JP6691756B2 - 合成ペプチドを用いた神経幹細胞の生産方法 - Google Patents
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Description
例えば、生体外(インビトロ)培養系で生産した神経細胞を患部に移入することで、脱落した神経細胞を補う方法が模索されている。しかし、すでに神経軸索を伸長した神経細胞を患部(例えば脳などの中枢神経系組織)に移入したとしても、損傷以前の神経ネットワークを再構築することは困難な場合があった。また、特に中枢神経系組織は、神経細胞とそれ以外の種々の細胞(例えばアストロサイト等)が影響し合う生理学的環境を構成することにより神経機能を発揮、維持しているため、神経細胞のみの補充で失われた神経機能を回復させることは難しい場合があった。
そこで、神経幹細胞を利用した神経機能の再生技術および回復技術の確立が期待されている。例えば、患部(例えば脳などの中枢神経系組織)に神経幹細胞を移入すること若しくは内在性の神経幹細胞の再生能力を利用することにより、生体内(典型的には患部)において必要な細胞(例えば神経細胞やアストロサイト等)に分化させ、それにより脱落した細胞を補充し、神経ネットワークおよび生理学的環境を再構築することで、神経機能回復を実現する方法の開発が期待されている。
そこで、近年、多能性幹細胞(例えばiPS細胞)を作製する手順を踏まず、体細胞から目的の細胞(例えば神経幹細胞)を直接作製する手法(「ダイレクトリプログラミング」ともいう)の開発に注目が集まっている。例えば、特許文献1および非特許文献1、2には、体細胞に特定の遺伝子を導入することで、該体細胞を神経幹細胞(或いは神経細胞)に分化転換(運命転換)する技術、即ち、該体細胞を神経幹細胞(或いは神経細胞)にダイレクトリプログラミングする技術について記載されている。
ここで、APPのファミリーに属するタンパク質の典型例としては、アミロイド前駆体タンパク質(Amyloid Precursor Protein:APP)およびAPPの類縁のタンパク質である2種のアミロイド前駆体様タンパク質(Amyloid Precursor-Like Protein 1:APLP1、Amyloid Precursor-Like Protein 2:APLP2)が挙げられる。
(i)アミロイド前駆体タンパク質(APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列、
(ii)上記(i)のアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸残基を有する部分アミノ酸配列、および
(iii)上記(i)または(ii)のアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(好ましくは同類置換)されて形成された改変アミノ酸配列;
のうちのいずれかのアミノ酸配列である。
また、本明細書において、APPファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列又は該シグナルペプチド配列中の部分アミノ酸配列(即ち上記シグナルペプチド配列のうちの一部分の連続した部分配列)を総称して「APPシグナルペプチド関連配列」とも呼称する。
また、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物に含まれる神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、単純な構造(典型的には直鎖状のペプチド)であり、化学合成(若しくは生合成)によって容易に人為的に製造され得る。このため、所望量の神経幹細胞生産用組成物を容易に、或いは低コストで、調製することができる。また、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物を用いると、高価なサイトカイン等の液性因子を大量に使用することなく(典型的には液性因子の代替物として)線維芽細胞を神経幹細胞に誘導することができる。
なお、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物を用いると、外来遺伝子の導入を伴うことなく線維芽細胞を神経幹細胞に誘導することができる。このため、外来遺伝子がゲノムDNAに組み込まれる心配がない。
上記アミロイド前駆体タンパク質、アミロイド前駆体様タンパク質1、またはアミロイド前駆体様タンパク質2はいずれもAPPファミリーに属するタンパク質の典型例である。これらのタンパク質のAPPシグナルペプチド関連配列および該配列の改変アミノ酸配列を有する合成ペプチドは、神経幹細胞誘導活性を有するペプチドの典型例であり、本発明の実施に好適に採用することができる。
i)以下の配列番号1のアミノ酸配列:
MAATGTAAAAATGRLLLLLLVGLTAPALA(配列番号1);
または、配列番号1に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号16に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
ii)以下の配列番号2のアミノ酸配列:
MAATGTAAAAATGKLLVLLLLGLTAPAAA(配列番号2);
または、配列番号2に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号17に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
iii)以下の配列番号3のアミノ酸配列:
MGPASPAARGLSRRPGQPPLPLLLPLLLLLLRAQPAIG(配列番号3);
または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号18に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号19に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
iv)以下の配列番号4のアミノ酸配列:
MGPTSPAARGQGRRWRPPLPLLLPLSLLLLRAQLAVG(配列番号4);
または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号20に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号21に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
v)以下の配列番号5のアミノ酸配列:
MLPGLALLLLAAWTARA(配列番号5);
または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号22に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号23に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
vi)以下の配列番号6のアミノ酸配列:
MLPSLALLLLAAWTVRA(配列番号6);
または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号24に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号25に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
このような膜透過性ペプチド配列を有する上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドを対象の線維芽細胞に(典型的には培地中に)添加することによって、上記神経幹細胞誘導性ペプチド配列を該線維芽細胞の外部(細胞膜の外側)から細胞内に高効率に移送することができる。
KKRTLRKNDRKKR(配列番号7)
を有する。
配列番号7としてここで開示されるアミノ酸配列は、膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列の典型例であり、本発明の実施に好適に採用することができる。
このような短いペプチド鎖からなるペプチドは、構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)が高く、取扱い性や保存性に優れる。さらに、このような短いペプチド鎖のペプチドは化学合成が容易であり、比較的安価な製造コストで製造(入手)可能である。このため、かかるペプチドは、ここで開示する神経幹細胞生産用組成物の成分として好ましく使用し得る。また、かかる神経幹細胞誘導性合成ペプチドを使用して神経幹細胞を生産することで、神経幹細胞の生産コストの削減や神経幹細胞の生産効率の向上等を実現し得る。
LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
を有する。
かかる神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する効率が特に高い。なかでも、ヒト由来の線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する能力に優れている。このため、かかるペプチドは、ここで開示する神経幹細胞生産用組成物の成分として好ましく使用することができる。
ヒト由来の細胞から生産された神経幹細胞は、医療分野(特に、再生医療分野、新薬開発分野、基礎医学分野等)での利用価値が極めて高い。また、皮膚(特に真皮)には線維芽細胞が豊富に存在し、必要量の細胞を比較的容易に確保し得るため、皮膚由来の線維芽細胞は対象細胞として好ましい。
(i)アミロイド前駆体タンパク質(APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列、
(ii)前記(i)のアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸残基を有する部分アミノ酸配列、および、
(iii)前記(i)または(ii)のアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(好ましくは同類置換)されて形成された改変アミノ酸配列;
のうちのいずれかのアミノ酸配列である。
換言すると、ここで開示される神経幹細胞の生産方法は、対象の線維芽細胞を含む細胞培養物を準備すること、および、上記細胞培養物中に、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドのいずれか(即ち、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物のいずれか)を供給すること、を包含する。
また、かかる神経幹細胞の生産方法は、遺伝子導入を必要としないため、生産される神経幹細胞のゲノム中に外来遺伝子が挿入される心配がない。また、特定の遺伝子を対象細胞に導入する操作の煩雑性および遺伝子導入にかかるコストを低減することができる。
また、本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
また、本明細書において「ペプチド」とは、複数のペプチド結合を有するアミノ酸ポリマーを指す用語であり、ペプチド鎖に含まれるアミノ酸残基の数によって限定されないが、典型的には全アミノ酸残基数が概ね200以下(好ましくは100以下、例えば50以下)のような比較的分子量の小さいものをいう。
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
なお、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、常に左側がN末端側であり右側がC末端側である。
上記神経幹細胞マーカー遺伝子の典型例としては、ネスチンおよびGFAPが挙げられるが、神経幹細胞で特徴的に発現することが知られている遺伝子であれば特に限定されない。即ち、上記神経幹細胞は、少なくともネスチン(好ましくはネスチンおよびGFAPの両方)を発現することで特徴づけられる細胞であり得る。典型的には、上記神経幹細胞マーカー遺伝子(例えばネスチン、好ましくはネスチンおよびGFAPの両方)の遺伝子産物であるmRNA或いはタンパク質(以下、神経幹細胞マーカータンパク質ともいう)の存在を確認し得る細胞である。なお、生体(典型的には成体)の脳内に存在する神経幹細胞はネスチンおよびGFAPの両方を発現していることが確認されている(非特許文献3)。このことから、ネスチンおよびGFAPを両方発現している神経幹細胞は、生体脳内に存在する神経幹細胞により近い細胞であるため好ましい。
なお、上記神経幹細胞の生産方法は、インビトロ培養系における神経幹細胞の生産に限定されず、生体内(インビボ)における神経幹細胞の産生或いは神経幹細胞の産生促進にも適応可能である。
また、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物は、線維芽細胞から神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)を生産するために用いられる組成物である。具体的には、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドの少なくとも1種を有効成分(即ち、線維芽細胞を神経幹細胞へ分化誘導することに関与する物質)として含むことで特徴付けられる組成物である。
ここで、APPファミリーに属するタンパク質とは、典型的にはAPP、APLP1、またはAPLP2をいう。APPとは、アルツハイマー病の発症機序の一説であるアミロイド仮説において、いわばアルツハイマー病の出発物質ともいうべきタンパク質であり、APLP1およびAPLP2は当該APPの類縁タンパク質として知られるタンパク質である。
具体的には、配列番号1のアミノ酸配列は、ヒト由来のAPLP2のシグナルペプチドを構成する合計29アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号2のアミノ酸配列は、マウス由来のAPLP2のシグナルペプチドを構成する合計29アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号3のアミノ酸配列は、ヒト由来のAPLP1のシグナルペプチドを構成する合計38アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号4のアミノ酸配列は、マウス由来のAPLP1のシグナルペプチドを構成する合計37アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号5のアミノ酸配列は、ヒト由来のAPPのシグナルペプチドを構成する合計17アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号6のアミノ酸配列は、マウス由来のAPPのシグナルペプチドを構成する合計17アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
そして、本発明の神経幹細胞誘導性合成ペプチドを構成するに当たっては、神経幹細胞誘導性ペプチド配列として、上記配列番号1〜6に示すアミノ酸配列をそのまま適用することができる。
なお、上記の配列番号1〜6には、ヒトもしくはマウス由来のAPP、APLP1、若しくはAPLP2のシグナルペプチド配列を示したが、当該配列はあくまでも例示であり、利用可能なアミノ酸配列はこれに限定されない。例えば、ラット、モルモット等の齧歯類、ウマ、ロバ等の奇蹄類、ブタ、ウシ等の偶蹄類、チンパンジー、オランウータン、カニクイザル等の霊長類等(典型的には哺乳動物)に由来する種々のAPP、APLP1若しくはAPLP2のシグナルペプチド配列を使用可能である。
ここで、本明細書において「少なくとも有する」とは、特定の連続したアミノ酸残基(典型的には配列番号16〜25に示すいずれかのアミノ酸残基)を必須のアミノ酸配列として有し、それよりもC末端側のアミノ酸配列とN末端側のアミノ酸配列とは任意であることを意味する。即ち、上記の部分アミノ酸配列は、特定の連続したアミノ酸残基(典型的には配列番号16〜25に示すアミノ酸残基)のC末端に1個、2個、3個、4個、・・・・又はXC個のアミノ酸残基及び/又はN末端に1個、2個、3個、4個、・・・・・又はXN個のアミノ酸残基をさらに有するアミノ酸配列であり得る。なお、C末端側にXC個目のアミノ酸残基とは全長のシグナルペプチド配列のC末端のアミノ酸残基のことをいい、N末端側にXN個目のアミノ酸残基とは全長のシグナルペプチド配列のN末端のアミノ酸残基のことをいう。
即ち、配列番号16に示すアミノ酸配列は、配列番号1に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて15番目のロイシン残基から27番目のアラニン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号17に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて16番目のロイシン残基から27番目のアラニン残基までの12個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号18に示すアミノ酸配列は、配列番号3に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて19番目のプロリン残基から31番目のロイシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号19に示すアミノ酸配列は、配列番号3に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて26番目のロイシン残基から38番目のグリシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号20に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて18番目のプロリン残基から30番目のロイシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号21に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて25番目のロイシン残基から37番目のグリシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号22に示すアミノ酸配列は、配列番号5に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて1番目のメチオニン残基から14番目のスレオニン残基までの14個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号23に示すアミノ酸配列は、配列番号5に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて3番目のプロリン残基から17番目のアラニン残基までの15個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号24に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて1番目のメチオニン残基から14番目のスレオニン残基までの14個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号25に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて3番目のプロリン残基から17番目のアラニン残基までの15個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
当該膜透過性ペプチド配列は、細胞膜及び/又は核膜を通過し得る膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列であれば特に限定なく使用することができる。多くの好適な膜透過性ペプチド配列が知られているが、特にNoLS(核小体局在シグナル、Nucleolar localization signal)に関連するアミノ酸配列(改変アミノ酸配列を含む)が神経幹細胞誘導性合成ペプチドの膜透過性ペプチド配列のアミノ酸配列として好ましい。配列番号7〜15に、上記NoLSに関連する膜透過性ペプチド配列および他の膜透過性ペプチド配列(改変アミノ酸配列を含む)の好適例を挙げる。具体的には以下のとおりである。
配列番号8のアミノ酸配列は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子)由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号9のアミノ酸配列は、IBV(トリ伝染性気管支炎ウイルス:avian infectious bronchitis virus)のNタンパク質(nucleocapsid protein)に含まれる合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号10のアミノ酸配列は、アデノウイルスのPTP(新生末端タンパク質:pre-terminal protein)1及びPTP2由来の合計13アミノ酸残基からなるNoLSに対応する。
配列番号11のアミノ酸配列は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:Human Immunodeficiency Virus)のTATに含まれるタンパク質導入ドメイン由来の合計11アミノ酸残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号12のアミノ酸配列は、上記TATを改変したタンパク質導入ドメイン(PTD4)の合計11アミノ酸残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号13のアミノ酸配列は、ショウジョウバエ(Drosophila)の変異体であるAntennapediaのANT由来の合計16アミノ酸配列から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号14のアミノ酸配列は、ポリアルギニンとして、連続した合計9個のアルギニン残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号15のアミノ酸配列は、MyoD(筋芽細胞決定因子:myoblast determination)ファミリー阻害ドメイン含有タンパク質由来の合計19アミノ酸残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
なお、配列表に示した上述の膜透過性ペプチド配列はあくまでも例示であり、使用可能な膜透過性ペプチド配列はこれに限定されない。本発明の実施に使用可能な様々な膜透過性ペプチド配列が本願出願当時に出版されている数々の文献に記載されている。それら膜透過性ペプチド配列のアミノ酸配列は一般的な検索手段によって容易に知ることができる。
LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
を含む。配列番号26に示すアミノ酸配列は、配列番号16に示すヒト由来のAPLP2のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列(配列番号1)の部分アミノ酸配列と、上記の配列番号7に示すLIMキナーゼ2由来のアミノ酸配列(膜透過性ペプチド配列)とをリンカーとしての1個のグリシン残基(G)を介して組み合わせることにより構築された合計27アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されているものが好ましい。アミノ酸残基(典型的にはペプチド鎖のC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基のアミド化により、合成ペプチドの構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)を向上させることができる。
このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、容易に神経幹細胞誘導性合成ペプチドを提供することができる。なお、ペプチドのコンホメーション(立体構造)については、使用する環境下(生体外、典型的には対象細胞を培養する培地中)で線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導活性を発揮する限りにおいて、特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はヘリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。かかる観点から、神経幹細胞の生産方法に使用する神経幹細胞誘導性合成ペプチド(或いはまた、神経幹細胞生産用組成物に適用する神経幹細胞誘導性合成ペプチド)としては、直鎖状のものが好ましく、また、比較的低分子量(典型的には100以下、例えば60以下、好ましくは50以下、より好ましくは30以下のアミノ酸残基数)のものが好適である。
また、比較的低分子量の神経幹細胞誘導性合成ペプチドによると、かかる神経幹細胞誘導性合成ペプチドを有効成分(即ち、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導することに関与する物質)とする神経幹細胞生産用組成物を比較的容易且つ低コストで調製することができる。また、上述のように比較的単純な構造(典型的には直鎖状のペプチド鎖)の合成ペプチドは、構造安定性に優れ、取扱いが容易であるため、この点からも神経幹細胞生産用組成物の有効成分として好適である。
なお、本発明の神経幹細胞誘導性合成ペプチドとしては、全てのアミノ酸残基がL型アミノ酸であるものが好ましいが、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導活性を失わない限りにおいて、アミノ酸残基の一部又は全部がD型アミノ酸に置換されているものであってもよい。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、市販のペプチド合成機(例えば、Intavis AG社、Protein Technologies社等から入手可能である。)を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列、修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞(例えばイースト、昆虫細胞、植物細胞)に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)からペプチドを単離し、必要に応じてリフォールディング、精製等を行うことによって、目的の神経幹細胞誘導性合成ペプチドを得ることができる。
なお、組換えベクターの構築方法及び構築した組換えベクターの宿主細胞への導入方法等は、当該分野で従来から行われている方法をそのまま採用すればよく、かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
或いは、無細胞タンパク質合成システム用の鋳型DNA(即ち神経幹細胞誘導性合成ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む合成遺伝子断片)を構築し、ペプチド合成に必要な種々の化合物(ATP、RNAポリメラーゼ、アミノ酸類等)を使用し、いわゆる無細胞タンパク質合成システムを採用して目的のポリペプチドをインビトロ合成することができる。無細胞タンパク質合成システムについては、例えばShimizuらの論文(Shimizu et al., Nature Biotechnology, 19, 751-755(2001))、Madinらの論文(Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(2), 559-564(2000))が参考になる。これら論文に記載された技術に基づいて、本願出願時点において既に多くの企業がポリペプチドの受託生産を行っており、また、無細胞タンパク質合成用キット(例えば、日本の(株)セルフリーサイエンスから入手可能なPROTEIOS(商標)Wheat germ cell-free protein synthesis kit)が市販されている。
こうして得られるポリヌクレオチドは、上述のように、種々の宿主細胞中で又は無細胞タンパク質合成システムにて、神経幹細胞誘導性合成ペプチド生産のための組換え遺伝子(発現カセット)を構築するための材料として使用することができる。
神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導剤)の形態に関して特に限定はない。例えば、典型的な形態として、液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、軟膏、水性ジェル剤等が挙げられる。また、使用直前に生理食塩水又は適当な緩衝液(例えばPBS)等に溶解して薬液を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
なお、神経幹細胞誘導性合成ペプチド(主成分)及び種々の担体(副成分)を材料にして種々の形態の薬剤(組成物)を調製するプロセス自体は従来公知の方法に準じればよく、かかる製剤方法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。処方に関する詳細な情報源として、例えばComprehensive Medicinal Chemistry, Corwin Hansch監修,Pergamon Press刊(1990)が挙げられる。この書籍の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
例えば、皮膚(典型的には真皮)、消化管、血管、骨、歯、軟骨、脳、眼球、肺等の組織由来の線維芽細胞を、神経幹細胞を生産するための対象細胞(原料細胞)として使用することができる。
例えば、生体外(インビトロ)で培養(継代)している線維芽細胞(例えばヒト由来の線維芽細胞)を神経幹細胞に誘導させる場合においては、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(即ち該組成物に含まれる神経幹細胞誘導性合成ペプチド)の適当量を、誘導を行う対象の線維芽細胞(典型的には該細胞を含む細胞培養物)に対し、培養過程のいずれかの段階(例えば、培養開始と同時、若しくは培養開始後の早い段階、又は所定期間の培養(増殖)や継代を行った後)で培地に添加するとよい。添加量及び添加回数は、培養細胞の種類、細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類、等の条件によって異なり得るため特に限定されない。例えば、培地中の神経幹細胞誘導性合成ペプチド濃度が概ね0.1μM〜100μMの範囲内、好ましくは0.5μM〜20μM(例えば1μM〜10μM)の範囲内となるように、1〜複数回添加する(例えば培養開始時ならびに細胞の継代時や培地交換時に合わせて追加添加する)ことが好ましい。
上記神経誘導性合成ペプチドを供給した線維芽細胞(典型的には該線維芽細胞を含む細胞培養物)を培養する時間は、対象の線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する(即ちダイレクトリプログラミングする)ことが可能な時間であれば、特に制限されない。かかる培養時間は、対象の線維芽細胞の種類、状態(細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類)等の条件によって異なり得るため特に限定されないが、一般的に線維芽細胞から多能性幹細胞(典型的にはiPS細胞)を作製した後で、該多能性幹細胞を神経幹細胞に分化誘導するのに要する期間よりも短い。例えば、ここで開示される神経幹細胞の生産方法に係る一実施形態では、対象の線維芽細胞に上記神経幹細胞誘導性合成ペプチド(神経幹細胞生産用組成物)を供給してから凡そ15日後(典型的には18日後、例えば20日後、一般的には25日後)に神経幹細胞を得ることが出来る。一方で、一般的に、線維芽細胞等の体細胞から多能性幹細胞を作製する為に凡そ1か月、多能性幹細胞を神経幹細胞に分化誘導する為に凡そ2か月要するとされる。ここで開示する神経幹細胞の生産方法によると、多能性幹細胞を入手して神経幹細胞を作製するよりも短い期間で神経幹細胞を作製し得る。
上記神経幹細胞に特徴的な性質は、細胞培養物中に存在することが予想される神経幹細胞以外の細胞と神経幹細胞とを区別可能な特徴であれば特に限定されない。例えば、神経幹細胞に特徴的な遺伝子(典型的には神経幹細胞に特異的(選択的)に発現する遺伝子、いわゆる神経幹細胞マーカー遺伝子)の発現状態又は神経幹胞の生理的性質(増殖性、接着性、遊走性、細胞分裂の特徴、栄養要求性等)等が挙げられる。上記神経幹細胞マーカー遺伝子としては、例えばネスチンおよびGFAPが挙げられる。これらマーカー遺伝子の遺伝子産物(典型的にはmRNA又はタンパク質(マーカータンパク質))の存在を指標として、神経幹細胞を細胞培養物中から好適に選別することができる。かかるmRNAおよび、タンパク質の存在は比較的簡易な方法で判別可能であるため、本発明の実施に好適に用いることができる。特にタンパク質は、該タンパク質を認識する抗体を用いた免疫学的手法(抗原抗体反応を利用した手法)によってその存在を判別可能であるため好ましい。例えば、蛍光標識された抗ネスチン抗体を用いてネスチンタンパク質を標識し、該標識を目印として神経幹胞を選別可能である。
このように生体外(インビトロ)で生産した神経幹細胞(或いは該細胞を含む組織、または神経幹細胞を増殖、分化誘導させた組織体等)を修復や再生が必要とされる患部(即ち患者の生体内)に戻すことにより、当該修復や再生を効果的に行うことができる。即ち、組織体の再生が有力な治療法となる種々の疾患を効率的に治療することが可能となる。例えば、ここで開示される生産方法によって生体外で生産された神経幹細胞を患部(即ち患者の生体内)に移入することにより、例えば、パーキンソン病、脳梗塞、アルツハイマー病、脊髄損傷による身体の麻痺、脳挫傷、筋委縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳腫瘍、網膜変性症等の神経疾患および外傷を再生医療的アプローチによって治療することが可能となる。また、ここで開示される神経幹細胞の生産方法の実施によって生体外で生産された神経幹細胞は、再生医療的治療に資する医療用資材として使用できる。また、被験体(患者)自身から得た線維芽細胞を用いて神経幹細胞を生産することで、ドナー不足や拒絶反応といった課題を解決し得る。
これにより、生体内で、典型的には患部またはその周辺に存在する線維芽細胞若しくは患部へ遊走可能な線維芽細胞から、神経幹細胞を産生(生産)することができる。このため、該神経幹細胞を利用することで、種々の神経疾患や外傷により失われた神経機能を効果的に回復させることが可能となる。例えば、パーキンソン病、脳梗塞、アルツハイマー病、脊髄損傷による身体の麻痺、脳挫傷、筋委縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳腫瘍、網膜変性症等の神経疾患および外傷を再生医療的アプローチによって治療することが実現できる。換言すると、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物を上記神経疾患および外傷の再生医療的治療に資する薬剤組成物(薬学的組成物)として使用できる。或いはまた、ヒト以外の動物(典型的にはヒト以外の哺乳動物)の生体内で、移植用の神経幹細胞を作製することも可能である。
上述した配列番号26に示すアミノ酸配列から成る合成ペプチドを後述するペプチド合成機を用いて製造した。なお、以下の説明では、当該合成ペプチドをサンプル1と呼称する。なお、当該合成ペプチドは、C末端アミノ酸のカルボキシル基(−COOH)はアミド化(−CONH2)されている。
上記サンプル1に係るペプチドは、市販のペプチド合成機(Intavis AG社製)を用いてマニュアルどおりに固相合成法(Fmoc法)を実施して合成した。なお、ペプチド合成機の使用態様自体は本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
合成したペプチドはDMSOに溶かし、ストック液を調製した。
上記実施例1で得られた神経幹細胞誘導性合成ペプチド(サンプル1)を用いて、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導(神経幹細胞を作製)した。供試細胞としては、ヒトの皮膚組織由来の線維芽細胞の培養細胞株である、CCD1079SK細胞(ATCC(登録商標) CRL-2097)を用いた。試験の詳細は以下のとおりである。
また、コントロール区として、培地中にペプチドを添加しないペプチド無添加を設けた。かかるペプチド無添加区は上記ペプチド添加区と同様に、本培養開始後4日目、6日目、8日目、10日目、13日目、18日目のタイミングで10%のFBS、100ユニット/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを含有するDMEM培地に培地交換した。
次いで、0.25体積%のTriton(登録商標) X−100を含むPBS(以下、かかる溶液を「PBS−T」という。)を各チャンバースライド内に添加し、室温で30分間静置して細胞膜の透過処理を行った。所定時間が経過後、PBS−Tを除去し、冷たいPBSで各チャンバースライド内の細胞を洗浄した。
そして、1%のBSAを含むPBS(1%BSA含有PBS)を各チャンバースライド内に添加して室温で1時間のブロッキング処理を行った。所定時間が経過後、1%BSA含有PBSを除去し、冷たいPBSで各チャンバースライド内の細胞を洗浄した。
具体的には、各試験区の細胞について、ネスチンタンパク質を以下のとおりに染色した。まず、抗ネスチン抗体(ラビット由来、abcam社製、cat. No. ab92391)を1%BSA含有PBSを用いて250倍希釈した一次抗体希釈液を上記スライドチャンバー内に添加し、4℃で一晩(約16〜18時間)静置した。そして、所定時間経過後、上記一次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、二次抗体として蛍光色素(Alexa Fluor(登録商標) 488)で標識した抗ラビットIgG抗体(ヤギ由来、Life Technologies社製、A-11008)を上記スライドチャンバー内に添加し、室温で1時間、暗所に静置した。そして、所定時間経過後、上記二次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、上記の細胞免疫染色を行った各試験区の細胞をDAPI含有封入液であるSlow Fade(Life Technologies社製、Cat. No. S36946)とカバーガラスを用いて封入した。
また、各試験区の細胞について、GFAPを以下のとおりに染色した。まず、抗GFAP抗体(ラビット由来、abcam社製、at. No. ab7260)を1%BSA含有PBSを用いて1000倍希釈した一次抗体希釈液を上記スライドチャンバー内に添加し、4℃で一晩(約16〜18時間)静置した。そして、所定時間経過後、上記一次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、二次抗体として蛍光色素(Alexa Fluor(登録商標) 555)で標識した抗ラビットIgG抗体(ヤギ由来、Thermo Fisher Scientific社製、A-21428)を上記スライドチャンバー内に添加し、室温で1時間、暗所に静置した。そして、所定時間経過後、上記二次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、上記の細胞免疫染色を行った各試験区の細胞をDAPI含有封入液であるSlow Fade(Life Technologies社製、Cat. No. S36946)とカバーガラスを用いて封入した。
共焦点レーザー顕微鏡による蛍光観察を行った結果を図1〜図4に示す。これらの図面は各試験区におけるネスチンタンパク質或いはGFAPの発現状態を調べた蛍光顕微鏡写真であり、右列には上記免疫蛍光抗体法でネスチンタンパク質或いはGFAPの発現状態を調べた結果を示す蛍光画像を示し、左列にはかかる蛍光顕微鏡観察と同一視野を光学顕微鏡(微分干渉顕微鏡)観察した結果を示す画像(写真)を示す。図1および図2にはサンプル1添加区の結果、図3および図4にはペプチド無添加区の結果を示す。
これらの結果は、ここで開示する方法によると、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に分化誘導し得る、即ち、神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)を生産し得ることを示している。なお、かかる線維芽細胞からの神経幹細胞の生産に際して、多能性幹細胞を作製する手順を必要としなかった。即ち、上記の結果は、ここで開示する方法によると、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に(直接的に)分化転換し得る(即ちダイレクトリプログラミングし得る)ことを示している。
また、上記の結果は、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチド(即ち該ペプチドを有効成分として含む神経幹細胞分化誘導剤)が、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に分化誘導し得るペプチド(組成物)であることを示している。
上記サンプル1に係る合成ペプチド(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)50mgと結晶化セルロース50mg及び乳糖400mgとを混合した後、エタノールと水の混合液1mLを加え混練した。この混練物を常法に従って造粒し、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドを主成分とする顆粒剤(顆粒状組成物)を得た。
また、ここで開示される神経幹細胞の生産方法は、多能性幹細胞を作製する手順を踏むことなく、線維芽細胞から神経幹細胞を作製することが出来る。このため、線維芽細胞から神経幹細胞を効率よく生産することができる。かかる方法により生産した神経幹細胞は、再生医療用途の細胞資源として好適に利用することが出来る。
Claims (10)
- 線維芽細胞から神経幹細胞を生産するために用いる組成物であって、
線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む人為的に合成された合成ペプチドと、
薬学的に許容可能な1種または2種以上の担体と、を含み、
前記合成ペプチドは、
(1)神経幹細胞誘導性ペプチド配列:LLLLLLVGLTAPA(配列番号16)と、
(2)膜透過性ペプチド配列:KKRTLRKNDRKKR(配列番号7)と、
を含み、
前記合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が50以下である、
神経幹細胞生産用組成物。 - 前記合成ペプチドは、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列のN末端側若しくはC末端側に前記膜透過性ペプチド配列を有する、請求項1に記載の神経幹細胞生産用組成物。
- 前記合成ペプチドは、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列と前記膜透過性ペプチド配列との間に、リンカーとして機能するアミノ酸残基を1個、2個又は3個含む、請求項1又は2に記載の神経幹細胞生産用組成物。
- 前記合成ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
を含む、請求項1に記載の神経幹細胞生産用組成物。 - 前記線維芽細胞が、ヒトの皮膚由来の線維芽細胞である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の神経幹細胞生産用組成物。
- 線維芽細胞から神経幹細胞をインビトロにおいて生産する方法であって、
前記線維芽細胞を含む細胞培養物を準備すること、および
前記細胞培養物中に、人為的に製造した合成ペプチドを供給すること、
を包含し、
前記合成ペプチドは、
(1)神経幹細胞誘導性ペプチド配列:LLLLLLVGLTAPA(配列番号16)と、
(2)膜透過性ペプチド配列:KKRTLRKNDRKKR(配列番号7)と、
を含み、
前記合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が50以下である、
神経幹細胞の生産方法。 - 前記合成ペプチドは、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列のN末端側若しくはC末端側に前記膜透過性ペプチド配列を有する、請求項6に記載の神経幹細胞の生産方法。
- 前記合成ペプチドは、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列と前記膜透過性ペプチド配列との間に、リンカーとして機能するアミノ酸残基を1個、2個又は3個含む、請求項6又は7に記載の神経幹細胞の生産方法。
- 前記合成ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
を含む、請求項6に記載の神経幹細胞の生産方法。 - 前記線維芽細胞が、ヒトの皮膚由来の線維芽細胞である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の神経幹細胞の生産方法。
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