の遺伝子を含め様々な真核生物源から単離されている(類似した制御エレメント、すなわち、プロモーターはまた原核生物中にも見いだされる)。特定のプロモーターおよびエンハンサーの選択は、関心対象のタンパク質を発現させるためにどんな細胞タイプが使用されるべきであるかに依存する。用語「機能的な組み合わせにある」、「機能的な順序にある」および「機能的に連結されている」は、本明細書において使用される場合、所与の遺伝子の転写および/または所望のタンパク質分子の合成を指令することが可能な核酸分子が産生される様式または配向性での核酸配列の連結を指す。
用語「組換え発現ベクター」は、本明細書において使用される場合、所望のコード配列とその機能的に連結されているコード配列の特定の宿主細胞における発現に必要な適切な核酸配列とを含有するDNA分子を指す。原核生物における発現に必要な核酸配列は、プロモーター、場合によりオペレーター配列、リボソーム結合部位およびおそらく他の配列を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終止およびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。所望により、細胞からの融合タンパク質のより簡易な単離のため、発現された融合タンパク質が組換え宿主細胞によって分泌されることができるように、分泌シグナルペプチド配列がまた、場合により、組換えタンパク質(例えば、組換え融合タンパク質)のコード配列に機能的に連結されている組換え発現ベクターによってコードされることができる。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、ならびにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。このようなベクターには、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターがある。
用語「選択性」は、1つの基質(例えば1つの同族結合パートナー)に対する対象タンパク質またはポリペプチドの特異的結合の、別の基質(例えば異なる同族結合パートナー)に対する当該対象タンパク質の特異的結合と比較しての優先度を指す。選択性は、対象タンパク質と第一の基質(例えば第一の同族結合パートナー)との結合活性(例えば、結合親和性)(例えば、Kd1)と、同じ対象タンパク質と第二の同族結合パートナーとの結合活性(例えば、結合親和性)(例えば、Kd2)との比率として反映することができる。
用語「配列同一性」は、本明細書において使用される場合、遺伝子またはタンパク質間の、それぞれヌクレオチドまたはアミノ酸レベルでの配列同一性を指す。「配列同一性」は、アミノ酸レベルでのタンパク質間の同一性の尺度およびヌクレオチドレベルでの核酸間の同一性の尺度である。タンパク質の配列同一性は、配列を整列したときの各配列中の所与の位置におけるアミノ酸配列を比較することによって決定され得る。同様に、核酸の配列同一性は、配列を整列したときの各配列中の所与の位置におけるヌクレオチド配列を比較することによって決定され得る。比較のための配列の整列(アライメント)のための方法は、当技術分野において周知であり、そのような方法には、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTAが含まれる。BLASTアルゴリズムは、配列同一性パーセントを計算し、2つの配列間の類似性の統計分析を実施する。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のウェブサイトを通じて公的に入手可能である。
用語「可溶性」は、タンパク質に関して本明細書において使用される場合、タンパク質が膜タンパク質ではないことを意味する。概して、可溶性タンパク質は、IgSFドメインまたはその特異的結合断片を含有するIgSFファミリーメンバー受容体の細胞外ドメインまたはその一部分のみを含有するが、膜貫通ドメインを含有しない。いくつかの場合では、Fcドメインへ直接またはリンカーを介して間接的に連結または結合させることによってタンパク質の溶解性を改善することができ、これは、いくつかの場合では、タンパク質の安定性および/または半減期も改善することができる。いくつかの局面において、可溶性タンパク質は、Fc融合タンパク質である。
用語「種」は、ポリペプチドまたは核酸に関して本明細書において使用される場合、同一のまたは実質的に同一の配列を有する分子の集団を意味する。同じ種であるポリペプチド間の違いが、グリコシル化、リン酸化、ユビキチン化、ニトロシル化、メチル化、アセチル化、および脂質化等の翻訳後修飾の差異が原因で起こり得る。完全長種とアミノ末端またはカルボキシ末端がわずか1、2、または3アミノ酸残基だけ異なる(または差異をコードする)わずかに短縮されたポリペプチド配列は、単一種の配列であると見なされる。そのような微小不均一性は、製造されたタンパク質の共通の特徴である。
用語「特異的結合断片」は、本明細書において完全長野生型哺乳動物CD86ポリペプチドまたはそのECD、IgV、もしくはIgCドメインに関して使用される場合、ECD、IgV、および/またはIgCドメインの部分配列を有し、かつ、インビトロおよび/またはインビボで哺乳動物CD28および/または哺乳動物CTLA-4(例えば、ヒトまたはネズミのCD28および/またはCTLA-4)に特異的に結合する、ポリペプチドを意味する。いくつかの態様において、CD86 ECD、CD86 IgVまたはCD86 IgCの特異的結合断片は、完全長野生型ECD、IgV、またはIgC配列の配列長の少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%である。バリアントCD86を形成させるために、特異的結合断片の配列を変化させることができる。
用語「特異的に結合する」は、本明細書において使用される場合、その親和性またはアビディティが、十分な統計的サイズのランダムペプチドまたはポリペプチドの集合体に対する同じタンパク質の平均親和性またはアビディティの少なくとも5倍大きく、しかし場合により少なくとも10、20、30、40、50、100、250または500倍大きく、またはさらに少なくとも1000倍大きくなるように、特異的結合条件下で、標的タンパク質に結合するタンパク質の能力を意味する。特異的に結合するタンパク質は、単一の標的分子のみに結合する必要はないが、標的と非標的(例えば、パラログまたはオーソログ)との間の立体配置の類似性に起因して非標的分子に特異的に結合し得る。当業者は、異なる動物種における同じ機能を有する分子(すなわち、オーソログ)への特異的結合または標的分子と実質的に類似のエピトープを有する非標的分子(例えば、パラログ)への特異的結合が、可能であり、かつ、固有の非標的(例えば、ランダムポリペプチド)の統計的に有効な集合体に対して決定される結合の特異性を損なわないことを認識するだろう。したがって、本発明のポリペプチドは、交差反応性に起因して、複数の別個の標的分子種に特異的に結合し得る。固相ELISAイムノアッセイまたは表面プラズモン共鳴(例えば、ビアコア(Biacore))測定を使用して、2つのタンパク質間の特異的結合を決定することができる。概して、2つの結合タンパク質間の相互作用は、1×10-5 M未満、しばしば1×10-12 Mまでの低さの解離定数(Kd)を有する。本開示の特定の態様において、2つの結合タンパク質間の相互作用は、1×10-6 M、1×10-7 M、1×10-8 M、1×10-9 M、1×10-10 Mまたは1×10-11 Mの解離定数を有する。
ポリペプチドを発現する哺乳動物細胞に関して、用語「表面発現する」または「表面発現」は、当該ポリペプチドが膜タンパク質として発現することを意味する。いくつかの態様において、膜タンパク質は、膜貫通型タンパク質である。
本明細書において使用される場合、「合成(の)」は、例えば、合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドに関して、組換え法および/または化学合成法によって生産される核酸分子またはポリペプチド分子を指す。
用語「ターゲティング部分」は、本明細書において使用される場合、バリアントCD86を含むポリペプチドに共有結合もしくは非共有結合により結合されるか、またはそれを物理的にカプセル化する、組成物を指す。ターゲティング部分は、細胞表面受容体(例えば、CD28)、または腫瘍抗原(例えば、腫瘍特異的抗原(TSA)もしくは腫瘍関連抗原(TAA)、例えばB7-H6)のような所望のカウンター構造体に対して特異的結合親和性を有する。典型的には、所望のカウンター構造体は、特定の組織または細胞タイプ上に局在化される。ターゲティング部分は、抗体、抗原結合断片(Fab)、VHおよびVLを含有する可変断片(Fv)、1つの鎖中で一緒に連結されたVHおよびVLを含有する単鎖可変断片(scFv)、ならびに他の抗体V領域断片、例えばFab’、F(ab)2、F(ab’)2、dsFvダイアボディ、ナノボディ、可溶性受容体、受容体リガンド、親和性成熟された受容体もしくはリガンド、ならびに低分子(500ダルトン未満の)組成物(例えば、特異的結合受容体組成物)を含む。ターゲティング部分はまた、本発明のポリペプチドをカプセル化するリポソームの脂質膜に共有結合または非共有結合により結合(付着)させることもできる。
本明細書において使用される場合、用語「膜貫通型タンパク質」は脂質二重層を実質的にまたは完全に貫通する膜タンパク質を意味し、脂質二重層は、例えば、哺乳動物細胞などの生体膜中に、またはリポソームなどの人工構築物中に見いだされる。膜貫通型タンパク質は、脂質二重層に統合されかつその統合が生理的条件下で熱力学的に安定である、膜貫通ドメイン(「膜貫通ドメイン」)を含む。膜貫通ドメインは概して、膜貫通ドメインの疎水性が、タンパク質における水性環境(例えば、細胞質ゾル、細胞外流体)と相互作用する領域と比較して高いことに基づいて、幾つもの市販の生命情報科学ソフトウェアアプリケーションを介して、膜貫通ドメインのアミノ酸配列から予測可能である。膜貫通ドメインは多くの場合、膜を貫通する疎水性αヘリックスである。膜貫通型タンパク質は、脂質二重層の両層を1回または複数回貫通していてもよい。本明細書に記載される提供される膜貫通型免疫調節タンパク質は、膜貫通型タンパク質に含まれる。本発明の膜貫通型免疫調節タンパク質は、膜貫通ドメインに加えて、エクトドメインをさらに含み、いくつかの態様においてはエンドドメインをさらに含む。
疾患または障害の「治療」または「治療法」という用語は、本明細書において使用される場合、本発明の治療用組成物(例えば、免疫調節タンパク質または改変細胞を含有するもの)を、単独、または本明細書に記載されるとおりの別の化合物との組み合わせのいずれかで投与することによる臨床または診断症状のいずれかの低減、停止、または排除によって証明される、疾患または障害の進行を遅延、中断、または反転させることを意味する。「治療」または「治療法」は、急性もしくは慢性疾患もしくは障害における症状の重症度の低下、または再発率の低下(例えば、自己免疫疾患経過を再発するまたは寛解する場合のような)、または自己免疫疾患の炎症的側面の場合の炎症の低減も意味する。がんの文脈において本明細書で使用される場合、がんの「治療」または「阻害」という用語は、限定されないが、Response Evaluation Criteria for Solid Tumors(RECIST)のような標準的な基準によって測定した場合の、腫瘍成長率の統計的に有意な低下、腫瘍成長の停止、または腫瘍のサイズ、質量、代謝活性、もしくは体積の低減、または無増悪生存率(PFS)もしくは全生存率(OS)の統計的に有意な向上のうちの少なくとも1つを指す。疾患または障害の「予防」は、本発明の文脈において使用される場合、疾患もしくは障害の出現もしくは発症または疾患もしくは障害の症状の一部もしくは全てを予防するか、または疾患もしくは障害の発症の可能性を低下させるための、本発明の免疫調節ポリペプチドまたは改変細胞を単独または別の化合物との組み合わせのいずれかで投与することを指す。
用語「腫瘍特異的抗原」または「TSA」は、本明細書において使用される場合、哺乳動物対象の腫瘍細胞上に主に存在するが一般に哺乳動物対象の正常細胞上には見いだされないカウンター構造体を指す。腫瘍特異的抗原は、腫瘍細胞のみに存在する必要はないが、抗腫瘍治療薬(例えば、本発明の免疫調節ポリペプチド)でターゲティングできかつ腫瘍の影響から哺乳動物を予防または治療することを提供できるように、腫瘍特異的抗原を有する特定の哺乳動物の細胞の割合が十分に高いかまたは腫瘍の表面の腫瘍特異的抗原のレベルが十分に高い。いくつかの態様において、腫瘍を有する哺乳動物由来の細胞のランダム統計試料では、TSAを提示する細胞の少なくとも50%ががん性である。他の態様において、TSAを提示する細胞の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、または99%ががん性である。
用語「バリアント」(また「改変体」または「変異体」)は、バリアントCD86に関して使用される場合、ヒトの介入によって作製されたCD86、例えば哺乳動物(例えば、ヒトまたはネズミ)CD86を意味する。バリアントCD86は、非改変または野生型CD86と比べて変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドである。バリアントCD86は、野生型CD86アイソフォーム配列と1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、またはそれらの組み合わせだけ異なるポリペプチドである。本明細書における目的のために、バリアントCD86は、少なくとも1つの親和性が改変されたドメインを含有し、それによってアミノ酸差異のうちの1つまたは複数がIgSFドメイン(例えば、IgVドメインまたはIgVドメイン)において生じる。バリアントCD86は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、またはそれより多いアミノ酸差異、例えばアミノ酸置換を含有することができる。バリアントCD86ポリペプチドは、概して、対応する野生型または非改変CD86(例えばSEQ ID NO:2の配列)、その成熟配列または細胞外ドメインもしくはそのIgSFドメインを含有する部分に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を示す。いくつかの態様において、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:122、またはSEQ ID NO:123に示される配列を含む対応する野生型または非改変CD86に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い配列同一性を示す。
非天然アミノ酸も天然アミノ酸も、許容される置換または付加の範囲内に含まれる。バリアントCD86は、任意の特定の製造方法に限定されることはなく、例えば、デノボ化学合成、デノボ組換えDNA技術、またはそれらの組み合わせを含む。本発明のバリアントCD86は、哺乳動物種のCD28および/またはCTLA-4のうちの少なくとも1つまたは複数に特異的に結合する。いくつかの態様において、アミノ酸配列の変化は、非改変または野生型CD86タンパク質と比較して、CD28および/またはCTLA-4に対する結合親和性またはアビディティの変化(すなわち、向上または低下)をもたらす。結合親和性またはアビディティの向上または低下を、フローサイトメトリーなどの周知の結合アッセイを使用して決定することができる。Larsen et al., American Journal of Transplantation, Vol 5: 443-453 (2005)。また、Linsley et al., Immunity, Vol 1(9): 793-801 (1994)も参照のこと。CD28および/またはCTLA-4に対するバリアントCD86の結合親和性またはアビディティの向上は、非改変または野生型CD86の値よりも少なくとも5%大きい値への向上であることができ、いくつかの態様においては、非改変または野生型CD86対照値の値よりも少なくとも10%、15%、20%、30%、40%、50%、100%より大きい値への向上であることができる。CD28および/またはCTLA-4に対するCD86の結合親和性またはアビディティの低下は、非改変または野生型CD86対照値の95%以下の値までの低下であり、いくつかの態様においては、非改変または野生型CD86対照値の結合親和性またはアビディティの80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%以下、または検出不可能の値までの低下である。いくつかの態様では、結合親和性またはアビディティーに変化がないことは、バリアントCD86の結合親和性またはアビディティーと非改変または野生型CD86の結合親和性またはアビディティーとの間に有意な差がないことと見なされる。いくつかの態様では、一方の同族結合パートナーに対する結合親和性またはアビディティーは変化し得るが、他方の同族結合パートナーに対しては変化し得ない。例えば、CD28に対する向上した結合親和性またはアビディティーを示し得るバリアントCD86は、野生型または非改変CD86分子の結合親和性またはアビディティーと比較して、CTLA-4に対して変化のない結合親和性またはアビディティーを示す。いくつかの態様では、両方の同族結合パートナーに対する結合親和性またはアビディティーが変化し得る。いくつかの態様では、変化は、同じ方向のものである(例えば、両方とも向上または低下する)。いくつかの態様では、変化は、異なる方向のものである(例えば、一方の同族結合パートナーに対しては向上し、他方の同族結合パートナーに対しては低下する)。例えば、CD28に対する向上した結合親和性またはアビディティーを示し得るバリアントCD86は、野生型または非改変CD86分子の結合親和性またはアビディティーと比較して、CTLA-4に対する低下した結合親和性またはアビディティーを示す。いくつかの態様では、CD86バリアントまたは野生型もしくは非改変ポリペプチドは、CD28および/またはCTLA-4のエクトドメインに結合する。したがって、いくつかの態様では、親和性およびアビディティーは、CD86バリアントまたは野生型もしくは非改変ポリペプチドのCD28および/またはCTLA-4のエクトドメインへの結合に基づいて決定される。バリアントCD86ポリペプチドは、アミノ酸残基の置換、付加、または欠失によって一次アミノ酸配列が変化している。バリアントCD86ポリペプチドの文脈における用語「バリアント」は、バリアントCD86が作製される任意の特定の出発組成物または方法のあらゆる条件を強要するものと解釈されるべきではない。バリアントCD86は、例えば、野生型哺乳動物CD86配列情報から開始して生成され、次いで、CD28および/またはCTLA-4に対する結合性についてインシリコでモデル化され、そして、最後に組換え合成または化学合成されて、バリアントCD86が生成されることができる。別の一例として、バリアントCD86は、非改変または野生型CD86の部位特異的変異誘発によって作製することができる。したがって、バリアントCD86は、組成物を表すが、必ずしも任意の所与のプロセスによって生産される生成物である必要はない。組換え法、化学合成、またはそれらの組み合わせを含む多種多様な技術を採用してよい。
用語「野生型」または「自然(natural)」または「天然(native)」は、本明細書において使用される場合、核酸分子、タンパク質(例えば、CD86)、IgSFメンバー、宿主細胞などの生物学的材料と共に用いられ、天然に見いだされかつヒトの介入によって改変されていないものを指す。
II. バリアントCD86ポリペプチド
1つまたは複数のCD86同族結合パートナーに対する結合活性または親和性が変化(向上または低下)しているバリアントCD86ポリペプチドが本明細書において提供される。いくつかの態様において、CD86同族結合パートナーは、CD28またはCTLA-4である。いくつかの態様において、CD86同族結合パートナーはCD28である。いくつかの態様において、バリアントCD86ポリペプチドは、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメイン(IgD)において、野生型もしくは非改変CD86ポリペプチド、または野生型もしくは非改変CD86のIgDを含有する部分、またはその特異的結合断片と比較して、1つまたは複数のアミノ酸改変、例えば1つまたは複数の置換(あるいは、「変異」または「交換」)、欠失、または付加を含有する。したがって、提供されるバリアントCD86ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)がIgDにあるバリアントIgD(本明細書で以降「vIgD」と呼ばれる)であるかまたはそれを含む。
いくつかの態様では、バリアントは、非改変CD86配列の配列と比べて1つまたは複数のIgSFドメインが改変されている。いくつかの態様では、非改変CD86配列は、野生型CD86である。いくつかの態様では、非改変または野生型CD86は、天然型CD86の配列またはそのオーソログを有する。いくつかの態様では、非改変CD86は、CD86の細胞外ドメイン(ECD)またはその一部分であってIgVドメインを含有する部分であるか、またはそれを含む(表2を参照のこと)。いくつかの態様では、バリアントCD86は、CD86の細胞外ドメイン(ECD)またはその一部分であってIgVドメインを含有する部分であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様では、非改変または野生型CD86ポリペプチドは、IgVドメインまたはその特異的結合断片を含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、IgVドメインまたはその特異的結合断片を含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86は、可溶性であり、膜貫通ドメインを欠いている。いくつかの態様では、バリアントCD86はさらに、膜貫通ドメインを含み、いくつかの場合では、細胞質ドメインも含む。
いくつかの態様では、野生型または非改変CD86配列は、哺乳動物のCD86配列である。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86配列は、限定されないが、ヒト、マウス、カニクイザルまたはラットを含む哺乳動物のCD86であることができる。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86配列は、ヒトのものである。
いくつかの態様では、野生型または非改変CD86配列は、(i)SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列もしくはシグナル配列を欠いているその成熟形態、(ii)SEQ ID NO:2もしくはその成熟形態に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するか、または(iii)(i)もしくは(ii)の一部分であってIgVドメインもしくはその特異的結合断片を含有する部分である。
いくつかの態様では、野生型または非改変CD86配列は、CD86の細胞外ドメインまたはその一部分であってCD86のIgVもしくはその特異的結合断片を含有する部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、非改変または野生型CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:29、122もしくは123に示されるアミノ酸配列、またはそのオーソログを含む。いくつかの場合では、非改変または野生型CD86ポリペプチドは、(i)SEQ ID NO:29、122もしくは123に示されるアミノ酸配列、(ii)SEQ ID NO:29、122もしくは123に対して少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができるか、または(iii)(i)もしくは(ii)の配列の特異的結合断片である。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2の24~247番目のアミノ酸残基に対応する)、またはそのオーソログを含む。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:122に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2の33~131番目のアミノ酸残基に対応する)、またはそのオーソログを含む。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:123に示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2の24~134番目のアミノ酸残基に対応する)、またはそのオーソログを含む。いくつかの態様では、IgVドメインまたはその特異的結合断片を含有する野生型または非改変CD86は、CD28またはCTLA-4の1つまたは複数などの1つまたは複数のCD86同族結合タンパク質に結合可能である。
いくつかの態様では、野生型または非改変CD86ポリペプチドは、CD86の特異的結合断片(例えば、IgVドメインの特異的結合断片)を含有する。いくつかの態様では、特異的結合断片は、CD28および/またはCTLA-4に結合することができる。いくつかの態様では、特異的結合断片は、CD28および/またはCTLA-4のエクトドメインに結合することができる。特異的結合断片は、少なくとも60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、または220個のアミノ酸など、少なくとも50個のアミノ酸のアミノ酸長を有することができる。いくつかの態様では、IgVドメインの特異的結合断片は、SEQ ID NO:2のアミノ酸33~131として示されるIgVドメインの長さの少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%であるアミノ酸配列を含有する。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、1つまたは複数の親和性改変されたIgSFドメインを含む細胞外ドメインまたはその一部分を含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、IgVドメイン、またはIgVドメインの特異的結合断片を含むことができ、その中のIgSFドメインは、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、完全長IgVドメインを含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、IgVドメインの特異的結合断片を含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、完全長細胞外ドメイン(ECD)を含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、ECDドメインの特異的結合断片を含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、完全長IgVドメインを含むECDドメインの特異的結合断片を含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、IgVドメインの特異的結合断片を含むECDドメインの特異的結合断片を含む。
概して、ポリペプチドの種々の属性の各々は、以下に別々に開示される(例えば、可溶性および膜結合ポリペプチド、CD28およびCTLA-4に対するCD86の親和性、1ポリペプチド鎖当たりの違いの数、連結されたポリペプチド鎖の数、バリアントCD86当たりのアミノ酸変更の数および性質、など)。しかしながら、当業者に明らかであるとおり、任意の特定のポリペプチドは、これらの独立した属性の組み合わせを含むことができる。IgSFドメインのドメイン構成を説明するために使用されるSEQ ID NOとして示される特定の配列への言及を含めたアミノ酸についての言及は、例示を目的としており、提供される態様の範囲を限定することを意味していないことが理解されよう。ポリペプチドおよびそのドメインの説明は、類似の分子との相同性分析および整列に基づいて理論的に導出されることが理解されよう。したがって、正確な遺伝子座にはばらつきがあり得、必ずしもタンパク質ごとに同じとは限らない。よって、特定のIgSFドメイン、例えば特定のIgVドメインは、数アミノ酸(例えば、1、2、3または4個)長いかまたは短い場合がある。
さらに、以下に考察するとおりの本発明の種々の態様は、上に開示したとおりの定義済みの用語の意味内でしばしば提供される。それゆえ、特定の定義において記載される態様は、定義済みの用語が本明細書に記載の種々の局面および属性の考察において利用されるとき、参照によって組み入れられると解釈されるべきである。したがって、見出し、種々の局面および態様の提示の順序、ならびに各々独立した属性の別々の開示は、本開示の範囲に限定されることを意味するものではない。
A. 例示的な改変
本明細書において、野生型または非改変CD86ポリペプチドに含有されるIgSFドメインと比べて少なくとも1つの親和性改変IgSFドメイン(例えば、IgV)またはその特異的結合断片を含有するバリアントCD86ポリペプチドであって、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比較して変化した(向上または低下した)、1つまたは複数のリガンドCD28またはCTLA-4に対する結合活性または親和性を示す、バリアントCD86ポリペプチドが提供される。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、例えば、固相ELISAイムノアッセイ、フローサイトメトリー、ForteBio OctetまたはBiacoreアッセイによって決定された場合に、野生型または非改変CD86ポリペプチド対照配列のものと異なる、CD28および/またはCTLA-4に対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて向上した、CD28に対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて低下した、CTLA-4に対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて変化のない、CTLA-4に対する結合親和性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べてして向上していない、CTLA-4に対する結合親和性を示す。CD28および/またはCTLA-4は、ヒトタンパク質またはネズミタンパク質などの哺乳動物タンパク質であることができる。いくつかの態様では、バリアント、野生型および非改変のCD86ポリペプチドは、CD28および/またはCTLA-4のエクトドメインに結合する。したがって、いくつかの態様では、親和性または結合活性は、バリアント、野生型および非改変のCD86ポリペプチドのCD28および/またはCTLA-4のエクトドメインへの結合に関して決定される。
同族結合パートナーの各々に対する結合親和性は、独立している;すなわち、いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて向上した、CTLA-4ではなくCD28に対する結合親和性を有する。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて向上した、CD28に対する結合親和性を有し、かつ、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて低下した、CTLA-4に対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて向上した、CD28に対する結合親和性を有し、かつ、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べて変化のない、CTLA-4に対する結合親和性を有する。
いくつかの態様では、CD28に対する結合親和性が向上したまたはより大きいバリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチド対照と比べて、CD28に対して少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、15%、20%、25%、35%、または50%の結合親和性の向上を有するだろう。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べた結合親和性の向上は、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、125倍、150倍、175倍、200倍、225倍、250倍、275倍、300倍、325倍、350倍、375倍、または400倍よりも大きい。そのような例では、野生型または非改変CD86ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有しないこと以外は、バリアントCD86ポリペプチドと同じ配列を有する。
いくつかの態様では、CTLA-4に対する結合親和性が低下または減少したバリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチド対照と比べて、少なくとも5%、例えば少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の、CTLA-4に対する結合親和性の低下を有するだろう。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比べた結合親和性の低下は、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、または50倍よりも大きい。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチド対照と比べて、CTLA-4に対する結合親和性の変化を示さない。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチド対照と比べて、CTLA-4に対する結合親和性の向上を示さない。そのような例では、野生型または非改変CD86ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有しないこと以外は、バリアントCD86ポリペプチドと同じ配列を有する。
いくつかの態様では、CD28および/またはCTLA-4に対する前述の態様のいずれかの平衡解離定数(Kd)は、1×10-5 M未満、1×10-6 M未満、1×10-7 M未満、1×10-8 M未満、1×10-9 M未満、1×10-10 Mまたは1×10-11 M未満、または1×10-12 M未満、またはそれ未満であることができる。
野生型または非改変CD86配列は、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチドを生成するために、必ずしも出発組成物として使用される必要はない。それゆえ、「置換」などの「改変」という用語の使用は、本態様が、バリアントCD86ポリペプチドの特定の製造法に限定されることを暗示するものではない。バリアントCD86ポリペプチドは、例えば、デノボペプチド合成によって製造することができ、したがって、改変、例えば置換をコードするようにコドンを変更するという意味で、必ずしも「置換」などの改変を必要とするわけではない。この原則はまた、アミノ酸残基の「付加」および「欠失」という用語にも及び、これも同じく特定の製造法を暗示するものではない。バリアントCD86ポリペプチドが設計または作製される手段は、いかなる特定の方法にも限定されない。しかしながら、いくつかの態様では、野生型または非改変CD86をコードする核酸が、野生型または非改変CD86遺伝物質から変異誘発され、所望の特異的結合親和性および/またはIFN-γ発現もしくは他の機能的活性の誘導についてスクリーニングされる。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、いくつもの公的に利用可能なデータベースで利用可能なタンパク質または核酸配列を利用してデノボ合成され、次いで、その後スクリーニングされる。国立生物工学情報センターは、そのような情報を提供し、そのウェブサイトは、UniProtKBデータベースと同じくインターネットを介して公的にアクセス可能である。
別途言及のない限り、本開示を通して示すとおり、アミノ酸改変は、以下のとおり、SEQ ID NO:29に示される非改変ECD配列の位置のナンバリングに対応するアミノ位置番号によって指定される:
本明細書において提供される改変は、SEQ ID NO:29に示される野生型もしくは非改変CD86ポリペプチド中、またはその一部分であってIgVドメインもしくはその特異的結合断片を含有する部分中にあることができる。いくつかの態様では、野生型または非改変CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:122に示されるようなCD86のIgVを含有する。いくつかの態様では、非改変CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:122に示されるIgV配列よりも数アミノ酸より長いまたはより短くてよい、例えば、1~20、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸より長いまたはより短くてよいIgVを含有する。いくつかの態様では、非改変CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:29、122もしくは123、またはその特異的結合断片に対して、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、非改変CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:29、122、および123のいずれかに示される配列を有する。
CD86ポリペプチド(例えば、その一部分であってIgVドメインを含有する部分)における改変(例えば、アミノ酸置換)の対応する位置を、例えば、参照配列とSEQ ID NO:29とのアラインメントによって、特定することは、当業者の技能の範囲内である。野生型CD86の24~247番目の残基を含有するSEQ ID NO:29と野生型CD86の33~131番目の残基を含有するSEQ ID NO:122との例示的なアラインメントが図3に示されている。本開示全体の改変の列記において、アミノ酸位置が中央に示され、対応する非改変(例えば、野生型)アミノ酸が番号の前に列記され、特定されたバリアントのアミノ酸置換が番号の後に列記される。改変が該位置の欠失である場合は「del」と表示され、改変が該位置における挿入である場合は「ins」と表示される。いくつかの場合では、挿入が、中央に示されたアミノ酸位置と共に列記され、対応する非改変(例えば、野生型)アミノ酸が番号の前および後に列記され、特定されたバリアントのアミノ酸挿入が非改変(例えば、野生型)アミノ酸の後に列記される。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86配列中に1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)は、野生型または非改変CD86配列のエクトドメイン(細胞外ドメイン;ECD)中にあることができる。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)は、IgVドメインまたはその特異的結合断片中にある。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)は、IgCドメインまたはその特異的結合断片中にある。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)は、ECDまたはその特異的結合断片中にある。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。改変(例えば、置換)は、IgVドメイン中にあることができる。いくつかの態様では、改変は、ECD中にある。いくつかの態様では、改変は、ECDおよびIgVドメイン中にある。いくつかの態様では、改変は、IgVドメイン中にある。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、IgVドメインまたはその特異的結合断片において、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、ECDまたはその特異的結合断片において、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドまたはその特異的結合断片と、例えばSEQ ID NO:29、122、または123のアミノ酸配列と、100%未満の配列同一性および少なくとも約85%、86%、86%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:29に示される位置を基準として13、18、25、28、33、38、39、40、43、45、52、53、60、68、71、77、79、80、82、86、88、89、90、92、93、97、102、104、113、114、123、128、129、132、133、137、141、143、144、148、153、154、158、170、172、175、178、180、181、183、185、192、193、196、197、198、205、206、207、212、215、216、222、223、または224位に対応する、非改変CD86またはその特異的結合断片における1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。いくつかの態様では、224位における改変は欠失である。いくつかの態様では、そのようなバリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比較して変化した、CD28および/またはCTLA-4の1つまたは複数に対する結合親和性を示す。例えば、いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比較して向上した、CD28に対する結合親和性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比較して低下した、CTLA-4に対する結合親和性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比較して、CTLA-4に対する結合親和性においていかなる変化も示さない。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチドと比較して、CTLA-4に対する結合親和性の向上を示さない。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、
から選択される1つもしくは複数のアミノ酸置換、またはその保存的アミノ酸置換を有する。保存的アミノ酸置換は、野生型または非改変アミノ酸以外の、置換されたアミノ酸と同じクラスのアミノ酸に属する任意のアミノ酸である。アミノ酸のクラスは、脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン)、ヒドロキシルまたは硫黄含有(セリン、システイン、トレオニン、およびメチオニン)、環状(プロリン)、芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、塩基性(ヒスチジン、リジン、およびアルギニン)、および酸性/アミド(アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミン)である。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、
から選択される2つ以上のアミノ酸置換、またはその保存的アミノ酸置換を有する。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:29に示される位置を基準として13、18、25、28、33、38、39、40、43、45、52、53、60、68、71、77、79、80、82、86、88、89、90、92、93、97、102、104、113、114、123、128、129、132、133、137、141、143、144、148、153、154、158、170、172、175、178、180、181、183、185、192、193、196、197、198、205、206、207、212、215、216、222、223、または224から選択される位置に対応する位置に1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸置換)を含有する。いくつかの態様では、アミノ酸改変は、
から選択される1つもしくは複数のアミノ酸置換、またはその保存的アミノ酸置換である。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、
に対応する1つもしくは複数のアミノ酸置換、またはその保存的置換を含有する。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、25または90から選択される位置に少なくとも1つの改変(例えば、置換)を含有する。いくつかの態様では、少なくとも1つのアミノ酸置換は、Q25L、H90Y、またはH90Lである。いくつかの態様では、少なくとも1つのアミノ酸置換は、Q25Lである。いくつかの態様では、少なくとも1つのアミノ酸置換は、H90YまたはH90Lである。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、
の中から選択されるアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、
の中から選択されるアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、アミノ酸置換Q25L/H90YまたはQ25L/H90Lを含有する。
いくつかの態様では、提供されるバリアントCD86ポリペプチドのいずれかはさらに、
からの1つまたは複数のアミノ酸置換を含有することができる。
いくつかの態様では、提供されるバリアントCD86ポリペプチドの中には、アミノ酸置換
を有するCD86ポリペプチドがある。いくつかの態様では、提供されるバリアントCD86ポリペプチドの中には、アミノ酸置換
を有するCD86ポリペプチドがある。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、表1に列記される置換(変異)のいずれかを含む。表1はまた、野生型CD86または例示的なバリアントCD86ポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)またはIgVドメインについてSEQ ID NOを参照することにより例示的な配列を提供する。いくつかの場合では、表1に表示されるとおりのIgVは、ECDよりも短く、したがって、表1に列記されるとおりのすべてのアミノ酸置換、例えば、IgVドメイン以外のアミノ酸置換を含まない場合もある。表示されるとおり、所与のドメインに対応する正確な遺伝子座または残基は、例えばドメインの特定または分類に使用される方法に応じて、異なる場合がある。また、いくつかの場合では、所与のドメイン(例えば、ECDまたはIgV)の隣接するN末端および/またはC末端アミノ酸も、例えば発現した場合にドメインの適切なフォールディングを確実にするために、バリアントIgSFポリペプチドの配列に含めることができる。したがって、表1におけるSEQ ID NOの例示は、限定されるものと解釈されるべきではないことが理解されよう。例えば、バリアントCD86ポリペプチドのECDまたはIgVドメインなどの特定のドメインは、それぞれのSEQ ID NOに示されるアミノ酸配列よりも数アミノ酸より長いまたはより短くてよい、例えば、1~20、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸より長いまたはより短くてよい。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:85~121、124~134、141~221、および314に示される配列のいずれかであるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:85~121、124~134、141~221、および314のいずれか1つに示される配列のいずれかに対して少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、97%の同一性、98%の同一性、または99%の同一性を示し、かつ、野生型または非改変CD86には存在しないアミノ酸改変(例えば、置換)をその中に含有する、ポリペプチド配列であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:85~121、124~134、314、および141~221のいずれか1つの任意の特異的結合断片であるかまたはそれを含み、かつ、野生型または非改変CD86には存在しないアミノ酸改変(例えば、置換)をその中に含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86は、SEQ ID NO:89、93、94、107、111、112、115、117、124~134、145、149、150、163、167、168、171、173、182、186、187、200、204、205、208、210、215~221、または314によって示される配列であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:89、93、94、107、111、112、115、117、124~134、145、149、150、163、167、168、171、173、182、186、187、200、204、205、208、210、215~221、または314のいずれか1つに示される配列のいずれかに対して少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、97%の同一性、98%の同一性、または99%の同一性を示し、かつ、野生型または非改変CD86には存在しないアミノ酸改変(例えば、置換)をその中に含有する、ポリペプチド配列であるかまたはそれを含む。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:85~121、124~134、141~221、または314のいずれか1つの特異的結合断片であるかまたはそれを含み、かつ、野生型または非改変CD86には存在しないアミノ酸改変(例えば、置換)をその中に含有する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:89、93、94、107、111、112、115、117、124~134、145、149、150、163、167、168、171、173、182、186、187、200、204、205、208、210、215~221、または314のいずれか1つの特異的結合断片であるかまたはそれを含み、かつ、野生型または非改変CD86には存在しないアミノ酸改変(例えば、置換)をその中に含有する。
(表1)例示的なバリアントCD86ポリペプチド
いくつかの態様では、提供されるCD86のバリアントはいずれも、記載されているように、表1に示されているアミノ酸配列よりもより短いまたはより長い、例えば、1~20アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸)長いまたは短いポリペプチドとして含めることができ、ただし、当該CD86ポリペプチドがCD28に結合する(野生型または非改変CD86ポリペプチドと比較して向上した親和性で結合することを含む)ことを条件とする。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:29、122、または123に示される配列)と比較して、CD28のエクトドメインに対する向上した親和性を示す。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:29、122、または123に示される配列)と比較して、CD28のエクトドメインへの結合については向上した結合親和性を示し、CTLA-4への結合については低下した結合親和性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、野生型または非改変CD86ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:29、122、または123に示される配列)と比較して、CD28のエクトドメインに対しては向上した親和性を示し、CTLA-4のエクトドメインに対しては変化のない親和性を示す。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、非改変CD86ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:29、122、または123に示される)のCTLA-4への結合に対するCD28への結合(例えばCD28結合:CTLA-4結合の比(CD28:CTLA-4結合比)によって示される)と比較して、CTLA-4に対するCD28への向上した選択性を示す。いくつかの態様では、当該結合比は1よりも大きい。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、もしくはそれ以上より大きい、または約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、もしくはそれ以上より大きい、または1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、もしくはそれ以上である、CTLA-4への結合に対するCD28への結合の比を示す。
III. バリアントポリペプチドのフォーマット
vIgDが含有される本明細書において提供されるバリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドは、様々な様式、例えば、可溶性タンパク質、膜結合型タンパク質、または分泌型タンパク質としてのフォーマットとされることができる。いくつかの態様では、所望の治療的適用に合わせて特定のフォーマットを選択することができる。いくつかの場合では、バリアントCD86ポリペプチドを含む免疫調節ポリペプチドは、その結合パートナー(例えば、CTLA-4および/またはCD28)の活性に拮抗(antagonize)するかそれを遮断するフォーマットで提供される。いくつかの場合では、バリアントCD86ポリペプチドを含む免疫調節ポリペプチドは、その結合パートナー(例えば、CD28)の活性を刺激(agonize)または刺激(stimulate)するフォーマットで提供される。いくつかの態様では、CD28のアゴニズム(受容体活性化作用)は、オンコロジーにおいて免疫を促進するのに有用であり得る。当業者は、例えば1つまたは複数の特異的結合パートナーに拮抗(アンタゴナイズ)するかまたはそれを刺激(アゴナイズ)するための特定のフォーマットの活性を容易に決定することができる。そのような活性を評価するための例示的な方法は、実施例を含め、本明細書において提供される。いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質のモジュールフォーマットは、複数のカウンター構造体(複数の同族結合パートナー)の活性を調節するための免疫調節タンパク質の改変または生成に対してフレキシビリティを提供する。
いくつかの局面では、CD86のvIgDを含む免疫調節タンパク質であって、可溶性である、例えば、Fc鎖に融合されている、そのようなタンパク質が提供される。いくつかの局面では、1つまたは複数の追加のvIgDなどの1つまたは複数の追加のIgSFドメインは、本明細書において提供されるようなCD86のvIgDに連結されていてもよい(本明細書で以降「スタック」または「スタックされた」免疫調節タンパク質と呼ばれる)。いくつかの態様では、そのような「スタック」分子は、可溶性フォーマットで提供されることができ、またはいくつかの場合では、膜結合型または分泌型タンパク質として提供されてもよい。いくつかの態様では、バリアントCD86免疫調節タンパク質は、例えば、対象に投与された際などに、vIgDを特定の環境または細胞に標的指向または局在化するために、リガンド、例えば、抗原に特異的に結合する標的指向性物質または部分、例えば、抗体または他の結合分子に直接的または間接的に連結されたCD86のvIgDを含有するコンジュゲートとして提供される。いくつかの態様では、標的指向性物質、例えば、抗体または他の結合分子は、腫瘍抗原に結合し、それによって、vIgDを含有するバリアントCD86を腫瘍微小環境に局在化させ、例えば、腫瘍微小環境に特異的な腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の活性を調節する。
いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、細胞において発現し、改変細胞療法(ECT)の一部として提供される。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、免疫細胞(例えば、T細胞または抗原提示細胞)などの細胞において膜結合形態で発現し、それによって、膜貫通型免疫調節タンパク質(本明細書で以降「TIP」とも呼ばれる)が提供される。いくつかの態様では、TIPによって認識される同族結合パートナーに応じて、TIPを発現する改変細胞は、他の改変細胞および/または内在性T細胞に陽性または陰性のいずれかの共刺激シグナルを提供することによって、同族結合パートナーを刺激(アゴナイズ)することができる。いくつかの態様では、TIPを発現する改変細胞は、異なる細胞上の同族結合パートナーに結合する。いくつかの態様では、TIPを発現する改変細胞が異なる細胞上の同族結合パートナーに結合すると、共刺激は、トランスの共刺激と称される。いくつかの態様では、TIPを発現する改変細胞がその細胞自体の同族結合パートナーに結合し、それによって、それ自体において共刺激が誘導される。いくつかの態様では、細胞上のTIPがその細胞自体の同族結合パートナーに結合すると、共刺激は、シスの共刺激と称される。いくつかの局面では、バリアントCD86ポリペプチドは、免疫細胞(例えば、T細胞または抗原提示細胞)などの細胞において分泌型形態で発現し、それによって、細胞が対象に投与された際などに、分泌または可溶性形態のバリアントCD86ポリペプチド(本明細書で以降「SIP」とも呼ばれる)を産生する。いくつかの局面では、SIPによって認識される同族結合パートナーに応じて、SIPを発現する改変細胞は、それが分泌される環境(例えば、腫瘍微小環境)において、同族結合パートナーに拮抗(アンタゴナイズ)するかそれを刺激(アゴナイズ)することができる。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、バリアントポリペプチドのTIPまたはSIPとしての細胞への送達または発現のために、対象への投与によって免疫細胞(例えば、T細胞または抗原提示細胞)などの細胞にインビボで感染可能である感染性物質(例えば、ウイルス性または細菌性物質)において発現する。
いくつかの態様において、可溶性免疫調節ポリペプチド、例えばvIgDを含有するバリアントCD86は、提供されるコンジュゲートのいずれか1つまたは任意の組み合わせ(例えば、ターゲティング部分)にそれ自体コンジュゲートされることができるリポソーム内にカプセル化されることができる。いくつかの態様において、本発明の可溶性または膜結合型免疫調節ポリペプチドは、脱グリコシル化されている。より具体的な態様において、バリアントCD86配列が脱グリコシル化されている。さらにより具体的な態様において、バリアントCD86のIgVおよび/またはIgC(例えば、IgC2)ドメインが脱グリコシル化されている。
提供されるフォーマットの非限定的な例を、以下にさらに記載する。
B. 可溶性タンパク質
いくつかの態様において、バリアントCD86ポリペプチドを含有する免疫調節タンパク質は、可溶性タンパク質である。当業者であれば、細胞表面タンパク質が、典型的には、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメイン(ECD)を有すること、ならびに、細胞外ドメインまたはその免疫学的に活性な配列を使用してそのようなタンパク質の可溶性形態を製造することができることを認識するだろう。したがって、いくつかの態様において、バリアントCD86ポリペプチドを含有する免疫調節タンパク質は、膜貫通ドメインまたは膜貫通ドメインの一部分を欠いている。いくつかの態様において、バリアントCD86を含有する免疫調節タンパク質は、細胞内(細胞質)ドメインを欠いているか、または細胞内ドメインの一部分を欠いている。いくつかの態様において、バリアントCD86ポリペプチドを含有する免疫調節タンパク質は、アミノ酸改変を含有するIgVドメインおよび/もしくはIgC(例えば、IgC2)ドメインまたはその特異的結合断片を含有するECDドメインまたはその一部分を含有するvIgD部分のみ含有する。
いくつかの態様において、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドは、本発明の1つまたは複数のバリアントCD86ポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、正確に1、2、3、4、5つのバリアントCD86配列を含む。いくつかの態様において、バリアントCD86配列のうちの少なくとも2つは、同一のバリアントCD86配列である。
いくつかの態様において、提供される免疫調節ポリペプチドは、CD86の2つ以上のvIgD配列を含む。ポリペプチド鎖内の複数のバリアントCD86ポリペプチドは、互いに同一(すなわち、同種)または非同一(すなわち、異種)のバリアントCD86配列であることができる。単一のポリペプチド鎖の態様に加えて、いくつかの態様において、本発明のポリペプチドの2つ、3つ、4つ、またはより多くは、共有結合または非共有結合により互いに結合していてもよい。したがって、単量体、二量体、およびより高次の(例えば、3、4、5、またはより高次の)多量体タンパク質が本明細書において提供される。いくつかの態様において、例えば正確に2つの本発明のポリペプチドが、共有結合または非共有結合により互いに結合して二量体を形成することができる。いくつかの態様において、結合は、鎖間システインジスルフィド結合を介してなされる。本発明の2つ以上のポリペプチドを含む組成物は、同一種もしくは実質的に同一種のポリペプチド(例えば、ホモ二量体)または非同一種のポリペプチド(例えば、ヘテロ二量体)の組成物であることができる。本発明の複数の連結されたポリペプチドを有する組成物は、上に述べたとおり、各ポリペプチド鎖に1つまたは複数の同一のまたは同一ではない本発明のバリアントCD86ポリペプチドを有することができる。
いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、単量体形態でありかつ/またはその結合パートナーへの一価の結合を示すバリアントCD86ポリペプチドであるか、またはそれを含有する。いくつかの局面では、可溶性でありかつ/または膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを欠いているバリアントCD86などの記載されるようなバリアントCD86ポリペプチドは、さらなる部分に直接的または間接的に連結されている。いくつかの態様では、さらなる部分は、タンパク質、ペプチド、低分子または核酸である。いくつかの態様では、一価の免疫調節タンパク質は、融合タンパク質である。いくつかの態様では、部分は、半減期延長分子である。そのような半減期延長分子の例は、アルブミン、アルブミン結合ポリペプチド、Pro/Ala/Ser(PAS)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、ポリエチレングリコール(PEG)、長鎖非構造化親水性アミノ酸配列(XTEN)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合低分子、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
いくつかの態様では、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドは、アミノ酸Pro、Ala、およびSerから構成される、立体構造的に乱れたポリペプチド配列を含む部分に連結させることができる(例えば、WO2008/155134、SEQ ID NO:242を参照のこと)。いくつかの場合では、アミノ酸反復配列は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、またはそれより多くのアミノ酸残基であり、その際、各反復配列は、Ala、Ser、およびPro残基を含む。したがって、本明細書において、バリアントCD86ポリペプチドがPro/Ala/Ser(PAS)に直接的またはリンカーを介して間接的に連結されたPAS化タンパク質である免疫調節タンパク質が提供される。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加のリンカー構造が使用され得る。
いくつかの態様では、部分は、バリアントCD86ポリペプチドの検出または精製を容易にする。いくつかの場合では、免疫調節ポリペプチドは、CD86ポリペプチドのN末端および/またはC末端に直接的または間接的に連結された、タグまたは融合ドメイン、例えば、親和性または精製タグを含む。様々な好適なポリペプチドタグおよび/または融合ドメインが公知であり、限定されないが、ポリ-ヒスチジン(His)タグ、FLAG-タグ(SEQ ID NO:248)、Myc-タグ、および蛍タンパク質-タグ(例えば、EGFP、SEQ ID NO:244~246に示される)を含む。いくつかの場合では、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドは、少なくとも6つのヒスチジン残基(SEQ ID NO:249に示される)を含む。いくつかの場合では、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドはさらに、部分の様々な組み合わせを含む。例えば、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドはさらに、1つまたは複数のポリヒスチジン-タグおよびFLAGタグを含む。
いくつかの態様では、CD86ポリペプチドは、SEQ ID NO:252に示されるなどの一価形態のままである改変された免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)に連結されている。
いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、多量体化ドメインに直接的またはリンカーを介して間接的に連結されたバリアントCD86ポリペプチドを含有する。いくつかの局面では、多量体化ドメインは、分子の半減期を長くする。2つ以上のバリアントCD86ポリペプチドの相互作用は、それ自体が相互作用して安定な構造を形成可能である任意の部分または他のポリペプチドへの、それらの直接的または間接的のいずれかの連結によって容易になり得る。例えば、別個のコードされているバリアントCD86ポリペプチド鎖を、多量体化によって接続することができ、そのポリペプチドの多量体化は、多量体化ドメインによって媒介される。典型的には、多量体化ドメインは、第1のバリアントCD86ポリペプチドと第2のバリアントCD86ポリペプチドとの間で安定したタンパク質-タンパク質相互作用の形成を提供する。
ホモまたはヘテロ多量体ポリペプチドは、別個のバリアントCD86ポリペプチドの共発現から生成することができる。第1および第2のバリアントCD86ポリペプチドは、同じであっても、異なっていてもよい。特定の態様では、第1および第2のバリアントCD86ポリペプチドは、ホモ二量体では同じであり、各々が同じ多量体化ドメインに連結されている。他の態様では、ヘテロ二量体は、異なる第1および第2のバリアントCD86ポリペプチドを連結させることにより形成することができる。そのような態様の一部では、第1および第2のバリアントCD86ポリペプチドは、ヘテロ二量体形成を促進可能な異なる多量体化ドメインに連結されている。
いくつかの態様では、多量体化ドメインは、安定したタンパク質-タンパク質相互作用を形成可能ないずれかを含む。多量体化ドメインは、免疫グロブリン配列(例えば、Fcドメイン;例えば、国際特許公開番号WO 93/10151およびWO 2005/063816 US;米国特許公開番号2006/0024298;米国特許第5,457,035号を参照のこと);ロイシンジッパー(例えば、核形質転換タンパク質fosおよびjunもしくはがん原遺伝子c-myc由来または窒素の全体的制御(General Control of Nitrogen)(GCN4)由来)(例えば、Busch and Sassone-Corsi (1990) Trends Genetics, 6:36-40;Gentz et al., (1989) Science, 243:1695-1699を参照のこと);疎水性領域;親水性領域;またはホモもしくはヘテロ多量体のキメラ分子間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオールを介して相互作用することができる。加えて、多量体化ドメインは、例えば、米国特許第5,731,168号;国際特許公開番号WO 98/50431およびWO 2005/063816;Ridgway et al. (1996) Protein Engineering, 9:617-621に記載されているような、ホールを含むアミノ酸配列に相補的な突起を含むアミノ酸配列を含むことができる。そのような多量体化領域は、立体相互作用が安定した相互作用を促進するだけでなく、キメラ単量体の混合物からのホモ二量体よりもヘテロ二量体の形成をさらに促進するように改変することができる。一般に、突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。大きなアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって、突起と同一または類似のサイズの代償性の空洞が第2のポリペプチドの界面に任意で作製される。例示的な多量体化ドメインについて後述する。
バリアントCD86ポリペプチドは、どこでもよいが、典型的にはそのN末端またはC末端を介して、多量体化ドメインのN末端またはC末端に接続してキメラポリペプチドを形成することができる。連結は、直接的であっても、リンカーを介して間接的であってもよい。キメラポリペプチドは、融合タンパク質であることができるか、または共有結合もしくは非共有結合による相互作用を介するなどの化学的連結によって形成することができる。例えば、多量体化ドメインを含有するキメラポリペプチドを調製する際に、バリアントCD86ポリペプチドの全部または一部分をコードする核酸を、多量体化ドメイン配列をコードする核酸に、直接的または間接的にまたは任意でリンカードメインを介して機能的に連結させることができる。いくつかの場合では、構築物は、バリアントCD86ポリペプチドのC末端が多量体化ドメインのN末端に接続されているキメラタンパク質をコードする。いくつかの状況では、構築物は、バリアントCD86ポリペプチドのN末端が多量体化ドメインのC末端に接続されているキメラタンパク質をコードすることができる。
ポリペプチド多量体は、同じまたは異なるバリアントCD86ポリペプチドの2つを直接的または間接的に多量体化ドメインに直接的または間接的に連結させることによって作製された、複数の、例えば2つのキメラタンパク質を含有する。いくつかの例では、多量体化ドメインがポリペプチドである場合、バリアントCD86ポリペプチドおよび多量体化ドメインをコードする遺伝子融合体が適切な発現ベクターに挿入される。得られたキメラまたは融合タンパク質は、組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞において発現させることができ、アセンブルして多量体となることが可能になり、この場合、多量体化ドメインは相互作用して多価ポリペプチドを形成する。多量体化ドメインのバリアントCD86ポリペプチドへの化学的連結は、ヘテロ二官能性リンカーを使用して行うことができる。
融合タンパク質などの得られたキメラポリペプチド、およびそれから形成された多量体は、例えば、プロテインAカラムまたはプロテインGカラムでのアフィニティークロマトグラフィーによるなど任意の好適な方法によって精製することができる。異なるポリペプチドをコードする2つの核酸分子が細胞に形質転換される場合、ホモおよびヘテロ二量体の形成が起こる。ホモ二量体形成よりもヘテロ二量体形成が優先されるように、発現の条件を調整することができる。
いくつかの態様では、多量体化ドメインは、免疫グロブリン由来のFcドメインまたはその一部分である。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、免疫グロブリンFcに付着されたバリアントCD86ポリペプチドを含む(CD86 vIgD-Fc融合体とも呼ばれる「バリアントCD86-Fc融合体」などの「免疫調節Fc融合体」が得られる)。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドの付着は、FcのN末端においてである。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドの付着は、FcのC末端においてである。いくつかの態様では、2つ以上のCD86バリアントポリペプチド(同じまたは異なる)は、N末端およびC末端に独立して付着される。いくつかの態様では、本明細書において提供されるCD86-Fcバリアント融合体は、上記セクションIIに示される説明に従うバリアントCD86ポリペプチドを含有する。
いくつかの態様において、Fcは、ネズミFcまたはヒトFcである。いくつかの態様において、Fcは、哺乳動物またはヒトのIgGl、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域である。いくつかの態様において、Fcは、IgG1、例えばヒトIgG1に由来する。いくつかの態様において、Fcは、SEQ ID NO:229、230、または253に示されるアミノ酸配列、または、SEQ ID NO:229、230、または253に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、Fc領域は、その正常な機能の1つまたは複数を変える(例えば、低減させる)別の改変を含有する。概して、Fc領域は、免疫グロブリンの主な機能である抗原結合能に加えてエフェクター機能、例えば補体依存性細胞傷害性(CDC)および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に関与する。追加的に、Fc領域に存在するFcRn配列は、インビボFcRn受容体へのコンジュゲーションによってインビボ半減期を延長させることによって、血清中のIgGレベルを調節する役割を果たす。いくつかの態様において、そのような機能は、提供されるFc融合タンパク質と使用するために、Fcにおいて低減または改変されることができる。
いくつかの態様において、本明細書において提供されるCD86-Fcバリアント融合体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸改変を導入し、それによってFc領域バリアントを生成し得る。いくつかの態様において、Fc領域バリアントは、エフェクター機能が低下している。エフェクター機能を変えることができるFc配列に対する変化または変異の多くの例がある。例えば、WO 00/42072、WO 2006019447、WO 2012125850、WO 2015/107026、US 2016/0017041およびShields et al. J Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) は、FcRに対する結合性が改善されたまたは低下した例示的なFcバリアントを記載している。それらの刊行物の内容は、参照によって具体的に本明細書に組み入れられる。
いくつかの態様において、提供されるバリアントCD86-Fc融合体は、CD86-Fcバリアント融合体のインビボ半減期が重要であるが一定のエフェクター機能(例えば、CDCおよびADCC)が不要であるかまたは有害である用途のための望ましい候補となる、エフェクター機能が低下しているFc領域を含む。インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイを実行して、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、CD86-Fcバリアント融合体がFcγR結合を欠いている(よっておそらくADCC活性を欠いている)がFcRn結合能を保持していることを確かめることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIII発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の464ページの表3にまとめられている。関心対象の分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの非限定例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) を参照のこと)およびHellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985); 米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射アッセイ法を採用してもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, Calif.; および CytoTox 96(商標)非放射細胞毒性アッセイ(Promega, Madison, Wis.)を参照のこと)。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的に、または追加的に、関心対象の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に開示されているものなどの動物モデルで評価してもよい。また、C1q結合アッセイを行って、CD86-Fcバリアント融合体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠いていることを確認してもよい。例えば、WO 2006/029879およびWO 2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996); Cragg, M. S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003); および Cragg, M. S. and M. J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004) を参照のこと)。また、当技術分野において公知の方法を使用してFcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の決定を実施することもできる(例えば、Petkova, S. B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) を参照のこと)。
エフェクター機能が低下しているCD86-Fcバリアント融合体には、EUナンバリングによるFc領域の残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つまたは複数の置換を有するもの(米国特許第6,737,056号)が含まれる。 そのようなFc変異体には、残基265および297がアラニンに置換されたいわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、EUナンバリングによるアミノ酸位置265、269、270、297、および327のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体が含まれる。
いくつかの態様において、CD86-Fcバリアント融合体のFc領域は、位置234、235、236、237、238、239、270、297、298、325、および329(EUナンバリングによって表示される)におけるアミノ酸のうちのいずれか1つまたは複数が天然型Fc領域と比較して異なるアミノ酸で置換されている、Fc領域を有する。そのようなFc領域の改変は、上記の改変に限定されず、例えば、Current Opinion in Biotechnology (2009) 20 (6), 685-691に記載されている、脱グリコシル化されている鎖(N297AおよびN297Q)、IgG1-N297G、IgG1-L234A/L235A、IgG1-L234A/L235E/G237A、IgG1-A325A/A330S/P331S、IgG1-C226S/C229S、IgG1-C226S/C229S/E233P/L234V/L235A、IgG1- E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、IgG1-L234F/L235E/P331S、IgG1-S267E/L328F、IgG2-V234A/G237A、IgG2-H268Q/V309L/A330S/A331S、IgG4-L235A/G237A/E318A、ならびにIgG4-L236E等の改変;WO 2008/092117に記載されているG236R/L328R、L235G/G236R、N325A/L328R、およびN325LL328Rのような改変;位置233、234、235、および237(EUナンバリングによって表示される)におけるアミノ酸挿入;ならびにWO 2000/042072に記載されている部位における改変を含む。
FcRに対する結合性が改善されたまたは低下したある特定のFcバリアントが記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;WO 2004/056312、WO 2006019447およびShields et al.、J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) を参照のこと)。
いくつかの態様において、本明細書に記載されているバリアントFcポリペプチドと、半減期を延長させるおよび/または新生児Fc受容体(FcRn)への結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含むバリアントFc領域とを含む、CD86-Fcバリアント融合体が提供される。半減期が延長されたおよびFcRnに対する結合性が改善された抗体は、US2005/0014934A1(Hinton et al.)またはWO 2015107026に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つまたは複数の置換をその中に有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントは、EUナンバリングによるFc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数に置換、例えば、Fc領域の残基434の置換を有するもの(米国特許第7,371,826号)を含む。
いくつかの態様において、CD86-Fcバリアント融合体のFc領域は、1つまたは複数のアミノ酸置換E356DおよびM358L(EUナンバリングによる)を含む。いくつかの態様において、CD86-Fcバリアント融合体のFc領域は、1つまたは複数のアミノ酸置換C220S、C226S、および/またはC229S(EUナンバリングによる)を含む。いくつかの態様において、CD86バリアント融合体のFc領域は、1つまたは複数のアミノ酸置換R292CおよびV302Cを含む。また、Fc領域バリアントの他の例に関して、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO 94/29351も参照されたい。
いくつかの態様では、野生型IgG1 Fcは、356位および358位(EUナンバリングによる)にGlu(E)残基およびMet(M)残基を含有するアロタイプ(例えば、fアロタイプ)を有するSEQ ID NO:229に示されるFcであることができる。他の態様では、野生型IgG1 Fcは、例えばSEQ ID NO 332に示されるような、356位および358位にAsp(D)およびLeu(L)を含有する残基など、ヒトG1m1アロタイプのアミノ酸を含有する。したがって、いくつかの場合では、本明細書において提供されるFcは、アロタイプG1 m1(例えば、アルファアロタイプ)の残基を再構成するためのアミノ酸置換E356DおよびM358Lを含有することができる。いくつかの局面では、野生型Fcは、エフェクター活性を低下させるまたはFcをFcエフェクター機能について不活性にするように1つまたは複数のアミノ酸置換によって改変される。例示的なエフェクター機能欠損変異または不活性変異は、本明細書に記載されるものを含む。本明細書において提供される構築物のFc中に含めることができるエフェクター機能欠損変異の中には、L234A、L235E、およびG237A(EUナンバリングによる)がある。いくつかの態様では、野生型Fcはさらに、EUナンバリングによる220位(C220S)におけるシステイン残基からセリン残基への置換によるなど、1つまたは複数のシステイン残基の除去によって改変される。エフェクター機能が低下している例示的な不活性Fc領域は、SEQ ID NO:333または256およびSEQ ID NO:258または230にそれぞれ示され、これらは、それぞれ、SEQ ID NO:229またはSEQ ID NO:332に示されるアロタイプに基づく。いくつかの態様では、本明細書において提供される構築物中に使用されるFc領域はさらに、C末端リジン残基を欠くことができる。
いくつかの態様では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO 99/51642、およびIdusogie et al., J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に記載されているような、低下したC1q結合性および/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす変更が、Fc領域でなされる。
いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸改変を含むバリアントFc領域を含むCD86-Fcバリアント融合体であって、バリアントFc領域がヒトIgG1などのIgG1に由来する、CD86-Fcバリアント融合体が提供される。いくつかの態様では、バリアントFc領域は、SEQ ID NO:229に示されるアミノ酸配列に由来する。いくつかの態様では、Fcは、SEQ ID NO:229のナンバリングによるN82G(EUナンバリングによるN297Gに対応する)である少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、Fcはさらに、SEQ ID NO:229のナンバリングによるR77CまたはV87C(EUナンバリングによるR292CまたはV302Cに対応する)である少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、バリアントFc領域はさらに、SEQ ID NO:254に示されるFc領域など、SEQ ID NO:229のナンバリングによるC5Sアミノ酸改変(EUナンバリングによるC220Sに対応する)を含む。例えば、いくつかの態様では、バリアントFc領域は、以下のアミノ酸改変:EUナンバリングによるV297Gおよび以下のアミノ酸改変C220S、R292CまたはV302Cの1つまたは複数(SEQ ID NO:229を基準としてN82Gおよび以下のアミノ酸改変C5S、R77CまたはV87Cの1つまたは複数に対応する)を含み、例えば、Fc領域は、SEQ ID NO:255に示される配列を含む。いくつかの態様では、バリアントFc領域は、アミノ酸改変C220S、L234A、L235EまたはG237Aの1つまたは複数を含み、例えば、Fc領域は、SEQ ID NO:256に示される配列を含む。いくつかの態様では、バリアントFc領域は、アミノ酸改変C220S、L235P、L234V、L235A、G236delまたはS267Kの1つまたは複数を含み、例えば、Fc領域は、SEQ ID NO:257に示される配列を含む。いくつかの態様では、バリアントFcは、アミノ酸改変C220S、L234A、L235E、G237A、E356DまたはM358Lの1つまたは複数を含み、例えば、Fc領域は、SEQ ID NO:258に示される配列を含む。
いくつかの態様では、本明細書において提供されるCD86-Fcバリアント融合体は、上記セクションIIに示される説明に従うバリアントCD86ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、バリアントFc領域に連結された記載のバリアントCD86ポリペプチドのいずれか1つを含むCD86-Fcバリアント融合体であって、バリアントFc領域が変異R292C、N297GおよびV302C(SEQ ID NO:229に示される野生型ヒトIgG1 Fcを基準としてR77C、N82GおよびV87Cに対応する)を含有するヒトIgG1 Fcではない、CD86-Fcバリアント融合体が提供される。いくつかの態様では、Fc領域またはバリアントFc領域に連結されたバリアントCD86ポリペプチドのいずれか1つを含むCD86-Fcバリアント融合体であって、バリアントCD86ポリペプチドが3つのアラニンからなるリンカーでFcに連結されていない、CD86-Fcバリアント融合体が提供される。
いくつかの態様では、Fc領域は、SEQ ID NO:229に示される野生型または非改変Fcの232位に対応するC末端リジンを欠いている(EUナンバリングによるK447delに対応する)。いくつかの局面では、そのようなFc領域は、1つまたは複数の追加の改変、例えば、アミノ酸置換(例えば、記載されるようないずれか)を追加で含むことができる。そのようなFc領域の例は、SEQ ID NO:255~257、258、または259~261に示される。
いくつかの態様では、バリアントFc領域を含むCD86-Fcバリアント融合体であって、バリアントFcが、SEQ ID NO:255、258、256、257、254もしくは259~261のいずれかに示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:255、258、256、257、254もしくは259~261のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、CD86-Fcバリアント融合体が提供される。
いくつかの態様では、Fcは、ヒトIgG2などのIgG2に由来する。いくつかの態様では、Fcは、SEQ ID NO:262に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:262に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、Fcは、SEQ ID NO:263に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:263に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、IgG4 Fcは、ヒトIgG4のCH3ドメインがヒトIgG1のCH3ドメインで置換されておりかつ凝集体形成が阻害されている安定化されたFc、ヒトIgG4のCH3およびCH2ドメインがヒトIgG1のCH3およびCH2ドメインでそれぞれ置換されている抗体、またはヒトIgG4のKabatらによって提案されたEUインデックスで示される409位にあるアルギニンがリジンで置換されておりかつ凝集体形成が阻害されている抗体である(例えば、米国特許第8,911,726号を参照のこと)。いくつかの態様では、Fcは、Fabアーム交換によって治療用抗体と内在性IgG4との間の組換えを防止すると示されているS228P変異を含有するIgG4である(例えば、Labrijin et al. (2009) Nat. Biotechnol., 27(8): 767-71を参照のこと)。いくつかの態様では、Fcは、SEQ ID NO:264に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:264に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、リンカーを介するなどしてFc配列に間接的に連結されている。いくつかの態様では、1つまたは複数の「ペプチドリンカー」は、バリアントCD86ポリペプチドとFcドメインとを連結する。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、単一アミノ酸残基またはより大きな長さであることができる。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも1つのアミノ酸残基を有するが、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1アミノ酸残基長以下である。いくつかの態様では、リンカーは、柔軟なリンカーである。いくつかの態様では、リンカーは、(一文字アミノ酸コードで)GGGGS(「4GS」または「G4S」;SEQ ID NO:223)または4GSリンカーの多量体、例えば、SEQ ID NO:225(2×GGGGS;(G4S)2)もしくはSEQ ID NO:224(3×GGGGS;(G4S)3)に示されるような2、3、4もしくは5つの4GSリンカーの繰り返しである。いくつかの態様では、リンカーは、一連のアラニン残基を単独で、または別のペプチドリンカー(4GSリンカーまたはその多量体など)に加えて含むことができる。いくつかの態様では、各連におけるアラニン残基の数は、2、3、4、5、または6つのアラニンである。いくつかの態様では、リンカーは、3つのアラニン(AAA)である。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、リンカーを介してFc配列に間接的に連結されており、当該リンカーは、3つのアラニンから構成されない。いくつかの例では、リンカーは、2×GGGGSとその後に3つのアラニンが続く(GGGGSGGGGSAAA;SEQ ID NO:226)。いくつかの態様では、リンカーはさらに、クローニングによっておよび/または制限部位から導入されたアミノ酸を含むことができ、例えば、リンカーは、制限部位BAMHIの使用によって導入されるようなアミノ酸GS(一文字アミノ酸コードで)を含むことができる。例えば、いくつかの態様では、リンカー(一文字アミノ酸コードで)は、GSGGGGS(SEQ ID NO:222)、GS(G4S)3(SEQ ID NO:227)、またはGS(G4S)5(SEQ ID NO:228)である。いくつかの態様では、リンカーは、剛性リンカーである。例えば、リンカーは、α-ヘリックスリンカーである。いくつかの態様では、リンカーは、(一文字アミノ酸コードで)EAAAKまたはEAAAKリンカーの多量体、例えば、SEQ ID NO:265(1×EAAAK)、SEQ ID NO:266(3×EAAAK)もしくはSEQ ID NO:247(5×EAAAK)に示されるような2、3、4もしくは5つのEAAAKリンカーの繰り返しである。いくつかの場合では、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドは、ペプチドリンカーの様々な組み合わせを含む。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、Fc配列に直接的に連結されている。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、ヒンジ領域の全部または一部分を追加で欠いた不活性FcなどのFcに直接的に連結されている。ヒンジ領域の一部分(6つのアミノ酸)を欠いている例示的なFcは、SEQ ID NO:267に示される。
いくつかの態様では、CD86ポリペプチドがFc配列に直接的に連結されている場合、CD86ポリペプチドは、C末端で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のアミノ酸だけ短縮することができる。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、IgV領域をIgC領域に接続する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸が除去されるように短縮される。
いくつかの態様において、バリアントCD86-Fc融合タンパク質は、Fcドメインに連結されている2つのバリアントCD86 Fcポリペプチドによって形成される二量体である。いくつかの具体的な態様において、同一または実質的に同一種(3またはより少ないN末端またはC末端アミノ酸配列差異を許す)のCD86-Fcバリアント融合ポリペプチドは、二量体化されて、ホモ二量体を生み出す。いくつかの態様において、二量体は、2つのバリアントCD86 Fcポリペプチドが同じであるホモ二量体である。あるいは、異なる種のCD86-Fc バリアント融合ポリペプチドは、二量体化されて、ヘテロ二量体を生成することができる。したがって、いくつかの態様において、二量体は、2つのバリアントCD86 Fcポリペプチドが異なるヘテロ二量体である。
また、バリアントCD86-Fc融合タンパク質をコードする核酸分子が提供される。いくつかの態様において、Fc融合タンパク質の産生のために、バリアントCD86-Fc融合タンパク質をコードする核酸分子が適切な発現ベクター内に挿入される。得られたバリアントCD86-Fc融合タンパク質を、発現ベクターで形質転換された宿主細胞中で発現させることができ、そこで、Fc部分間で形成された鎖間ジスルフィド結合によってFcドメイン間のアセンブリが起こって、二価のバリアントCD86-Fc融合タンパク質のような二量体が生成する。
得られたFc融合タンパク質を、プロテインAまたはプロテインGカラム上での親和性クロマトグラフィーによって容易に精製することができる。ヘテロ二量体の生成のために、精製のための追加の工程が必要である可能性がある。例えば、異なるバリアントCD86ポリペプチドをコードする2つの核酸で細胞を形質転換する場合、Fcドメインを担持するバリアントCD86分子が同じくジスルフィド連結されたホモ二量体として発現するので、ヘテロ二量体の形成は、生化学的に達成されなければならない。したがって、ホモ二量体は、鎖間ジスルフィドの破壊が有利に働く条件下で低減されることができるが、鎖間ジスルフィドには影響を及ぼさない。いくつかの場合では、異なるバリアントCD86 Fc単量体を、当モル量で混合しかつ酸化して、ホモ二量体とヘテロ二量体の混合物を形成する。この混合物の成分は、クロマトグラフ技術によって分離される。あるいは、このタイプのヘテロ二量体の形成は、下記のノブイントゥーホール(knob-into-hole)法を使用してバリアントCD86ポリペプチドを含有するFc融合分子を遺伝子改変および発現させることによって、バイアスを掛けることができる。
C. 追加のIgSFドメインを有するスタック分子
いくつかの態様において、免疫調節タンパク質は、1つまたは複数の他の免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインに直接的または間接的に連結された本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドのいずれかを含有することができる(「スタックされた」免疫調節タンパク質構築物、また「II型」免疫調節タンパク質とも呼ばれる)。いくつかの局面において、これは、2つ以上、例えば3つ以上の同族結合パートナーと結合することによって免疫シナプスの多標的指向性調節を提供する、固有のマルチドメイン免疫調節タンパク質を作製することができる。
いくつかの態様において、免疫調節タンパク質は、バリアントCD86ドメインと野生型IgSFファミリーメンバーに見いだされない別のIgSFファミリーメンバー(例えば、哺乳動物IgSFファミリーメンバー)の、1つまたは複数の他の親和性が改変されたおよび/または親和性が改変されていないIgSFドメイン配列との組み合わせ(「非野生型組み合わせ」)および/または配置(「非野生型配置」または「非野生型順列(permutation)」)を含む。いくつかの態様において、免疫調節タンパク質は、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインを含有し、そこで、IgSFドメインの少なくとも1つは、提供される説明に係るバリアントCD86 IgSFドメイン(CD86のvIgD)である。
いくつかの態様において、追加のIgSFドメインの配列は、野生型または非改変IgSFドメインと比較して1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有する、改変されたIgSFドメインであることができる。いくつかの態様において、IgSFドメインは、親和性が改変されていなくてもよいし(例えば、野生型)、親和性が改変されていてもよい。いくつかの態様において、非改変または野生型IgSFドメインは、マウス、ラット、カニクイザル、もしくはヒト起源、またはそれらの組み合わせ由来であることができる。いくつかの態様において、追加のIgSFドメインは、表2に示されるIgSFファミリーメンバーのIgSFドメインであることができる。いくつかの態様において、追加のIgSFドメインは、表2に示されるIgSFファミリーメンバーに含有されるIgSFドメインと比較して、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有する親和性改変IgSFドメインであることができる。
いくつかの態様において、追加のIgSFドメインは、以下から選択されるファミリーのIgSFファミリーメンバーに含有される、親和性が改変されたまたは改変されていないIgSFドメインである:シグナル制御タンパク質(SIRP)ファミリー、骨髄細胞に発現するトリガー受容体様(TREML)ファミリー、がん胎児性抗原関連細胞接着分子(CEACAM)ファミリー、シアル酸結合Ig様レクチン(SIGLEC)ファミリー、ブチロフィリンファミリー、B7ファミリー、CD28ファミリー、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有(VSIG)ファミリー、Vセット膜貫通ドメイン(VSTM)ファミリー、主要組織適合複合体(MHC)ファミリー、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)ファミリー、白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)、ネクチン(Nec)ファミリー、ネクチン様(NECL)ファミリー、ポリオウイルス受容体関連(PVR)ファミリー、細胞傷害誘発受容体(NCR)ファミリー、T細胞免疫グロブリンおよびムチン(TIM)ファミリー、またはキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリー。いくつかの態様において、追加のIgSFドメインは独立して、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD274(PD-L1、B7-H1)、PDCD1LG2(PD-L2、CD273)、ICOSLG(B7RP1、CD275、ICOSL、B7-H2)、CD276(B7-H3)、VTCN1(B7-H4)、CD28、CTLA4、PDCD1(PD-1)、ICOS、BTLA(CD272)、CD4、CD8A(CD8α)、CD8B(CD8β)、LAG3、HAVCR2(TIM-3)、CEACAM1、TIGIT、PVR(CD155)、PVRL2(CD112)、CD226、CD2、CD160、CD200、CD200R1(CD200R)、およびNC R3(NKp30)からなる群より選択されるIgSFタンパク質に由来する。
表2の1列目は、その特定のIgSFメンバーについての名称および場合によりいくつかの可能な別名を提供する。2列目は、uniprot.orgでインターネットを介してアクセス可能な公表されているデータベースである、UniProtKBデータベースのタンパク質識別子を提供し、場合によってはGenBank番号を提供する。Universal Protein Resource(UniProt)は、タンパク質配列および注釈データ用の包括的リソースである。UniProtデータベースは、UniProt Knowledgebase(UniProtKB)を含む。UniProtは、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EMBL-EBI)、SIBスイスバイオインフォマティクス研究所(SIB Swiss Institute of Bioinformatics)とタンパク質情報リソース(Protein Information Resource)(PIR)の間の共同組織であり、米国国立保健研究所(U.S. National Institutes of Health(NIH))の助成金によって主に支援されている。GenBankは、NIHの遺伝子配列データベースであり、全ての公に入手可能なDNA配列が注釈付きで集められている(Nucleic Acids Research, 2013 Jan;41(D1):D36-42)。3列目は、表示のIgSFドメインが位置している領域を提供する。該領域は、ドメインが範囲を規定している残基を包含する範囲として特定される。3列目はまた、特定されたIgSF領域のIgSFドメインクラスを示す。4列目は、表示の追加のドメインが位置している領域を提供する(シグナルペプチド、S;細胞外ドメイン、E;膜貫通ドメイン、T;細胞質ドメイン、C)。ドメインの記載は、当該ドメインの同定または分類に用いた方法に応じて異なりうること、および異なる源から別々に同定されうることを理解されたい。表2のドメインに対応する残基の記載は、例示的なものにすぎず、アミノ酸数個(例えば、1個、2個、3個、または4個)分長いまたは短い場合がある。5列目は、列挙されたIgSFメンバーのうちのいくつか(すなわち、その細胞表面同族結合パートナーのうちのいくつか)を示す。
(表2)本開示のIgSFメンバー
「スタックされた」免疫調節タンパク質構築物に存在するそのような親和性が改変されていないまたは親和性が改変されたIgSFドメイン(非野生型組み合わせまたは非野生型配置にかかわらず)の数は、少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つ、そして、いくつかの態様において、正確に2つ、3つ、4つ、または5つのIgSFドメインである(それによって、親和性改変IgSFドメインの数の決定は、あらゆるその非特異的結合分割配列および/または実質的に免疫学的に不活性なその分割配列を無視する)。
本明細書において提供されるスタックされた免疫調節タンパク質のいくつかの態様において、IgSFドメインの数は、少なくとも2つであり、ここで、親和性改変IgSFドメインの数および親和性が改変されていないIgSFドメインの数は、各々独立して、少なくとも0、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つである。したがって、親和性改変IgSFドメインの数および親和性が改変されていないIgSFドメインの数はそれぞれ(親和性改変IgSFドメイン:親和性が改変されていないIgSFドメイン)、正確にまたは少なくとも2:0(親和性改変された:野生型)、0:2、2:1、1:2、2:2、2:3、3:2、2:4、4:2、1:1、1:3、3:1、1:4、4:1、1:5、または5:1であることができる。
スタックされた免疫調節タンパク質のいくつかの態様において、親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインの少なくとも2つは、同一のIgSFドメインである。
いくつかの態様において、本明細書において提供されるスタックされた免疫調節タンパク質は、単一のIgSFメンバー由来であるが非野生型配置(あるいは、「順列」)の、少なくとも2つの親和性が改変されたおよび/または親和性が改変されていないIgSFドメインを含む。非野生型配置または順列の1つの実例は、IgSFドメイン配列が本明細書において提供されるとおりのバリアントIgSFドメインの供給源として役立つ野生型CD86に見いだされるものと比べて、非野生型系列の親和性が改変されたおよび/または親和性が改変されていないIgSFドメイン配列を含む本発明の免疫調節タンパク質である。したがって、一例では、免疫調節タンパク質は、親和性が改変されていない形態および/または親和性が改変されている形態にかかわらず、膜貫通ドメインの近位にあるIgVおよび膜貫通ドメインの遠位にあるIgCを含むことができる。また、親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインの非野生型組み合わせおよび非野生型配置の両方が本明細書において提供される免疫調節タンパク質に存在することも、提供される主題の範囲内である。
スタックされた免疫調節タンパク質のいくつかの態様において、親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインは、同一ではない(すなわち、異なる)IgSFドメインである。同一ではない親和性改変IgSFドメインは、特異的結合条件下で、異なる同族結合パートナーと特異的に結合し、かつ、これらが改変される野生型または非改変IgSFドメインが同じあったか否かに関係なく「非同一」である。したがって、例えば、免疫調節タンパク質における少なくとも2つの同一ではないIgSFドメインの非野生型組み合わせは、起源が1つのCD86に由来しかつ固有である少なくとも1つのIgSFドメイン配列、および、起源がCD86ではない別のIgSFファミリーメンバーに由来しかつ固有である第二のIgSFドメイン配列の少なくとも1つを含むことができ、ここで、免疫調節タンパク質のIgSFドメインは、親和性が改変されていない形態および/または親和性が改変されている形態である。しかしながら、代替態様において、2つの同一ではないIgSFドメインは、同じIgSFドメイン配列を起源とするが、少なくとも1つは、これらが異なる同族結合パートナーに特異的に結合するように親和性が改変されている。
いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、バリアントCD86ポリペプチドを含有することに加えて、少なくとも1、2、3、4、5または6つの追加の免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメイン、例えば、表2に示されているIgSFファミリーメンバーのIgDドメインも含有する。いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、少なくとも1つの追加のIgSFドメイン(例えば、第2のIgSFドメイン)を含有する。いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、少なくとも2つの追加のIgSFドメイン(例えば、第2および第3のIgSFドメイン)を含有する。いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、少なくとも3つの追加のIgSFドメイン(例えば、第2、第3および第4)を含有する。いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、少なくとも4つの追加のIgSFドメイン(例えば、第2、第3、第4および第5)を含有する。いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、少なくとも5つの追加のIgSFドメイン(例えば、第2、第3、第4、第5および第6)を含有する。いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、少なくとも6つの追加のIgSFドメイン(例えば、第2、第3、第4、第5、第6および第7)を含有する。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質中のIgSFドメインの各々は異なる。いくつかの態様では、追加のIgSFドメインの少なくとも1つは、免疫調節タンパク質中の少なくとも1つの他のIgSFドメインと同じである。いくつかの態様では、IgSFドメインの各々は、異なるIgSFファミリーメンバーからものであるかまたはそれに由来する。いくつかの態様では、IgSFドメインの少なくとも2つは、同じIgSFファミリーメンバーからものであるかまたはそれに由来する。
いくつかの態様では、追加のIgSFドメインは、IgVドメインもしくはIgC(例えば、IgC2)ドメイン、またはIgVドメインの特異的結合断片もしくはIgC(例えば、IgC2)ドメインの特異的結合断片を含む。いくつかの態様では、追加のIgSFドメインは、完全長IgVドメインであるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、追加のIgSFドメインは、完全長IgC(例えば、IgC2)ドメインであるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、追加のIgSFドメインは、IgVドメインの特異的結合断片であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、追加のIgSFドメインは、IgC(例えば、IgC2)ドメインの特異的結合断片であるかまたはそれを含む。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、単一(同じ)IgSFメンバーからの少なくとも2つの追加のIgSFドメインを含有する。例えば、いくつかの局面では、免疫調節タンパク質は、IgSFメンバーのECD、またはその一部分であって、完全長IgVドメインおよび完全長IgC(例えば、IgC2)ドメインもしくはその特異的結合断片を含有する部分を含有する。
いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、少なくとも1つの追加のIgSFドメイン(例えば、第2、またはいくつかの場合では、第3のIgSFドメインなども)を含有し、その際、少なくとも1つの追加のまたは第2のIgSFドメインは、SEQ ID NO:2~27および82のいずれかに示されるアミノ酸配列中に含有される野生型もしくは非改変IgSFドメインに示されるIgSFドメインまたはその特異的結合断片である。いくつかの態様では、野生型または非改変IgSFドメインは、IgVドメインまたはIgCドメイン、例えばIgC1またはIgC2ドメインである。
いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、バリアントCD86ポリペプチドを含有することに加えて、少なくとも1つの追加の親和性改変されたIgSFドメイン(例えば、第2、またはいくつかの場合では、第3の親和性改変されたIgSFドメインなども)も含有し、その際、少なくとも1つの追加のIgSFドメインは、表2に示されているIgSFファミリーメンバー中のIgSFドメインなど、野生型または非改変IgSFドメイン中のIgSFドメインと比較して1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換、欠失または変異)を含有するvIgDである。いくつかの態様では、追加の、例えば、第2または第3の親和性改変されたIgSFドメインは、SEQ ID NO:2~27および82のいずれかに示されるアミノ酸配列中に含有される野生型または非改変IgSFドメインまたはその特異的結合断片に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含む。いくつかの態様では、野生型または非改変IgSFドメインは、IgVドメインまたはIgCドメイン、例えばIgC1またはIgC2ドメインである。いくつかの態様では、追加の、例えば、第2または第3のIgSFドメインは、親和性改変されたIgVドメインおよび/またはIgCドメインである。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加のIgSFドメインは、IgVドメインおよび/もしくはIgC(例えば、IgC2)ドメイン、またはIgVドメインの特異的結合断片および/もしくはIgC(例えば、IgC2)ドメインの特異的結合断片を含有する親和性改変されたIgSFドメインであり、その際、IgVおよび/またはIgCドメインは、アミノ酸改変(例えば、置換)を含有する。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加の親和性改変IgSFドメインは、アミノ酸改変(例えば、置換)を含有するIgVドメインを含有する。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加の親和性改変IgSFドメインは、対応する非改変IgSFファミリーメンバーのECDまたはECDの一部分に存在するIgSFドメイン、例えば、完全長IgVドメインおよび完全長IgC(例えば、IgC2)ドメイン、またはその特異的結合断片を含み、該IgVおよびIgCの一方または両方は、アミノ酸改変(例えば、置換)を含有する。
いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質は、CD86以外の野生型または非改変IgSFドメインのIgSFドメイン(例えば、IgV)と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換を含有するvIgDである、少なくとも1つの追加のまたは第2のIgSFドメインを含有する。
バリアントCD86の少なくとも1つのIgSFドメインおよび1つまたは複数の第2または追加のIgSFドメインを含有するスタック分子免疫調節タンパク質は、セクションIII.C.3に記載されるような様々な構築物フォーマットで提供することができる。構築物の非限定例について以下に示す。
1. PD-1 IgSFドメイン
いくつかの態様では、少なくとも1つの追加の(例えば、第2または第3の)vIgDは、非改変または野生型PD-1と比較してIgSFドメイン(例えば、IgV)中に1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換、欠失、または付加)を含有するバリアントPD-1ポリペプチドのIgSFドメイン(例えば、IgV)である。いくつかの態様では、PD-1のIgSFドメインは、IgVドメインまたはIgVドメインの特異的結合断片を含む。いくつかの態様では、IgDは、IgVのみ、細胞外ドメイン(ECD)全体を含む、またはPD-1のIgドメインの任意の組み合わせであることができる。いくつかの態様では、野生型または非改変PD-1ポリペプチドは、(i)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列もしくはシグナル配列を欠いているその成熟形態、(ii)SEQ ID NO:10に対して少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を示すアミノ酸配列もしくはその成熟形態を有するか、または(iii)(i)もしくは(ii)の一部分であってIgVドメインもしくはその特異的結合断片を含有する部分である。いくつかの態様では、野生型または非改変PD-1ポリペプチドは、(i)SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列、(ii)SEQ ID NO:37に対して少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するか、または(iii)(i)もしくは(ii)の一部分であってIgVドメインもしくはその特異的結合断片を含有する部分である。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:37、335、336もしくは337、またはその特異的結合断片に対して、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:37、335、336、または337のいずれかに示される配列を有する。
いくつかの態様では、PD-1のIgSFドメインは、野生型または非改変PD-1ポリペプチド中に含有されるIgSFドメインと比べて少なくとも1つの親和性改変されたIgSFドメイン(例えば、IgVまたはIgC)またはその特異的結合断片を含有するバリアントPD-1ポリペプチドであって、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比較して変化した(向上または低下した)、PD-L1またはPD-L2に対する結合活性または親和性を示す、バリアントPD-1ポリペプチドである。いくつかの態様では、野生型または非改変PD-1ポリペプチド中に含有されるIgSFドメインと比べて少なくとも1つの親和性改変されたIgSFドメイン(例えば、IgV)またはその特異的結合断片を含有するバリアントPD-1ポリペプチドであって、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比較して変化した(向上または低下した)、1つまたは複数のリガンドPD-L1またはPD-L2に対する結合活性または親和性を示す、バリアントPD-1ポリペプチド。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、例えば、固相ELISAイムノアッセイ、フローサイトメトリー、ForteBio OctetまたはBiacoreアッセイによって決定された場合に、野生型または非改変PD-1ポリペプチド対照配列のものと異なる、PD-L1および/またはPD-L2に対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、PD-L1および/またはPD-L2に対する向上した結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-L1ポリペプチドと比べて低下した、PD-L2に対する結合親和性を有する。PD-L1および/またはPD-L2は、ヒトタンパク質またはネズミタンパク質などの哺乳動物タンパク質であることができる。
同族結合パートナーの各々に対する結合親和性は、独立している;すなわち、いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比べて、PD-L1および/またはPD-L2の一方または両方に対する向上した結合親和性を有し、PD-L1およびPD-L2の一方または両方に対する低下した結合親和性を有する。
いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比べて向上した、PD-L1に対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-L1ポリペプチドと比べて向上または低下した、PD-L2に対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比べて向上した、PD-L1に対する結合親和性を有し、かつ、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比べて低下した、PD-L2に対する結合親和性を有する。
いくつかの態様では、PD-L1および/またはPD-L2に対する結合親和性が向上したまたはより大きいバリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチド対照と比べて、PD-L1および/またはPD-L2に対して少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、15%、20%、25%、35%、または50%の結合親和性の向上を有するだろう。いくつかの態様では、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比べた結合親和性の向上は、1.2倍より、1.5倍より、2倍より、3倍より、4倍より、5倍より、6倍より、7倍より、8倍より、9倍より、10倍より、20倍より、30倍より、40倍より、または50倍よりも大きい。そのような例では、野生型または非改変PD-1ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有しないこと以外は、バリアントPD-1ポリペプチドと同じ配列を有する。
いくつかの態様では、PD-L2に対する結合親和性が低下または減少したバリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチド対照と比べて、PD-L2に対して少なくとも5%、例えば少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の結合親和性の低下を有するだろう。いくつかの態様では、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比べた結合親和性の低下は、1.2倍より、1.5倍より、2倍より、3倍より、4倍より、5倍より、6倍より、7倍より、8倍より、9倍より、10倍より、20倍より、30倍より、40倍より、または50倍よりも大きい。そのような例では、野生型または非改変PD-1ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有しないこと以外は、バリアントPD-1ポリペプチドと同じ配列を有する。
PD-L1および/またはPD-L2は、ヒトタンパク質またはネズミタンパク質などの哺乳動物タンパク質であることができる。いくつかの態様では、PD-L1は、ヒトタンパク質である。いくつかの態様では、PD-L2は、ヒトタンパク質である。
いくつかの態様では、PD-L1および/またはPD-L2に対する前述の態様のいずれかの平衡解離定数(Kd)は、1×10-5 M未満、1×10-6 M未満、1×10-7 M未満、1×10-8 M未満、1×10-9 M未満、1×10-10 M未満、または1×10-11 M未満、または1×10-12 M未満、またはそれ未満であることができる。
野生型または非改変PD-1配列は、本明細書に記載のバリアントPD-1ポリペプチドを生成するために、必ずしも出発組成物として使用される必要はない。それゆえ、「置換」などの「改変」という用語の使用は、本態様が、バリアントPD-1ポリペプチドの特定の製造法に限定されることを暗示するものではない。バリアントPD-1ポリペプチドは、例えば、デノボペプチド合成によって製造することができ、したがって、改変、例えば置換をコードするようにコドンを変更するという意味で、必ずしも「置換」などの改変を必要とするわけではない。この原則はまた、アミノ酸残基の「付加」および「欠失」という用語にも及び、これも同じく特定の製造法を暗示するものではない。バリアントPD-1ポリペプチドが設計または作製される手段は、いかなる特定の方法にも限定されない。しかしながら、いくつかの態様では、野生型または非改変PD-1をコードする核酸が、野生型または非改変PD-1遺伝物質から変異誘発され、所望の特異的結合親和性および/またはIFN-γ発現もしくは他の機能的活性の誘導についてスクリーニングされる。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、いくつもの公的に利用可能なデータベースで利用可能なタンパク質または核酸配列を利用してデノボ合成され、次いで、その後スクリーニングされる。前述したように、国立生物工学情報センターは、そのような情報を提供し、そのウェブサイトは、UniProtKBデータベースと同じくインターネットを介して公的にアクセス可能である。
別途言及のない限り、本開示を通して示すとおり、アミノ酸置換は、SEQ ID NO:37に示される非改変ECD配列、または該当する場合は、SEQ ID NO:10の35~145番目の残基を含有する非改変IgV配列の位置のナンバリングに対応するアミノ位置番号によって指定される。
本明細書において提供される改変は、SEQ ID NO:37に示される野生型もしくは非改変PD-1ポリペプチド中、またはその一部分であってIgVドメインもしくはその特異的結合断片を含有する部分中にあることができる。いくつかの態様では、野生型または非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:335に示されるようなPD-1のIgVを含有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:335によって示されるアミノ酸配列よりも数アミノ酸より長いまたはより短くてよい、例えば、1~15、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9アミノ酸より長いまたはより短くてよいIgVを含有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:37、335、336、または337に対して85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:37のいずれかに示される配列を有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:335によって示される配列を有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:336によって示される配列を有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:337によって示される配列を有する。いくつかの態様では、非改変PD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:339によって示される配列を有する。
そのIgSFドメイン(例えば、IgV)を含有するその一部分を含むPD-1ポリペプチド中の改変、例えばアミノ酸置換の対応する位置を、例えば、参照配列とSEQ ID NO:37とのアラインメントによって特定することは、当業者の技能の範囲内である。例えば、アラインメントに従って、SEQ ID NO:37の112番目の残基は、SEQ ID NO:336の107番目の残基に対応する。
いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1配列中に1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)は、野生型または非改変PD-1配列のエクトドメイン(細胞外ドメイン)中にあることができる。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)は、IgVドメインまたはその特異的結合断片中にある。
いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。改変(例えば、置換)は、IgVドメイン中にあることができる。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、IgVドメインまたはその特異的結合断片において、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチドまたはその特異的結合断片と、例えばSEQ ID NO:37、335、336、337、または339のアミノ酸配列と、100%未満の配列同一性を有し、かつ少なくとも約85%、約86%、約86%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する。
いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:37に示される位置を基準として8、9、11、12、13、14、16、17、18、20、21、22、23、24、25、28、29、30、31、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、48、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、64、66、67、68、69、70、71、72、73、75、76、77、78、79、80、81、84、85、86、87、89、90、91、92、93、94、95、96、100、102、104、105、107、109、111、112、113、114、115、116、119、120、125、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、または144位に対応する、非改変PD-1またはその特異的結合断片における1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を有する。いくつかの態様では、そのようなバリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比較して変化した、PD-L1および/またはPD-L2の1つまたは複数に対する結合親和性を示す。例えば、いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比較して向上した、PD-L1および/またはPD-L2に対する結合親和性を示す。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、野生型または非改変PD-1ポリペプチドと比較して低下した、PD-L1またはPD-L2に対する結合親和性を示す。
いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、
から選択される1つもしくは複数のアミノ酸置換、またはその保存的アミノ酸置換を有する。
いくつかの態様では、バリアントPD-1は、
からの1つもしくは複数のアミノ酸置換、またはその保存的アミノ酸置換を含有するバリアントPD-1である。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、アミノ酸置換S67N/C73R/F86Y/V91D/S107T/A112V/K115D/A120Vを含有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:315に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:315に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、アミノ酸置換V44H/L45V/N46I/Y48H/M50E/N54G/K58T/L102V/A105V/A112Iを含有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:334に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:334に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。そのようなバリアントPD-1ポリペプチドを、記載されるような1つまたは複数の他の免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインに直接的または間接的に連結させることができる。
本明細書において、バリアントCD86ポリペプチド(例えば、セクションIIに記載されるいずれか)ならびにPD-L1および/またはPD-L2に結合するPD-1ポリペプチドのIgSFドメインまたはそのバリアントを含有する、免疫調節タンパク質(CD86/PD-1免疫調節タンパク質)が提供される。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、本明細書に記載されるようないずれかなどの1つまたは複数の改変(例えば、置換)を含有するCD86の細胞外ドメインまたはそのIgSF(例えば、IgV)ドメインもしくはその特異的結合断片であるかまたはそれを含有する。いくつかの態様では、バリアントPD-1ポリペプチドは、本明細書に記載されるようないずれかなどの1つまたは複数の改変(例えば、置換)を含有するPD-1の細胞外ドメインまたはそのIgSF(例えば、IgV)ドメインもしくはその特異的結合断片であるかまたはそれを含有する。CD86/PD-1免疫調節タンパク質は、セクションIII.C.3に記載されるような様々な構築物フォーマットで提供することができる。
2. 腫瘍抗原結合IgSFドメイン
いくつかの態様では、1つまたは複数の追加のIgSFドメイン(例えば、第2または第3のIgSFドメイン)は、腫瘍抗原に結合するかそれを認識する別のIgSFファミリーメンバーのIgSFドメイン(例えば、IgV)である。そのような態様では、IgSFファミリーメンバーは、腫瘍局在化部分として機能し、それによって、CD86のvIgDを腫瘍微小環境中の免疫細胞に接近させる。いくつかの態様では、追加のIgSFドメイン(例えば、第2のIgSF)は、腫瘍細胞上に発現しているB7-H6に結合するかそれを認識するNKp30のIgSFドメインである。
いくつかの態様では、少なくとも1つの追加の(例えば、第2の)IgSFドメイン(例えば、NKp30)は、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換、欠失、または付加)を含有する親和性改変されたIgSFドメインまたはvIgDである。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸改変は、B7-H6に対する結合親和性および/または選択性を、非改変IgSFドメイン(例えば、NKp30)と比較して、例えば、少なくとも1.2倍もしくは少なくとも約1.2倍、少なくとも1.5倍もしくは少なくとも約1.5倍、少なくとも2倍もしくは少なくとも約2倍、少なくとも3倍もしくは少なくとも約3倍、少なくとも4倍もしくは少なくとも約4倍、少なくとも5倍もしくは少なくとも約5倍、少なくとも6倍もしくは少なくとも約6倍、少なくとも7倍もしくは少なくとも約7倍、少なくとも8倍もしくは少なくとも約8倍、少なくとも9倍もしくは少なくとも約9倍、少なくとも10倍もしくは少なくとも約10倍、少なくとも20倍もしくは少なくとも約20倍、少なくとも30倍もしくは少なくとも約30倍、少なくとも40倍もしくは少なくとも約40倍、または少なくとも50倍もしくは少なくとも約50倍向上させる。バリアントNKp30ポリペプチドのIgSFドメイン(例えば、IgC様またはECD全体)における例示的なアミノ酸改変(例えば、置換、欠失、または付加)は、表2に示されている。例示的なポリペプチドの中には、SEQ ID NO:54に示される位置に対応するNKp30細胞外ドメイン中の位置を基準として変異L30V/A60V/S64P/S86Gを含有するNKp30バリアントがある。いくつかの態様では、提供されるバリアントCD86ポリペプチドのいずれか、および表3に示されているアミノ酸改変のいずれかを含むIgC様ドメイン、例えば、SEQ ID NO:268~272のいずれかに示されるIgC様ドメイン、またはSEQ ID NO:268~272のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を有しかつ1つもしくは複数のアミノ酸改変を含有するIgVドメインを含有するバリアントNKp30ポリペプチドを含有する、免疫調節タンパク質が提供される。いくつかの態様では、提供されるバリアントCD86ポリペプチドのいずれか、および表3に示されているアミノ酸改変のいずれかが含有されるIgSFドメインを含有するECDまたはその一部分、例えば、SEQ ID NO:273~277のいずれかに示されるECD、またはSEQ ID NO:273~277のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を含有しかつ1つもしくは複数のアミノ酸改変を含有するECDを含有するバリアントNKp30ポリペプチドを含有する、免疫調節タンパク質が提供される。
表3は、本明細書において提供されるスタック構築物中に使用することができる1つまたは複数の親和性改変されたIgSFドメインを含有する例示的なポリペプチドを提供する。
(表3)例示的なバリアントNKp30ポリペプチド
本明細書において、バリアントCD86ポリペプチド(例えば、セクションIIに記載されるいずれか)およびB7-H6に結合するNKp30ポリペプチドまたはそのバリアントを含有する、免疫調節タンパク質(CD86/NkP30免疫調節タンパク質)が提供される。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、本明細書に記載されるようないずれかなどの1つまたは複数の改変(例えば、置換)を含有するCD86の細胞外ドメインまたはそのIgSF(例えば、IgV)ドメインまたはその特異的結合断片であるかまたはそれを含有する。いくつかの態様では、バリアントNKp30ポリペプチドは、本明細書に記載されるようないずれかなどの1つまたは複数の改変(例えば、置換)を含有するNkp30の細胞外ドメインまたはそのIgSF(例えば、IgV)ドメインまたはその特異的結合断片であるかまたはそれを含有する。CD86/Nkp30免疫調節タンパク質は、セクションIII.C.3に記載されるような様々な構築物フォーマットで提供することができる。いくつかの態様では、CD86/Nkp30免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:135、136、137、138、139または140のいずれかに示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86/Nkp30 免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:135、136、137、138、139または140に示される配列を有する。
3. 構築物
いくつかの態様では、CD86のvIgDを含む2つ以上のIgSFドメインおよび別のIgSFファミリーメンバーからの1つまたは複数の追加のIgSFドメイン(例えば、第2または第3のバリアントIgSFドメイン)は、共有結合または非共有結合により連結されている。スタックされた免疫調節タンパク質ポリペプチド鎖中の複数の親和性改変されていないおよび/または親和性改変されたIgSFドメインは、共有結合により互いに直接的に連結されている必要はない。いくつかの態様では、2つ以上のIgSFドメインは、直接的またはリンカーを介するなどして間接的に連結されている。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸残基の介在範囲が、IgSFドメインを互いに間接的に共有結合する。連結は、N末端からC末端の残基を介するものであることができる。いくつかの態様では、連結は、IgSFドメインのN末端またはC末端に位置しないアミノ酸残基の側鎖を介してなされ得る。したがって、連結は、末端もしくは内部アミノ酸残基またはその組み合わせを介してなされ得る。
いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、直接的またはリンカーを介して間接的に各々連結された少なくとも2つのIgSFドメインを含有する。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、直接的またはリンカーを介して間接的に各々連結された少なくとも3つの免疫調節タンパク質を含有する。様々な形状が図23Aおよび23Bに示される。
いくつかの態様では、1つまたは複数の「ペプチドリンカー」は、CD86のvIgDと1つまたは複数の追加のIgSFドメイン(例えば、第2または第3のバリアントIgSFドメイン)とを連結する。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、単一アミノ酸残基またはより大きな長さであることができる。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも1つのアミノ酸残基を有するが、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1アミノ酸残基長以下である。いくつかの態様では、リンカーは、柔軟なリンカーである。いくつかの態様では、リンカーは、(一文字アミノ酸コードで)GGGGS(「4GS」)または4GSリンカーの多量体、例えば、2、3、4もしくは5つの4GSリンカーの繰り返しである。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、(GGGGS)2(SEQ ID NO:225)または(GGGGS)3(SEQ ID NO:224)である。いくつかの態様では、リンカーはまた、一連のアラニン残基を単独で、または別のペプチドリンカー(4GSリンカーまたはその多量体など)に加えて含むことができる。いくつかの態様では、各連におけるアラニン残基の数は、2、3、4、5、または6つのアラニンである。いくつかの態様では、リンカーはまた、一連のアラニン残基を単独で、または別のペプチリンカー(4GSリンカーまたはその多量体など)に加えて含むことができる。いくつかの態様では、各連におけるアラニン残基の数は、2、3、4、5、または6つのアラニンである。いくつかの態様では、リンカーは、剛性リンカーである。例えば、リンカーは、α-ヘリックスリンカーである。いくつかの態様では、リンカーは、(一文字アミノ酸コードで)EAAAKまたはEAAAKリンカーの多量体、例えば、SEQ ID NO:265(1×EAAAK)、SEQ ID NO:266(3×EAAAK)またはSEQ ID NO:247(5×EAAAK)に示されるような2、3、4もしくは5つのEAAAKリンカーの繰り返しである。いくつかの態様では、リンカーはさらに、クローニングによっておよび/または制限部位から導入されたアミノ酸を含むことができ、例えば、リンカーは、制限部位BAMHIの使用によって導入されるようなアミノ酸GS(一文字アミノ酸コードで)を含むことができる。例えば、いくつかの態様では、リンカー(一文字アミノ酸コードで)は、GSGGGGS(SEQ ID NO:222)、GS(G4S)3(SEQ ID NO:227)、またはGS(G4S)5(SEQ ID NO:228)である。いくつかの例では、リンカーは、2×GGGGSとその後に3つのアラニンが続く(GGGGSGGGGSAAA;SEQ ID NO:226)。いくつかの場合では、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドは、ペプチドリンカーの様々な組み合わせを含む。
いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、バリアントCD86分子およびバリアントNKp30分子を含む。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:135、136、137、138、139、または140によって示される配列に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:135、136、137、138、139、または140によって示される配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、前述の配列のいずれかがホモ二量体を形成する。いくつかの態様では、ホモ二量体は、免疫調節タンパク質中に含有されるFcドメインである多量体化ドメインを介して形成される。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:SEQ ID NO:135の配列を含む。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:SEQ ID NO:136の配列を含む。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:SEQ ID NO:137の配列を含む。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:SEQ ID NO:138の配列を含む。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:SEQ ID NO:139の配列を含む。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:SEQ ID NO:140の配列を含む。
いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、バリアントCD86分子およびバリアントPD-1分子を含む。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:316、317、318、319、320、321、322、または323によって示される配列に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:316、317、318、319、320、321、322、または323によって示される配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:326または327によって示される配列に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:326または327によって示される配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、前述の配列のいずれかがホモ二量体を形成する。いくつかの態様では、ホモ二量体は、免疫調節タンパク質中に含有されるFcドメインである多量体化ドメインを介して形成される。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:326の配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、ホモ二量体は、SEQ ID NO:327の配列を含むかそれを有する。
いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:328、329、330、または331によって示される配列に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:328、329、330、または331によって示される配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、前述の配列のいずれかがヘテロ二量体を形成する。いくつかの態様では、ヘテロ二量体は、免疫調節タンパク質中に含有されるFcドメインである多量体化ドメインを介して形成される。いくつかの態様では、ヘテロ二量体の第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:350の配列を含み、ヘテロ二量体の第2のポリペプチドは、SEQ ID NO:351の配列を含む。いくつかの態様では、ヘテロ二量体の第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:350の配列を含み、ヘテロ二量体の第2のポリペプチドは、SEQ ID NO:352の配列を含む。いくつかの態様では、ヘテロ二量体の第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:350の配列を含み、ヘテロ二量体の第2のポリペプチドは、SEQ ID NO:353の配列を含む。
いくつかの態様において、親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されたIgSFドメインは、親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されたIgSFドメインのN末端および/またはC末端に挿入された「野生型ペプチドリンカー」によって連結されている。これらのリンカーは、リーディング配列(親和性が改変されていないまたは親和性が改変されたIgSFドメインのN末端)またはトレーリング配列(親和性が改変されていないまたは親和性が改変されたIgSFドメインのC末端)、およびIgSFのIgフォールドの構造予測のすぐ外側に及ぶ野生型に存在する配列とも呼ばれる。いくつかの態様において、「野生型リンカー」は、野生型タンパク質のアミノ酸配列における、シグナル配列の後であるが、IgSFドメイン(例えば画定されたIgVドメイン)の前に存在する、アミノ酸配列である。いくつかの態様において、「野生型」リンカーは、野生型タンパク質のアミノ酸配列における、IgSFドメインの直後(例えば画定されたIgVドメインの直後)であるがIgCドメインの前に存在する、アミノ酸配列である。これらのリンカー配列は、隣接するIgSFドメインの適切なフォールディングおよび機能に寄与することができる。いくつかの態様において、第一のIgSFドメインのN末端に挿入されたリーディングペプチドリンカー、ならびに/または、第一の親和性が改変されていないおよび/もしくは親和性が改変されているIgSFドメインのC末端に挿入されたトレーリング配列が存在する。いくつかの態様において、第二のIgSFドメインのN末端に挿入された第二のリーディングペプチドリンカー、ならびに/または、第二の親和性が改変されていないおよび/もしくは親和性が改変されているIgSFドメインのC末端に挿入された第二のトレーリング配列が存在する。第一および第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが同じ親タンパク質に由来しかつ同じ配向性で接続される場合、第一および第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメイン間の野生型ペプチドリンカーは重複しない。例えば、第一のトレーリング野生型ペプチドリンカーおよび第二のリーディング野生型ペプチドリンカーが同じであるとき、II型免疫調節タンパク質は、第一のトレーリング野生型ペプチドリンカーも第二のリーディング野生型ペプチドリンカーも含まない。
いくつかの態様において、II型免疫調節タンパク質は、第一の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインのN末端に挿入された第一のリーディング野生型ペプチドリンカーを含み、ここで、第一のリーディング野生型ペプチドリンカーは、第一の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列由来の少なくとも5つ(例えば、少なくともおよそ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のいずれか)の連続アミノ酸を親IgSFドメインと直前のドメイン(例えば、シグナルペプチドまたはIgSFドメイン)との間に含む。いくつかの態様において、第一のリーディング野生型ペプチドリンカーは、第一の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列全体を親IgSFドメインと直前のドメイン(例えば、シグナルペプチドまたはIgSFドメイン)との間に含む。
いくつかの態様において、II型免疫調節タンパク質は、第一の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインのC末端に挿入された第一のトレーリング野生型ペプチドリンカーをさらに含み、ここで、第一のトレーリング野生型ペプチドリンカーは、第一の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列由来の少なくとも5つ(例えば、少なくともおよそ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のいずれか)の連続アミノ酸を親IgSFドメインと直後のドメイン(例えば、IgSFドメインまたは膜貫通ドメイン)との間に含む。いくつかの態様において、第一のトレーリング野生型ペプチドリンカーは、第一の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列全体を親IgSFドメインと直後のドメイン(例えば、IgSFドメインまたは膜貫通ドメイン)との間に含む。
いくつかの態様において、II型免疫調節タンパク質は、第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインのN末端に挿入された第二のリーディング野生型ペプチドリンカーをさらに含み、ここで、第二のリーディング野生型ペプチドリンカーは、第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列由来の少なくとも5つ(例えば、少なくともおよそ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のいずれか)の連続アミノ酸を親IgSFドメインと直前のドメイン(例えば、シグナルペプチドまたはIgSFドメイン)との間に含む。いくつかの態様において、第二のリーディング野生型ペプチドリンカーは、第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列全体を親IgSFドメインと直前のドメイン(例えば、シグナルペプチドまたはIgSFドメイン)との間に含む。
いくつかの態様において、II型免疫調節タンパク質は、第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインのC末端に挿入された第二のトレーリング野生型ペプチドリンカーをさらに含み、ここで、第二のトレーリング野生型ペプチドリンカーは、第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列由来の少なくとも5つ(例えば、少なくともおよそ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のいずれか)の連続アミノ酸を親IgSFドメインと直後のドメイン(例えば、IgSFドメインまたは膜貫通ドメイン)との間に含む。いくつかの態様において、第二のトレーリング野生型ペプチドリンカーは、第二の親和性が改変されていないおよび/または親和性が改変されているIgSFドメインが由来する野生型タンパク質中の介在配列全体を親IgSFドメインと直後のドメイン(例えば、IgSFドメインまたは膜貫通ドメイン)との間に含む。
いくつかの態様では、CD86のvIgDと、別のIgSFファミリーメンバーからの1つまたは複数の追加のIgSFドメイン(例えば、第2および/または第3のバリアントIgSFドメイン)とを含む2つ以上のIgSFドメインが、Fcに連結されまたは取付られてFc融合体を形成し、それが、細胞において発現すると、いくつかの局面では、二量体マルチドメインスタック免疫調節タンパク質を産生することができる。したがって、二量体マルチドメイン免疫調節タンパク質も提供される。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドと、1つまたは複数のIgSFドメインとが、独立して、Fc領域のN末端またはC末端に直接的または間接的に連結されている。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドと、1つまたは複数の追加のIgSFドメインのうちの少なくとも1つとが直接的または間接的に連結されており、また、バリアントCD86および1つまたは複数の追加のIgSFドメインのうち1つのうちの1つがFc領域のN末端またはC末端に直接的または間接的に連結されている。いくつかの態様では、Fc領域のN末端またはC末端が、バリアントCD86ポリペプチドまたは1つもしくは複数の追加のIgSFドメインに連結されており、Fc領域のN末端またはC末端の他方が、CD86バリアントまたは別の1つもしくは複数の追加のIgSFドメインの他方に連結されている。いくつかの態様では、Fcへの連結は、ペプチドリンカー、例えば、上述したようなペプチドリンカーを介する。いくつかの態様では、バリアントCD86と1つまたは複数の追加のIgSFドメインとの間の連結は、ペプチドリンカー、例えば、上述したようなペプチドリンカーを介する。いくつかの態様では、CD86のvIgD、1つまたは複数の追加のIgSFドメイン、およびFcドメインを、多数の形状のうちのいずれかで一緒に連結させることができる。例示的な形状が実施例に記載されている。例えば、図14A~14Dを参照されたい。
いくつかの態様では、スタックされた免疫調節タンパク質は、2つの免疫調節Fc融合ポリペプチドによって形成される二量体である。また、スタックされた免疫調節タンパク質のいずれかをコードする核酸分子も提供される。いくつかの態様では、二量体マルチドメインスタック免疫調節タンパク質は、二量体Fc融合タンパク質の生成に従って上述したようなスタック免疫調節Fc融合ポリペプチドの発現、またはいくつかの場合では共発現によって、細胞において産生させることができる。
いくつかの態様では、二量体マルチドメインスタック免疫調節タンパク質は、各Fc領域について二価、各サブユニットについて一価、または一方のサブユニットについて二価でもう一方のサブユニットについて四価である。
いくつかの態様では、二量体マルチドメインスタック免疫調節タンパク質は、ホモ二量体マルチドメインスタックFcタンパク質である。いくつかの態様では、二量体マルチドメインスタック免疫調節タンパク質は、第1のスタック免疫調節Fc融合ポリペプチドおよび第2のスタック免疫調節Fc融合ポリペプチドを含み、その際、第1および第2のポリペプチドは、同じである。いくつかの態様では、マルチドメインスタック分子は、バリアントCD86および第2のIgSFドメインを含有する第1のFc融合ポリペプチド、ならびにバリアントCD86および第2のIgSFドメインを含有する第2のFc融合ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、マルチドメインスタック分子は、バリアントCD86、第2のIgSFドメイン、および第3のIgSFドメインを含有する第1のFc融合ポリペプチド、ならびにバリアントCD86、第2のIgSFドメイン、および第3のIgSFドメインを含有する第2のFc融合ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、第1および/または第2の融合ポリペプチドのFc部分は、上述したような任意のFcであることができる。いくつかの態様では、第1および第2の融合ポリペプチドのFc部分または領域は、同じである。
いくつかの態様では、マルチドメインスタック分子は、2つの異なるFc融合ポリペプチド、例えば、第1および第2のFc融合ポリペプチドを含むヘテロ二量体であり、その際、少なくとも1つが、少なくとも1つのバリアントCD86ポリペプチドを含有するFc融合ポリペプチドであり、かつ/または、少なくとも1つが、第2のIgSFドメイン(例えば、第2のバリアントIgSFドメイン)を含有するFc融合ポリペプチドである。いくつかの態様では、第1または第2のFc融合ポリペプチドはさらに、第3のIgSFドメイン(例えば、第3のバリアントIgSFドメイン)を含有する。いくつかの態様では、マルチドメインスタック分子は、バリアントCD86を含有する第1のFc融合ポリペプチドおよび第2のIgSFドメインを含有する第2のFc融合ポリペプチドを含有し、その中で、いくつかの場合では、第1または第2のFc融合ポリペプチドは追加で、第3のIgSFドメインを含有する。いくつかの態様では、マルチドメインスタック分子は、バリアントCD86、第2のIgSFドメイン、およびいくつかの場合では第3のIgSFドメインを含有する第1のFc融合ポリペプチド、ならびにバリアントCD86ポリペプチドまたは追加のIgSFドメインのいずれにも連結されていない第2のFc融合ポリペプチドを含有する。いくつかの態様では、第1および第2の融合ポリペプチドのFc部分または領域は、同じである。いくつかの態様では、第1および第2の融合ポリペプチドのFc部分または領域は異なる。
いくつかの態様では、マルチドメインスタック分子は、1、2、3、4またはそれ以上のバリアントCD86ポリペプチドと、1、2、3、4またはそれ以上の追加のIgSFドメインとを含有する第1のFc融合ポリペプチドを含有し、ここで、第1のスタックFc融合ポリペプチドにおけるIgSFドメインの総数は、2、3、4、5、6またはそれ以上よりも多い。そのような態様の一例では、第2のスタックFc融合ポリペプチドは、1、2、3、4またはそれ以上のバリアントCD86ポリペプチドと、1、2、3、4またはそれ以上の追加のIgSFドメインとを含有し、ここで、第1のスタックFc融合ポリペプチドにおけるIgSFドメインの総数は、2、3、4、5、6またはそれ以上よりも多い。そのような態様の別の例では、第2のFc融合ポリペプチドは、バリアントCD86ポリペプチドまたは追加のIgSFドメインのいずれかに連結されていない。
いくつかの態様では、ヘテロ二量体スタック分子は、第1のスタック免疫調節Fc融合ポリペプチドおよび第2のスタック免疫調節Fc融合ポリペプチドを含有し、ここで、第1および第2のポリペプチドは異なる。いくつかの態様では、ヘテロ二量体スタック分子は、Fc領域と、第1のバリアントCD86ポリペプチドおよび/または第2のIgSFドメイン(例えば、第2のバリアントIgSFドメイン)とを含有する、第1のFcポリペプチド融合体、ならびに、Fc領域と、第1のバリアントCD86ポリペプチドまたは第2のIgSFドメインのうちの他方とを含有する、第2のFcポリペプチド融合体を含有する。いくつかの態様では、ヘテロ二量体スタック分子は、Fc領域と、第1のバリアントCD86ポリペプチドおよび/または第2のIgSFドメイン(例えば、第2のバリアントIgSFドメイン)を含有する、第1のFcポリペプチド融合体、ならびに、Fc領域と、第1のバリアントCD86ポリペプチドおよび第2のIgSFドメイン(例えば、第2のバリアントIgSFドメイン)の両方とを第1のFc領域とは異なる配向性または配置で含有する、第2のFcポリペプチド融合体を含有する。いくつかの態様では、第1および/または第2のFc融合ポリペプチドは、第3のIgSFドメイン(例えば、第3のバリアントIgSFドメイン)も含有する。
いくつかの態様では、第1および第2のスタックされた免疫調節Fc融合ポリペプチドの一方または両方のFcドメインは、Fc分子の界面がヘテロ二量体化を容易にするおよび/または促進するように改変されるような、改変(例えば、置換)を含む。いくつかの態様では、改変は、第1のFcポリペプチドへの突起(ノブ)の導入および第2のFcポリペプチドへの空洞(ホール)の導入を含み、これによって、突起が空洞内に配置可能となり、第1および第2のFc含有ポリペプチドの複合体の形成が促進される。ポリペプチド中に突起または空洞を作製するための置換および/または改変の標的となるアミノ酸は、典型的には、第2のポリペプチドの界面の1つまたは複数のアミノ酸と相互作用または接触する界面アミノ酸である。
いくつかの態様では、Fc配列がその配列のN末端部分である構築物についてFc配列の前にアミノ酸配列が付加される。いくつかの場合では、Fc配列がその配列のN末端部分である構築物についてFc配列の直前にアミノ酸配列HMSSVSAQ(SEQ ID NO:279)が付加される。いくつかの態様では、ヘテロ二量体スタック分子は、Fc領域(ノブ;例えば、SEQ ID NO:252または324に示されるFc配列)および第1のバリアントポリペプチドおよび/または第2のIgSFドメイン(例えば、第2のバリアントIgSFドメイン)を含有する第1のFcポリペプチド融合体ならびにFc領域(ホール;例えば、SEQ ID NO:280または325に示されるFc配列)を含有する第2のFcポリペプチド融合体を含有し、第1および第2のFcポリペプチド融合体の両方のFc領域の直前にスタッファー配列HMSSVSAQ(SEQ ID NO:279)が付加される。
いくつかの態様において、突起(ノブ)アミノ酸を含有するよう改変される第一のポリペプチドは、天然型または元来のアミノ酸を、第一のポリペプチドの界面から突出しておりそれゆえ第二のポリペプチドの隣接界面にある補償的空洞(ホール)に位置付け可能な少なくとも1つの側鎖を有するアミノ酸で、交換したものを含む。ほとんどの場合、交換アミノ酸は、元来のアミノ酸残基よりも大きな側鎖体積を有するものである。当業者であれば、突起を作り出す理想的な交換アミノ酸であるものを特定するために、アミノ酸残基の特性をどのように決定および/または評価すればよいかを知っている。いくつかの態様において、突起の形成のための交換残基は、天然に存在するアミノ酸残基であり、例えば、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)を含む。いくつかの例では、交換のために特定される元来の残基は、小さな側鎖を有するアミノ酸残基、例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、またはバリンである。
いくつかの態様において、空洞(ホール)を含有するよう改変される第二のポリペプチドは、天然型または元来のアミノ酸を、第二のポリペプチドの界面から凹設されしたがって第一のポリペプチドの界面からの対応する突起を収容できる少なくとも1つの側鎖を有するアミノ酸で、交換したものを含むものである。ほとんどの場合、交換アミノ酸は、元来のアミノ酸残基よりも小さい側鎖体積を有するものである。当業者であれば、空洞の形成のための理想的な交換残基であるものを特定するために、アミノ酸残基の特性をどのように決定および/または評価すればよいかを知っている。概して、空洞の形成のための交換残基は、天然に存在するアミノ酸であり、例えば、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)およびバリン(V)を含む。いくつかの例では、交換のために特定される元来のアミノ酸は、大きな側鎖を有するアミノ酸、例えば、チロシン、アルギニン、フェニルアラニン、またはトリプトファンである。
ヒトIgG1のCH3界面は、例えば、各表面から1090 Å2埋没した、4つの逆平行のβ鎖上に位置する各ドメイン上の16の残基に関わる(例えば、Deisenhofer et al. (1981) Biochemistry, 20:2361-2370; Miller et al., (1990) J Mol. Biol., 216, 965-973; Ridgway et al., (1996) Prot. Engin., 9: 617-621; 米国特許第5,731,168号を参照のこと)。突起または空洞を作り出すためのCH3ドメインの改変は、例えば、米国特許第5,731,168号;国際特許出願WO 98/50431およびWO 2005/063816;ならびにRidgway et al., (1996) Prot. Engin., 9: 617-621に記載されている。いくつかの例では、突起または空洞を作り出すためのCH3ドメインの改変は、典型的には、2つの中央の逆平行のβ鎖上に位置する残基を標的とする。その目的は、作製された突起が、パートナーCH3ドメイン内の補償的空洞によって収容されるのではなく、周囲の溶媒に突出することによって収容される可能性があるリスクを最小限に抑えることである。
いくつかの態様において、ヘテロ二量体分子は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、Y407V変異を含有する。いくつかの場合では、CH3ドメイン間の追加の鎖間ジスルフィド架橋(Merchant, A. M., et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681)を、例えば、Y349C変異を「ノブ」または「ホール」鎖のCH3ドメインに、E356C変異またはS354C変異をその他の鎖のCH3ドメインに導入することによって使用することもできる。いくつかの態様において、ヘテロ二量体分子は、2つのCH3ドメインのうちの一方にS354C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にY349C、T366S、L368A、Y407V変異を含有する。いくつかの態様において、ヘテロ二量体分子は、2つのCH3ドメインのうちの一方にE356C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にY349C、T366S、L368A、Y407V変異を含む。いくつかの態様において、ヘテロ二量体分子は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にE356C、T366S、L368A、Y407V変異を含む。いくつかの態様において、ヘテロ二量体分子は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C、T366W変異を、2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含む。他のノブインホール技術の例は、例えば、EP 1 870 459 A1に記載のとおり、当技術分野において公知である。
いくつかの態様において、ヘテロ二量体分子のFc領域は、追加的には、1つまたは複数の他のFc変異、例えば上記のいずれかを含有することができる。いくつかの態様において、ヘテロ二量体分子は、エフェクター機能を低下させる変異を有するFc領域を含有する。
いくつかの態様において、CH3突起(ノブ)/空洞(ホール)改変を含有するFcバリアントを、スタックされた免疫調節ポリペプチドのどこかに、しかし典型的には、そのN末端またはC末端を介して、第一のおよび/または第二のスタックされた免疫調節ポリペプチドのN末端またはC末端に接続して、例えば融合ポリペプチドを形成することができる。連結は、直接的であることも、リンカーを介した間接的であることもできる。典型的には、ノブ分子およびホール分子は、CH3突起改変を含有するFcバリアントに連結された第一のスタックされた免疫調節ポリペプチドと、CH3空洞改変を含有するFcバリアントに連結された第二のスタックされた免疫調節ポリペプチドとの共発現によって生成される。
D. バリアントポリペプチドおよび免疫調節タンパク質のコンジュゲートおよび融合体
いくつかの態様において、IgSFファミリーのIgドメイン(vIgD)のバリアントを含む免疫調節タンパク質である本明細書において提供されるバリアントポリペプチドを、部分、例えばエフェクター部分、例えば別のタンパク質と、直接的または間接的に、コンジュゲートまたは融合して、コンジュゲート(「IgSFコンジュゲート」)を形成することができる。いくつかの態様において、結合は、共有結合または非共有結合(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン非共有相互作用を介したもの)であることができる。CD86-Fcバリアント融合体のいくつかの態様において、任意の2つ以上の前述のコンジュゲートのいずれか1つまたは組み合わせを、FcもしくはバリアントCD86ポリペプチドまたは両方に結合させることができる。
いくつかの態様において、部分は、ターゲティング部分、低分子薬(500ダルトンモル質量未満の非ポリペプチド薬)、毒素、細胞増殖抑制剤、細胞傷害剤、免疫抑制剤、診断目的に好適な放射性物質、治療目的の放射性金属イオン、プロドラッグ活性化酵素、生物学的半減期を延長させる物質、または診断用もしくは検出可能物質であることができる。
いくつかの態様において、エフェクター部分は、細胞傷害性、細胞増殖抑制またはさもなければいくらかの治療的恩恵を提供する治療用物質、例えばがん治療用物質である。いくつかの態様において、エフェクター部分は、ターゲティング部分または作用物質、例えば、細胞表面抗原、例えば腫瘍細胞の表面上の抗原を標的とする作用物質である。いくつかの態様において、エフェクター部分は、検出可能シグナルを直接的または間接的のいずれかで生成することができる標識である。いくつかの態様において、エフェクター部分は、毒素である。いくつかの態様において、エフェクター部分は、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子またはナノ粒子である。
いくつかの態様において、同じであっても異なっていてもよい1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多いエフェクター部分は、バリアントポリペプチドまたはタンパク質にコンジュゲートされ、連結されまたは融合されて、IgSFコンジュゲートを形成する。いくつかの態様において、そのようなエフェクター部分を、当技術分野において公知でかつ後述される種々の分子生物学的または化学的コンジュゲーションおよび連結法を使用して、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質に結合させることができる。いくつかの態様において、リンカー、例えばペプチドリンカー、切断可能リンカー、非切断可能リンカー、またはコンジュゲーション反応を助けるリンカーを使用して、エフェクター部分をバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質に連結するまたはコンジュゲートすることができる。
いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートは、以下の成分:(タンパク質またはポリペプチド)、(L)qおよび(エフェクター部分)mを含み、ここで、タンパク質またはポリペプチドは、記載のとおりの1つまたは複数の同族カウンター構造体リガンドと結合することができる記載のバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質のいずれかであり;Lは、タンパク質またはポリペプチドを部分に連結するためのリンカーであり;mは、少なくとも1であり;qは、0以上であり;得られたIgSFコンジュゲートは、1つまたは複数のカウンター構造体リガンドに結合する。特定の態様において、mは、1~4であり、そして、qは、0~8である。
いくつかの態様において、細胞表面分子に結合するターゲティング物質とコンジュゲートされた本明細書において提供されるバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を含むIgSFコンジュゲートであって、例えば、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を特定の細胞へ標的指向性送達するための、IgSFコンジュゲートが提供される。いくつかの態様において、ターゲティング物質は、対象における正常な細胞/組織および/または腫瘍細胞/腫瘍上に存在する分子を局在化してそれに結合する能力を有する分子である。言い換えれば、ターゲティング物質を含むIgSFコンジュゲートは、細胞、例えば腫瘍細胞上に存在するリガンドに結合(直接的または間接的に)することができる。使用が企図される本発明のターゲティング物質は、標的細胞または分子の成分と結合することができる、抗体、ポリペプチド、ペプチド、アプタマー、他のリガンド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
いくつかの態様において、ターゲティング物質は、対象への投与後に、腫瘍細胞と結合するか、または腫瘍細胞の近く(例えば、腫瘍血管系または腫瘍微小環境)に結合することができる。ターゲティング物質は、がん細胞の表面上の受容体またはリガンドに結合し得る。本発明の別の局面において、非がん性細胞または組織に特異的であるターゲティング物質が選択される。例えば、ターゲティング物質は、特定の細胞または組織上に通常存在する分子に特異的であることができる。さらに、いくつかの態様において、同じ分子が正常細胞およびがん細胞上に存在することができる。種々の細胞成分および分子が公知である。例えば、ターゲティング物質がEGFRに特異的である場合、得られたIgSFコンジュゲートは、EGFRを発現するがん細胞もEGFRを発現する正常な皮膚上皮細胞も標的とすることができる。それゆえ、いくつかの態様において、本発明のIgSFコンジュゲートは、2つの別々の機序(がん細胞および非がん細胞を標的とする)によって働くことができる。
本明細書に開示される本発明の種々の局面において、本発明のIgSFコンジュゲートは、細胞成分、例えば腫瘍抗原、細菌抗原、ウイルス抗原、マイコプラズマ抗原、真菌抗原、プリオン抗原、寄生生物由来の抗原と結合する/それらを標的とすることができる、ターゲティング物質を含む。いくつかの局面において、細胞成分、抗原または分子は各々、ターゲティング物質の所望の標的を意味するために使用することができる。例えば、種々の態様において、ターゲティング物質は、上皮成長因子受容体(EGFR、ErbB-1、HERl)、ErbB-2(HER2/neu)、ErbB-3/HER3、ErbB-4/HER4、EGFRリガンドファミリー;インスリン様成長因子受容体(IGFR)ファミリー、IGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFRリガンドファミリー;血小板由来成長因子受容体(PDGFR)ファミリー、PDGFRリガンドファミリー;線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)ファミリー、FGFRリガンドファミリー、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)ファミリー、VEGFファミリー;HGF受容体ファミリー;TRK受容体ファミリー;エフリン(EPH)受容体ファミリー;AXL受容体ファミリー;白血球チロシンキナーゼ(LTK)受容体ファミリー;TIE受容体ファミリー、アンジオポエチン1,2;受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体(ROR)受容体ファミリー、例えば、ROR1;CD171(L1CAM);B7-H6(NCR3LG1);CD80、腫瘍グリコシル化抗原、例えば、sTnまたはTn、例えばMUC1のsTn Ag;LHR(LHCGR);ホスファチジルセリン、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー;RET受容体ファミリー;KLG受容体ファミリー;RYK受容体ファミリー;MuSK受容体ファミリー;トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)受容体、TGF-β;サイトカイン受容体、クラスI(ヘマトポエチンファミリー)およびクラスII(インターフェロン/IL-10ファミリー)受容体、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFRSF)、死受容体ファミリー;がん-精巣(CT)抗原、系列特異的抗原、分化抗原、アルファ-アクチニン-4、ARTCl、切断点クラスタ領域-アベルソン(Abelson)(Bcr-abl)融合産物、B-RAF、カスパーゼ-5(CASP-5)、カスパーゼ-8(CASP-8)、β-カテニン(CTNNBl)、細胞分裂周期27(CDC27)、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、CDKN2A、COA-I、dek-can融合タンパク質、EFTUD-2、伸長因子2(ELF2)、Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS(ETC6-AML1)融合タンパク質、フィブロネクチン(FN)、例えば、フィブロネクチンの外部ドメインA(EDA)、GPNMB、低密度脂質受容体/GDP-Lフコース:β-Dガラクトース2-α-Lフコシルトランスフェラーゼ(LDLR/FUT)融合タンパク質、HLA-A2遺伝子におけるα2ドメインのαヘリックスの残基170におけるHLA-A2.アルギニン-イソロイシン交換(HLA-A*201-R170I)、HLA-Al 1、熱ショックタンパク質70-2変異型(HSP70-2M)、K1AA0205、MART2、黒色腫遍在性変異型1、2、3(MUM-I、2、3)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、ネオ-PAP、ミオシンクラスI、NFYC、OGT、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K-ras(KRAS2)、N-ras(NRAS)、HRAS、RBAF600、SIRT2、SNRPDl、SYT-SSXlまたは-SSX2融合タンパク質、トリオースリン酸イソメラーゼ、BAGE、BAGK-1、BAGE-2,3,4,5、GAGE-1,2,3,4,5,6,7,8、GnT-V(異常なN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV、MGAT5)、HERV-K-MEL、KK-LC、KM-HN-I、LAGE、LAGE-I、黒色腫上のCTL認識抗原(CAMEL)、MAGE-Al(MAGE-I)、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-AlO、MAGE-AI l、MAGE-A12、MAGE-3、MAGE-Bl、MAGE-B2、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-Cl、MAGE-C2、ムチン1(MUCl)、MART-1/Melan-A(MLANA)、gplOO、gplOO/Pmell7(SILV)、チロシナーゼ(TYR)、TRP-I、HAGE、NA-88、NY-ESO-I、NY-ESO-l/LAGE-2、SAGE、Spl7、SSX-1,2,3,4、TRP2-INT2、がん胎児性抗原(CEA)、カリクレイン4、マンマグロビン-A、OAl、前立腺特異抗原(PSA)、TRP-1/gp75、TRP-2、アディポフィリン、黒色腫には存在しないインターフェロン誘導性タンパク質2(AIM-2)、BING-4、CPSF、サイクリンDl、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)、EphA3、線維芽細胞成長因子-5(FGF-5)、糖タンパク質250(gp250)、EGFR(ERBBl)、HER-2/neu(ERBB2)、インターロイキン13受容体α2鎖(IL13Rα2)、IL-6受容体、腸カルボキシルエステラーゼ(iCE)、アルファ-フェトタンパク質(AFP)、M-CSF、mdm-2、MUCl、p53(TP53)、PBF、PRAME、PSMA、RAGE-I、RNF43、RU2AS、SOXlO、STEAPl、サバイビン(BIRC5)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、テロメラーゼ、ウィルムス腫瘍遺伝子(WTl)、SYCPl、BRDT、SPANX、XAGE、ADAM2、PAGE-5、LIPl、CTAGE-I、CSAGE、MMAl、CAGE、BORIS、HOM-TES-85、AF15ql4、HCA661、LDHC、MORC、SGY-I、SPOl 1、TPXl、NY-SAR-35、FTHL17、NXF2、TDRDl、TEX15、FATE、TPTE、免疫グロブリンイディオタイプ、ベンスジョーンズ(Bence-Jones)タンパク質、エストロゲン受容体(ER)、アンドロゲン受容体(AR)、CD40、CD30、CD20、CD19、CD33、がん抗原72-4(CA 72-4)、がん抗原15-3(CA 15-3)、がん抗原27-29(CA 27-29)、がん抗原125(CA 125)、がん抗原19-9(CA 19-9)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、β-2ミクログロブリン、扁平上皮がん抗原、神経特異的エノラーゼ、熱ショックタンパク質gp96、GM2、サルグラモスチム、CTLA-4、707アラニンプロリン(707-AP)、T細胞によって認識される腺がん抗原4(ART-4)、がん胎児性抗原ペプチド-1(CAP-I)、カルシウム活性化クロライドチャネル-2(CLCA2)、シクロフィリンB(Cyp-B)、ヒト印環腫瘍-2(HST-2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質(HPV-E6、HPV-E7、メジャーまたはマイナーカプシド抗原、他)、エプスタイン-バールウイルス(EBV)タンパク質(EBV潜伏膜タンパク質-LMPl、LMP2;他)、BまたはC型肝炎ウイルスタンパク質、ならびにHIVタンパク質を非限定的に含む成分に特異的であるかまたはそれに結合する。
いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートは、そのターゲティング物質により、腫瘍細胞、腫瘍血管系または腫瘍微小環境の細胞成分と結合し、それによって、免疫応答の調節(例えば、共刺激分子の活性化または免疫細胞活性化の負の調節分子の阻害による)、生存シグナル(例えば、成長因子またはサイトカインまたはホルモン受容体アンタゴニスト)の阻害、死シグナルの活性化、および/または免疫媒介性細胞傷害性(例えば、抗体依存性細胞傷害性による)を介して、標的とされた細胞の殺傷を促進する。そのようなIgSFコンジュゲートは、いくつかの機序によって、腫瘍細胞を抑制、低減または排除するよう、例えば、コンジュゲートされたエフェクター部分の腫瘍標的への送達を、例えばIgSFコンジュゲートの受容体媒介性エンドサイトーシスによって容易にするよう機能することができ;または、そのようなコンジュゲートは、免疫細胞(例えば、NK細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞)を動員、それと結合、および/またはそれを活性化することができる。さらに、いくつかの場合で、前述の経路の1つまたは複数が、本発明の1つまたは複数のIgSFコンジュゲートの投与によって作用し得る。
いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートは、そのターゲティング物質により、腫瘍細胞、腫瘍血管系または腫瘍微小環境の細胞成分に局在化し、例えば結合し、それによって、腫瘍の近くで免疫応答の細胞を調節する。いくつかの態様において、ターゲティング物質は、コンジュゲートされたIgSF(例えば、vIgD)の腫瘍標的への送達を容易にすることで、例えばその同族結合パートナーと相互作用して、同族結合パートナーを保有する免疫細胞(例えば、NK細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞)のシグナル伝達を変化させる。
いくつかの態様において、ターゲティング物質は、免疫グロブリンである。本明細書において使用される場合、用語「免疫グロブリン」は、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、単鎖Fv(scFv);抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、および上のいずれかのエピトープ結合断片を非限定的に含む、天然型または人工の一価または多価抗体を含む。用語「抗体」は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えば、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明の免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であることができる。
いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートは、その抗体ターゲティング部分により、腫瘍細胞、腫瘍血管系または腫瘍微小環境の細胞成分と結合し、それによって、免疫応答の調節(例えば、共刺激分子の活性化または免疫細胞活性化の負の調節分子の阻害による)、生存シグナル(例えば、成長因子またはサイトカインまたはホルモン受容体アンタゴニスト)の阻害、死シグナルの活性化、および/または免疫媒介性細胞傷害性(例えば、抗体依存性細胞傷害性による)を介して、標的とされた細胞のアポトーシスを促進する。そのようなIgSFコンジュゲートは、いくつかの機序を通して、腫瘍細胞を抑制する、低減するまたは排除する、例えば、コンジュゲートされたエフェクター部分の腫瘍標的への送達を、例えばIgSFコンジュゲートの受容体媒介性エンドサイトーシスを通して容易にするよう機能することができ;または、そのようなコンジュゲートは、免疫細胞(例えば、NK細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞)を動員し、それと結合し、および/またはそれを活性化することができる。
いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートは、その抗体ターゲティング部分により、腫瘍細胞、腫瘍血管系または腫瘍微小環境の細胞成分と結合し、それによって、免疫応答を調節する(例えば、共刺激分子の活性化または免疫細胞活性化の負の調節分子の阻害による)。いくつかの態様において、そのようなコンジュゲートは、免疫細胞(例えば、NK細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞)を認識し、それと結合し、かつ/またそれを調節(例えば、抑制または活性化)することができる。
本発明の抗体ターゲティング部分は、Fab、Fab'およびF(ab')2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結されたFv(sdFv)ならびにVLまたはVHドメインのいずれかを含む断片を非限定的に含む、抗体断片を含む。単鎖抗体を含む抗原結合抗体断片は、可変領域を、単独でまたは以下の全体もしくは一部分と組み合わせて含み得る:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメイン。また、可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの任意の組み合わせをまた含む抗原結合断片も本発明に含まれる。また、Fc断片、抗原-Fc融合タンパク質、およびFc-ターゲティング部分コンジュゲートまたは融合産物(Fc-ペプチド、Fc-アプタマー)も本発明に含まれる。本発明の抗体ターゲティング部分は、トリおよび哺乳動物を含む任意の動物起源由来であり得る。一局面において、抗体ターゲティング部分は、ヒト、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。さらに、そのような抗体は、動物抗体のヒト化またはキメラバージョンであってもよい。本発明の抗体ターゲティング部分は、単一特異性、二重特異性、三重特異性であっても、より高次の多重特異性のものであってもよい。
種々の態様において、抗体/ターゲティング部分は、免疫細胞(例えば、NK細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞)を、Fc(抗体内)とFc受容体(免疫細胞上)との間の相互作用を介しておよび本明細書において提供されるコンジュゲートされたバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を介して、動員、結合、および/または活性化する。いくつかの態様において、抗体/ターゲティング部分は、本明細書において提供されるコンジュゲートされたバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を介して、腫瘍物質を認識するまたはそれと結合して、腫瘍細胞に局在化し、腫瘍の近くで免疫細胞の調節を容易にする。
IgSFコンジュゲートに組み込むことができる抗体の例は、限定されないが、抗体、例えば、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、セツキシマブ(IMC-C225; Erbitux(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標); MabThera(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標); Campath-1H(登録商標); Mabcampath(登録商標))、パニツムマブ(ABX-EGF; Vectibix(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))、トシツモマブ、ヨウ素I 131トシツモマブ(BEXXAR(登録商標))、カツマキソマブ(Removab(登録商標))、ゲムツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、アバタセプト(CTLA4-Ig; Orencia(登録商標))、ベラタセプト(L104EA29YIg; LEA29Y; LEA)、イピリムマブ(MDX-010; MDX-101)、トレメリムマブ(チシリムマブ; CP-675,206)、PRS-010、PRS-050、アフリベルセプト(VEGF Trap、AVE005)、ボロシキシマブ(M200)、F200、MORAb-009、SS1P(CAT-5001)、シクスツムマブ(IMC-A12)、マツズマブ(EMD72000)、ニモツズマブ(h-R3)、ザルツムマブ(HuMax-EGFR)、ネシツムマブIMC-11F8、mAb806/ch806、Sym004、mAb-425、Panorex@(17-1A)(ネズミモノクローナル抗体);Panorex@(17-1A)(キメラネズミモノクローナル抗体);IDEC-Y2B8(ネズミ、抗CD2O MAb); BEC2(抗イディオタイプMAb、GDエピトープを模倣する)(BCGを含む);オンコリム(Oncolym)(Lym-1モノクローナル抗体);SMART MI95 Ab、ヒト化13'I LYM-I(オンコリム)、オバレックス(Ovarex)(B43.13、抗イディオタイプマウスMAb);MDX-210(ヒト化抗HER-2二重特異性抗体);腺がん上のEGP40(17-1A)パンカルシノーマ(pancarcinoma)抗原に結合する3622W94 Mab;抗VEGF、ゾナパックス(Zenapax)(SMART抗Tac(IL-2受容体);SMART MI95 Ab、ヒト化Ab、ヒト化);MDX-210(ヒト化抗HER-2二重特異性抗体);MDX-447(ヒト化抗EGF受容体二重特異性抗体);NovoMAb-G2(パンカルシノーマ特異的Ab);TNT(ヒストン抗原に対するキメラMAb);TNT(ヒストン抗原に対するキメラMAb);グリオマブ(Gliomab)-H(Monoclon s-ヒト化Ab);GNI-250 Mab;EMD-72000(キメラ-EGFアンタゴニスト);リンホシド(ヒト化LL2抗体);およびMDX-260二重特異性、標的GD-2、ANA Ab、SMART IDlO Ab、SMART ABL 364 AbまたはImmuRAIT-CEAを含む。前述のリストに例示されるとおり、特定の標的エピトープに対する抗体を製造することは慣用的である。
いくつかの態様では、融合分子を含む提供されるコンジュゲートの抗体または抗原結合断片は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、トラスツズマブ、Ado-トラスツズマブエムタンシン、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan、Mabthera)、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin)、ダクリズマブ(Zenapax)、ゲムツズマブ(Mylotarg)、アレムツズマブ、CEA-scan Fab断片、OC125モノクローナル抗体、ab75705、B72.3、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、ジヌツキシマブ(Unituxin(商標))、エルロチニブ、エベロリムス、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ニロチニブ、オラパリブ、オララツマブ(Lartruvo(商標))、パルボシクリブ、パゾパニブ、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、バシリキシマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、MPDL3280A、ピジリズマブ(CT-011)、AMP-224、MSB001078C、またはMEDI4736、BMS-935559、LY3300054、アテゾリズマブ、アベルマブまたはデュルバルマブであるか、またはその抗原結合断片である。融合分子を含む提供されるコンジュゲートのいくつかの抗体または抗原結合断片は、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、パニツムマブまたはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗体ターゲティング部分は、Fcドメインを含有する、完全長抗体、またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質は、抗体のFc部分のN末端へのコンジュゲーションによるなどして、抗体ターゲティング部分のFc部分にコンジュゲートされる。
いくつかの態様では、vIgDは、抗体の軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に直接的または間接的に連結されている。いくつかの態様では、連結は、上述したいずれかなどのペプチドリンカーを介するものであることができる。いくつかの態様では、リンカーはさらに、クローニングによっておよび/または制限部位から導入されたアミノ酸を含むことができる。いくつかの態様では、リンカーは、いずれかの末端に制限部位によって導入された追加のアミノ酸を含み得る。例えば、リンカーは、制限部位AFEIの使用によって導入されるようなSA(一文字アミノ酸コードで)などの追加のアミノ酸を含むことができる。様々な形状を構築することができる。図18A~18Cは、例示的な形状を図示している。いくつかの態様では、細胞における抗体の重鎖および軽鎖の共発現によって抗体コンジュゲートを産生させることができる。
いくつかの態様では、HER2抗体またはその抗原結合断片をIgSFコンジュゲートに組み込むことができる。IgSFコンジュゲートに組み込むことができるHER2抗体の例は、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))およびトラスツズマブなどの抗体を含むが、それらに限定されない。いくつかの態様では、vIgDは、抗HER2抗体の軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に直接的または間接的に連結されている。いくつかの態様では、抗HER2抗体は、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))である。抗HER2抗体ペルツズマブの例示的な軽鎖および重鎖は、SEQ ID NO:341および340にそれぞれ示される。いくつかの態様では、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチドは、ペルツズマブの軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に連結されている。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:342のVH配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:343のVL配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:344のVH配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:345のVL配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:342に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:341に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:340に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:343に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:344に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:341に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:340に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:345に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:342の重鎖配列およびSEQ ID NO:341の軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:340の重鎖配列およびSEQ ID NO:343の軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:344の重鎖配列およびSEQ ID NO:341の軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、ペルツズマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:340の重鎖配列およびSEQ ID NO:345の軽鎖配列を含む。
いくつかの態様では、EGFR(HER1)抗体またはその抗原結合断片をIgSFコンジュゲートに組み込むことができる。IgSFコンジュゲートに組み込むことができるEGFR抗体の例は、パニツムマブおよびセツキシマブなどの抗体を含むが、それらに限定されない。いくつかの態様では、vIgDは、抗EGFR抗体の軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に直接的または間接的に連結されている。いくつかの態様では、抗EGFR抗体は、パニツムマブである。いくつかの態様では、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチドは、パニツムマブの軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に連結されている。抗EGFR抗体パニツムマブの例示的な軽鎖および重鎖は、SEQ ID NO:347および346にそれぞれ示される。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:348のVH配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:349のVL配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:350のVH配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:351のVL配列を含むかそれを有する。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:348に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:347に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:346に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:349に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:350に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:347に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:346に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する重鎖配列、およびSEQ ID NO:351に対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:348の重鎖配列およびSEQ ID NO:347の軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:346の重鎖配列およびSEQ ID NO:349の軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:350の重鎖配列およびSEQ ID NO:347の軽鎖配列を含む。いくつかの態様では、パニツムマブを含むコンジュゲートは、SEQ ID NO:346の重鎖配列およびSEQ ID NO:351の軽鎖配列を含む。
本発明の一局面において、ターゲティング物質は、アプタマー分子である。例えば、いくつかの態様において、アプタマーは、ターゲティング物質として機能する核酸からなる。種々の態様において、本発明のIgSFコンジュゲートは、腫瘍細胞、腫瘍血管系、および/または腫瘍微小環境上の分子に特異的なアプタマーを含む。いくつかの態様において、アプタマーはそれ自体、ターゲティングモジュール(配列)に加えて、生物学的に活性な配列を含むことができ、ここで、生物学的に活性な配列は、標的細胞に対する免疫応答を誘導することができる。言い換えれば、そのようなアプタマー分子は、二重使用物質である。いくつかの態様において、本発明のIgSFコンジュゲートは、アプタマーの抗体へのコンジュゲーションを含み、ここで、アプタマーおよび抗体は、腫瘍細胞、腫瘍血管系、腫瘍微小環境、および/または免疫細胞上の別々の分子への結合に特異的である。
用語「アプタマー」は、特定の分子への特異的結合特性に基づいて選択された、DNA、RNAまたはペプチドを含む。例えば、本明細書に開示されるとおりの腫瘍細胞、腫瘍血管系、腫瘍微小環境、および/または免疫細胞内の特定の遺伝子または遺伝子産物と結合するように、アプタマーを選択することができ、ここで、選択は、当技術分野において公知および当業者によく知られている方法によってなされる。
本発明のいくつかの局面において、ターゲティング物質は、ペプチドである。例えば、本明細書において提供されるバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を、がんまたは腫瘍細胞の成分と結合することができるペプチドにコンジュゲートすることができる。それゆえ、本発明のそのようなIgSFコンジュゲートは、腫瘍細胞の、腫瘍血管系の細胞成分、および/または腫瘍微小環境の成分に結合するペプチドターゲティング物質を含む。いくつかの態様において、ターゲティング物質ペプチドは、インテグリンのアンタゴニストまたはアゴニストであることができる。αおよびβサブユニットを含むインテグリンは、当業者に周知の多数のタイプを含む。
一態様において、ターゲティング物質は、Vvβ3である。インテグリンVvβ3は、多種多様な細胞上に発現し、骨マトリックスへの破骨細胞の接着、血管平滑筋細胞の遊走、および血管新生を含むいくつかの生物学的に関連するプロセスを媒介することが示されている。インテグリンに対する好適なターゲティング分子は、他のインテグリン、例えばV4.βi(VLA-4)、V4-P7(例えば、米国特許第6,365,619号; Chang et al, Bioorganic & Medicinal Chem Lett, 12:159-163 (2002); Lin et al., Bioorganic & Medicinal Chem Lett, 12:133-136 (2002) を参照のこと)などに対する、RGDペプチドまたはペプチドミメティックならびに非RGDペプチドまたはペプチドミメティック(例えば、米国特許第5,767,071号および第5,780,426号を参照のこと)を含む。
いくつかの態様において、治療用物質とコンジュゲートされた本明細書において提供される、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を含むIgSFコンジュゲートが提供される。いくつかの態様において、治療用物質は、例えば、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびビンデシンを含む(Rowland et al., Cancer Immunol. Immunother. 21:183-187, 1986)。いくつかの態様において、治療用物質は、細胞内活性を有する。いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートは内在化され、治療用物質は細胞毒素であり、細胞毒素が細胞のタンパク質合成を遮断し、その中で細胞死を導く。いくつかの態様において、治療用物質は、例えば、ゲロニン、ボウガニン、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリオジン、ジフテリア毒素、レストリクトシン(restrictocin)、緑膿菌(Pseudomonas)外毒素Aおよびそのバリアントを含む、リボソーム不活性化活性を有するポリペプチドを含む細胞毒素である。いくつかの態様において、治療用物質が、リボソーム不活性化活性を有するポリペプチドを含む細胞毒素である場合、タンパク質が細胞に対して細胞傷害性となるために、IgSFコンジュゲートは標的細胞に結合したときに内在化されなければならない。
いくつかの態様において、毒素とコンジュゲートされた本明細書において提供される、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を含むIgSFコンジュゲートが提供される。いくつかの態様において、毒素は、例えば、細菌毒素、例えばジフテリア毒素、植物毒素、例えばリシン、低分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandler et al., J.Nat. Cancer Inst. 92 (19) :1573-1581 (2000); Mandler et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028 (2000); Mandler et al., Bioconjugate Chem. 13:786-791 (2002))、メイタンシノイド(EP 1391213; Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623 (1996))、およびカリケアミシン(Lode et al., Cancer Res. 58:2928 (1998); Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993))を含む。毒素は、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を含む機序によって、それらの細胞傷害性および細胞増殖抑制効果を発揮し得る。
いくつかの態様において、検出可能シグナルを間接的または直接的に生成することができる標識とコンジュゲートされた本明細書において提供される、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を含むIgSFコンジュゲートが提供される。これらのIgSFコンジュゲートを、研究または診断用途に、例えばがんのインビボ検出に使用することができる。標識は、好ましくは、直接的または間接的のいずれかで、検出可能シグナルを産生することができる。例えば、標識は、放射線不透過性または放射性同位体、例えば3H、14C、32P、35S、123I、125I、131I;蛍光(フルオロフォア)もしくは化学発光(クロモフォア)化合物、例えばフルオレセインイソチオシアナート、ローダミンもしくはルシフェリン;酵素、例えばアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ;イメージング剤;または金属イオンであり得る。いくつかの態様において、標識は、シンチグラフィー研究用の放射性原子、例えば99Tcもしくは123I、または、核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても公知)用のスピン標識、例えばジルコニウム-89、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンもしくは鉄である。ジルコニウム-89を、例えば、PETイメージング用に、種々の金属キレート剤に錯体化して抗体にコンジュゲートしてよい(WO 2011/056983)。いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートは、間接的に検出可能である。例えば、IgSFコンジュゲートに特異的でかつ検出可能標識を含有する二次抗体を使用して、IgSFコンジュゲートを検出することができる。
IgSFコンジュゲートを、当技術分野において公知の任意の方法を使用して調製してよい。例えば、WO 2009/067800、WO 2011/133886、および米国特許出願公報第2014322129号(参照によってその全体として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
IgSFコンジュゲートのバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質がエフェクター部分と会合するかまたはそれに連結できる任意の手段によって、エフェクター部分に「結合」され得る。例えば、IgSFコンジュゲートのバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を、化学的または組換え手段によって、エフェクター部分に結合され得る。融合体またはコンジュゲートを調製するための化学的手段は、当技術分野において公知であり、これを使用してIgSFコンジュゲートを調製することができる。バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質とエフェクター部分をコンジュゲートするために使用される方法は、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質のそれらの1つまたは複数のカウンター構造体リガンドに結合する能力に干渉することなく、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質とエフェクター部分とを接続できなければならない。
IgSFコンジュゲートのバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を、エフェクター部分に間接的に連結してよい。例えば、IgSFコンジュゲートのバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を、数種類のうちの1種のエフェクター部分を含有するリポソームに直接連結してよい。また、エフェクター部分および/またはバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を固体表面に結合させてもよい。
いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートのバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質とエフェクター部分は共にタンパク質であり、当技術分野において周知の技術を使用してこれらをコンジュゲートすることができる。2つのタンパク質をコンジュゲートできる利用可能な数百のクロスリンカーがある(例えば、”Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking,” 1991, Shans Wong, CRC Press, Ann Arborを参照のこと)。クロスリンカーは、概して、バリアントポリペプチドもしくは免疫調節タンパク質および/またはエフェクター部分上で利用可能であるかまたはそこに挿入されている反応性官能基に基づいて選択される。加えて、反応性基がない場合、光活性化可能クロスリンカーを使用することができる。ある特定の場合には、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質とエフェクター部分との間にスペーサーを含むことが望ましい場合がある。当技術分野に公知の架橋剤は、ホモ二官能性物質:グルタルアルデヒド、ジメチルアジピミデートおよびビス(ジアゾベンジジン)、ならびにヘテロ二官能性物質:mマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドおよびスルホ-mマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドを含む。
いくつかの態様において、IgSFコンジュゲートのバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質を、エフェクター部分の化学的結合のために特定の残基で改変してよい。当技術分野に公知の分子の化学的結合に使用される特定の残基は、リジンおよびシステインを含む。クロスリンカーは、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質上に挿入されている反応性官能基、およびエフェクター部分上で利用可能な反応性官能基に基づいて選択される。
IgSFコンジュゲートをまた、組換えDNA技術を使用して調製してよい。そのような場合、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードするDNA配列を、エフェクター部分をコードするDNA配列に融合させることで、キメラDNA分子が得られる。キメラDNA配列を、融合タンパク質を発現する宿主細胞にトランスフェクトする。細胞培養物から融合タンパク質を回収し、当技術分野において公知の技術を使用して精製することができる。
標識であるエフェクター部分をバリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質に結合させる例は、Hunter, et al., Nature 144:945 (1962); David, et al., Biochemistry 13:1014 (1974); Pain, et al., J. Immunol. Meth. 40:219 (1981); Nygren, J. Histochem. and Cytochem. 30:407 (1982); Wensel and Meares, Radioimmunoimaging And Radioimmunotherapy, Elsevier, N.Y. (1983);およびColcher et al., “Use Of Monoclonal Antibodies As Radiopharmaceuticals For The Localization Of Human Carcinoma Xenografts In Athymic Mice”, Meth. Enzymol., 121:802-16 (1986) に記載されている方法を含む。
放射性標識または他の標識を公知の方法でコンジュゲートに組み込んでよい。例えば、ペプチドを、生合成しても、例えば水素の代わりにフッ素-19を含む好適なアミノ酸前駆体を使用する化学アミノ酸合成によって合成してもよい。99Tcまたは123I、186Re、188Reおよび111Inのような標識を、ペプチド内のシステイン残基を介して結合させることできる。イットリウム-90を、リジン残基を介して結合させることできる。IODOGEN法(Fraker et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57 (1978))を使用してヨウ素-123を組み込むことができる。“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”(Chatal, CRC Press 1989)は、他の方法を詳細に記載している。
バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質および細胞傷害性物質のコンジュゲートを、多種多様な二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジピンイミド酸ジメチルHCI)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアナート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して製造してよい。例えば、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987) に記載のとおりリシン免疫毒素を調製することができる。炭素-14で標識された1-p-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)が、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。例えば、WO 94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞中での細胞傷害薬の放出を容易にする「切断可能リンカー」であり得る。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光分解性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992); 米国特許第5,208,020号)を使用してよい。
本発明のIgSFコンジュゲートは、クロスリンカー試薬:市販(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL, U.S.Aから)のBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾアート)と共に調製された薬物コンジュゲートを明示的に企図するが、それに限定されない。Applications Handbook and Catalog 2003-2004の467-498ページを参照されたい。
E. 膜貫通型および分泌可能な免疫調節タンパク質ならびに改変細胞
免疫調節バリアントCD86ポリペプチドを発現する改変細胞(あるいは、「改変細胞」)が本明細書において提供される。いくつかの態様において、発現する免疫調節バリアントCD86ポリペプチドは、膜貫通型タンパク質であり、かつ、表面に発現する。いくつかの態様において、発現する免疫調節バリアントCD86ポリペプチドは、細胞において発現して該細胞から分泌される。
1. 膜貫通型免疫調節タンパク質
いくつかの態様において、バリアントCD86を含む免疫調節ポリペプチドは、膜結合タンパク質であることができる。以下により詳細に記載するとおり、免疫調節ポリペプチドは、少なくとも1つの親和性改変IgSFドメイン(IgVまたはIgC)を含有するエクトドメイン、膜貫通ドメイン、および任意で、細胞質ドメインを含有する、バリアントCD86を含む膜貫通型免疫調節ポリペプチドであることができる。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)または抗原提示細胞の表面を含む、免疫細胞、例えば哺乳動物細胞の表面上に発現することができる。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞(あるいは、細胞傷害性Tリンパ球またはCTL)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、メモリーT細胞、またはγδT細胞のようなT細胞を含む、哺乳動物T細胞の表面上に発現する。いくつかの態様において、哺乳動物細胞は、抗原提示細胞(APC)である。典型的には、しかし排他的ではないが、エクトドメイン(あるいは、「細胞外ドメイン」)は、本発明のバリアントCD86の1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、アミノ酸置換)を含む。したがって、例えば、いくつかの態様において、膜貫通型タンパク質は、本発明のバリアントCD86の1つまたは複数のアミノ酸置換を含むエクトドメインを含む。
いくつかの態様において、改変細胞は、膜貫通型タンパク質のような膜タンパク質であることができる膜貫通型免疫調節ポリペプチド(TIP)であるバリアントCD86ポリペプチドを発現する。典型的な態様において、膜タンパク質のエクトドメインは、記載のとおりの少なくとも1つのIgSFドメインに1つまたは複数のアミノ酸置換を含有する、本明細書において提供されるバリアントCD86の細胞外ドメインまたはそのIgSFドメインを含む。本明細書において提供される膜貫通型免疫調節タンパク質は、エクトドメインに連結されている膜貫通ドメインをさらに含有する。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、細胞上の細胞表面発現のためのコードされているタンパク質をもたらす。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、エクトドメインに直接連結されている。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、1つまたは複数のリンカーまたはスペーサーを介して、エクトドメインに間接的に連結されている。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、優位に疎水性のアミノ酸残基、例えばロイシンおよびバリンを含有する。
いくつかの態様において、完全長膜貫通アンカードメインを使用して、確実にTIPが改変細胞(例えば、改変T細胞)の表面上に発現するようにすることができる。好都合なことに、これは、親和性が改変されている特定の天然型タンパク質(例えば、CD86または他の天然型IgSFタンパク質)由来であることもでき、かつ、天然型IgSFタンパク質(例えば、CD86)と同じ様式で第一の膜近位ドメインの配列に簡単に融合させることもできる。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、対応する野生型または非改変IgSFメンバーの膜貫通ドメイン(例えば、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に含有される膜貫通ドメイン)を含む(表2)。いくつかの態様において、膜結合形態は、例えばSEQ ID NO:2の248~268番目の残基に対応する、対応する野生型または非改変ポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。
いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、天然型CD86の膜貫通ドメインではない非天然型膜貫通ドメインである。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、膜結合タンパク質であるかまたは膜貫通型タンパク質である別の非CD86ファミリーメンバーポリペプチド由来の膜貫通ドメインに由来する。いくつかの態様において、T細胞上の別のタンパク質由来の膜貫通アンカードメインを使用することができる。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、CD8に由来する。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、スペーサードメインとして役立つCD8の細胞外部分をさらに含有することができる。例示的なCD8由来膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:281、282、もしくは283に示されるかまたはCD8膜貫通ドメインを含有するその一部分である。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、合成膜貫通ドメインである。
いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、膜貫通ドメインに連結されているエンドドメイン(例えば、細胞質シグナル伝達ドメイン)をさらに含有する。いくつかの態様において、細胞質シグナル伝達ドメインは、細胞シグナル伝達を誘導する。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質のエンドドメインは、対応する野生型または非改変ポリペプチドの細胞質ドメイン、例えば、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に含有される細胞質ドメイン、例えば、SEQ ID NO:2の269~329番目のアミノ酸を含む(表2を参照のこと)。
いくつかの態様において、バリアントCD86であるかまたはバリアントCD86を含む提供される膜貫通型免疫調節タンパク質は、SEQ ID NO:56に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、本明細書に記載されている少なくとも1つの親和性が改変されたCD86 IgSFドメインを含むエクトドメインおよび膜貫通ドメインを含有する。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、記載のとおりのIgSFドメイン(例えば、IgVドメイン)に任意の1つまたは複数のアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、記載のとおりの細胞質ドメインをさらに含むことができる。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、シグナルペプチドをさらに含有することができる。
本明細書において、CD86膜貫通型免疫調節タンパク質が提供される。いくつかの態様では、CD86 TIPは、SEQ ID NO:233に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示す。いくつかの態様では、CD86 TIPは、エクトドメイン(細胞外部分)またはそのIgSF(例えば、IgV)ドメインまたはその特異的結合部分に1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、置換)を含有するバリアントCD86 TIPである。例示的なアミノ酸改変(例えば、置換)は、セクションIIに記載されるようないずれかを含む。いくつかの態様では、バリアントCD86 TIPは、SEQ ID NO:234、235、236、237、238、239、240、または241のいずれかに示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示す。いくつかの態様では、バリアントCD86 TIPは、SEQ ID NO:234、235、236、237、238、239、240、または241に示される配列を有する。
いくつかの態様において、シグナルペプチドは、例えばSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に含有される、野生型IgSFメンバーの天然型シグナルペプチドである(例えば、表2を参照のこと)。
また、そのような膜貫通型免疫調節タンパク質をコードする核酸分子が提供される。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質をコードする核酸分子は、SEQ ID NO:56に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、本明細書に記載されている少なくとも1つの親和性改変IgSFドメインを含むエクトドメイン、膜貫通ドメイン、および任意で、細胞質ドメインを含有する。いくつかの態様において、核酸分子は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチドの配列をさらに含むことができる。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、対応する野生型IgSFメンバーの天然型シグナルペプチドである(例えば、表2を参照のこと)。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、異種シグナルペプチドであり、例えば表4に示されているもののいずれかである。
いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質のエンドドメインが、少なくとも1つのITAM(免疫受容体チロシン活性化モチーフ)含有シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメインを含む、CAR関連膜貫通型免疫調節タンパク質が提供される。ITAMは、T細胞受容体シグナル伝達に関与するCD3-ゼータ鎖(「CD3-z」)を含む、免疫細胞のシグナル伝達に関与する多数のタンパク質シグナル伝達ドメインに見いだされる保存モチーフである。いくつかの態様において、エンドドメインは、CD3-ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、CD3-ζシグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:284に示されるアミノ酸配列、または、SEQ ID NO:284に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を示しかつT細胞シグナル伝達の活性を保持するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、CAR関連膜貫通型免疫調節タンパク質のエンドドメインは、T細胞の免疫調節応答をさらに調節する共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含むことができる。いくつかの態様において、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、ICOS、4-1BBまたはOX40である。いくつかの態様において、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28または4-1BBに由来し、かつ、SEQ ID NO:285~288のいずれかに示されるアミノ酸配列、または、SEQ ID NO:285~288に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を示しかつT細胞共刺激シグナル伝達の活性を保持するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、提供されるCAR関連膜貫通型免疫調節タンパク質は、親和性改変IgSFドメインの同族結合パートナーまたはカウンター構造体への結合によってT細胞シグナル伝達を刺激する、CARの特徴を有する。いくつかの態様において、親和性改変IgSFドメインのそのカウンター構造体への特異的結合によって、細胞傷害性、増殖またはサイトカイン産生の変化によって反映されるとおり、T細胞活性の免疫活性の変化を導くことができる。
いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、細胞質シグナル伝達を媒介することができるエンドドメインを含有しない。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、野生型または非改変ポリペプチドのシグナル伝達機序を欠いており、それゆえ、それ自体細胞シグナル伝達を誘導しない。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、対応する野生型または非改変ポリペプチドの細胞内(細胞質)ドメインまたは細胞内ドメインの一部分、例えばSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に含有される細胞質シグナル伝達ドメインを欠いている(表2を参照のこと)。いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、例えばIgSFファミリーの抑制性受容体(例えば、PD-1またはTIGIT)を含むある特定の抑制性受容体に含有される、ITIM(免疫受容体チロシン抑制性モチーフ)を含有しない。したがって、いくつかの態様において、膜貫通型免疫調節タンパク質は、エクトドメインおよび膜貫通ドメイン(例えば、記載のとおりのいずれか)のみを含有する。
2. 分泌型の免疫調節タンパク質および改変細胞
いくつかの態様において、本明細書に記載のアミノ酸変異のうちのいずれか1つまたは複数を含有するCD86バリアント免疫調節ポリペプチドは、例えば細胞に発現する場合、分泌可能である。そのようなバリアントCD86免疫調節タンパク質は、膜貫通ドメインを含まない。いくつかの態様において、バリアントCD86免疫調節タンパク質は、半減期延長部分(例えば、Fcドメインまたは多量体化ドメイン)にコンジュゲートされない。いくつかの態様において、バリアントCD86免疫調節タンパク質は、ドメインを細胞外に出す、シグナルペプチド、例えば抗体シグナルペプチドまたは他の効率的なシグナル配列を含む。免疫調節タンパク質がシグナルペプチドを含みかつ改変細胞によって発現されるとき、シグナルペプチドは、免疫調節タンパク質が改変細胞によって分泌されるようにする。概して、シグナルペプチド、またはシグナルペプチドの一部分は、分泌と共に免疫調節タンパク質から切断される。免疫調節タンパク質は、核酸(発現ベクターの一部分であることができる)によってコードされることができる。いくつかの態様において、免疫調節タンパク質は、細胞(例えば、免疫細胞、例えば初代免疫細胞)によって発現および分泌される。
したがって、いくつかの態様において、シグナルペプチドをさらに含むバリアントCD86免疫調節タンパク質が提供される。いくつかの態様において、シグナルペプチドをコードする分泌配列に機能的に接続されたバリアントCD86免疫調節タンパク質をコードする核酸分子が本明細書において提供される。
シグナルペプチドは、細胞からの免疫調節タンパク質の分泌を合図する、免疫調節タンパク質のN末端上の配列である。いくつかの態様において、シグナルペプチドのアミノ酸長は、約5~約40アミノ酸(例えば、約5~約7、約7~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、または約25~約30、約30~約35、または約35~約40アミノ酸)である。
いくつかの態様において、シグナルペプチドは、対応する野生型CD86由来の天然型シグナルペプチドである(表2を参照のこと)。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、非天然型シグナルペプチドである。例えば、いくつかの態様において、非天然型シグナルペプチドは、対応する野生型CD86由来の変異体天然型シグナルペプチドであり、かつ、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上)の置換、挿入、または欠失を含むことができる。いくつかの態様において、非天然型シグナルペプチドは、野生型IgSFファミリーメンバーと同じIgSFファミリー由来のファミリーメンバーのシグナルペプチドまたはその変異体である。いくつかの態様において、非天然型シグナルペプチドは、野生型IgSFファミリーメンバーとは異なるIgSFファミリー由来のIgSFファミリーメンバー由来のシグナルペプチドまたはその変異体である。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、非IgSFタンパク質ファミリー由来のシグナルペプチドまたはその変異体、例えば免疫グロブリン(例えば、IgG重鎖またはIgGκ軽鎖)、サイトカイン(例えば、インターロイキン-2(IL-2)、またはCD33)、血清アルブミンタンパク質(例えば、HSAまたはアルブミン)、ヒトアズロシジンプレタンパク質シグナル配列、ルシフェラーゼ、トリプシノーゲン(例えば、キモトリプシノーゲンまたはトリプシノーゲン)由来のシグナルペプチド、または細胞からタンパク質を効率的に分泌することができる他のシグナルペプチドである。例示的なシグナルペプチドは、表4に記載のいずれかを含む。
(表4)例示的なシグナルペプチド
分泌可能なバリアントCD86免疫調節タンパク質のいくつかの態様において、免疫調節タンパク質は、発現されたときのシグナルペプチドを含み、そして、シグナルペプチド(またはその一部分)は、分泌によって免疫調節タンパク質から切断される。
いくつかの態様において、改変細胞は、細胞から分泌されるバリアントCD86ポリペプチドを発現する。いくつかの態様において、そのようなバリアントCD86ポリペプチドは、分泌のためのシグナル配列の操作可能な制御下、免疫調節タンパク質をコードする核酸分子によってコードされている。いくつかの態様において、コードされている免疫調節タンパク質は、細胞から発現されたときに分泌される。いくつかの態様において、核酸分子によってコードされている免疫調節タンパク質は、膜貫通ドメインを含まない。いくつかの態様において、核酸分子によってコードされている免疫調節タンパク質は、半減期延長部分(例えば、Fcドメインまたは多量体化ドメイン)を含まない。いくつかの態様において、核酸分子によってコードされている免疫調節タンパク質は、シグナルペプチドを含む。いくつかの態様において、本発明の核酸は、免疫調節タンパク質をコードする核酸に機能的に連結された分泌型またはシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、それによって、免疫調節タンパク質の分泌が可能となる。
3. 細胞および細胞の改変
提供される免疫調節ポリペプチドのいずれかを発現する改変細胞が本明細書において提供される。いくつかの態様において、改変細胞は、それらの表面上に、提供される膜貫通型免疫調節ポリペプチドのいずれかを発現する。いくつかの態様において、改変細胞は、免疫調節タンパク質を発現して、タンパク質の分泌に好適な条件下で細胞から分泌可能であるか、または分泌することができる。いくつかの態様において、免疫調節タンパク質は、リンパ球、例えば腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、T細胞もしくはNK細胞上、または骨髄系細胞上に発現する。いくつかの態様において、改変細胞は、抗原提示細胞(APC)である。いくつかの態様において、改変細胞は、改変された哺乳動物T細胞または改変された哺乳動物抗原提示細胞(APC)である。いくつかの態様において、改変されたT細胞またはAPCは、ヒトまたはネズミ細胞である。
いくつかの態様において、改変されたT細胞は、限定されないが、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞(あるいは、細胞傷害性Tリンパ球またはCTL)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、メモリーT細胞、またはγδT細胞を含む。いくつかの態様において、改変されたT細胞は、CD4+またはCD8+である。MHCのシグナルに加えて、改変されたT細胞は、共刺激シグナルも必要とする。いくつかの態様において、改変T細胞はまた、抑制シグナル(いくつかの場合において、先に考察したとおりの膜結合形態で発現するバリアントCD86膜貫通型免疫調節ポリペプチドによって提供される)によって調節され得る。
いくつかの態様において、改変されたAPCは、例えば、MHC IIを発現するAPC、例えばマクロファージ、B細胞、および樹状細胞、ならびに細胞および無細胞(例えば、生分解性高分子微粒子)人工APC(aAPC)の両方を含むaAPCを含む。人工APC(aAPC)は、これらが抗原をT細胞に提示しかつそれらを活性化するという点でAPCと類似の様式で作用することができる、APCの合成バージョンである。抗原提示は、MHC(クラスIまたはクラスII)によって実施される。いくつかの態様において、aAPCのような改変されたAPCでは、MHC上に負荷される抗原は、いくつかの態様において、腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原である。MHC上に負荷される抗原は、いくつかの場合では、CTLA-4またはCD28または本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドによって認識される他の分子を発現することができる、T細胞のT細胞受容体(TCR)によって認識される。aAPCを改変するために使用することができる材料は、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、酸化鉄、リポソーム、脂質二重層、セファロース、およびポリスチレンを含む。
いくつかの態様では、細胞のaAPCは、養子細胞療法において使用されるTIPおよびTCRアゴニストを含有するように改変することができる。いくつかの態様では、細胞のaAPCは、例えば、患者への再導入のために、投与前などに、ヒトT細胞のエクスビボ拡大増殖において使用されるTIPおよびTCRアゴニストを含有するように改変することができる。いくつかの局面では、aAPCは、例えば、OKT3および/またはUCHT1などの少なくとも1つの抗CD3抗体クローンの発現を含み得る。いくつかの局面では、aAPCは、不活性化(例えば、照射)されていてもよい。いくつかの態様では、TIPは、T細胞上の同族結合パートナーに対して結合親和性を示す任意のバリアントIgSFドメインを含むことができる。
いくつかの態様では、膜貫通型免疫調節タンパク質または分泌可能な免疫調節タンパク質などの本明細書において提供される免疫調節タンパク質は、抗原結合受容体(例えば、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR))を発現する細胞において共発現するかまたは改変される。いくつかの態様では、改変細胞、例えば改変T細胞は、がん、炎症性および自己免疫性障害またはウイルス感染に関連する所望の抗原を認識する。具体的な態様では、抗原結合受容体は、腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗原結合部分を含有する。いくつかの態様では、改変T細胞は、腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原などの抗原に特異的に結合する抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含有するCAR(キメラ抗原受容体)T細胞である。いくつかの態様では、TIPタンパク質は、改変されたT細胞受容体細胞または改変されたキメラ抗原受容体細胞において発現する。そのような態様では、改変細胞は、TIPおよびCARまたはTCRを共発現する。いくつかの態様では、SIPタンパク質は、改変されたT細胞受容体細胞または改変されたキメラ抗原受容体細胞において発現する。そのような態様では、改変細胞は、SIPおよびCARまたはTCRを共発現する。
キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原結合ドメイン(エクトドメイン)、膜貫通ドメイン、および抗原結合後にT細胞に活性化シグナルを誘導または媒介可能である細胞内シグナル伝達領域(エンドドメイン)を含む、組換え受容体である。いくつかの例では、CAR発現細胞は、活性化ドメインおよびいくつかの場合では共刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達部分に連結された特定の腫瘍抗原に対して特異性を有する細胞外単鎖可変断片(scFv)を発現するように改変される。共刺激ドメインは、例えば、CD28、OX-40、4-1BB/CD137、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)に由来し得る。活性化ドメインは、例えば、CD3、例えばCD3ζ、ε、δ、γなどに由来し得る。ある特定の態様では、CARは、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の共刺激ドメインを有するように設計される。CAR scFvは、疾患または病態に関連する細胞上に発現する抗原、例えば、腫瘍抗原、例えば、HER2(ある特定のタイプの悪性乳がんの発生および進行において役割を果たすことが示されているがん遺伝子である)などを標的とするように設計することができる。
いくつかの局面では、抗原結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片、例えば単鎖断片(scFv)である。いくつかの態様では、抗原は、腫瘍またはがん細胞上に発現する。例示的な抗原は、HER2である。例示的なCARは、抗HER2 CAR、例えば、抗HER2 scFvを含有するCARである。他の例示的なCARは、抗CD19 CAR、抗BCMA CAR、抗CD22 CARおよび腫瘍関連抗原に特異的な他のCARを含む。いくつかの態様では、CARはさらに、スペーサー、膜貫通ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインなどのITAMシグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインまたは領域を含有する。いくつかの態様では、CARはさらに、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、スペーサーおよび膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:281、282もしくは283に示される例示的な配列またはSEQ ID NO:281、282もしくは283に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するなどのCD8に由来するヒンジおよび膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、エンドドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、CD3ζシグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:284に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:284に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T細胞シグナル伝達の活性を保持する。いくつかの態様では、CARのエンドドメインはさらに、T細胞の免疫調節応答をさらに調節する共刺激シグナル伝達ドメインまたは領域を含むことができる。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、ICOS、4-1BBまたはOX40の共刺激領域であるか、それを含むか、またはそれに由来する。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28または4-1BBに由来し、SEQ ID NO:285~288のいずれかに示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:285~288に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T細胞共刺激シグナル伝達の活性を保持する。
いくつかの態様では、CARをコードする構築物はさらに、自己切断ペプチド配列によってCARから分離されたマーカー、例えば、検出可能タンパク質などの第2のタンパク質をコードする。いくつかの態様では、自己切断ペプチド配列は、F2A、T2A、E2A、またはP2A自己切断ペプチドである。T2A自己切断ペプチドの例示的な配列は、SEQ ID NO:309、310、311のいずれか1つ、またはSEQ ID NO:309、310、311のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列に示される。いくつかの態様では、T2Aは、SEQ ID NO:311に示されるヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:311のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示す配列によってコードされる。P2A自己切断ペプチドの例示的な配列は、SEQ ID NO:243またはSEQ ID NO:243に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列に示される。いくつかの場合では、1を超えるP2A自己切断ペプチド(P2A1およびP2A2など)をコードする核酸構築物において、ヌクレオチド配列P2A1およびP2A2は各々SEQ ID NO:243に示されるP2Aをコードし、ヌクレオチド配列は配列間の組換えを避けるため異なっていてもよい。
いくつかの態様では、マーカーは、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)または青色蛍光タンパク質(BFP)などの検出可能タンパク質である。蛍光タンパク質マーカーの例示的な配列は、SEQ ID NO:313、312、244~246、またはSEQ ID NO:313、312、244~246に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列に示される。
いくつかの態様では、CARは、抗HER scFv、CD8ヒンジ領域、ならびに4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達ドメインに由来する膜貫通シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、トラスツズマブの可変重鎖および軽鎖を含有するscFvを含む。
別の態様において、改変されたT細胞は、組換えまたは改変されたTCRを含むTCRを保有する。いくつかの態様において、TCRは、天然型TCRであることができる。当業者は、概して天然型の哺乳動物T細胞受容体が抗原特異的認識および結合に関与するアルファおよびベータ鎖(またはγおよびδ鎖)を含むことを認識するだろう。いくつかの態様において、TCRは、修飾されている改変されたTCRである。いくつかの態様において、改変されたT細胞のTCRは、APCによって提示された腫瘍関連または腫瘍特異的抗原に特異的に結合する。いくつかの態様において、TCRは、HPV16 E6ペプチド(E6 TCR)である。いくつかの態様において、TCRは、HPV16 E7ペプチド(E7 TCR)である。HPV TCRの例には、国際公開第WO2015009606号または第WO2015184228号に記載されているものが含まれる。
いくつかの態様において、免疫調節ポリペプチド、例えば膜貫通型免疫調節ポリペプチドまたは分泌可能な免疫調節ポリペプチドを、組換え宿主細胞に採用されるもののような多種多様な戦略によって、改変細胞、例えば改変されたT細胞または改変されたAPCに組み込むことができる。DNA構築物を初代T細胞に導入するための多種多様な方法が当技術分野において公知である。いくつかの態様において、ウイルス形質導入またはプラスミドエレクトロポレーションが採用される。典型的な態様において、免疫調節タンパク質をコードする核酸分子、または発現ベクターは、発現された膜貫通型免疫調節タンパク質を細胞膜に局在化させるかまたは分泌のためのシグナルペプチドを含む。いくつかの態様において、本発明の膜貫通型免疫調節タンパク質をコードする核酸は、宿主哺乳動物細胞での発現を可能にするウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターにサブクローニングされる。発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入することができ、宿主細胞培養条件下で、免疫調節タンパク質は表面上に発現するかまたは分泌される。
例示的な例では、初代T細胞を、エクスビボで精製して(CD4+細胞もしくはCD8+細胞または両方)、種々のTCR/CD28アゴニスト、例えば抗CD3/抗CD28をコートしたビーズからなる活性化プロトコルで刺激することができる。2または3日の活性化プロセス後、免疫調節ポリペプチドを含有する組換え発現ベクターを、当技術分野で標準的なレンチウイルスもしくはレトロウイルス形質導入プロトコルまたはプラスミドエレクトロポレーション戦略により、初代T細胞に安定的に導入することができる。細胞を、例えば、天然型親分子およびポリペプチド(バリアントCD86を含む)と交差反応する抗エピトープタグまたは抗体を使用するフローサイトメトリーによって、免疫調節ポリペプチド発現についてモニタリングすることができる。免疫調節ポリペプチドを発現するT細胞を、用途に応じて、抗エピトープタグ抗体を用いたソーティングにより濃縮することも、高または低発現のために濃縮することもできる。
免疫調節ポリペプチド発現によって、改変されたT細胞を、多種多様な手段によって、適切な機能についてアッセイすることができる。改変されたCARまたはTCRの共発現を検証して、改変されたT細胞のこの部分が免疫調節タンパク質の発現による影響をほとんど受けなかったことを示すことができる。検証したら、標準的なインビトロ細胞傷害性、増殖、またはサイトカインアッセイ(例えば、IFN-γ、IL-2、TNFαの発現)を使用して、改変されたT細胞の機能を評価することができる。例示的な標準エンドポイントは、腫瘍株の溶解率、改変されたT細胞の増殖、または培養上清中のIFN-γタンパク質発現である。対照構築物に対して統計的に有意な腫瘍株の溶解の増加、改変されたT細胞の増殖の増加、またはIFN-γ発現の増加をもたらす改変された構築物を選択することができる。追加的に、改変されていない細胞、例えば天然の初代または内在性T細胞をまた同じインビトロアッセイに組み込んで、改変細胞、例えば改変されたT細胞上に発現する免疫調節ポリペプチド構築物の、バイスタンダー天然型T細胞における活性を調節する(いくつかの場合では、エフェクター機能を活性化および生成することを含む)能力を測定することもできる。活性化マーカーまたは分化マーカー(例えば、CD25、CD69、またはCD44)の発現の増加を内在性T細胞上でモニタリングすることもでき、増殖および/またはサイトカイン産生の増加は、改変T細胞上に発現する免疫調節タンパク質の所望の活性を示すこともできる。
いくつかの態様において、類似のアッセイを使用して、CARまたはTCR単独を含有する改変されたT細胞の機能を、CARまたはTCRおよびTIP構築物を含有するものと比較することができる。典型的には、これらのインビトロアッセイは、種々の比率の改変されたT細胞および同族CARまたはTCR抗原を含有する「腫瘍」細胞株を一緒に培養下でプレーティングすることによって実施される。標準エンドポイントは、腫瘍株の溶解率、改変されたT細胞の増殖、または培養上清中のIFN-γ産生である。同じTCRまたはCAR構築物単独に対して、統計的に有意な腫瘍株の溶解の増加、改変されたT細胞の増殖の増加、またはIFN-γ産生の増加をもたらした改変された免疫調節タンパク質を選択することができる。改変されたヒトT細胞を、マウスのT、NKおよびB細胞を欠いているNSG系統のような免疫不全マウスで分析することができる。CARまたはTCRが異種移植片上の標的カウンター構造体に結合しかつTIPの親和性改変IgSFドメインと共発現する改変されたヒトT細胞を、異種移植片と比較して異なる細胞数および比率にてインビボで養子移入することができる。ある共通の態様において、異種移植片がネズミモデルに導入され、続いて数日後に改変されたT細胞が導入される。免疫調節タンパク質を含有する改変されたT細胞を、CARまたはTCR単独を含有する改変されたT細胞と比べて、増加した生存、腫瘍クリアランス、または改変されたT細胞の増殖数についてアッセイすることができる。インビトロアッセイと同様に、内在性の天然型(すなわち、改変されていない)ヒトT細胞を共養子移入して、その集団において、より良好な生存または腫瘍クリアランスをもたらすエピトープ拡散の成功を予測することもできる。
いくつかの態様では、提供される免疫調節タンパク質を発現する提供される改変T細胞は、本明細書に記載のような免疫調節タンパク質(例えば、TIP)で改変されていない参照細胞と比較して、1つまたは複数の改善された特性または活性を示す。いくつかの態様では、参照T細胞、参照CAR改変T細胞、または参照TCR改変T細胞などの参照細胞は、類似のエクスビボ手順によって産生または改変されているが免疫調節タンパク質を発現しないか発現するように改変されていない細胞である。いくつかの態様では、特性または活性は、T細胞機能に関連するか関係する。いくつかの態様では、1つまたは複数の特性または活性は、細胞の増殖、細胞傷害活性、サイトカイン産生(例えば、IFN-γ、IL-2またはTNF-α)、および/または1つもしくは複数の活性化マーカー(例えば、CD69またはCD25)の発現を含むが、それらに限定されない。いくつかの態様では、活性または特性は、参照細胞または参照細胞組成物と比較して、少なくとも1.2倍もしくは少なくとも約1.2倍、少なくとも1.4倍もしくは少なくとも約1.4倍、少なくとも1.5倍もしくは少なくとも約1.5倍、少なくとも1.6倍もしくは少なくとも約1.6倍、少なくとも1.7倍もしくは少なくとも約1.7倍、少なくとも1.8倍もしくは少なくとも約1.8倍、少なくとも1.9倍もしくは少なくとも約1.9倍、少なくとも2.0倍もしくは少なくとも約2.0倍、少なくとも2.5倍もしくは少なくとも約2.5倍、少なくとも3.0倍もしくは少なくとも約3.0倍、少なくとも4.0倍もしくは少なくとも約4.0倍、少なくとも5.0倍もしくは少なくとも約5.0倍、またはそれより大きく向上する。
F. バリアントポリペプチドおよび免疫調節タンパク質を発現する感染性物質
また、本明細書に記載の分泌可能または膜貫通型の免疫調節タンパク質を含むバリアントポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドのいずれかをコードする核酸を含有する感染性物質が提供される。いくつかの態様において、そのような感染性物質は、本明細書に記載のバリアント免疫調節ポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドをコードする核酸を、対象の標的細胞、例えば、対象の免疫細胞および/もしくは抗原提示細胞(APC)または腫瘍細胞に送達することができる。また、そのような感染性物質に含有される核酸、および/または、そのような感染性物質の生成もしくは改変のための核酸、例えばベクターおよび/またはプラスミド、ならびにそのような感染性物質を含有する組成物が提供される。
いくつかの態様において、感染性物質は、微生物または病原菌である。いくつかの態様において、感染性物質は、ウイルスまたは細菌である。いくつかの態様において、感染性物質は、ウイルスである。いくつかの態様において、感染性物質は、細菌である。いくつかの態様において、そのような感染性物質は、本明細書に記載の分泌可能または膜貫通型の免疫調節タンパク質を含むバリアントポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列を送達することができる。したがって、いくつかの態様において、感染性物質に感染されるまたは接触される対象の細胞は、バリアント免疫調節ポリペプチドを細胞表面上に発現させるかまたは分泌させることができる。いくつかの態様において、感染性物質はまた、1つまたは複数の他の治療薬または他の治療薬をコードする核酸を対象内の細胞および/または環境に送達することもできる。いくつかの態様において、感染性物質によって送達されることができる他の治療薬は、サイトカインまたは他の免疫調節分子を含む。
いくつかの態様において、感染性物質、例えば、ウイルスまたは細菌は、本明細書に記載の分泌可能または膜貫通型の免疫調節タンパク質を含むバリアントポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列を含有し、対象の細胞の接触および/または感染によって、細胞は、感染性物質に含有される核酸配列によってコードされている分泌可能または膜貫通型の免疫調節タンパク質を含むバリアントポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドを発現する。いくつかの態様において、感染性物質を対象に投与することができる。いくつかの態様において、感染性物質を対象由来の細胞にエクスビボで接触させることができる。
いくつかの態様において、感染性物質によって感染された細胞によって発現する膜貫通型免疫調節タンパク質を含むバリアントポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドは、膜貫通型タンパク質であり、表面に発現する。いくつかの態様において、感染性物質によって感染された細胞によって発現される分泌可能な免疫調節タンパク質を含むバリアントポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドは、細胞から発現されかつ分泌される。膜貫通型免疫調節タンパク質または分泌された免疫調節タンパク質は、本明細書に記載のいずれかであることができる。
いくつかの態様において、感染性物質によって標的とされる対象の細胞は、腫瘍細胞、免疫細胞、および/または抗原提示細胞(APC)を含む。いくつかの態様において、感染性物質は、腫瘍微小環境(TME)にある細胞を標的とする。いくつかの態様において、感染性物質は、分泌可能または膜貫通型の免疫調節タンパク質を含むバリアントポリペプチド、例えばCD86 vIgDポリペプチドをコードする核酸を、適切な細胞(例えば、APC、例えばペプチド/MHC複合体をその細胞表面上に提示する細胞、例えば樹状細胞)または組織(例えば、リンパ系組織)に送達し、それにより、所望の効果、例えば、免疫調節および/または特異的な細胞媒介性免疫応答、例えば、CD4および/またはCD8 T細胞応答を誘導するかつ/または増強させ、そのCD8 T細胞応答は、細胞傷害性T細胞(CTL)応答を含み得る。いくつかの態様において、感染性物質は、APC、例えば樹状細胞(DC)を標的とする。いくつかの態様において、本明細書に記載の感染性物質によって送達される核酸分子は、バリアント免疫調節ポリペプチドをコードする機能的に連結されたコード配列の特定の標的細胞における発現に必要な適切な核酸配列、例えば、調節エレメント、例えばプロモーターを含む。
いくつかの態様において、免疫調節ポリペプチドをコードする核酸配列を含有する感染性物質はまた、1つまたは複数の追加の遺伝子産物、例えば、サイトカイン、プロドラッグ変換酵素、細胞毒素および/または検出可能遺伝子産物をコードする核酸配列を含有することもできる。例えば、いくつかの態様において、感染性物質は、腫瘍溶解性ウイルスであり、ウイルスは、追加の治療用遺伝子産物をコードする核酸配列を含むことができる(例えば、Kirn et al., (2009) Nat Rev Cancer 9:64-71; Garcia-Aragoncillo et al., (2010) Curr Opin Mol Ther 12:403-411を参照のこと;米国特許第7,588,767号、第7,588,771号、第7,662,398号および第7,754,221号、ならびに米国特許出願公開第2007/0202572号、第2007/0212727号、第2010/0062016号、第2009/0098529号、第2009/0053244号、第2009/0155287号、第2009/0117034号、第2010/0233078号、第2009/0162288号、第2010/0196325号、第2009/0136917号および第2011/0064650号を参照のこと。いくつかの態様において、追加の遺伝子産物は、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の死をもたらすことができる治療用遺伝子産物、または免疫応答を増強もしくは強化もしくは調節できる遺伝子産物(例えば、サイトカイン)であることができる。例示的な遺伝子産物はまた、抗がん剤、抗転移剤、抗血管新生剤、免疫調節分子、免疫チェックポイント阻害剤、抗体、サイトカイン、成長因子、抗原、細胞傷害性遺伝子産物、アポトーシス促進性遺伝子産物、抗アポトーシス性遺伝子産物、細胞マトリックス分解性遺伝子、組織再生のための遺伝子、およびヒト体細胞の多能性へのリプログラミングのための遺伝子、ならびに本明細書に記載のまたは当業者に公知の他の遺伝子の中に含まれる。いくつかの態様において、追加の遺伝子産物は、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。
1. ウイルス
いくつかの態様において、感染性物質は、ウイルスである。いくつかの態様において、感染性物質は、腫瘍溶解性ウイルス、または、特定の細胞、例えば免疫細胞を標的とするウイルスである。いくつかの態様において、感染性物質は、対象の腫瘍細胞および/またはがん細胞を標的とする。いくつかの態様において、感染性物質は、免疫細胞または抗原提示細胞(APC)を標的とする。
いくつかの態様において、感染性物質は、腫瘍溶解性ウイルスである。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞に蓄積しかつ腫瘍細胞において複製するウイルスである。細胞における複製、および本明細書に記載のバリアント免疫調節バリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードする核酸の任意の送達によって、腫瘍細胞は溶解され、腫瘍は縮小し、排除されることができる。腫瘍溶解性ウイルスは、広範な宿主および細胞タイプの範囲を有することができる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍および/または転移を含みまた創傷組織および細胞も含む、免疫特権を有する細胞または免疫特権を有する組織に蓄積し、したがって、本明細書に記載のバリアント免疫調節ポリペプチドをコードする核酸の広範な細胞タイプにおける送達および発現が可能となる。腫瘍溶解性ウイルスはまた、腫瘍細胞特異的に複製し、その結果、腫瘍細胞溶解および効率的な腫瘍退縮をもたらすことができる。
例示的な腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルスおよびワクシニアウイルスを含む。いくつかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、他の臓器に感染することなく固体腫瘍に特異的に定着することができ、これを感染性物質として使用して、本明細書に記載のバリアント免疫調節ポリペプチドをコードする核酸をそのような固体腫瘍に送達することができる。
本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードする核酸を送達する際に使用するための腫瘍溶解性ウイルスは、当業者に公知のもののいずれかであることができ、例えば、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus)(例えば、米国特許第7,731,974号、第7,153,510号、第6,653,103号、および米国特許出願公開第2010/0178684号、第2010/0172877号、第2010/0113567号、第2007/0098743号、第20050260601号、第20050220818号、および欧州特許第1385466号、第1606411号および第1520175号を参照のこと);単純ヘルペスウイルス(例えば、米国特許第7,897,146号、第7,731,952号、第7,550,296号、第7,537,924号、第6,723,316号、第6,428,968号、および米国特許出願公開第2014/0154216号、第2011/0177032号、第2011/0158948号、第2010/0092515号、第2009/0274728号、第2009/0285860号、第2009/0215147号、第2009/0010889号、第2007/0110720号、第2006/0039894号、第2004/0009604号、第2004/0063094号、国際特許公開WO 2007/052029、WO 1999/038955を参照のこと);レトロウイルス(例えば、米国特許第6,689,871号、第6,635,472号、第5,851,529号、第5,716,826号、第5,716,613号および米国特許出願公開第20110212530号を参照のこと);ワクシニアウイルス(例えば、2016/0339066号を参照のこと)、およびアデノ随伴ウイルス(例えば、米国特許第8,007,780号、第7,968,340号、第7,943,374号、第7,906,111号、第7,927,585号、第7,811,814号、第7,662,627号、第7,241,447号、第7,238,526号、第7,172,893号、第7,033,826号、第7,001,765号、第6,897,045号、および第6,632,670号を参照のこと)を含む。
腫瘍溶解性ウイルスはまた、それらの病原性を減弱させ、それらの安全性プロファイルを改善し、それらの腫瘍特異性を増強するように遺伝子が改変されているウイルスを含み、そして、これらはまた、ウイルスの有効性全体を改善する追加の遺伝子、例えば細胞毒素、サイトカイン、プロドラッグ変換酵素を備えている(例えば、Kirn et al., (2009) Nat Rev Cancer 9:64-71; Garcia-Aragoncillo et al., (2010) Curr Opin Mol Ther 12:403-411を参照のこと;米国特許第7,588,767号、第7,588,771号、第7,662,398号および第7,754,221号、ならびに米国特許出願公開第2007/0202572号、第2007/0212727号、第2010/0062016号、第2009/0098529号、第2009/0053244号、第2009/0155287号、第2009/0117034号、第2010/0233078号、第2009/0162288号、第2010/0196325号、第2009/0136917号および第2011/0064650号を参照のこと)。いくつかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、がん性細胞において選択的に複製するように改変されており、したがって腫瘍溶解性である、ウイルスであることができる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍治療のためのまた遺伝子治療ベクターとしての改変された指向性を有するように改変されているアデノウイルスである。その例示は、ONYX-015、H101およびAd5ΔCR(Hallden and Portella (2012) Expert Opin Ther Targets, 16:945-58)ならびにTNFerade(McLoughlin et al. (2005) Ann. Surg. Oncol., 12:825-30)、または制限増殖型アデノウイルスOncorine(登録商標)である。
いくつかの態様において、感染性物質は、改変された単純ヘルペスウイルスである。いくつかの態様において、感染性物質は、本明細書に記載のバリアント免疫調節ポリペプチドのうちのいずれか(例えば、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質のうちのいずれか)をコードする核酸を含有するよう改変された、タリモジーン・ラハーパレプベック(Talimogene laherparepvec)(T-Vec、ImlygicまたはOncoVex GM-CSFとしても公知)の改変されたバージョンである。いくつかの態様において、感染性物質は、例えば、WO 2007/052029、WO 1999/038955、US 2004/0063094、US 2014/0154216に記載されている改変された単純ヘルペスウイルス、またはそのバリアントである。
いくつかの態様において、感染性物質は、ウイルスが投与される対象の特定タイプの細胞を標的とするウイルス、例えば、免疫細胞または抗原提示細胞(APC)を標的とするウイルスである。樹状細胞(DC)は、免疫応答の開始および制御に必須のAPCである。DCは、抗原を捕捉およびプロセシングし、末梢からリンパ系臓器へ移動し、抗原を静止T細胞に主要組織適合性複合体(MHC)拘束様式で提示することができる。いくつかの態様において、感染性物質は、DCを特異的に標的としてDCにおける発現のためにバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードする核酸を送達できる、ウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスは、レンチウイルスまたはそのバリアントもしくは誘導体、例えば、組み込み能欠損型レンチウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスは、細胞表面マーカーである樹状細胞特異的細胞間接着分子-3-結合ノンインテグリン(DC-SIGN)を発現する細胞、例えばDCに効率的に結合して生産的に感染するよう偽型化された、レンチウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスは、シンドビスウイルスE2糖タンパク質またはその改変型で偽型化されたレンチウイルス、例えばWO 2013/149167に記載されているものである。いくつかの態様において、ウイルスは、関心対象の配列(例えば、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質のいずれかをコードする核酸)のDCへの送達および発現を可能にする。いくつかの態様において、ウイルスは、WO 2008/011636もしくはUS 2011/0064763、Tareen et al. (2014) Mol. Ther., 22:575-587に記載されているもの、またはそのバリアントを含む。樹状細胞指向性ベクタープラットフォームの例は、ZVex(商標)である。
2. 細菌
いくつかの態様において、感染性物質は、細菌である。例えば、いくつかの態様において、細菌は、本明細書に記載のバリアント免疫調節ポリペプチドのいずれか、例えば、バリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードする核酸を、対象の標的細胞、例えば腫瘍細胞、免疫細胞、抗原提示細胞および/または食細胞に送達することができる。いくつかの態様において、細菌は、バリアント免疫調節ポリペプチドの発現および/もしくは分泌のため、ならびに/または、バリアント免疫調節ポリペプチドの発現のために環境の特定の細胞を標的とするため、対象内の特定の環境、例えば腫瘍微小環境(TME)に優先的に標的とされることができる。
いくつかの態様において、細菌は、プラスミドDNAの哺乳動物細胞への細菌媒介性移送(「バクトフェクション」とも称される)を介して核酸を細胞に送達する。例えば、いくつかの態様において、遺伝物質の送達は、細菌全体の標的細胞への侵入により達成される。いくつかの態様において、自発的なまたは誘導された溶菌は、その後の真核細胞発現のためのプラスミドの放出を導くことができる。いくつかの態様において、細菌は、核酸を、非食哺乳動物細胞(例えば、腫瘍細胞)および/または食細胞、例えば、ある特定の免疫細胞および/またはAPCに送達することができる。いくつかの態様において、細菌によって送達される核酸を、発現のために対象の細胞の核に移すことができる。いくつかの態様において、核酸はまた、バリアント免疫調節ポリペプチドをコードする機能的に連結された配列の特定の宿主細胞における発現に必要な適切な核酸配列、例えば、調節エレメント、例えばプロモーターまたはエンハンサーを含む。いくつかの態様において、細菌である感染性物質は、免疫調節タンパク質をコードする核酸を、標的細胞の機構による翻訳のために標的細胞の細胞質に送達されるRNA、例えば予め製造された翻訳能力のあるRNAの形態で送達することができる。
いくつかの態様において、細菌は、標的細胞、例えば腫瘍細胞において複製し、該細胞を溶解することができる。いくつかの態様において、細菌は、標的細胞の細胞質で核酸配列および/または遺伝子産物を含有および/または放出し、それによって、標的細胞、例えば腫瘍細胞を殺傷することができる。いくつかの態様において、感染性物質は、対象の特定の環境、例えば、腫瘍微小環境(TME)で特異的に複製することができる細菌である。例えば、いくつかの態様において、細菌は、嫌気または低酸素微小環境で特異的に複製することができる。いくつかの態様において、特定の環境に存在する条件または因子、例えば、TMEにおいて細胞によって産生されるアスパラギン酸、セリン、クエン酸、リボースまたはガラクトースは、細菌を環境に誘引する化学誘引物質として作用することができる。いくつかの態様において、細菌は、本明細書に記載の免疫調節タンパク質を、環境、例えばTMEにおいて、発現および/または分泌することができる。
いくつかの態様において、感染性物質は、リステリア属(Listeria sp.)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)、エシェリキア属(Escherichia sp.)、クロストリジウム属(Clostridium sp.)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、シゲラ属(Shigella sp.)、ビブリオ属(Vibrio sp.)またはエルシニア属(Yersinia sp)である細菌である。いくつかの態様において、細菌は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・コレラエスイス(Salmonella choleraesuis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)およびビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)の1つまたは複数の中から選択される。いくつかの態様において、細菌は、改変された細菌である。いくつかの態様において、細菌は、改変された細菌、例えば、Seow and Wood (2009) Molecular Therapy 17(5):767-777; Baban et al. (2010) Bioengineered Bugs 1:6, 385-394; Patyar et al. (2010) J Biomed Sci 17:21; Tangney et al. (2010) Bioengineered Bugs 1:4, 284-287; van Pijkeren et al. (2010) Hum Gene Ther. 21(4):405-416; WO 2012/149364; WO 2014/198002; US 9103831; US 9453227; US 2014/0186401; US 2004/0146488; US 2011/0293705; US 2015/0359909およびEP 3020816に記載されているものである。細菌は、本明細書において提供されるバリアント免疫調節ポリペプチド、コンジュゲートおよび/または融合体のいずれかをコードする核酸配列を送達するように、かつ/またはそのようなバリアント免疫調節ポリペプチドを対象において発現するように、改変されることができる。
G. ポリペプチドを生産するための核酸、ベクターおよび方法または細胞
本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節ポリペプチドの種々の提供される態様のいずれかをコードする、単離されたまたは組換え核酸(「核酸」と総称される)が本明細書において提供される。いくつかの態様において、後述の全てを含む本明細書において提供される核酸は、本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節ポリペプチドの組換え産生(例えば、発現)に有用である。いくつかの態様において、後述の全てを含む本明細書において提供される核酸は、本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節ポリペプチドの細胞、例えば改変細胞、例えば免疫細胞、または感染性物質細胞における発現に有用である。本明細書において提供される核酸は、RNAの形態またはDNAの形態にあることができ、mRNA、cRNA、組換えまたは合成RNAおよびDNA、ならびにcDNAを含むことができる。本明細書において提供される核酸は、典型的には、DNA分子、通常二本鎖のDNA分子である。しかしながら、本発明のヌクレオチド配列のうちのいずれかを含む、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、およびハイブリッドDNA/RNA核酸またはその組み合わせも提供される。
また、本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節ポリペプチドを生産する際に有用な、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞が本明細書において提供される。
また、提供される免疫調節ポリペプチドのうちのいずれか(例えば、膜貫通型免疫調節ポリペプチドもしくは分泌可能な免疫調節ポリペプチドのうちのいずれか)を含有する改変細胞(例えば、改変された免疫細胞)が本明細書において提供される。
また、提供される免疫調節ポリペプチドのうちのいずれか(例えば、膜貫通型免疫調節ポリペプチドもしくは分泌可能な免疫調節ポリペプチドのうちのいずれか)を含有する感染性物質(例えば、細菌またはウイルス細胞)が本明細書において提供される。
上に提供される態様のいずれかにおいて、本明細書において提供される免疫調節ポリペプチドをコードする核酸を、組換えDNAおよびクローニング技術を使用して細胞に導入することができる。そのようにするために、免疫調節ポリペプチドをコードする組換えDNA分子が調製される。そのようなDNA分子を調製する方法は、当技術分野において周知である。例えば、ペプチドをコードする配列を、好適な制限酵素を使用してDNAから切り取ることもできる。あるいは、ホスホロアミダイト法のような化学合成技術を使用してDNA分子を合成することもできる。また、これらの技術の組み合わせを使用することもできる。いくつかの場合で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により組換えまたは合成核酸を生成してよい。いくつかの態様において、少なくとも1つの親和性改変IgSFドメインと、いくつかの態様において、シグナルペプチド、膜貫通ドメイン、および/またはエンドドメインを含有する1つまたは複数のバリアントCD86ポリペプチドをコードするDNAインサートを、提供される説明に従って生成することができる。このDNAインサートを、当業者に公知のとおり、適切な形質導入/トランスフェクションベクターにクローニングすることができる。また、当該核酸分子を含有する発現ベクターも提供される。
いくつかの態様において、発現ベクターは、タンパク質の発現に適する条件下で免疫調節タンパク質を適切な細胞において発現することができる。いくつかの局面において、核酸分子または発現ベクターは、適切な発現制御配列に機能的に連結された免疫調節タンパク質をコードするDNA分子を含む。DNA分子がベクターに挿入される前か後かのいずれかのこの機能的連結を達成する方法は周知である。発現制御配列は、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、および転写または翻訳の制御に関与する他のシグナルを含む。
いくつかの態様において、免疫調節タンパク質の発現は、プロモーターまたはエンハンサーによって制御されて、発現を制御または調節する。プロモーターは、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードする核酸分子の部分に機能的に連結されている。いくつかの態様において、プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(例えば、組織特異的な構成的に活性なプロモーターまたは他の構成的プロモーター)である。いくつかの態様において、プロモーターは、誘導物質(例えば、T細胞活性化シグナル)に応答性であり得る誘導性プロモーターである。
いくつかの態様において、構成的プロモーターは、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードする核酸分子に機能的に連結されている。例示的な構成的プロモーターは、サル空胞ウイルス40(SV40)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ユビキチンC(UbC)プロモーター、およびEF-1アルファ(EF1a)プロモーターを含む。いくつかの態様において、構成的プロモーターは、組織特異的である。例えば、いくつかの態様において、プロモーターは、免疫調節タンパク質の特定の組織、例えば免疫細胞、リンパ球、またはT細胞における構成的発現を可能にする。例えば、フェトタンパク質、DF3、チロシナーゼ、CEA、界面活性タンパク質、およびErbB2プロモーターを含む、例示的な組織特異的プロモーターが米国特許第5,998,205号に記載されている。
いくつかの態様において、誘導性プロモーターは、転写の適切な誘導因子の存在または非存在を制御することによって核酸の発現が制御可能であるように、バリアントポリペプチドまたは免疫調節タンパク質をコードする核酸分子に機能的に連結されている。例えば、プロモーターは、コードされているポリペプチドの調節された発現を可能にする、調節されたプロモーターおよび転写因子発現系、例えば公開されているテトラサイクリンで調節された系または他の調節可能な系(例えば、公開されている国際PCT出願WO 01/30843を参照のこと)であることができる。例示的な調節可能なプロモーター系は、例えばClontech(Palo Alto, CA)から入手可能なTet-On(およびTet-Off)系である。このプロモーター系は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン誘導体、例えばドキシサイクリンによって制御される、導入遺伝子の調節された発現を可能にする。他の調節可能なプロモーター系は公知である(例えば、リガンド結合ドメインおよび転写調節ドメイン、例えばホルモン受容体由来のものを含有する遺伝子スイッチを説明している「Regulation of Gene Expression Using Single-Chain, Monomeric, Ligand Dependent Polypeptide Switches」という表題の公開されている米国特許出願第2002-0168714号を参照のこと)。
いくつかの態様において、プロモーターは、T細胞活性化シグナル伝達に応答性のエレメントに応答性である。一例として、いくつかの態様において、改変されたT細胞は、免疫調節タンパク質および免疫調節タンパク質の制御発現に機能的に連結されたプロモーターをコードする発現ベクターを含む。改変されたT細胞を、例えば、改変されたT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)によるシグナル伝達によって活性化することができ、それによって、応答性プロモーターによる免疫調節タンパク質の発現および分泌を引き起こすことができる。
いくつかの態様において、誘導性プロモーターは、免疫調節タンパク質が活性化されたT細胞の核因子(NFAT)または活性化されたB細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NF-κB)に応答して発現するように、免疫調節タンパク質をコードする核酸分子に機能的に連結されている。例えば、いくつかの態様において、誘導性プロモーターは、NFATまたはNF-κBの結合部位を含む。例えば、いくつかの態様において、プロモーターは、NFATもしくはNF-κBプロモーター、またはその機能的バリアントである。したがって、いくつかの態様において、核酸は、また免疫調節タンパク質の毒性を低減または排除もしながら、免疫調節タンパク質の発現を制御することを可能にする。特に、本発明の核酸を含む改変された免疫細胞は、細胞(例えば、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞)が抗原によって特異的に刺激されるとき、および/または、細胞(例えば、細胞のカルシウムシグナル伝達経路)が、例えば、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)/イオノマイシンによって非特異的に刺激されるときにだけ、免疫調節タンパク質を発現および分泌する。したがって、免疫調節タンパク質の発現、およびいくつかの場合では分泌を、それが必要な時と場合に(例えば、感染症を引き起こす物質の、がんの存在下、または腫瘍部位で)だけ起こるように制御することができ、それで望ましくない免疫調節タンパク質相互作用を減少または回避することができる。
いくつかの態様において、本明細書に記載の免疫調節タンパク質をコードする核酸は、NFATプロモーター、NF-κBプロモーター、またはその機能的バリアントをコードする好適なヌクレオチド配列を含む。「NFATプロモーター」は、本明細書において使用される場合、最小プロモーターに連結された1つまたは複数のNFAT応答性エレメントを意味する。「NF-κBプロモーター」は、最小プロモーターに連結された1つまたは複数のNF-κB応答性エレメントを指す。いくつかの態様において、遺伝子の最小プロモーターは、最小ヒトIL-2プロモーターまたはCMVプロモーターである。NFAT応答性エレメントは、例えば、NFAT1、NFAT2、NFAT3、および/またはNFAT4応答性エレメントを含み得る。NFATプロモーター、NF-κBプロモーター、またはその機能的バリアントは、任意の数の結合モチーフ、例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、または最大で12個の結合モチーフを含み得る。
得られた組換え発現ベクター(当該ベクター上にDNA分子を有する)を使用して、適切な宿主を形質転換する。当技術分野において周知の方法を使用してこの形質転換を実施することができる。いくつかの態様において、本明細書において提供される核酸は、結果として得られる可溶性免疫調節ポリペプチドが培養培地、宿主細胞、または宿主細胞ペリプラズムから回収されるように、免疫調節ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結された分泌型またはシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。他の態様において、免疫調節ポリペプチドの膜発現が可能となるように適切な発現制御シグナルが選択される。さらに、市販のキットおよび委託製造会社を利用して、本明細書において提供される改変細胞または組換え宿主細胞を製造することもできる。
いくつかの態様において、DNA分子をその上に有する得られた発現ベクターを使用して、適切な細胞を形質転換、例えば形質導入する。導入を、当技術分野において周知の方法を使用して実施することができる。例示的な方法は、ウイルス、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルス、形質導入、トランスポゾン、およびエレクトロポレーションを介することを含む、受容体をコードする核酸の移送のためのものを含む。いくつかの態様において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、核酸は、レンチウイルスまたはレトロウイルス形質導入法によって細胞に移送される。
哺乳動物T細胞またはAPCを含む多数の公的に入手可能で周知の哺乳動物宿主細胞のいずれかを、ポリペプチドまたは改変細胞を調製する際に使用することができる。細胞の選択は、当技術分野によって認識される多数の要因に依存する。これらは、例えば、選択された発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされているペプチドの毒性、形質転換率、ペプチドの回収の容易さ、発現特性、生物安全性およびコストを含む。これらの要因のバランスは、全ての細胞が特定のDNA配列の発現に等しく効果的であるとは限らないという理解に立たなければならない。
いくつかの態様では、宿主細胞は、酵母細胞などの多様な真核細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)もしくはHEK293細胞などの哺乳動物細胞であることができる。いくつかの態様では、宿主細胞は懸濁細胞であり、ポリペプチドは、培養懸濁CHO細胞、例えばCHO-S細胞などの培養懸濁液中にて改変または産生される。いくつかの例では、細胞株は、DG44およびDUXB11などのDHFRが欠損している(DHFR-)CHO細胞株である。いくつかの態様では、細胞は、グルタミンシンターゼ(GS)が欠損している、例えば、CHO-S細胞、CHOK1 SV細胞、およびCHOZN((R))GS-/-細胞である。いくつかの態様では、懸濁CHO細胞などのCHO細胞は、CHO-S-2H2細胞、CHO-S-クローン14細胞、またはExpiCHO-S細胞であり得る。
いくつかの態様において、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)のような原核細胞であることもできる。形質転換された組換え宿主は、ポリペプチドを発現する条件下で培養され、次いで精製されて可溶性タンパク質を得る。組換え宿主細胞を、所望のポリペプチドを発現するような慣用の発酵条件下で培養することができる。そのような発酵条件は、当技術分野において周知である。最後に、本明細書において提供されるポリペプチドを、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および親和性クロマトグラフィーを含む当技術分野において周知の多数の方法のいずれかによって、組換え細胞培養物から回収および精製することができる。所望であれば、成熟タンパク質の立体配置の完成においてタンパク質のリフォールディング工程を使用することができる。最後に、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製工程に採用することができる。
いくつかの態様において、細胞は、免疫細胞、例えば改変細胞の調製と関連して上記したいずれかである。いくつかの態様において、そのような改変細胞は、初代細胞である。いくつかの態様において、改変細胞は、対象にとって自家である。いくつかの態様において、改変細胞は、対象にとって同種である。いくつかの態様において、改変細胞を、対象から、例えば白血球除去療法によって得て、これを免疫調節ポリペプチド、例えば、膜貫通型免疫調節ポリペプチドまたは分泌可能な免疫調節ポリペプチドの発現のためにエクスビボで形質転換する。
また、本明細書に記載の感染性物質に含有されるバリアント免疫調節ポリペプチドのいずれかをコードする核酸が提供される。いくつかの態様において、感染性物質は、核酸を対象の細胞に送達し、かつ/または、コードされているバリアントポリペプチドの細胞における発現を許容する。また、そのような感染性物質を生成する、産生する、または調節するために使用される核酸も提供される。例えば、いくつかの態様において、感染性物質の生成、対象の細胞への送達および/またはバリアント免疫調節ポリペプチドの対象の細胞における発現のための、バリアント免疫調節ポリペプチドをコードする核酸を含有するベクターおよび/またはプラスミドが提供される。
いくつかの態様において、提供される核酸は、バリアント免疫調節ポリペプチドをコードする核酸配列を含有する、組換えウイルスまたは細菌ベクターである。いくつかの態様において、組換えベクターを使用して、バリアント免疫調節ポリペプチドをコードする核酸配列を含有する感染性物質を生産し、かつ/または、標的細胞による発現のために対象の標的細胞に送達することができる。いくつかの態様において、組換えベクターは、発現ベクターである。いくつかの態様において、組換えベクターは、感染性物質の生成および/または産生ならびに標的細胞における発現に必要な適切な配列を含む。
いくつかの態様において、組換えベクターは、プラスミドまたはコスミドである。本明細書に記載のバリアント免疫調節ポリペプチドをコードする核酸配列を含有するプラスミドまたはコスミドは、当技術分野において周知の標準的な技術を使用して容易に構築される。感染性物質の生成のために、ベクターまたはゲノムをプラスミド形態で構築することができ、これを次いで、パッケージングもしくは産生細胞株または宿主細菌へトランスフェクトすることができる。組換えベクターを、当技術分野において公知の組換え技術のいずれかを使用して生成することができる。いくつかの態様において、ベクターは、原核生物の複製起源、ならびに/または、その発現が検出可能または選択可能マーカー、例えば原核生物系における伝播および/もしくは選択のための薬剤耐性を付与する遺伝子を含むことができる。
いくつかの態様において、組換えベクターは、ウイルスベクターである。例示的な組換えウイルスベクターは、レンチウイルスベクターゲノム、ポックスウイルスベクターゲノム、ワクシニアウイルスベクターゲノム、アデノウイルスベクターゲノム、アデノウイルス随伴ウイルスベクターゲノム、ヘルペスウイルスベクターゲノム、およびアルファウイルスベクターゲノムを含む。ウイルスベクターは、生ウイルスベクター、弱毒化ウイルスベクター、複製コンディショナルもしくは複製欠損ウイルスベクター、非病原性(欠陥)ウイルスベクター、複製能力のあるウイルスベクターであることができ、かつ/または、異種の遺伝子産物、例えば、本明細書において提供されるバリアント免疫調節ポリペプチドを発現するように改変される。ウイルスの生成のためのベクターはまた、転写または翻訳負荷を増加または減少する任意の方法を含め、ウイルスの弱毒化を変更するように改変されることができる。
使用することができる例示的なウイルスベクターは、改変されたワクシニアウイルスベクター(例えば、Guerra et al., J. Virol. 80:985-98 (2006); Tartaglia et al., AIDS Research and Human Retroviruses 8: 1445-47 (1992); Gheradi et al., J. Gen. Virol. 86:2925-36 (2005); Mayr et al., Infection 3:6-14 (1975); Hu et al., J. Virol. 75: 10300-308 (2001); 米国特許第5,698,530号、第6,998,252号、第5,443,964号、第7,247,615号および第7,368,116号を参照のこと);アデノウイルスベクターまたはアデノウイルス随伴ウイルスベクター(例えば、Molin et al., J. Virol. 72:8358-61 (1998); Narumi et al., Am J. Respir. Cell Mol. Biol. 19:936-41 (1998); Mercier et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:6188-93 (2004); 米国特許第6,143,290号; 第6,596,535第; 第6,855,317第; 第6,936,257第; 第7,125,717第; 第7,378,087第; 第7,550,296第を参照のこと);ネズミ白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、同種指向性レトロウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、および組み合わせに基づくものを含むレトロウイルスベクター(例えば、Buchscher et al., J. Virol. 66:2731-39 (1992); Johann et al., J. Virol. 66: 1635-40 (1992); Sommerfelt et al., Virology 176:58-59 (1990); Wilson et al., J. Virol. 63:2374-78 (1989); Miller et al., J. Virol. 65:2220-24 (1991); Miller et al., Mol. Cell Biol. 10:4239 (1990); Kolberg, NIH Res. 4:43 1992; Cornetta et al., Hum. Gene Ther. 2:215 (1991) を参照のこと);ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、HIV-2、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、馬伝染性貧血ウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、およびマエディ/ビスナウイルスに基づくものを含むレンチウイルスベクター(例えば、Pfeifer et al., Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 2: 177-211 (2001); Zufferey et al., J. Virol. 72: 9873, 1998; Miyoshi et al., J. Virol. 72:8150, 1998; Philpott and Thrasher, Human Gene Therapy 18:8, 2007; Engelman et al., J. Virol. 69: 2729, 1995; Nightingale et al., Mol. Therapy, 13: 1121, 2006; Brown et al., J. Virol. 73:9011 (1999); WO 2009/076524; WO 2012/141984; WO 2016/011083; McWilliams et al., J. Virol. 77: 11150, 2003; Powell et al., J. Virol. 70:5288, 1996を参照のこと)もしくはその任意のバリアント、および/または上記のウイルスのいずれかを生成するために使用できるベクターを含む。いくつかの態様において、組換えベクターは、例えばRNAウイルスの場合、パッケージング細胞株において、ウイルスゲノムの発現を調節することができる、調節配列、例えばプロモーターまたはエンハンサー配列を含むことができる(例えば、米国特許第5,385,839号および第5,168,062号を参照のこと)。
いくつかの態様において、組換えベクターは、発現ベクター、例えば、標的細胞、例えば対象の細胞、例えば腫瘍細胞、免疫細胞および/またはAPCに送達されたときにコードされている遺伝子産物の発現を許容する、発現ベクターである。いくつかの態様において、感染性物質に含有される組換え発現ベクターは、対象の標的細胞において、タンパク質の発現に適する条件下で、免疫調節タンパク質を発現することができる。
いくつかの局面において、核酸または発現ベクターは、適切な発現制御配列に機能的に連結された免疫調節タンパク質をコードする核酸配列を含む。免疫調節タンパク質をコードする核酸配列がベクターに挿入される前か後かのいずれかのこの機能的連結に作用する方法は周知である。発現制御配列は、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、および転写または翻訳の制御に関与する他のシグナルを含む。プロモーターは、免疫調節タンパク質をコードする核酸配列の部分に機能的に連結されることができる。いくつかの態様において、プロモーターは、標的細胞における構成的に活性なプロモーター(例えば、組織特異的な構成的に活性なプロモーターまたは他の構成的プロモーター)である。例えば、組換え発現ベクターはまた、リンパ系組織特異的な転写調節エレメント(TRE)、例えばBリンパ球、Tリンパ球、または樹状細胞特異的なTREを含み得る。リンパ系組織特異的TREは、当技術分野において公知である(例えば、Thompson et al., Mol. Cell. Biol. 12:1043-53 (1992); Todd et al., J. Exp. Med. 177:1663-74 (1993); Penix et al., J. Exp. Med. 178:1483-96 (1993) を参照のこと)。いくつかの態様において、プロモーターは、誘導物質(例えば、T細胞活性化シグナル)に応答性であり得る誘導性プロモーターである。いくつかの態様において、対象の標的細胞、例えば腫瘍細胞、免疫細胞および/またはAPCに送達される核酸は、上記の調節エレメントのいずれかに機能的に連結されることができる。
いくつかの態様において、ベクターは、細菌ベクター、例えば細菌プラスミドまたはコスミドである。いくつかの態様において、細菌ベクターは、プラスミドDNAの哺乳動物細胞への細菌媒介性移送(「バクトフェクション」とも称される)を介して、標的細胞、例えば腫瘍細胞、免疫細胞および/またはAPCに送達される。いくつかの態様において、送達される細菌ベクターはまた、標的細胞における発現のための適切な発現制御配列、例えばプロモーター配列および/もしくはエンハンサー配列、または上記の任意の調節もしくは制御配列のうちのいずれかを含有する。いくつかの態様において、細菌ベクターは、感染性物質、例えば、細菌におけるコードされているバリアントポリペプチドの発現および/または分泌のための適切な発現制御配列を含有する。
いくつかの態様において、本明細書において提供されるポリペプチドを合成法によって製造することもできる。固相合成は、低分子ペプチドを製造する最も費用対効果の良い方法であるので、個々のペプチドを製造する好ましい技術である。例えば、周知の固相合成技術は、保護基、リンカー、および固相支持体の使用、ならびに特定の保護および脱保護反応条件、リンカー切断条件、捕捉剤の使用、および固相ペプチド合成の他の局面を含む。次いで、ペプチドを本明細書において提供されるとおりのポリペプチドへと組み立てることができる。
IV. バリアントCD86ポリペプチドおよび免疫調節タンパク質の免疫調節活性を評価する方法
いくつかの態様では、本明細書において提供されるバリアントCD86ポリペプチド(その完全長および/もしくは特異的結合断片、またはコンジュゲート、スタック構築物または融合体または改変細胞)は、T細胞活性化を調節する免疫調節活性を示す。いくつかの態様では、CD86ポリペプチドは、T細胞アッセイにおいて、野生型または非改変CD86対照と比べて、IFN-γ、TNFα、またはIL-2の発現などのサイトカイン産生を調節する。いくつかの場合では、発現、細胞活性の調節は、対照CD86と比べて、T細胞によるまたはT細胞からのIFN-γ、TNFα、またはIL-2の発現などのサイトカイン産生を増加または減少させることができる。特異的結合およびIFN-γ、TNFα、またはIL-2の発現などのサイトカイン産物を判定するアッセイは、当技術分野において周知であり、培養上清中のサイトカインレベルを測定するMLR(混合リンパ球反応)アッセイ(Wang et al., Cancer Immunol Res. 2014 Sep: 2(9):846-56)、SEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB)T細胞刺激アッセイ(Wang et al., Cancer Immunol Res. 2014 Sep: 2(9):846-56)、および抗CD3 T細胞刺激アッセイ(Li and Kurlander, J Transl Med. 2010: 8: 104)を含む。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドは、初代T細胞アッセイにおいて、野生型CD86対照と比べてIFN-γ(インターフェロン-ガンマ)、TNFα、またはIL-2発現などのサイトカイン産生を、いくつかの態様では増加させることができ、または代替態様では減少させることができる。いくつかの態様では、そのような活性は、バリアントCD86ポリペプチドがアンタゴニスト活性の形態で提供されるかアゴニスト活性の形態で提供されるかに依存し得る。当業者は、IFN-γ、TNFαまたはIL-2発現の増減を判定するために使用される初代T細胞アッセイの異なるフォーマットが存在することを認識するだろう。
初代T細胞アッセイにおいてIFN-γ、TNFα、またはIL-2の発現を増減させるバリアントCD86の能力をアッセイする際に、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを使用することができる。いくつかの態様では、可溶性形態などのアンタゴニスト形態で提供されるバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質、例えば、バリアントCD86-Fcまたは分泌可能な免疫調節タンパク質は、CD28の活性を遮断し、それによって、アッセイにおけるIFN-γ、TNFα、またはIL-2の減少した産生が観察されるなど、アッセイにおいてMLR活性を低減する。いくつかの態様では、腫瘍局在化部分または提供されるような膜貫通型免疫調節タンパク質を発現する改変細胞を含有する局在化vIgDスタックまたはコンジュゲートなどのアゴニスト形態で提供されるバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質は、CD28の活性を刺激し、それによって、IFN-γ、TNFα、またはIL-2の増加した産生から明らかなように、MLR活性を増強し得る。
あるいは、初代T細胞アッセイにおいてIFN-γまたはIL-2発現の増減を調節するバリアントCD86の能力をアッセイする際に、共固定化アッセイを使用することができる。共固定化アッセイでは、TCRシグナル(いくつかの態様では、抗CD3抗体によって提供される)を、共固定化されたバリアントCD86と併用して、CD86非改変または野生型対照と比べたIFN-γ、TNFαまたはIL-2発現を増減させる能力を判定する。いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質、例えば、共固定化されたバリアントCD86(例えば、CD86-Fc)は、共固定化アッセイにおいてIFN-γ産生を増加させる。
いくつかの態様では、IFN-γ、TNFαまたはIL-2発現の増減を調節するバリアントCD86の能力をアッセイする際に、T細胞レポーターアッセイを使用することができる。いくつかの態様では、T細胞は、Jurkat T細胞株であるか、またはそれに由来する。レポーターアッセイでは、バリアントIgSFドメインポリペプチドの同族結合パートナーである抑制性受容体、例えばCTLA-4を過剰発現させるために、レポーター細胞株(例えば、Jurkatレポーター細胞)も生成することができる。いくつかの態様では、レポーターT細胞はまた、レポーターに機能的に連結されたT細胞活性化に応答性の誘導性プロモーターを含有するレポーター構築物を含有する。いくつかの態様では、レポーターは、蛍光または発光レポーターである。いくつかの態様では、レポーターは、ルシフェラーゼである。いくつかの態様では、プロモーターは、CD3シグナル伝達に応答性である。いくつかの態様では、プロモーターは、NFATプロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは、共刺激シグナル伝達、例えば、CD28共刺激シグナル伝達に応答性である。いくつかの態様では、プロモーターは、IL-2プロモーターである。
レポーターアッセイの局面では、レポーター細胞株は、野生型リガンド、例えば、CD86を発現する抗原提示細胞(APC)との共インキュベーションなどによって刺激される。いくつかの態様では、APCは、人工のAPCである。人工のAPCは、当業者に周知である。いくつかの態様では、人工のAPCは、K562、CHOまたは293細胞などの1つまたは複数の哺乳動物細胞株に由来する。いくつかの態様では、人工のAPCは、抗CD3抗体およびいくつかの場合では共刺激リガンドを発現するように改変される。いくつかの態様では、人工のAPCは、バリアントIgSFドメインポリペプチドの同族結合パートナーを過剰発現するように生成される。例えば、バリアントCD86の場合、レポーター細胞株(例えば、Jurkatレポーター細胞)は、リガンドCD28を過剰発現するように生成される。いくつかの態様では、Jurkatレポーター細胞は、バリアントIgSFドメイン分子または免疫調節タンパク質、例えば、バリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質の存在下で過剰発現する人工のAPCと共インキュベートされる。いくつかの態様では、レポーター発現は、細胞の発光または蛍光を判定するなどしてモニタリングされる。同族結合パートナーのアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性(遮断活性)をモニタリングすることができる。
適切な対照の使用は当業者に公知であるが、前述の態様では、対照は、典型的には、非改変CD86、例えばバリアントCD86が由来したまたは発生したのと同じ哺乳動物種由来の野生型または天然型CD86アイソフォームの使用を伴う。いくつかの態様では、野生型または天然型CD86は、バリアントと同じ形態または対応する形態のものである。例えば、バリアントCD86が、Fcタンパク質に融合されたバリアントECDを含有する可溶性形態である場合、対照は、Fcタンパク質に融合されたCD86の野生型または天然型ECDを含有する可溶性形態である。
いくつかの態様では、バリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質は、IFN-γ、TNFα、またはIL-2の発現(すなわち、タンパク質発現)を、野生型または非改変CD86対照と比べて少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上増加させる。他の態様では、バリアントCD86または免疫調節タンパク質は、IFN-γ、TNFα、またはIL-2の発現(すなわち、タンパク質発現)を、野生型または非改変CD86対照と比べて少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少させる。いくつかの態様では、野生型CD86対照は、野生型ネズミCD86配列のものから配列が変更された、バリアントCD86に典型的に使用されるようなネズミCD86である。いくつかの態様では、野生型CD86対照は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:122またはSEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含むCD86配列などの対応する野生型ヒトCD86配列のものから配列が変更された、バリアントCD86に典型的に使用されるようなヒトCD86である。
V. 薬学的製剤
本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチド、免疫調節タンパク質、コンジュゲート、改変細胞または感染性物質のいずれかを含有する組成物が本明細書において提供される。薬学的組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含むことができる。例えば、薬学的組成物は、例えば、組成物の、pH、オスモル濃度、粘性、透明性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着、または浸透を調節、維持、または保存するための1つまたは複数の賦形剤を含有することができる。いくつかの局面において、当業者は、細胞を含有する薬学的組成物がタンパク質を含有する薬学的組成物と異なってよいことを理解する。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、固体、例えば粉末、カプセル、または錠剤である。例えば、薬学的組成物の成分を凍結乾燥することができる。いくつかの態様において、固体薬学的組成物は、投与の前に液体中で再構成されるかまたは溶解される。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、液体、例えば、水溶液(例えば、生理食塩水またはリンゲル液)に溶解されたバリアントCD86ポリペプチドである。いくつかの態様において、薬学的組成物のpHは、約4.0~約8.5(例えば、約4.0~約5.0、約4.5~約5.5、約5.0~約6.0、約5.5~約6.5、約6.0~約7.0、約6.5~約7.5、約7.0~約8.0、または約7.5~約8.5)である。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤、例えば充填剤、結合剤、コーティング剤、保存料、滑剤、着香料、甘味料、着色剤、溶媒、緩衝剤、キレート剤、または安定剤を含む。薬学的に許容し得る充填剤の例は、セルロース、第二リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、スクロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、マルトール、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、またはジャガイモデンプンを含む。薬学的に許容し得る結合剤の例は、ポリビニルピロリドン、デンプン、ラクトース、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ゼラチン、スクロース、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、またはセルロースを含む。薬学的に許容し得るコーティング剤の例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、シェラック、トウモロコシタンパク質ゼイン、またはゼラチンを含む。薬学的に許容し得る崩壊剤の例は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、またはデンプングリコール酸ナトリウムを含む。薬学的に許容し得る滑剤の例は、ポリエチレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸を含む。薬学的に許容し得る保存料の例は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、またはソルビン酸を含む。薬学的に許容し得る甘味料の例は、スクロース、サッカリン、アスパルテーム、またはソルビトールを含む。薬学的に許容し得る緩衝剤の例は、炭酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、または酒石酸塩を含む。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、生成物の制御されたまたは持続された放出のための物質、例えば注射用マイクロスフェア、生体内分解性粒子、高分子化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸)、ビーズ、またはリポソームをさらに含む。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、滅菌されている。滅菌は、滅菌濾過膜に通す濾過または照射によって達成してよい。組成物が凍結乾燥される場合、この方法を使用した滅菌は、凍結乾燥および再構成の前に実行してもその後に実行してもよい。非経口投与用組成物は、凍結乾燥形態で貯蔵しても溶液で貯蔵してもよい。加えて、非経口組成物は、概して、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静注液バッグまたはバイアル中に入れられる。
いくつかの態様において、そのような膜貫通型免疫調節タンパク質を発現する改変細胞を含む、膜貫通型免疫調節タンパク質を含有する薬学的組成物が提供される。いくつかの態様において、薬学的組成物および製剤は、1つまたは複数の任意の薬学的に許容し得る担体または賦形剤を含む。そのような組成物は、緩衝液、例えば中性の緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など;糖質、例えばグルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン;酸化防止剤;キレート剤、例えばEDTAまたはグルタチオン;補助剤(例えば、水酸化アルミニウム);および保存料を含み得る。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与用に製剤化される。
そのような製剤は、例えば、静脈内注入に好適な形態であり得る。薬学的に許容し得る担体は、1つの組織、臓器、または身体の一部から別の組織、臓器、または身体の一部への関心対象の細胞の運搬または輸送に関与する、薬学的に許容し得る材料、組成物、またはビヒクルであり得る。例えば、担体は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくは封入材料、またはそれらのいくつかの組み合わせであり得る。担体の各成分は、製剤のその他の有効成分と適合可能でなければならないという点で「薬学的に許容し得る」でなければならない。それはまた、その治療的恩恵を過度に上回る毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または任意の他の合併症のリスクを有するべきではないという意味で、直面し得るあらゆる組織、臓器、または身体の一部との接触に好適でなければならない。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、対象に投与される。概して、薬学的組成物の投与量および投与経路は、対象のサイズおよび状態に応じて、標準的な薬務に従って決定される。例えば、最初に、細胞培養アッセイ、またはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、もしくはサルのような動物モデルのいずれかで治療有効用量を推定することができる。また、適切な濃度範囲および投与経路を決定するために動物モデルを使用してもよい。次いで、そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。正確な投与量は、対象が必要とする処置に関連する要因に照らして決定されるだろう。投与量および投与は、活性化合物の十分なレベルを提供するようにまたは所望の効果を維持するように調整される。考慮され得る要因は、疾患状態の重症度、対象の総体的な健康、対象の年齢、体重、および性別、投与の時間および頻度、薬物併用、反応感度、ならびに治療への応答を含む。
長期作用型薬学的組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス率に応じて、3~4日毎、毎週、または隔週で投与してよい。投薬頻度は、使用される製剤中の分子の薬物動態パラメーターに依存するだろう。典型的には、組成物は、所望の効果を達成する投与量に達するまで投与される。それゆえ、組成物を、単回用量としてもしくは複数回用量として(同じまたは異なる濃度/投与量で)経時的に、または持続注入として投与してよい。適切な投与量のさらなる改良がルーチンに行われる。適切な用量-応答データの使用を通して適切な投与量を突き止めてよい。T細胞活性化もしくは増殖、サイトカイン合成もしくは産生(例えば、TNF-α、IFN-γ、IL-2の産生)、種々の活性化マーカー(例えば、CD25、IL-2受容体)の誘導、炎症、関節の腫脹もしくは圧痛、C-反応性タンパク質の血清中レベル、抗コラーゲン抗体産生、および/またはT細胞依存性抗体応答を含む、治療効果についての多数のバイオマーカーまたは生理学的マーカーをモニタリングすることができる。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、経口、経皮、吸入による、静脈内、動脈内、筋肉内、創傷部位への直接適用、手術部位への適用、腹腔内、坐剤による、皮下、皮内、経皮、噴霧による、胸膜内、脳室内、関節腔内、眼内、または髄腔内を含む、任意の経路を通して対象に投与される。
いくつかの態様において、薬学的組成物の投与は、単回投与または反復投与である。いくつかの態様において、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回以上、対象に投与される。いくつかの態様において、1週間に約1回用量以上(例えば、約2回用量以上、約3回用量以上、約4回用量以上、約5回用量以上、約6回用量以上、または約7回用量以上)が与えられる。いくつかの態様において、複数回用量が、数日、数週間、数ヶ月間、または数年間にわたって与えられる。いくつかの態様において、一連の処置は、約1回用量以上(例えば、約2回用量以上、約3回用量以上、約4回用量以上、約5回用量以上、約7回用量以上、約10回用量以上、約15回用量以上、約25回用量以上、約40回用量以上、約50回用量以上、または約100回用量以上)である。
いくつかの態様において、投与される薬学的組成物の用量は、対象の体重1kg当たりタンパク質約1μg以上(例えば、対象の体重1kg当たりタンパク質約2μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約5μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約10μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約25μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約50μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約100μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約250μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約500μg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約1mg以上、対象の体重1kg当たりタンパク質約2mg以上、または対象の体重1kg当たりタンパク質約5mg以上)である。
いくつかの態様において、細胞組成物の治療量が投与される。典型的には、投与されるべき本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の範囲、および状態の個々の違いを考慮して医師が決定することができる。概して、本明細書に記載の改変細胞、例えばT細胞を含む薬学的組成物を、104~109個の細胞/kg(体重)、例えば105~106個の細胞/kg(体重)の投与量(これらの範囲内の全ての整数値を含む)で投与してよいと規定することができる。また、改変された細胞組成物、例えばT細胞組成物をこれらの投与量で複数回投与してよい。該細胞を、免疫療法において通常知られている注入技術を使用することによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al, New Eng. J. of Med. 319: 1676, 1988 を参照のこと)。特定の患者に対する最適な投与量および処置レジメンは、医学分野の当業者が、患者の疾患の兆候をモニタリングし、それに応じて処置を調整することによって、容易に決定することができる。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、免疫調節バリアントポリペプチドをコードする核酸配列を含有する感染性物質を含有する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、処置に好適である対象への投与に好適な感染性物質の用量を含有する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、ウイルスである感染性物質を、1×105~1×1012もしくは約1×105~約1×1012プラーク形成単位(pfu)、1×106~1×1010pfuもしくは約1×106~約1×1010pfu、または1×107~1×1010pfuもしくは約1×107~約1×1010pfuを各々包含する、例えば、少なくとも、または少なくとも約、または約、1×106、1×107、1×108、1×109、2×109、3×109、4×109、5×109pfu、または1×1010pfuの単一または複数の投与量で含有する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、105~1010もしくは約105~約1010pfu/mL、例えば、5×106~5×109もしくは約5×106~約5×109、または1×107~1×109もしくは約1×107~約1×109pfu/mL、例えば、少なくとも、または少なくとも約、または約、106pfu/mL、107pfu/mL、108pfu/mLまたは109pfu/mLのウイルス濃度を含有することができる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、細菌である感染性物質を、1×103~1×109もしくは約1×103~約1×109コロニー形成単位(cfu)、1×104~1×109cfuもしくは約1×104~約1×109cfu、または1×105~1×107cfuもしくは約1×105~約1×107cfuを各々包含する、例えば、少なくとも、または少なくとも約、または約、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、または1×109cfuの単一または複数の投与量で含有する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、103~108もしくは約103~約108cfu/mL、例えば、5×105~5×107もしくは約5×105~約5×107、または1×106~1×107もしくは約1×106~約1×107cfu/mL、例えば、少なくとも、または少なくとも約、または約、105cfu/mL、106cfu/mL、107cfu/mL、または108cfu/mLの細菌濃度を含有することができる。
望ましくない免疫応答を媒介するもしくは媒介することができる免疫細胞を排除、隔離、もしくは不活性化すること;防御免疫応答を媒介するもしくは媒介することができる免疫細胞を誘導、生成、もしくは刺激すること;免疫細胞の物理的もしくは機能的特性を変化させること;またはこれらの効果の組み合わせによって、本発明の治療用組成物の投与が免疫活性を十分に調節するかどうかを決定するための多種多様な手段が公知である。免疫活性の調節の測定例は、限定されないが、免疫細胞集団の有無の検査(フローサイトメトリー、免疫組織化学、組織学、電子顕微鏡法、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する);シグナルに応答して増殖もしくは分化する能力または増殖もしくは分化への抵抗性を含む、免疫細胞の機能的能力の測定(例えば、T細胞増殖アッセイ、および抗CD3抗体、抗T細胞受容体抗体、抗CD28抗体、カルシウムイオノフォア、PMA(ホルボール12-ミリスタート13-アセタート)、ペプチドまたはタンパク質抗原を負荷した抗原提示細胞で刺激した後の、3H-チミジン取込に基づいたpepscan分析;B細胞増殖アッセイを使用する);他の細胞を殺傷または溶解する能力の測定(例えば、細胞傷害性T細胞アッセイ);サイトカイン、ケモカイン、細胞表面分子、抗体および細胞の他の産物の測定(例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ、ウェスタンブロット分析、タンパク質マイクロアレイ分析、免疫沈降分析による);免疫細胞または免疫細胞内のシグナル伝達経路の活性化の生化学マーカーの測定(例えば、チロシン、セリンまたはトレオニンリン酸化、ポリペプチド切断、およびタンパク質複合体の形成または解離のウェスタンブロットおよび免疫沈降分析;タンパク質アレイ分析;DNAアレイまたはサブトラクティブハイブリダイザーションを使用するDNA転写プロファイリング);アポトーシス、壊死または他の機序による細胞死の測定(例えば、アネキシンV染色、TUNELアッセイ、DNAラダリングを測定するゲル電気泳動、組織学;蛍光発生カスパーゼアッセイ、カスパーゼ基質のウェスタンブロット分析);免疫細胞によって産生される遺伝子、タンパク質、および他の分子の測定(例えば、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、2次元ゲル電気泳動、ウェスタンブロット分析、酵素結合免疫吸着アッセイ、フローサイトメトリー);ならびに自己タンパク質または自己ポリペプチドが関与する自己免疫疾患、神経変性性疾患、および他の疾患の臨床症状または臨床転帰(例えば改善)の、例えば、多発性硬化症の場合には再発率または疾患重症度を測定することによる(当業者に公知の臨床スコアを使用する)、I型糖尿病の場合には血糖を、または関節リウマチの場合には関節の炎症を測定することよる、測定(臨床スコア、追加の治療法を使用する要件、機能的状態、画像研究)を含む。
VI. 製造物品およびキット
また、本明細書に記載の薬学的組成物を好適な包装に含む製造品が本明細書において提供される。本明細書に記載の組成物(例えば、眼科用組成物)用の好適な包装は、当技術分野において公知であり、例えば、バイアル(例えば、密封バイアル)、広口瓶(vessels)、アンプル、ボトル(bottles)、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密封マイラー(Mylar)またはプラスチック袋)などを含む。これらの製造品は、さらに滅菌および/または密封されてよい。
さらに、本明細書に記載の薬学的組成物(または製造品)を含むキットが提供され、該キットは、本明細書に記載の用途のような組成物を使用する方法に関する説明書をさらに含んでよい。本明細書に記載のキットはまた、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および本明細書に記載の任意の方法を実施するための説明書を含む添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料を含んでもよい。
VII. 治療的適用
本明細書において、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチド、免疫調節タンパク質、改変細胞、または感染性物質を含有する提供される薬学的組成物を使用して、ヒト患者などの対象における疾患または病態の治療に関連することを含め免疫応答を調節するための方法が提供される。本明細書に記載の薬学的組成物(本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチド、免疫調節タンパク質、コンジュゲートおよび改変細胞を含む薬学的組成物を含む)を、疾患の治療などの多様な治療的適用において使用することができる。例えば、いくつかの態様では、薬学的組成物は、哺乳動物における炎症性もしくは自己免疫性障害、がん、臓器移植、ウイルス感染、および/または細菌感染を治療するために使用される。薬学的組成物は、疾患を治療するために免疫応答を調節(例えば、増強または低減)することができる。いくつかの態様では、本方法は、対象における免疫応答を増強するフォーマットのバリアントCD86ポリペプチドを用いて行われる。いくつかのそのような局面では、免疫応答の増強は、腫瘍またはがんなどの対象における疾患または病態を治療する。いくつかの態様では、本方法は、対象における免疫応答を低減するフォーマットのバリアントCD86ポリペプチドを用いて行われる。いくつかのそのような局面では、免疫応答の低減は、炎症性疾患または病態、例えば自己免疫性疾患などの対象における疾患または病態を治療する。
いくつかの態様では、提供される方法は、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチド、免疫調節タンパク質、コンジュゲート、改変細胞、および感染性物質の治療的投与に適用可能である。提供される開示に照らして、望まれる免疫応答の調節の種類(例えば、増強または低減)に応じた適応症のためのフォーマットを選択することは、当業者の技能の範囲内である。
いくつかの態様では、免疫応答を刺激または増強する本明細書において提供される薬学的組成物が投与され、これは、例えば、がん、ウイルス感染または細菌感染の治療において有用であり得る。いくつかの態様では、薬学的組成物は、その同族結合パートナーCD28のアゴニスト活性を示すおよび/またはCD28を介した共刺激シグナル伝達を刺激するか開始するフォーマットのバリアントCD86ポリペプチドを含有する。そのような治療的適用に関連して使用するためのCD86ポリペプチドの例示的なフォーマットは、例えば、バリアントCD86ポリペプチドおよび腫瘍抗原に結合するIgSFドメインもしくはそのバリアント(例えば、Nkp30または親和性改変されたバリアント)(「腫瘍局在化IgSFドメイン」とも呼ばれる)の免疫調節タンパク質もしくは「スタック」、腫瘍ターゲティング部分(腫瘍局在化部分とも呼ばれる)に連結されたバリアントCD86ポリペプチドを含有するコンジュゲート、膜貫通型免疫調節タンパク質を発現する改変細胞、または膜貫通型免疫調節タンパク質をコードする核酸分子を含む感染性物質であって、例えば、膜貫通型免疫調節タンパク質の感染細胞(例えば、腫瘍細胞またはAPC、例えば、樹状細胞)における発現のためのものを含む。
免疫応答を調節するための提供される方法を使用して、腫瘍またはがんなどの疾患または病態を治療することができる。いくつかの態様では、薬学的組成物を使用して、哺乳動物のがん細胞(ヒトがん細胞など)の成長を阻害することができる。がんを治療する方法は、本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかの有効量を、がんを有する対象に投与する工程を含むことができる。薬学的組成物の有効量を投与して、がんの進行を阻害、停止または反転させることができる。ヒトがん細胞をインビボまたはエクスビボで治療することができる。ヒト患者のエクスビボ治療では、がん細胞を含有する組織または体液を体外で処置し、次いで、組織または体液を患者に再導入して戻す。いくつかの態様では、がんは、治療用組成物の患者への投与によって、ヒト患者においてインビボ治療される。したがって、本発明は、対照の処置と比べて、腫瘍の進行を阻害、停止または反転させるか、それ以外に無増悪生存期間(すなわち、がんが悪化せずに患者が生存している処置中および処置後の時間の長さ)または全生存期間(「生存率」とも呼ばれる;すなわち、がんと診断された後または処置された後にある一定期間生きている、研究群または処置群中の人の割合)の統計的に有意な増加をもたらす、エクスビボおよびインビボ法を提供する。
本明細書に記載の薬学的組成物および治療法によって治療できるがんは、黒色腫、膀胱がん、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、骨髄腫)、肝臓がん、脳がん、腎臓がん、乳がん、膵臓がん(腺がん)、大腸がん、肺がん(小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん)、脾臓がん、胸腺もしくは血液細胞のがん(すなわち、白血病)、前立腺がん、精巣がん、卵巣がん、子宮がん、胃がん、筋骨格がん、頭頚部がん、消化器がん、生殖細胞がん、または内分泌および神経内分泌がんを含むが、それらに限定されない。いくつかの態様では、がんは、ユーイング肉腫である。いくつかの態様では、がんは、黒色腫、肺がん、膀胱がん、および血液悪性腫瘍から選択される。いくつかの態様では、がんは、リンパ腫、リンパ性白血病、骨髄性白血病、子宮頸がん、神経芽細胞腫、または多発性骨髄腫である。いくつかの態様では、がんは、乳がんである。
いくつかの態様では、薬学的組成物は、単剤療法として(すなわち、単一の薬剤として)、または組み合わせ療法として(すなわち、1つまたは複数の追加の抗がん剤、例えば化学療法剤、がんワクチン、または免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて)投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物をまた、放射線療法と共に投与することもできる。本開示のいくつかの局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、トレメリムマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブなどである。
いくつかの態様では、薬学的組成物は、免疫応答を抑制し、これは、炎症性もしくは自己免疫性障害または臓器移植の治療において有用であり得る。いくつかの態様では、薬学的組成物は、その同族結合パートナーCD28のアンタゴニスト活性を示すおよび/またはCD28を介した共刺激シグナル伝達を遮断するか阻害するフォーマットのバリアントCD86ポリペプチドを含有する。そのような治療的適用に関連して使用するためのCD86ポリペプチドの例示的なフォーマットは、例えば、可溶性であるバリアントCD86ポリペプチド(例えば、バリアントCD86-Fc融合タンパク質)、Fc融合体であるその可溶性形態を含むバリアントCD86ポリペプチドおよび別のIgSFドメインの免疫調節タンパク質もしくは「スタック」、分泌可能な免疫調節タンパク質を発現する改変細胞、または分泌可能な免疫調節タンパク質をコードする核酸分子を含む感染性物質であって、例えば、分泌可能な免疫調節タンパク質の感染細胞(例えば、腫瘍細胞またはAPC、例えば、樹状細胞)における発現および分泌のためのものを含む。
いくつかの態様では、薬学的組成物は、その同族結合パートナーCD28の活性を刺激(アゴナイズ)し、かつ/またはCD28を介した共刺激シグナル伝達を促進するフォーマットのバリアントCD86ポリペプチドを含有する。そのような治療的適用に関連して使用するためのCD86ポリペプチドの例示的なフォーマットは、例えば、膜貫通型免疫調節ポリペプチドであるバリアントCD86ポリペプチド、膜貫通型免疫調節ポリペプチドを発現する改変細胞、または膜貫通型免疫調節ポリペプチドをコードする核酸分子を含む感染性物質であって、例えば、感染細胞(例えば、T細胞、APC、例えば、樹状細胞)上で膜貫通型免疫調節タンパク質を発現させるためのものを含む。
いくつかの態様において、炎症性または自己免疫性障害は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、血管炎、自己免疫性皮膚疾患、移植手術、リウマチ性疾患、炎症性消化器疾患、炎症性眼疾患、炎症性神経疾患、炎症性肺疾患、炎症性内分泌疾患、または自己免疫性血液疾患である。
いくつかの態様において、本明細書に記載の薬学的組成物によって治療できる炎症性および自己免疫性障害は、アジソン病、アレルギー、円形脱毛症、アルツハイマー病、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群(ヒューズ症候群)、喘息、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性睾丸炎、無精子症、ベーチェット病、ベルガー病、水疱性類天疱瘡、心筋症、心血管疾患、セリアックスプルー/シリアック病、慢性疲労免疫異常症侯群(CFIDS)、慢性特発性多発性神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害(CIDP)、慢性再発性多発ニューロパチー(ギラン・バレー症候群)、チャーグ・ストラウス症候群(CSS)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症(CAD)、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、CREST症候群、クローン病、皮膚炎、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、円板状ループス、湿疹、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、眼球突出、線維筋痛症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、免疫増殖性疾患もしくは障害、炎症性腸疾患(IBD)、間質性肺疾患、若年性関節炎、若年性特発性関節炎(JIA)、川崎病、ランバート・イートン筋無力症症候群、扁平苔癬、ループス腎炎、リンパ球性下垂体炎、メニエール病、ミラーフィッシャー症候群/急性散在性脳脊髄神経根障害(acute disseminated encephalomyeloradiculopathy)(EMR)、混合結合組織病、多発性硬化症(MS)、筋肉リウマチ、筋痛性脳脊髄炎(ME)、重症筋無力症、眼炎症、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血(pernicious anaemia)、結節性多発動脈炎、多発軟骨炎、多腺性症候群(polyglandular syndromes)(ホイッタカー症候群)、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性無γグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変/自己免疫性胆管症、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群/反応性関節、再狭窄、リウマチ熱、リウマチ性疾患、サルコイドーシス、シュミット症候群、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、甲状腺炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、間質性腸疾患またはウェゲナー肉芽腫症である。いくつかの態様において、炎症性または自己免疫性障害は、間質性腸疾患、移植、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、喘息、関節リウマチ、および乾癬から選択される。
いくつかの態様において、薬学的組成物は、自己免疫病態を調節するために投与される。例えば、免疫応答を抑制することは、レシピエントによるドナーからの、組織、細胞、または臓器移植の拒絶反応を阻害するための方法において有益であることができる。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の薬学的組成物は、移植片関連または移植関連疾患または障害、例えば移植片対宿主疾患(GVHD)を制限または防止するために使用される。いくつかの態様において、薬学的組成物は、移植されたまたはグラフト化された骨髄、臓器、皮膚、筋肉、ニューロン、膵島、または実質細胞の自己免疫拒絶反応を抑制するために使用される。
本明細書に記載の改変細胞を含む薬学的組成物および方法を、養子細胞移入適用において使用することができる。いくつかの態様において、改変細胞を含む細胞組成物を、関連する方法において使用して、例えば、免疫活性を、例えば、哺乳動物がんの治療、または他の態様において自己免疫性障害の治療への免疫療法アプローチにおいて調節することができる。採用される方法は、概して、本発明のTIPと哺乳動物細胞とを、親和性改変IgSFドメインの特異的結合および哺乳動物細胞の免疫活性の調節に許容的な条件下で、接触させる工程を含む。いくつかの態様において、免疫細胞(例えば、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、T細胞(CD8+またはCD4+T細胞を含む)、またはAPC)は、本明細書に記載の膜タンパク質としておよび/または可溶性バリアントCD86ポリペプチド、免疫調節タンパク質、もしくはコンジュゲートとして発現するように改変される。次いで、改変細胞を、免疫活性の調節が望まれるAPC、第二のリンパ球または腫瘍細胞のような哺乳動物細胞と、哺乳動物細胞において免疫活性を調節することができるような哺乳動物細胞上のカウンター構造体への親和性改変IgSFドメインの特異的結合を許容する条件下で接触させることができる。細胞をインビボまたはエクスビボで接触させることができる。
いくつかの態様において、改変細胞は自家細胞である。他の態様において、細胞は同種細胞である。いくつかの態様において、細胞は、それが単離された哺乳動物に再注入される自家改変細胞である。いくつかの態様において、細胞は、哺乳動物に注入される同種改変細胞である。いくつかの態様において、細胞を、患者の血液または腫瘍から採取し、ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のバリアントCD86ポリペプチド、免疫調節タンパク質、またはコンジュゲート)を発現するよう改変し、インビトロ培養系で(例えば、細胞を刺激することによって)拡大培養し、そして、患者に再注入して腫瘍破壊を媒介させる。いくつかの態様において、該方法は、TIPを発現する細胞(例えば、T細胞)を患者に注入して戻す養子細胞移入によって実施される。いくつかの態様において、本発明の治療用組成物および方法は、リンパ腫、リンパ性白血病、骨髄性白血病、子宮頸がん、神経芽細胞腫、または多発性骨髄腫のようながんの哺乳動物患者の治療において使用される。
いくつかの態様では、提供される方法は、治療的適用を目的とした疾患または病態を有するか有する疑いがある対象を処置するためのものである。いくつかの場合では、療法への適合性を判定する、または提供されるバリアントCD86ポリペプチド、免疫調節タンパク質、コンジュゲート、改変細胞、もしくは感染性物質のいずれかによる処置を含む提供される態様のいずれかに従う処置の対象を特定もしくは選択するなどのために、処置の対象を、1つまたは複数の特徴またはパラメーターに基づいて処置の前に選択することができる。
VIII. 例示的態様
提供される態様としては、以下の態様が挙げられる。
1. 細胞外ドメインまたはIgVドメインまたはその特異的結合断片を含む、バリアントCD86ポリペプチドであって、SEQ ID NO:29に示される位置を基準として13、18、25、28、33、38、39、40、43、45、52、53、60、68、71、77、79、80、82、86、88、89、90、92、93、97、102、104、113、114、123、128、129、132、133、137、141、143、144、148、153、154、158、170、172、175、178、180、181、183、185、192、193、196、197、198、205、206、207、212、215、216、222、223、または224の中から選択される位置に対応する、非改変CD86ポリペプチドまたはその特異的結合断片における1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、バリアントCD86ポリペプチド。
2. 前記アミノ酸改変が、アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む、態様1のバリアントCD86ポリペプチド。
3. 前記非改変CD86ポリペプチドが、哺乳動物のCD86ポリペプチドまたはその特異的結合断片である、態様1または態様2のバリアントCD86ポリペプチド。
4. 前記非改変CD86ポリペプチドが、ヒトCD86ポリペプチドまたはその特異的結合断片である、態様3のバリアントCD86ポリペプチド。
5. 前記バリアントCD86ポリペプチドがヒトCD86の細胞外ドメインを含み、前記1つまたは複数のアミノ酸改変が、非改変CD86ポリペプチドの細胞外ドメインの1つまたは複数の残基にある、態様1~4のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
6. 前記非改変CD86ポリペプチドが、
(i)SEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、(ii)SEQ ID NO:29に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または(iii)その一部分であって、IgVドメインもしくはIgVドメインの特異的結合断片を含む、部分
を含む、態様1~5のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
7. 前記非改変CD86が、SEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列を含む、態様1~6のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
8. 前記部分が、IgVドメインまたはIgVドメインの特異的結合断片の33~131番目または24~134番目のアミノ酸残基を含む、態様6のバリアントCD86ポリペプチド。
9. 前記非改変CD86ポリペプチドが、
(i)SEQ ID NO:123に示されるアミノ酸配列、(ii)SEQ ID NO:123に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または(iii)その一部分であって、IgVドメインもしくはIgVドメインの特異的結合断片を含む、部分
を含む、態様1~6および態様8のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
10. 前記非改変CD86が、SEQ ID NO:123に示されるアミノ酸配列を含む、態様1~6のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
11. 前記非改変CD86ポリペプチドが、
(i)SEQ ID NO:122に示されるアミノ酸配列、(ii)SEQ ID NO:122に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または(iii)その特異的結合断片
を含む、態様1~6、8および9のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
12. 前記非改変CD86が、SEQ ID NO:122に示されるアミノ酸配列を含む、態様1~6、8、9および11のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
13. 前記特異的結合断片が、少なくとも50、60、70、80、90、95アミノ酸、もしくはそれより多いアミノ酸の長さを有するか;または
前記特異的結合断片が、SEQ ID NO:2の33~131番目の残基として示されるIgVドメインの長さの少なくとも80%の長さを含む、
態様1~12のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
14. 最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸改変、任意でアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含む、態様1~13のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
15. 前記1つまたは複数のアミノ酸改変が、
から選択される1つもしくは複数のアミノ酸置換、またはその保存的アミノ酸置換である、態様1~14のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
16.
の中から選択される1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、態様1~15のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
17. 前記1つまたは複数のアミノ酸改変が、25位および/または90位にある、態様1~14のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
18. 前記1つまたは複数のアミノ酸改変が、Q25L、H90Y、またはH90Lを含む、態様1~14および17のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
19. 前記1つまたは複数のアミノ酸改変が、25位および90位に改変を含む、態様1~14および17のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
20. 前記1つまたは複数のアミノ酸改変が、Q25L/H90YまたはQ25L/H90Lから選択される、態様19のバリアントCD86ポリペプチド。
21.
の中から選択される1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、態様1~20のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
22. 1つまたは複数のアミノ酸改変A13V/Q25L/H90Lを含む、態様1~21のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
23. 1つまたは複数のアミノ酸改変A13V/Q25L/H90L/S181P/L197M/S206Tを含む、態様1~22のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
24. 1つまたは複数のアミノ酸改変Q25L/H90L/K93T/M97Lを含む、態様1~21のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
25. 1つまたは複数のアミノ酸改変Q25L/H90L/K93T/M97L/T133A/S181P/D215Vを含む、態様1~21および24のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
26. 1つまたは複数のアミノ酸改変Q25L/Q86R/H90Lを含む、態様1~21および24のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
27. 1つまたは複数のアミノ酸改変Q25L/Q86R/H90L/N104Sを含む、態様1~21および26のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
28. 1つまたは複数のアミノ酸改変I89V/H90Lを含む、態様1~21のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
29. 1つまたは複数のアミノ酸改変I89V/H90L/I193Vを含む、態様1~21および28のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
30. 1つまたは複数のアミノ酸改変M60K/H90Lを含む、態様1~21のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
31. 1つまたは複数のアミノ酸改変Q25L/F33I/H90Lを含む、態様1~21のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
32. 1つまたは複数のアミノ酸改変Q25L/H90L/P185Sを含む、態様1~21のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
33. SEQ ID NO:29に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列またはその特異的結合断片を含む、態様1~32のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
34. CD28のエクトドメインに、同じエクトドメインに対する前記非改変CD86の結合性と比較して向上した親和性で特異的に結合する、態様1~33のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
35. 前記結合親和性が、少なくとも1.5倍もしくは少なくとも約1.5倍、少なくとも2.0倍もしくは少なくとも約2.0倍、少なくとも5.0倍もしくは少なくとも約5.0倍、少なくとも10倍もしくは少なくとも約10倍、少なくとも20倍もしくは少なくとも約20倍、少なくとも30倍もしくは少なくとも約30倍、少なくとも40倍もしくは少なくとも約40倍、少なくとも50倍もしくは少なくとも約50倍、少なくとも60倍もしくは少なくとも約60倍、少なくとも70倍もしくは少なくとも約70倍、少なくとも80倍もしくは少なくとも約80倍、少なくとも90倍もしくは少なくとも約90倍、少なくとも100倍もしくは少なくとも約100倍、または少なくとも125倍もしくは少なくとも約125倍向上している、態様34のバリアントCD86ポリペプチド。
36. CTLA-4のエクトドメインに、同じエクトドメインに対する前記非改変CD86の結合性と比較して低下した親和性で特異的に結合する、態様1~35のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
37. 前記低下した結合親和性が、少なくとも1.2倍もしくは少なくとも約1.2倍、少なくとも1.4倍もしくは少なくとも約1.4倍、少なくとも1.5倍もしくは少なくとも約1.5倍、少なくとも1.75倍もしくは少なくとも約1.75倍、少なくとも2.0倍もしくは少なくとも約2.0倍、少なくとも2.5倍もしくは少なくとも約2.5倍、少なくとも3.0倍もしくは少なくとも約3.0倍、少なくとも4.0倍もしくは少なくとも約4.0倍、または少なくとも5.0倍もしくは少なくとも約5.0倍低下している、態様36のバリアントCD86ポリペプチド。
38. 前記バリアントCD86ポリペプチドが、CTLA-4のエクトドメインに、同じエクトドメインに対する前記非改変CD86の結合性と同じまたは同等の結合親和性で特異的に結合し、任意で、該同じまたは同等の結合親和性が、該非改変CD86の結合親和性の90%~120%または約90%~約120%である、態様1~37のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
39. 細胞外ドメイン全体を含む、態様1~38のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
40. SEQ ID NO:85~121のいずれかに示されるアミノ酸配列またはその特異的結合断片、SEQ ID NO:85~121のいずれかに対して少なくとも95%の配列同一性を示しかつSEQ ID NO:85~121のいずれかに示されるそれぞれの配列番号のアミノ酸改変のうちの1つまたは複数を含有するアミノ酸配列またはその特異的結合断片を含む、態様1~39のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
41. SEQ ID NO:141~177のいずれかに示されるアミノ酸配列またはその特異的結合断片、SEQ ID NO:141~177のいずれかに対して少なくとも95%の配列同一性を示しかつSEQ ID NO:141~177のいずれかに示されるそれぞれの配列番号のアミノ酸改変のうちの1つまたは複数を含有するアミノ酸配列またはその特異的結合断片を含む、態様1~40のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
42. 前記CD28がヒトCD28である、態様34~41のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
43. 前記CTLA-4がヒトCTLA-4である、態様34~42のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
44. 可溶性タンパク質である、態様1~43のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
45. CD86膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを欠いており;かつ/または
細胞の表面上に発現することができない、
態様1~44のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
46. 多量体化ドメインに連結されている、態様1~45のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
47. 前記多量体化ドメインが、Fcドメインであるか、またはエフェクター機能が低下しているそのバリアントである、態様46のバリアントCD86ポリペプチド。
48. Fcドメインに連結されているか、またはエフェクター機能が低下しているそのバリアントに連結されている、態様1~47のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
49. 前記Fcドメインが、ヒトIgG1であるか、またはエフェクター機能が低下しているそのバリアントである、態様47または態様48のバリアントCD86ポリペプチド。
50. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:229に示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:229に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、態様47~49のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
51. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:229に示されるアミノ酸配列であるかまたはそれを含む、態様47~50のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
52. 前記Fcドメインが、それぞれEUナンバリングによるE233P、L234A、L234V、L235A、L235E、G236del、G237A、S267K、N297G、V302C、およびK447delの中から選択される1つまたは複数のアミノ酸改変を含むバリアントIgG1 Fcドメインである、態様47~50のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
53. 前記Fcドメインが、アミノ酸改変L234A/L235E/G237Aを含む、態様47~50および52のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
54. 前記Fcドメインが、EUナンバリングによるアミノ酸改変C220Sを含む、態様47~50、52および53のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
55. 前記Fcドメインが、EUナンバリングによるアミノ酸改変K447delを含む、態様47~50および52~54のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
56. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:230に示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:230に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示しかつヒトIgG1と比較したSEQ ID NO:230に示される各アミノ酸改変のうちの1つもしくは複数を含むアミノ酸配列を含む、態様47~50および52~55のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
57. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:230に示されるアミノ酸配列であるかまたはそれを含む、態様47~50および52~56のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
58. 前記多量体化ドメインまたはFcに、リンカー、任意でG4Sリンカーを介して間接的に連結されている、態様47~57のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
59. 前記バリアントCD86ポリペプチドが、膜貫通ドメインをさらに含む膜貫通型免疫調節タンパク質であり、任意で、該膜貫通ドメインが、前記バリアントCD86ポリペプチドの前記細胞外ドメイン(ECD)またはその特異的結合断片に直接的または間接的に連結されている、態様1~43のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド。
60. 前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:2の248~268番目の残基として示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:2の248~268番目の残基に対して少なくとも85%の配列同一性を示すその機能的バリアントを含む、態様59のバリアントCD86ポリペプチド。
61. 前記バリアントCD86ポリペプチドが細胞質ドメインをさらに含み、任意で、該細胞質ドメインが、前記膜貫通ドメインに直接的または間接的に連結されている、態様59または態様60のバリアントCD86ポリペプチド。
62. 前記細胞質ドメインが、天然型CD86細胞質ドメインであるかまたはそれを含む、態様61のバリアントCD86ポリペプチド。
63. 前記細胞質ドメインが、SEQ ID NO:2の269~329番目の残基として示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:2の269~329番目の残基に対して少なくとも85%の配列同一性を示すその機能的バリアントを含む、態様61または態様62のバリアントCD86ポリペプチド。
64. 前記細胞質ドメインが、ITAMシグナル伝達モチーフを含み、かつ/または、CD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインであるかもしくはそれを含む、態様61のバリアントCD86ポリペプチド。
65. 細胞質シグナル伝達ドメインを含まず、かつ/または細胞上で発現したときに細胞内シグナルを媒介することも調節することもできない、態様59または態様60のバリアントCD86ポリペプチド。
66. 態様1~65のいずれかの第1のバリアントCD86ポリペプチドと、態様1~58のいずれかの第2のバリアントCD86ポリペプチドとを含む、免疫調節タンパク質。
67. 前記第1および第2のバリアントCD86ポリペプチドが、リンカーを介して間接的に連結されている、態様66の免疫調節タンパク質。
68. 前記第1および第2のバリアントCD86ポリペプチドが、各々、多量体化ドメインに連結されており、前記免疫調節タンパク質が、該第1および第2のバリアントCD86ポリペプチドを含む多量体である、態様66または態様67の免疫調節タンパク質。
69. 前記多量体が、二量体、任意でホモ二量体である、態様68の免疫調節タンパク質。
70. 前記第1のバリアントCD86ポリペプチドおよび前記第2のバリアントCD86ポリペプチドが同じである、態様66~69のいずれかの免疫調節タンパク質。
71. IgSFファミリーメンバーの免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインを含む第2のポリペプチドに直接的に、またはリンカーを介して間接的に連結された態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチドを含む、免疫調節タンパク質。
72. 前記IgSFドメインが親和性改変IgSFドメインであり、該親和性改変IgSFドメインが、IgSFファミリーメンバーの非改変または野生型IgSFドメインと比較して1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、態様71の免疫調節タンパク質。
73. 前記IgSFドメインが親和性改変IgSFドメインであり、該親和性改変IgSFドメインが、その同族結合パートナーのうちの1つまたは複数に対して、同じ1つまたは複数の同族結合パートナーに対する前記IgSFファミリーメンバーの非改変または野生型IgSFドメインの結合性と比較して、変化した結合性を示す、態様72の免疫調節タンパク質。
74. 前記IgSFドメインが、その同族結合パートナーのうちの1つまたは複数に対して、同じ1つまたは複数の同族結合パートナーに対する前記IgSFファミリーメンバーの非改変または野生型IgSFドメインの結合性と比較して、向上した結合性を示す、態様73の免疫調節タンパク質。
75. 前記第2のポリペプチドのIgSFドメインが、腫瘍上に発現しているリガンドに結合するもしくは腫瘍上に発現しているリガンドに結合する腫瘍局在化部分であるか、または炎症環境に関連する細胞もしくは組織に結合する炎症局在化部分である、態様71~74のいずれかの免疫調節タンパク質。
76. 前記リガンドがB7H6である、態様75の免疫調節ポリペプチド。
77. 前記IgSFドメインが、NKp30由来である、態様75または態様76の免疫調節ポリペプチド。
78. 前記バリアントCD86ポリペプチドまたは前記第2のポリペプチドの少なくとも1つに連結された多量体化ドメインをさらに含む、態様71~77のいずれかの免疫調節タンパク質。
79. 前記免疫調節タンパク質が、IgSFファミリーメンバーのIgSFドメインまたはその親和性改変IgSFドメインを含む第3のポリペプチドをさらに含み、該親和性改変IgSFドメインが、IgSFファミリーメンバーの非改変または野生型IgSFドメインと比較して1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、態様71~78のいずれかの免疫調節タンパク質。
80. 前記第3のポリペプチドが、前記第1および/もしくは第2のポリペプチドと同じであるか;または
前記第3のポリペプチドが、前記第1および/もしくは第2のポリペプチドと異なる、
態様79の免疫調節タンパク質。
81. 前記バリアントCD86ポリペプチド、前記第2のポリペプチド、および/または前記第3のポリペプチドの少なくとも1つに連結された多量体化ドメインをさらに含む、態様79または態様80の免疫調節タンパク質。
82. 前記多量体化ドメインが免疫グロブリンのFcドメインであり、任意で、該免疫グロブリンタンパク質がヒトのものであり、かつ/または該Fcドメインがヒトのものである、態様68~70、78および81のいずれかの免疫調節タンパク質。
83. 前記Fcドメインが、IgG1、IgG2、もしくはIgG4であるか、またはエフェクター機能が低下しているそのバリアントである、態様82の免疫調節タンパク質。
84. 前記Fcドメインが、IgG1 Fcドメイン、任意でヒトIgG1であるか、またはエフェクター機能が低下しているそのバリアントである、態様83の免疫調節タンパク質。
85. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:229に示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:229に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、態様82~84のいずれかの免疫調節タンパク質。
86. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:229に示されるアミノ酸配列であるかまたはそれを含む、態様82~85のいずれかの免疫調節タンパク質。
87. 前記Fcドメインが、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むバリアントIgG1であり、該1つまたは複数のアミノ酸置換が、E233P、L234A、L234V、L235A、L235E、G236del、G237A、S267K、またはN297Gから選択され、これらは各々、KabatによるEUインデックスに従ってナンバリングされている、態様84または態様85の免疫調節タンパク質。
88. 前記Fcドメインが、アミノ酸置換N297G、アミノ酸置換R292C/N297G/V302C、またはアミノ酸置換L234A/L235E/G237Aを含み、これらは各々、KabatのEUインデックスに従ってナンバリングされている、態様87の免疫調節タンパク質。
89. 前記バリアントFc領域がアミノ酸置換C220Sをさらに含み、該残基はKabatのEUインデックスに従ってナンバリングされている、態様87または態様88の免疫調節タンパク質。
90. 前記Fc領域がK447delを含み、該残基はKabatのEUインデックスに従ってナンバリングされている、態様87~89のいずれかの免疫調節タンパク質。
91. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:230に示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:230に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示しかつヒトIgG1と比較したSEQ ID NO:230に示される各アミノ酸改変のうちの1つもしくは複数を含むアミノ酸配列を含む、態様84、85および87~90のいずれかの免疫調節タンパク質。
92. 前記Fcドメインが、SEQ ID NO:230に示されるアミノ酸配列であるかまたはそれを含む、態様84、85および87~91のいずれかの免疫調節タンパク質。
93. 細胞の表面上の分子に特異的に結合するターゲティング部分に連結された態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチドを含む、コンジュゲート。
94. 前記細胞が、免疫細胞または腫瘍細胞である、態様93のコンジュゲート。
95. 前記部分が、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子またはナノ粒子である、態様93または態様94のコンジュゲート。
96. 前記部分が、抗体または抗原結合断片である、態様93~95のいずれかのコンジュゲート。
97. 融合タンパク質である、態様93~96のいずれかのコンジュゲート。
98. 態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、態様66~92のいずれかの免疫調節タンパク質、または態様93~97のいずれかの融合タンパク質であるコンジュゲートをコードする、核酸分子。
99. 合成核酸である、態様98の核酸分子。
100. cDNAである、態様98または態様99の核酸分子。
101. 態様98~100のいずれかの核酸分子を含む、ベクター。
102. 発現ベクターである、態様101のベクター。
103. 哺乳動物発現ベクターまたはウイルスベクターである、態様101または態様102のベクター。
104. 態様101~103のいずれかのベクターを含む、細胞。
105. 哺乳動物細胞である、態様104の細胞。
106. ヒト細胞である、態様104または態様105の細胞。
107. バリアントCD86ポリペプチドを含むタンパク質を生産する方法であって、態様98~100のいずれかの核酸分子または態様101~103のいずれかのベクターを、宿主細胞において該タンパク質が発現する条件下で宿主細胞に導入する工程を含む、方法。
108. 前記細胞から前記タンパク質を単離または精製する工程をさらに含む、態様107の方法。
109. バリアントCD86ポリペプチドを発現する細胞を改変する方法であって、態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、態様66~92のいずれかの免疫調節タンパク質、または態様93~97のいずれかの融合タンパク質であるコンジュゲートをコードする核酸分子を、宿主細胞において該ポリペプチドが発現する条件下で宿主細胞に導入する工程を含む、方法。
110. 態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、態様66~92のいずれかの免疫調節タンパク質、または態様93~97のいずれかの融合タンパク質であるコンジュゲート、態様98~100のいずれかの核酸分子、または態様101~103のいずれかのベクターを含む、改変された細胞。
111. 前記バリアントCD86ポリペプチドが、膜貫通ドメインを含むか、もしくは態様59~65のいずれかの膜貫通型免疫調節タンパク質であり;かつ/または
前記バリアントCD86ポリペプチドを含むタンパク質が、前記細胞の表面上に発現する、
態様110の改変された細胞。
112. 前記バリアントCD86ポリペプチドが、膜貫通ドメインを含まず、かつ/もしくは、前記細胞の表面上に発現せず;かつ/または
前記バリアントCD86ポリペプチドが、前記改変された細胞から分泌されることができる、
態様110の改変された細胞。
113. 前記タンパク質が、細胞質シグナル伝達ドメインも膜貫通ドメインも含まず、かつ/もしくは前記細胞の表面上に発現せず;かつ/または
前記タンパク質が、発現した場合、前記改変された細胞から分泌されることができる、
態様110または態様112のいずれかの改変された細胞。
114. 免疫細胞である、態様110~113のいずれかの改変された細胞。
115. 前記免疫細胞がリンパ球である、態様114の改変された細胞。
116. 前記リンパ球がT細胞である、態様115の改変された細胞。
117. 前記T細胞が、CD4+T細胞および/またはCD8+ T細胞である、態様116の改変された細胞。
118. 前記T細胞が、制御性T細胞(Treg)である、態様116または態様117の改変された細胞。
119. 初代細胞である、態様110~118のいずれかの改変された細胞。
120. 哺乳動物細胞である、態様110~119のいずれかの改変された細胞。
121. ヒト細胞である、態様110~120のいずれかの改変された細胞。
122. キメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、態様110~121のいずれかの改変された細胞。
123. 改変されたT細胞受容体(TCR)をさらに含む、態様110~121のいずれかの改変された細胞。
124. 態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、態様66~92のいずれかの免疫調節タンパク質、または態様93~97のいずれかの融合タンパク質であるコンジュゲート、態様98~100のいずれかの核酸分子、または態様101~103のいずれかのベクターを含む、感染性物質。
125. 細菌またはウイルスである、態様124の感染性物質。
126. 前記感染性物質がウイルスであり、該ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、態様125の感染性物質。
127. 態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、態様66~92のいずれかの免疫調節タンパク質、または態様93~97のいずれかの融合タンパク質であるコンジュゲート、態様110~123のいずれかの改変された細胞、または態様124~126のいずれかの感染性物質を含む、薬学的組成物。
128. 薬学的に許容される賦形剤を含む、態様127の薬学的組成物。
129. 滅菌されている、態様127または態様128の薬学的組成物。
130. バイアルまたは容器中に態様127~129のいずれかの薬学的組成物を含む、製造物品。
131. 前記バイアルまたは容器が密封されている、態様130の製造物品。
132. 態様127~129のいずれかの薬学的組成物または態様131または132の製造物品と、使用説明書とを含む、キット。
133. 対象における免疫応答を調節する方法であって、態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、態様66~92のいずれかの免疫調節タンパク質、または態様93~97のいずれかの融合タンパク質であるコンジュゲート、態様110~123のいずれかの改変された細胞、態様124~126のいずれかの感染性物質、または態様127~129のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
134. 対象における免疫応答を調節する方法であって、態様110~123のいずれかの改変された細胞を投与する工程を含む、方法。
135. 前記改変された細胞が、前記対象にとって自家である、態様134の方法。
136. 前記改変された細胞が、前記対象にとって同種である、態様134の方法。
137. 前記免疫応答を調節することが、前記対象における疾患または病態を治療する、態様133~136のいずれかの方法。
138. その必要のある対象における疾患または病態を治療する方法であって、態様1~65のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、態様66~92のいずれかの免疫調節タンパク質、または態様93~97のいずれかの融合タンパク質であるコンジュゲート、態様110~123のいずれかの改変された細胞、態様124~126のいずれかの感染性物質、または態様127~129のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
139. その必要のある対象における疾患または病態を治療する方法であって、態様110~123のいずれかの改変された細胞を投与する工程を含む、方法。
140. 前記改変された細胞が、前記対象にとって自家である、態様139の方法。
141. 前記改変された細胞が、前記対象にとって同種である、態様139の方法。
142. 前記対象において免疫応答が増強される、態様133~141のいずれかの方法。
143. 腫瘍局在化部分に連結されたバリアントCD86ポリペプチドを含む免疫調節タンパク質またはコンジュゲートが前記対象に投与される、態様133、137、138および142のいずれかの方法。
144. 前記腫瘍局在化部分が、腫瘍抗原を認識する結合分子であるか、またはそれを含む、態様143の方法。
145. 前記結合分子が、抗体もしくはその抗原結合断片または野生型IgSFドメインもしくはそのバリアントを含む、態様144の方法。
146. 態様71~90のいずれかの免疫調節タンパク質または態様93~97のいずれかのコンジュゲートを含む薬学的組成物が前記対象に投与される、態様133および137~145のいずれかの方法。
147. 膜貫通型免疫調節タンパク質であるバリアントCD86ポリペプチドを含む改変された細胞が前記対象に投与され、任意で、該改変された細胞が、態様110、111および114~123のものである、態様133~142のいずれかの方法。
148. 前記膜貫通型免疫調節タンパク質が、態様59~65のいずれかのものである、態様147の方法。
149. 前記疾患または病態が、腫瘍またはがんである、態様137~148のいずれかの方法。
150. 前記疾患または病態が、黒色腫、肺がん、膀胱がん、血液悪性腫瘍、肝臓がん、脳がん、腎臓がん、乳がん、膵臓がん、大腸がん、脾臓がん、前立腺がん、精巣がん、卵巣がん、子宮がん、胃がん、筋骨格がん、頭頚部がん、消化器がん、生殖細胞がん、または内分泌および神経内分泌がんから選択される、態様137~149のいずれかの方法。
151. 免疫応答が低減される、態様133~141のいずれかの方法。
152. 可溶性であるバリアントCD86ポリペプチドまたは免疫調節タンパク質が前記対象に投与される、態様133、137、138および151のいずれかの方法。
153. 前記可溶性のポリペプチドまたは免疫調節タンパク質が、Fc融合タンパク質である、態様152の方法。
154. 態様1~58のいずれかのバリアントCD86ポリペプチド、または態様66~74および78~91のいずれかの免疫調節タンパク質を含む薬学的組成物が前記対象に投与される、態様133、137、138および151~153のいずれかの方法。
155. 分泌可能なバリアントCD86ポリペプチドを含む改変された細胞が対象に投与され、任意で、該改変された細胞が、態様110および112~123のいずれかのものである、態様133、137、138および151のいずれかの方法。
156. 前記疾患または病態が、炎症性または自己免疫性の疾患または病態である、態様133、137、138および151~155のいずれかの方法。
157. 前記疾患または病態が、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、血管炎、自己免疫性皮膚疾患、移植(transplantation)、リウマチ性疾患、炎症性消化器疾患、炎症性眼疾患、炎症性神経疾患、炎症性肺疾患、炎症性内分泌疾患、または自己免疫性血液疾患である、態様133、137、138および151~155のいずれかの方法。
158. 前記疾患または病態が、炎症性腸疾患、移植(transplant)、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、喘息、関節リウマチ、または乾癬から選択される、態様156または態様157の方法。
IX. 実施例
以下の実施例は、例証を目的としてのみ含まれるものであって、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
実施例1
CD86 IgSFドメインの変異DNA構築物の生成
実施例1は、酵母ディスプレイライブラリーとしての酵母の表面上での翻訳および発現のためのヒトCD86 IgSFドメインの変異DNA構築物の生成、DNAライブラリーの酵母への導入、ならびにCD86 ECDの親和性改変バリアントを発現する酵母細胞の選択について説明する。
以下のとおり「CD86 ECD(24-247)」と称される細胞外ドメイン(ECD;UniProt Accession No. P42081に示される24~247番目の残基に対応する)を含有するSEQ ID NO:29に示される野生型ヒトCD86配列に基づいて、構築物を生成した。
ランダムDNAライブラリーを構築して、SEQ ID NO:29に示されるCD86のECDのバリアントを特定した。CD86 ECDを酵母表面固定ドメインSag1(酵母α-凝集素のC末端ドメイン)のN末端に、CD86 ECD配列のN末端にインフレームHA融合タグおよびCD86 ECD配列のC末端にc-Myc融合タグを配置した改変型酵母発現ベクターPBYDS03(Life Technologies USA)のBamHI部位とKpnI部位との間に、野生型ECDドメインをコードするDNAをクローニングした。このベクターにおける発現は、誘導性gal-1プロモーターから駆動される。正確なDNA配列の検証および野生型CD86 ECDタンパク質の酵母表面での適正な表示の後、野生型DNA構築物をエラープローンPCRの鋳型として使用して、CD86 ECD配列全体にランダム変異を導入した。エラープローンPCRの後、変異誘発されたCD86 ECD DNAをゲル精製し、次いで、大規模酵母エレクトロポレーションの準備のためにpBYDS03中のBamHIの上流配列およびKpnIの下流配列に相同の40bpの重複領域を含有するプライマーを使用してPCR増幅した。ゲル精製した変異CD86 ECD DNAインサートを滅菌脱イオン水に再懸濁した。
変異CD86ライブラリーDNAを、BamHIおよびKpnIで消化したpBYDS03ベクターDNAと共に、BTX ECM399エレクトロポレーションシステムを2500Vで使用したエレクトロポレーションによって、エレクトロポレーションコンピテントBJ5464酵母細胞(ATCC)に挿入した。新たに回収された細胞の段階希釈物をSCD-Leu寒天プレートにプレーティングすることによって、ライブラリーサイズを決定した。エレクトロポレーション培養物の残りを、SCD-Leu選択培地中での選択下で飽和状態まで成長させた。この培養物からの細胞を同じ培地中にもう一度1/100で継代培養し、これを飽和状態まで成長させて、非形質転換細胞の画分を最小限し、2つ以上のライブラリーバリアントを含有し得る細胞からプラスミドを分離させた。ライブラリーの多様性を維持するために、この継代培養工程を、算出されたライブラリーサイズよりも少なくとも10×多い細胞を含有した接種源を使用して行った。第2の飽和培養物からの細胞を新鮮培地に再懸濁し、-80℃で凍結および保存した(凍結ライブラリーストック)。
ライブラリーからの細胞を個々のライブラリーストックから融解し、一晩成長させた。翌日、細胞をガラクトース含有誘導培地(SCDG-Leu培地)に再懸濁し、30℃で一晩成長させて、酵母細胞表面上でのライブラリータンパク質の発現を誘導した。SCDG-Leu誘導培地1リットルは、Na2HPO4 5.4グラム、NaH2PO4・H20 8.56グラム、ガラクトース20グラム、デキストロース2.0グラム、酵母ニトロゲンベース6.7グラム、およびロイシン不含酵母合成ドロップアウト培地サプリメント1.6グラムを水に溶解させて含有し、0.22μmのメンブレンフィルターデバイスに通して滅菌した。
10×誘導ライブラリー細胞を、CD28-Fcが負荷されたプロテインA磁気ビーズ(New England Biolabs, USA)を使用して一回選別し、非結合物を減少させ、その外因性組換えカウンター構造体タンパク質に結合する能力を有するすべてのCD86 ECDバリアントを濃縮した。次いで、これに続き、漸減濃度(20nM、1nM、または250pM)のCD28-Fcを用いた3回のタンパク質染色による陽性CD28選択および蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を行って、改善された結合物を表示した酵母細胞の画分を濃縮した。磁気ビーズ濃縮およびフローサイトメトリーによる選択を、基本的にMiller K.D. et al., Current Protocols in Cytometry 4.7.1-4.7.30, July 2008に記載されているように行った。上記の3回目の陽性選択酵母細胞アウトプットからヒットを選択した。
3回目のCD28陽性選択された細胞由来の酵母細胞アウトプットから第2サイクルのランダム変異誘発を行った。上述したような漸減濃度のCD28-Fcを使用した3回のFACs陽性選択後に、さらなるヒットを選択した。3回目のCD28-Fc陽性選択からの酵母細胞アウトプットから、100nMのCTLA-4 Fcでタンパク質を染色した後、CTLA-4のさらなる陰性FACS選択を実施した。
選択されたFACSアウトプットからのインサートを、個々のクローンの配列解析のためにFc融合体ベクターにサブクローニングした。実施例2に記載するような選択プロセスにわたって濃縮されたバリアントアミノ酸の頻度に基づき、タンパク質産生ならびに結合および機能活性スクリーニングについてヒットを選択した。
実施例2
Fc融合体としてのおよび様々な免疫調節タンパク質フォーマットでの選択アウトプットの再フォーマット
実施例1で選択された例示的なヒットを、Fc分子に融合された親和性改変(バリアント)CD86を含有する免疫調節タンパク質として再フォーマットした。
選択されたCD86 FACSソートからのアウトプット細胞プールをSCD-Leu選択培地中で末端密度まで成長させ、酵母プラスミドDNA単離キット(Zymoresearch, USA)を使用してプラスミドDNAを単離した。Fc融合体の生成のために、親和性成熟されたCD86 ECDバリアントを、Fc領域をコードしかつそれとインフレームであるAfeIおよびBamHIで消化させたFc融合体ベクターと40bpの相同領域をいずれかの末端に含有するプライマーでPCR増幅させ、ギブソンアセンブリ Master Mix(New England Biolabs)を使用したインビトロ組換えを行った。ヒートショック形質転換のために、ギブソンアセンブリ反応物をE. coli株のNEB5アルファ(New England Biolabs, USA)に製造業者の指示に従って加えた。
形質転換反応物の希釈物を、100μg/mLのカルベニシリン(Teknova, USA)を含有するLB寒天上にプレーティングし、選択のために単一コロニーを単離した。一般に、各形質転換からの最大96個のコロニーをその後、96ウェルプレート内、100μg/mLのカルベニシリン(Teknova cat # L8112)を含有するLBブロス中、37℃で一晩飽和状態まで成長させ、すべてのクローン中の変異を特定するために各ウェルからの小アリコートをDNA配列決定に供した。
関心対象のクローンの配列解析および同定の後、MidiPlus kit(Qiagen)を使用してプラスミドDNAを調製した。
DNAは、生成される親和性改変(バリアント)CD86 Fc融合タンパク質を以下のとおりコードした:バリアントCD86ドメイン、続いて、7つのアミノ酸(GSGGGGS)のリンカー、続いて、免疫グロブリンタンパク質のEu Indexナンバリングシステムによる変異L234A、L235E、およびG237Aを含有する、SEQ ID NO:230に示されるヒトIgG1エフェクター機能欠損Fc配列。この構築物は、システインと共有結合を形成できる抗体軽鎖を全く含まないので、ヒトIgG1 Fcはまた、免疫グロブリンタンパク質のEu Indexナンバリングシステムによる220位におけるシステイン残基からセリン残基への置換(C220S)(SEQ ID NO:299に示される野生型または非改変Fcを基準として5位(C5S)に対応する)も含有した。このFc領域はまた、SEQ ID NO:229に示される野生型ヒトIgG1定常領域遺伝子において通常はコードされている447位(野生型または非改変Fcの232位に対応する)のC末端リジンを欠いていた(K447delと称される)。
Expi293発現系(Invitrogen, USA)を使用して、懸濁適応化ヒト胎児腎(HEK)293細胞から組換えバリアントFc融合タンパク質を産生させた。上清を採取し、Fcタンパク質をMab SelectSure(GE Healthcare cat. no. 17543801)上に捕捉した。50mM酢酸(pH3.6)を使用してカラムからタンパク質を溶出させた。MabSelect Sure溶出液をプールし、pHをpH5.0以上に調整する。次いで、この材料を分取SECカラム上で精錬(polished)し、高度に精製された単量体材料を生成した。この材料を10mM酢酸、9%スクロース(pH 5.0)(A5Su)に緩衝液交換する。タンパク質純度を分析用SECによって評価する。材料をバイアルに入れ、-80で保存する。
実施例3
親和性成熟IgSFドメイン含有分子の細胞発現カウンター構造体への結合の評価
この実施例は、CD86ドメインバリアント免疫調節タンパク質の同族結合パートナーに対する特異性および親和性を評価するための、上記実施例からの精製タンパク質のFc融合体結合研究について説明する。
上述したCD86ドメインバリアントの結合を、Jurkat細胞を使用してCD28への結合について、またはCTLA-4を安定に発現するように形質導入されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(CHO/CTLA-4)を使用してCTLA-4への結合についてアッセイした。フローサイトメトリーによる染色のために、およそ100,000個のリガンド発現細胞を、様々な濃度の候補となる各CD86バリアントFc融合タンパク質とインキュベートした。対照は、野生型CD86(「Wt CD86-Fc」)の細胞外ドメイン(ECD)およびFcのみの対照を含んだ。結合を評価するために、細胞を抗ヒトFc二次抗体(Jackson ImmunoResearch, USA)で染色し、試料をLSRII(BD Biosciences, Inc., USA)フローサイトメーターで分析した。
平均蛍光強度(MFI)を算出し、FlowJo Version 10(FlowJo Version 10, USA)を使用して野生型CD86 ECD-Fc対照の結合と比較した。CD28またはCTLA-4を発現する細胞に対する11nMの例示的な試験バリアントCD86 ECD-Fc融合分子の結合に関する結合研究の結果を表E1に示す。表はまた、上述したスクリーニングにおいて選択されたバリアントCD86のECD中のアミノ酸置換も示す。表において、ECDドメイン中の例示的なアミノ酸置換および挿入は、SEQ ID NO:29に示されるそれぞれの参照非改変成熟CD86細胞外ドメイン(ECD)配列中のアミノ酸位置に対応するアミノ位置番号によって指定される。アミノ酸位置が中央に示され、対応する非改変(例えば、野生型)アミノ酸が番号の前に列記され、特定されたバリアントのアミノ酸置換が番号の後に列記される。2列目は、バリアントECD-Fc融合分子中に含有される各バリアントECDドメインのSEQ ID NO識別子を示す。
表E1に示すように、選択によって、CD28に対する向上した結合性を示すように親和性改変されたCD86 IgSF(例えば、ECD)ドメインバリアントの数が特定された。選択されたバリアントは、いくつかの場合では、CTLA4に対する変化した(例えば、低下した)結合性を示した。
(表E1)CD86 ECDバリアントの同族結合パートナーへの結合
実施例4
CD86 IgV-Fc免疫調節タンパク質の生成および結合活性
実施例1~3で特定および生成された例示的なCD86 ECDバリアントを、分子の唯一のIgSFドメインとしてIgVドメインを含有する免疫調節タンパク質に変換した。生成されたバリアントIgV構築物は、以下のとおり「CD86 IgV(24-134)」と称されるIgVドメイン(UniProt Accession No. P42081に示される24~134番目の残基に対応する)を含有するSEQ ID NO:123に示される野生型ヒトCD86配列に基づいた:
バリアントCD86 IgV分子を、実施例2に記載したようにFc融合タンパク質としてフォーマットし、実施例3に記載したようにCD28またはCTLA-4への結合について試験した。CD28またはCTLA-4を発現する細胞に対する25nMの例示的な試験バリアントCD86 IgV-Fc融合分子の結合に関する結合研究の結果を表E2に示す。表において、IgVドメイン中の例示的なアミノ酸置換および挿入は、SEQ ID NO:29に示されるそれぞれの参照非改変成熟CD86細胞外ドメイン(ECD)配列中のアミノ酸位置に対応するアミノ位置番号によって指定される。アミノ酸位置が中央に示され、対応する非改変(例えば、野生型)アミノ酸が番号の前に列記され、特定されたバリアントのアミノ酸置換が番号の後に列記される。2列目は、バリアントIgV-Fc融合分子中に含有される各バリアントIgVドメインのSEQ ID NO識別子を示す。
(表E2)CD86 IgVバリアントの同族結合パートナーへの結合
実施例5
Jurkat/IL2レポーターアッセイを使用した親和性成熟CD86 IgSFドメイン含有分子の生物活性の評価
この実施例は、CD28共刺激についてのCD86ドメインバリアント免疫調節タンパク質の生物活性を評価するためのJurkat/IL2レポーターアッセイについて説明する。
アッセイの前日、アッセイプレートを準備した。アッセイプレートを準備するために、10nMの抗CD3抗体(クローンOKT3;BioLegend, catalog no. 317315)をCD86-Fcバリアントの滴定物(濃度範囲200nM~12pM)または対照タンパク質(WT CD86-FcおよびFc対照)とPBS中で組み合わせた。100μL/ウェルのOKT3+CD86-Fcを白色平底96ウェルプレート(Costar)に分割した。プレートを4℃で一晩インキュベートし、抗体およびCD86-Fcバリアントタンパク質をプレートの表面に接着させた。翌日、アッセイプレートのウェルをアッセイの前にPBS 150μLで2回洗浄した。
アッセイ当日、IL-2-ルシフェラーゼレポーターを発現するJurkatエフェクター細胞を計数し、アッセイ緩衝液に1×106個の細胞/mLの濃度まで再懸濁した。次いで、100μL/ウェルのJurkat細胞懸濁液をアッセイプレートに加えた。
アッセイプレートを簡単にスピンダウンし(1200 RPMで10秒)、37℃で5時間インキュベートした。5時間のインキュベーション後、プレートを取り出し、15分間室温に平衡化させた。Bio-Glo(Promega)100μLをアッセイプレートのウェルに加え、次いで、それをオービタルシェーカー上に10分間置いた。BioTek Cytation 3ルミノメーターを使用して1ウェル当たり1秒の積分時間で発光を測定した。
各バリアントCD86 ECD-FcおよびバリアントCD86 IgV-Fcについて平均相対発光値を決定し、各バリアントについて野生型CD86 ECD-Fcタンパク質と比較したIL-2レポーターシグナルの倍率増加を算出した。50nMの濃度についての結果を以下の表E3(CD86 ECD-Fc)または表E4(CD86 IgV-Fc)に提供する。示しているように、例示的なバリアントCD86 ECD-FcまたはバリアントCD86 IgV-Fc分子をIL-2-ルシフェラーゼレポーターを発現するJurkatエフェクター細胞と共培養することで、WT CD86 ECD-FcまたはFcのみの陰性対照と比較して増強されたCD28共刺激(すなわち、アゴニズム)がもたらされた。
(表E3)ルシフェラーゼ活性(CD86 ECDバリアント)
(表E4)ルシフェラーゼ活性(CD86 IgVバリアント)
実施例6
膜貫通型免疫調節タンパク質およびT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現する改変された細胞の生成および評価
この実施例は、バリアントCD86 IgSFドメイン含有膜貫通型免疫調節タンパク質(TIP)の例示的な組換えHPV16 E6特異的T細胞受容体(TCR)または抗HER2 CARととのヒトT細胞における発現について説明する。CD86-TIPは、親和性改変されたECDドメインを有しており、SEQ ID NO:2の248~268番目および269~329番目の残基にそれぞれ対応する野生型CD86の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインも含む。例示的なTIPは、Q25L/Q86R/H90L/N104S(SEQ ID NO:94)、I89V/H90L/I193V(SEQ ID NO:107)またはQ25L/H90L/K93T/M97L/T133A/S181P/D215V(SEQ ID NO:93)のいずれかに対応するアミノ酸変異を含有するCD86 TIPを含み、変異のナンバリングは、SEQ ID NO:29に示されるCD86細胞外ドメイン中の位置を基準としている。
TIPをコードする核酸分子をレンチウイルスベクターに個々にクローニングし、それを使用してT細胞を形質導入した。簡潔に述べると、ベクターおよびレンチウイルスパッケージング構築物を用いたHEK293細胞の共トランスフェクション後に、核酸配列を含有するレンチウイルス粒子を産生した。レンチウイルス粒子を培養培地と共に収集した。EasySep(商標)Human T Cell Isolation Kitを使用して健常血液ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)からヒトパンT細胞を単離した。パンT細胞を抗CD3および抗CD28磁気ビーズならびにIL-2と6時間培養し、次いで、TIPレンチウイルスおよびMHCクラスI提示HPV16 E6ペプチドを認識する例示的なTCR(E6 TCR)または抗HER2 CARのいずれかの発現のためのレンチウイルスを用いて共形質導入した。共形質導入のために、レンチウイルスを、ポリブレンの存在下、1:1比で形質導入した。形質導入は、1000×Gの30℃で30分間のスピンフェクションを使用することによって実施した。
翌日、レンチウイルスを除去し、新鮮IL-2含有培地と交換した。培養培地を2日毎に新鮮IL-2に取り換え、形質導入T細胞を10日拡大増殖させた。10日間の培養後、改変された細胞を後述するように活性について利用した。対照として、活性を、WT CD86 TIP(SEQ ID NO:2)、CARもしくはTCRのみで形質導入された対照T細胞、またはモック形質導入T細胞と比較した。
A. CD86 TIP/TCR改変T細胞
10日間の培養後、CD86 TIPおよびE6 TCRで共形質導入されたT細胞、または対照TCRのみ、TIPのみもしくはモックの形質導入T細胞を、標的抗原を発現する細胞と共培養した後、培養培地中のサイトカインの量を測定するMAGPIX(登録商標)Luminexを使用してサイトカイン産生について分析した。HLA-A2+ HPV+標的細胞株(SCC152)を、96ウェルプレートに40,000細胞/ウェルから開始して1:2希釈で4点滴定にわたって滴定して播種した。標的細胞を6時間培養して、単一細胞層を形成させた。形質導入T細胞または対照T細胞をウェルに40,000細胞/ウェルで加え、さらに24時間培養した。培養上清を収集し、MAGPIX(登録商標)によって分析した。結果を、サイトカイン産生の生の値(pg/mL単位)として表示および記録した。図1Aは、バリアントCD86 TIPを共発現した改変細胞からのインターフェロン-γ、IL-2、およびTNFαの放出を、標的細胞数に対するpg/mLとしてプロットして示す。エラーバーは、三連ウェルからの標準偏差を表す。CD86 TIPを共発現したE6 TCR発現細胞から増加したサイトカイン産生が観察された。WT CD86 TIPと比較して、例示的なバリアントCD86 TIPで共形質導入された細胞においてより大きなサイトカイン産生が観察された。表E5は、TCRを単独でまたは表示のとおりの野生型もしくはバリアントCD86 TIPと組み合わせて発現する改変細胞の24時間のインキュベーション後の上清中にて検出されたIFNgの例示的な生の値を示す。
(表E5)IFNgサイトカイン産生(pg/mL)
形質導入細胞をまた、Cell Trace Violet(CTV)標識し、滴定量のSCC152標的細胞とインキュベートし、3日後にTCR+CD4+ T細胞(図1B)またはTCR+CD8+ T細胞(図1C)に対して増殖を評価した。分裂%を三連ウェルの+/-標準偏差でプロットした。図1B~1Cに示すように、バリアントCD86 TIPを共発現した改変細胞は、対照または野生型CD86 TIPを発現した細胞と比較して、標的SCC-152細胞株に応答した増殖が増強された。
改変されたT細胞の細胞傷害活性を評価するために、HLA-A2+ HPV+腫瘍標的細胞株SCC-152を、ホタルルシフェラーゼの発現を駆動する構成的活性型発現ベクターをコードするウイルスを用いて安定に形質導入した。形質導入T細胞または対照T細胞を、広範なエフェクター:標的比(E:T比)を与えるように様々な数で播種した。T細胞を標的細胞と37℃で4日間インキュベートし、ルシフェラーゼ活性を測定した。殺傷率を式:殺傷%=(1-(T細胞+標的中のルシフェラーゼシグナル/標的細胞のみからのルシフェラーゼシグナル))*100%によって算出し、E:T比に対してプロットした。図1Dに示すように、CD86 TIPを共発現した改変された細胞で殺傷が観察され、TCRのみを発現するT細胞では殺傷はほとんど検出されなかった。WT CD86 TIPの共発現と比較して、バリアントCD86 TIPの共発現は、E6 TCR発現T細胞による実質的に増強された殺傷活性をもたらした。データは、三連ウェルの+/-標準偏差で示される。
B. CD86 TIP/CAR改変T細胞
細胞傷害活性を評価するために、改変された細胞を、高レベル(NCI-N87)または低レベル(SCC-152)のHER2抗原を発現する標的細胞とインキュベートした(図2A)。標的細胞を、ホタルルシフェラーゼの発現を駆動する構成的活性型発現ベクターをコードするウイルスを用いて安定に形質導入し、細胞傷害活性を上記と同様に評価した。抗HER2 CAR形質導入T細胞を、広範なエフェクター:標的比(E:T比)を与えるように様々な数で播種した。T細胞を標的細胞NCI-N87またはSCC-152と共に37℃でインキュベートし、24時間後にルシフェラーゼ活性を測定することによって殺傷活性を評価した。殺傷率を式:殺傷%=(1-(T細胞+標的中のルシフェラーゼシグナル/標的細胞のみからのルシフェラーゼシグナル))×100%によって算出し、E:T比に対してプロットした。
図2Bおよび2Cに示すように、バリアントCD86 TIPの発現は、高い抗原(図2B)または低い抗原(図2C)のいずれかを発現する標的細胞の抗HER2 CAR-T細胞殺傷を増強した。データは、三連ウェルの+/-標準偏差で示される。
実施例7
異なる親和性改変されたドメインを含有するCD86スタック分子の生成および評価
CD28に対する結合性の向上のために親和性改変された実施例1~4に記載の選択されたバリアントCD86分子を使用して、腫瘍局在化ドメイン(「L」と称された)としてバリアントNKp30 IgVドメインを有する「スタック」Fc融合分子を生成した。例示的なバリアントNKp30は、NKp30バリアントをコードする変異誘発されたDNAを含有する酵母ディスプレイライブラリーを、B7-H6に対する向上した結合親和性についてスクリーニングすることから特定された。組換えB7H6.Fc(rB7H6.Fc)を用いた染色による2回のFACSスクリーニングの後、アウトプットは、16.6nMのrB7H6.Fcで染色した際にMFI値533を与えたが、親NKp30株のMFIは、同じ濃度のrB7H6.Fcで染色した際に90で測定された(6倍向上)。特定されたNKp30バリアントの中には、SEQ ID NO:54に示される位置に対応するNKp30細胞外ドメイン中の位置を基準として変異L30V/A60V/S64P/S86G(SEQ ID NO:231)を含有するバリアントがあった。生成されたCD86-Nkp30スタック構築物を結合および活性について評価した。
A. CD86-NkP30スタック構築物の生成
ギブソンアセンブリキット(New England Biolabs, USA)を使用した標準的なギブソンアセンブリによって、Fcへの融合を可能にしたフォーマットのスタックをコードしたPCR産物または遺伝子ブロック(Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)を組み合わせることによってスタック構築物を得た。ヒトIgG1エフェクター機能欠損Fc配列(例えば、SEQ ID NO:230に示される)との融合によって2つの同一ポリペプチドを含有するホモ二量体フォーマットでスタックを生成した。すべてのスタックのコード核酸分子は、以下のとおり設計されるタンパク質をコードするように生成した:第1のバリアントCD86 ECDまたはIgV、続いて、3つのGGGGS(G4S)モチーフから構成される15アミノ酸リンカー(SEQ ID NO:224)、続いて、バリアントNKp30 IgVドメイン、続いて、GSGGGGSリンカー(SEQ ID NO:222)、続いて、上述したようなSEQ ID NO:230に示されるヒトIgG1エフェクター機能欠損Fc配列。
Fc融合タンパク質をコードする発現構築物をExpi293 HEK293細胞(例えば、Invitrogen)にトランスフェクトした。上清を採取し、タンパク質をプロテインAカラムに捕捉して、AKTAタンパク質精製システムを使用して溶出させた。
(表E5)CD86-NKp30スタック
B. 結合
CD28を発現するJurkat/IL-2細胞およびCTLA-4を発現するように形質導入されたCHO細胞を使用して、スタック構築物のバリアントCD86ドメインのその同族結合パートナーCD28およびCTLA-4への結合を試験した。細胞を、様々な濃度(100,000pM~98pM、6点、1:4希釈系列)の表E5に示されている例示的な構築物と共にインキュベートした。比較のために、実施例2および表E1に記載されている複数の例示的なバリアントCD86-Fc構築物、ならびにエフェクター機能欠損Fc単独(SEQ ID NO:230)の結合も試験した。抗Fc抗体-PEを使用したフローサイトメトリーによって結合を評価し、平均蛍光強度(MFI)を決定した。
図10に示すように、例示的なNKp30-CD86スタック構築物は、例示的なバリアントCD86-Fc構築物およびFc単独と比較して、CD28およびCTLA-4への結合を保持している。スタック構築物は一般に、対応するバリアントCD86 vIgD-Fc構築物よりも結合が不十分であるが、すべてのスタック構築物についてCD28およびCTLA-4への結合が観察され、SEQ ID NO:135に示されるスタック構築物について特に高い結合が示された。
C. T細胞共刺激
例示的なバリアントNKp30-CD86スタック構築物を、初代T細胞を共刺激する能力について共固定化アッセイにおいて評価した。平底96ウェルプレートを、PBS中に希釈した5nMの抗ヒトCD3(OKT3)および40nMのB7H6でコートし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを無菌PBSで3回すすぎ、1×105個のCFSE標識ヒトパンT細胞を各ウェルに加えた。T細胞を100nM、8.333nMまたは0.694nMの例示的なNKp30-CD86スタック構築物(表E5を参照のこと)と72時間インキュベートした。比較のために、SEQ ID NO:93によって示される例示的なバリアントCD86(実施例4に記載のとおりFc融合体として生成)、SEQ ID NO:231によって示される例示的なバリアントNKp30(実施例4に記載のとおりFc融合体として生成)、およびエフェクター機能欠損Fc単独(SEQ ID NO:230)も試験した。実験は三連で実施した。
スタック構築物の初代T細胞への結合を、抗Fc抗体-PEで染色した後にフローサイトメトリーによって決定し、平均蛍光強度(MFI)を決定した。T細胞増殖をCFSE色素希釈液のフローサイトメトリー測定によって評価し、増殖率を決定した。図11Aは、例示的なスタック構築物の初代ヒトCD4+ T細胞への結合を示す。図11Bに示すように、各濃度の例示的なスタック構築物とのインキュベーションは、例示的なバリアントCD86-Fc、例示的なバリアントNKp30-FcおよびFc単独と比較して、T細胞増殖を誘導した。CD8+ T細胞について同等の結合および増殖結果が観察された。
T細胞のサイトカイン産生を評価するために、24時間のインキュベーション後に上清を採取し、ELISAによってIL-2濃度を決定した。図12に示すように、例示的なスタック構築物とのインキュベーションは、例示的なバリアントCD86-FcおよびFc単独と比較してIL-2産生を増加させた。
まとめると、上記結果は、スタック構築物が、初代T細胞に結合して共刺激を提供することができることを実証する。スタック構築物の活性がNKp30の同族結合パートナーであるB7H6の存在に依存するか否かを評価するために、上述したとおりであるがプレートを抗CD3(OKT3)のみでコートした別個の共固定化実験を実施した。図13は、B7H6の非存在下で例示的なスタック構築物(100nM)とインキュベートした初代T細胞が、B7H6の存在下でのインキュベーションと比較して、低下したCD4+ T細胞増殖活性をもたらしたことを示す。CD8+ T細胞について同様の結果が観察された。これらのデータは、CD86-NKp30スタック構築物の共刺激活性がB7H6依存性であることを示す。
実施例8
バリアントPD-1分子およびバリアントCD86分子を含有するスタック分子の生成
親和性改変された実施例1~5に記載の例示的なバリアントCD86分子を使用して、PD-L1(例えば、SEQ ID NO:315に示される)への結合が向上した親和性改変された例示的なバリアントPD-1 IgSFドメインを有する「スタック」Fc融合分子を生成した。スタック構築物は、表E18に記載のとおり、野生型CD86細胞外ドメイン(ECD;SEQ ID NO:29)、野生型CD86 IgVドメイン(SEQ ID NO:123)、またはCD28に対する結合性の向上のために親和性改変されたCD86 ECDもしくはIgVドメインのいずれかを含有した。ギブソンアセンブリキット(New England Biolabs, USA)を使用した標準的なギブソンアセンブリによって、Fcへの融合を可能にしたフォーマットのスタックをコードしたCD86およびPD-1配列のオーバーラップPCRを介してスタック構築物を得た。すべてのスタックのコード核酸分子は、以下のとおり設計されるタンパク質をコードするように生成した:第1の野生型もしくはバリアントCD86 ECDまたはIgVドメイン、続いて、3つのGGGGS(G4S)モチーフから構成される15アミノ酸リンカー(SEQ ID NO:224)、続いて、バリアントPD-1ドメイン、続いて、GSGGGGSリンカー(SEQ ID NO:222)、続いて、上述したようなSEQ ID NO:230に示されるヒトIgG1エフェクター機能欠損Fc配列。
表E6は、例示的な生成されたCD86-PD-1スタックを示す。
(表E6)CD86-PD-1スタック
実施例9
バリアントPD-1分子およびバリアントCD86分子を含有するスタック分子の結合および活性の評価
バリアントPD-1 IgSFドメイン(例えば、SEQ ID NO:315)を野生型CD86細胞外ドメイン(ECD;例えば、SEQ ID NO:29)、野生型CD86 IgVドメイン(例えば、SEQ ID NO:123)、またはバリアントCD86 IgSFドメイン(ECD、例えば、SEQ ID NO:89もしくは93もしくは94;またはIgV、例えば、SEQ ID NO:145、149もしくは150)のいずれかと共に含有する例示的なスタック構築物を実質的に実施例8に記載のとおり生成し、結合および活性について評価した。
A. 結合
同族結合パートナーへの結合を評価するために、huCTLA、huCD28およびhuPD-L1完全長哺乳動物タンパク質を発現するように細胞を形質導入した。細胞を、表E6に示される様々な濃度(0.1nM~100nM)の例示的な構築物とインキュベートした。比較のために、野生型CD80-Fcの結合も試験した。PD-L1への結合について、結合を抗PD-1抗体(イミフィンジおよびアテゾリズマブ)とも比較した。Fcのみの分子も対照として試験した。結合をフローサイトメトリーによって評価し、平均蛍光強度(MFI)を決定した。
図4A~6Bに示すように、例示的なPD1-CD86スタック構築物は、個々の野生型またはバリアントIgSFドメインのみを含有する分子と比較して、CTLA-4、CD28およびPD-L1への結合を保持している。変異Q25L/H90L/K93T/M97L/T133A/S181P/D215VをIgV中に含有するスタック構築物(SEQ ID NO:149、例えば、SEQ ID NO:322に示されるスタック)またはECD中に含有するスタック構築物(SEQ ID NO:93、例えば、SEQ ID NO:318に示されるスタック)は、個々の野生型またはバリアントIgSFドメインのみを含有する分子と比較して、CTLA-4(図4A)、CD28(図5A)およびPD-L1(図6A)への結合を保持している。変異Q25L/Q86R/H90L/N104SをIgV中に含有するスタック構築物(SEQ ID NO:150、例えば、SEQ ID NO:323に示されるスタック)またはECD中に含有するスタック構築物(SEQ ID NO:94、例えば、SEQ ID NO:319に示されるスタック)は、CTLA-4(図4B)、CD28(図5B)およびPD-L1(図6B)への結合を保持している。
B. PD-L1依存性CD28共刺激
例示的なバリアントスタック構築物を、PD-1を発現するJurkat/IL-2レポーター細胞を使用して、PD-L1依存性CD28共刺激を伝達する能力について評価した。K562/OKT3/PD-L1またはK562/OKT3人工抗原提示細胞(aAPC)を20,000細胞/ウェルでプレーティングし、0.01nM~100nMの様々な量の例示的なバリアントスタック構築物とプレインキュベートした。Fcのみの分子も対照として試験した。IL-2-ルシフェラーゼレポーターを発現するJurkatエフェクター細胞を、各ウェルが最終K562細胞:Jurkat細胞比1:5を有するように合計100,000細胞/ウェルで加えた。Jurkat細胞、K562細胞および例示的なスタック構築物をセ氏37℃で6時間インキュベートした。100μLの細胞溶解およびルシフェラーゼ基質溶液(BioGlo luciferase reagent, Promega)を各ウェルに加え、発光を測定した。
図7Aに示すように、PD-L1の非存在下での例示的なバリアントスタック構築物の添加は、共刺激シグナルをほとんど示さず、このことは、PD-1/CD86を含有するスタックタンパク質が、CD28を介した共刺激シグナルを誘導するためにPD-L1結合を必要とするという観察と一致した。図7Bに示すように、PD-L1の存在下での例示的なECDおよびIgVバリアントスタック構築物の両方の添加は、IL-2発光の相対発光単位(RLU)によって測定したところ、CD28依存性発光活性を刺激(アゴナイズ)した。共刺激のレベルは、バリアント分子のCD28および/またはPD-L1結合親和性と相関した。この結果は、PD-L1依存性CD28媒介性共刺激を示すバリアントPD-1含有スタック免疫調節タンパク質の活性と一致する。
C. T細胞応答
サイトメガロウイルス(CMV)抗原特異的機能性アッセイを使用して、T細胞応答に対する例示的なバリアントスタック分子の効果を評価した。
CMV血清反応陽性ドナーから得た末梢血単核細胞(PBMC)を融解し、250,000個/ウェルのPBMCにCMV溶解物を1μg/mLで例示的な試験バリアントスタック構築物(1:3希釈で希釈、100,000pMから46pm)の存在下で加えた。Fcのみの分子も対照として試験した。IL-2をELISAによってアッセイするためにインキュベーションの48時間後、およびIFNgをELISAによってアッセイするためにインキュベーションの96時間後、上清を収集した。
例示的なPD1-CD86スタック構築物は、IL-2産生(図8)およびIFNg産生(図9)の濃度依存性の増加を示した。PD1-CD86スタック構築物は、サイトカインの産生をPD-L1対照抗体(アテゾリズマブ)または個々のバリアントPD1 IgV-Fc分子よりも大きい程度に刺激した。PD1-CD86スタック構築物はまた、サイトカインの産生を野生型CD86 ECD-Fcまたは個々のバリアントCD86 ECD-Fc分子よりも大きい程度に刺激した。
これらの結果は、CD28をPD-L1依存的に刺激する共刺激効果を呈するPD1-CD86スタック分子と一致する。これらの結果は、CD28への低い検出可能結合を有することが観察された野生型CD86 ECDを含有するスタック構築物を含め、上記実施例18.Bに示すようにJurkat細胞上のCD28に対して様々な結合度を有する構築物について観察された。
実施例10
バリアントPD-1分子およびバリアントCD86分子を含有するフォーマットされたスタック分子の生成ならびにその結合および活性の評価
それぞれ実施例1~5および実施例8に記載のとおりの親和性改変された例示的なバリアントCD86分子および例示的なバリアントPD-1分子を使用して、「スタック」Fc融合分子を評価した。生成されたCD86-PD1スタック構築物を結合および活性について評価した。
A. CD86-PD-1スタック構築物の生成
ギブソンアセンブリキット(New England Biolabs, USA)を使用した標準的なギブソンアセンブリによって、Fcへの融合を可能にしたフォーマットのスタックをコードしたPCR産物または遺伝子ブロック(Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)を組み合わせることによってスタックを生成した。スタック構築物は、ヒトIgG1エフェクター機能欠損Fc配列(例えば、SEQ ID NO:230に示される)との融合によって2つの同一ポリペプチドを含有するホモ二量体フォーマットを有していた。あるいは、スタック構築物は、1つのポリペプチドが「ノブ」Fcサブユニット(SEQ ID NO:346)に融合され、第2のポリペプチドが「ホール」Fcサブユニット(SEQ ID NO:347)に融合される「ノブ-イントゥ-ホール」Fc改変によってヘテロ二量体の2つの異なる個々の鎖の会合が促進されるヘテロ二量体フォーマットを有していた。
Fc融合タンパク質をコードする発現構築物をExpi293 HEK293細胞(例えば、Invitrogen)にトランスフェクトした。上清を採取し、タンパク質をプロテインAカラムに捕捉して、AKTAタンパク質精製システムを使用して溶出させた。
表E7は、例示的な生成されたPD-1-CD86スタックおよびフォーマットを示す。図14A~14Dは、例示的なフォーマットされたスタック構築物の構造を図示している。
(表E7)フォーマットされた例示的なCD86-PD1スタック
B. 結合
結合活性を評価するために、例示的なフォーマットされたスタック構築物を、CD86の同族結合パートナーであるCD28を発現するJurkat細胞、およびPD-1の同族結合パートナーであるPDL1を発現するように形質導入されたK562細胞とインキュベートした。細胞(50,000個の細胞/ウェル)を、表E7に示される様々な濃度(開始濃度100nM、8系列の1:4希釈で漸減)のフォーマットされたスタック構築物と氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、抗Fc抗体-PE 50μLと30分間再懸濁した。結合をフローサイトメトリーによって評価し、平均蛍光強度(MFI)を決定した。
図15Aおよび15Bに示すように、例示的なPD-1-CD86スタック構築物フォーマットは、例示的なバリアントのフォーマットされていない対照スタックと比較して、PDL1およびCD28への結合を保持している。これらのデータは、異なるスタック分子フォーマットが同族結合パートナーに対する結合活性を保持していることを示す。
C. T細胞共刺激
例示的なスタック構築物がT細胞の標的特異的共刺激を駆動できるかどうかを試験するために、共刺激を測定するためのT細胞レポーター株を含むトランスフェクト細胞系を使用した。IL-2プロモータールシフェラーゼレポーターを含み、PD1を発現したまたは発現しなかったJurkat細胞を使用して、共刺激機能を評価した。Jurkat細胞を刺激するために、K562細胞を人工抗原提示細胞として使用するために改変した。具体的には、K562細胞を、抗CD3抗体OKT3の単鎖Fvバージョンをコードするレンチウイルスを用いて形質導入すると共に、PDL1発現を指令する別個のレンチウイルスを用いた形質導入を行ったまたは行わなかった。細胞表面抗CD3単鎖Fv(OKT3)と共に表面PDL1発現を提示するまたは表面PDL1発現を提示しないK562細胞を、培養培地に2×104個の細胞/ウェルでプレーティングした。標的細胞を例示的なPD1-CD86スタック構築物(2nMから8系列の1:3希釈で漸減)と37℃で10分間インキュベートした。IL-2-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkatエフェクター細胞(Promega)を1×105個の細胞/ウェルで最終体積/ウェルが100μlになるまで加えた。例示的なスタック構築物の存在下または非存在下の標的細胞およびJurkat細胞を37℃で5時間インキュベートした。プレートをインキュベーターから取り出し、15分間室温に順化させた。100μLの細胞溶解およびルシフェラーゼ基質溶液(BioGlo luciferase reagent, Promega)を各ウェルに加え、プレートをオービタルシェーカー上で10分間インキュベートした。Cytation 3イメージングリーダー(BioTek Instruments)を使用して1ウェル当たり1秒の積分時間で発光を測定した。各試験試料について相対発光値(RLU)を決定し、報告した。
図16Aおよび16Bに示すように、例示的なスタック構築物とのインキュベーションは、T細胞がPD1+であったかPD1-であったかにかかわらず、PDL1+ K562/OKT3細胞の存在下でT細胞に共刺激を提供した。これらの結果は、スタック構築物が、強いチェックポイント遮断の存在下でさえもT細胞共刺激シグナルを送達可能であることを示唆している。
D. サイトカイン産生
例示的なCD86-PD-1スタック構築物(表E7を参照のこと)のT細胞におけるサイトカイン産生を促進する能力を評価するために、PD-L1を発現することが公知のHLA-A2+ HPV+標的細胞株(SCC152 PDL1+)と例示的な組換えHPV16 E6特異的T細胞受容体(TCR)を発現するように形質導入されたT細胞とを、様々な濃度の例示的なフォーマットされたスタックの存在下で共培養した。SCC152 PDL1+細胞を96ウェルプレートに40,000細胞/ウェルで培養培地と共に播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、様々な濃度の例示的なフォーマットされたスタック構築物(0.666nM、1:3希釈で5点滴定にわたり滴定)および組換えHPV16 E6特異的T細胞受容体(TCR)を発現する40,000個のT細胞を各ウェルに加えた。比較のために、細胞を、CD28およびPD-L1に結合することが公知のバリアントCD80 IgV-Fc融合タンパク質と、モック形質導入T細胞(モック)とインキュベートするか、またはフォーマットされたスタック構築物の非存在下(タンパク質なし)でインキュベートした。プレートを37℃でインキュベートし、24時間のインキュベーション後に上清を収集して、分泌されたサイトカイン、例えば、IFNg、IL-2、TNFaについて試験した。
図17Aに示すように、フォーマットされたCD86-PD-1スタック構築物は、対照と比べて、24時間の時点でより高いレベルのIFNg、IL-2およびTNFaサイトカイン産生を誘導した。これらのデータは、フォーマットされたCD86-PD-1スタック構築物が、標的特異的T細胞において共刺激およびサイトカイン産生を促進することを示す。
E. 細胞傷害活性
T細胞の細胞傷害活性を促進する能力について例示的なCD86-PD-1スタック構築物(表E7を参照のこと)を評価した。HLA-A2+ HPV+標的細胞株SCC152 PDL1+を96ウェルプレートに20,000細胞/ウェルで培養培地と共に播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、培養培地を廃棄し、細胞をルシフェリン100μLと37℃で10分間インキュベートした。様々な濃度の例示的なフォーマットされたスタック構築物(0.666nM、1:3希釈で5点滴定にわたり滴定)および例示的な組換えHPV16 E6特異的T細胞受容体(TCR)で形質導入された20,000個のT細胞を各ウェルに加え、37℃で10分間インキュベートした後、30秒間遠心分離(1300rpm)した。比較のために、細胞を、CD28およびPD-L1に結合することが公知のバリアントCD80 IgV-Fc融合タンパク質と、モック形質導入T細胞(モック)と、またはフォーマットされたスタック構築物の非存在下(タンパク質なし)でインキュベートした。プレートを37℃でインキュベートし、24、48および72時間のインキュベーション後に相対発光値(RLU)を決定した。
図17Bは、各濃度での24、48および72時間の時点でのRLUによって測定された場合の細胞殺傷を示す。CD86-PD-1スタック構築物は、対照と比較して、24時間の時点でT細胞の細胞傷害活性を増強した。これらのデータは、CD86-PD-1スタック構築物が、T細胞を共刺激してT細胞の細胞傷害活性を誘導可能であることを裏付けている。
実施例11
HER2およびEGFRを標的とする抗体のコンジュゲートの結合および共刺激機能の評価
例示的なバリアントCD86 IgV分子をHER2およびEGFRを標的とする抗体にコンジュゲートさせて、コンジュゲート(融合タンパク質)を形成した。SEQ ID NO:150によって示されるバリアントCD86 IgVドメインを、介在G4Sリンカーを用いて、HER2を標的とする抗体ペルツズマブまたはEGFRを標的とする抗体パニツムマブの軽鎖または重鎖のアミノ末端またはカルボキシル末端に融合させた(表E8を参照のこと)。コンジュゲート(融合タンパク質)の例示的な形状を図18に示す。図19Aおよび19Bに図示した構築物の各々をコードするDNAをHEK-293細胞にトランスフェクトし、分泌されたタンパク質をプロテインAおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。次に、得られたコンジュゲートタンパク質を適切な結合特性の保持について評価した。
(表E8)例示的なCD86-抗体コンジュゲートおよび対照抗体
A. 結合
例示的なペルツズマブ-CD86コンジュゲート(融合タンパク質)のHER2に結合する能力を評価するために、SCC-152細胞を、様々な濃度の例示的なコンジュゲート(表E8を参照のこと)、ペルツズマブまたは対照抗体(ラムシルマブ)とインキュベートした。SCC152細胞(50,000個の細胞/ウェル)を、表E8に示される様々な濃度(開始濃度33nM、9系列1:3希釈で漸減)のCD86抗体コンジュゲート(融合タンパク質)と氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、抗Fc抗体-PE 50μLと30分間再懸濁した。結合をフローサイトメトリーによって評価し、蛍光強度(MFI)の中央値を決定した。図19Aに示すように、コンジュゲートは、HER2への結合を保持していた。
例示的なパニツムマブ-CD86コンジュゲートのEGFRに結合する能力を評価するために、EGFRを発現するように形質導入されたCHO細胞を、様々な濃度の例示的なコンジュゲート(表E8を参照のこと)、パニツムマブまたは対照抗体(ラムシルマブ)とインキュベートした。CHO-EGFR細胞(50,000個の細胞/ウェル)を、表E8に示される様々な濃度(開始濃度33nM、9系列1:3希釈で漸減)のCD86抗体融合コンジュゲート構築物と氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、抗Fc抗体-PE 50μLと30分間再懸濁した。結合をフローサイトメトリーによって評価し、蛍光強度(MFI)の中央値を決定した。図19Bに示すように、コンジュゲートは、EGFRへの結合を保持していた。
B. T細胞共刺激
例示的なコンジュゲート(融合タンパク質)がT細胞の標的特異的共刺激を駆動できるかどうかを試験するために、IL-2プロモータールシフェラーゼレポーターを有するJurkat細胞を含むトランスフェクト細胞系を使用して、共刺激機能を評価した。Jurkat細胞を刺激するために、HPVウイルスタンパク質を構成的に発現する標的SCC-152細胞を、培養培地に2×104個の細胞/ウェルでプレーティングした。標的細胞をCD86抗体融合コンジュゲート(2nMから8系列の1:4希釈で漸減)と37℃で10分間インキュベートした。IL-2-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkatエフェクター細胞(Promega)を1×105個の細胞/ウェルで最終体積/ウェルが100μlになるまで加えた。例示的なコンジュゲートの存在下または非存在下の標的細胞およびJurkat細胞を37℃で5時間インキュベートした。プレートをインキュベーターから取り出し、15分間室温に順化させた。100μLの細胞溶解およびルシフェラーゼ基質溶液(BioGlo luciferase reagent, Promega)を各ウェルに加え、プレートをオービタルシェーカー上で10分間インキュベートした。Cytation 3イメージングリーダー(BioTek Instruments)を使用して1ウェル当たり1秒の積分時間で発光を測定した。各試験試料について相対発光値(RLU)を決定し、報告した。
SCC-152細胞を、様々な濃度のコンジュゲートまたは対照抗体の存在下または非存在下で、HPVペプチドE6に特異的なTCRで形質導入されたJurkat IL2レポーター細胞株と共培養した。図20Aおよび20Bに示すように、RLU測定は、T細胞が対照抗体と比較してコンジュゲートの存在下で増強された共刺激を経験したことを明らかにした。
C. 細胞傷害活性
T細胞の細胞傷害活性を促進する能力について例示的なコンジュゲートを評価した。標的細胞株SCC-152を96ウェルプレートに20,000細胞/ウェルで培養培地と共に播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、培養培地を廃棄し、細胞をルシフェリン100μLと37℃で10分間インキュベートした。E6 TCRで形質導入された20,000個の初代ヒトT細胞を、2nMの例示的なコンジュゲートの存在下で各ウェルに様々なエフェクター:標的比(E:T)で加え、37℃で10分間インキュベートした後、30秒間遠心分離(1300rpm)した。比較のために、細胞を、ペルツズマブのみ、パニツムマブのみ、対照抗体ラムシルマブ(モック)と、またはタンパク質の非存在下でインキュベートした。プレートを37℃でインキュベートし、24時間のインキュベーション後に標的細胞殺傷の割合を決定した。
図21Aおよび21Bは、例示的なコンジュゲートの存在下で、各E:Tで24時間後、細胞殺傷率の最小の増加を実証している。
C. サイトカイン産生
例示的なコンジュゲートのT細胞におけるサイトカイン産生を促進する能力を評価するために、SCC-152細胞とE6 TCRで形質導入された初代ヒトT細胞(3人のドナー)とを様々な濃度の例示的なコンジュゲート(表E8を参照のこと)の存在下で共培養した。SCC-152細胞を96ウェルプレートに40,000細胞/ウェルで培養培地と共に播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、様々な濃度の例示的なコンジュゲートおよび40,000個のT細胞を各ウェルに加えた。比較のために、細胞を、ペルツズマブのみ、パニツムマブのみ、対照抗体ラムシルマブ(モック)と、またはタンパク質の非存在下でインキュベートした。プレートを37℃でインキュベートし、24時間のインキュベーション後に上清を収集して、分泌されたサイトカイン、例えば、IFNg、IL-2、TNFaについて試験した。
図22Aおよび22Bは、各ドナーについてのIFNg、IL-2およびTNFaの濃度を示す。示しているように、CD86-抗体コンジュゲートは、抗体のみの対照と比較して増強されたサイトカイン産生を示す細胞をもたらした。これらのデータは、コンジュゲートが、T細胞における共刺激およびサイトカイン産生を促進することが可能であることを実証している。
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を例証するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されるものと意図されない。記載された組成物および方法に対する様々な改変は、本明細書における説明および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実践されることができ、本開示の範囲内に含まれるものと意図される。