+

JP6296776B2 - バイオ肥料の製造方法 - Google Patents

バイオ肥料の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6296776B2
JP6296776B2 JP2013258791A JP2013258791A JP6296776B2 JP 6296776 B2 JP6296776 B2 JP 6296776B2 JP 2013258791 A JP2013258791 A JP 2013258791A JP 2013258791 A JP2013258791 A JP 2013258791A JP 6296776 B2 JP6296776 B2 JP 6296776B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
biofertilizer
inoculation
fertilizer
strain
root
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013258791A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015113274A (ja
Inventor
愛 小野
愛 小野
貴志 見城
貴志 見城
智孝 浅野
智孝 浅野
吉川 正巳
正巳 吉川
横山 正
正 横山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KYOTO PREFECTURE
Tokyo University of Agriculture and Technology NUC
Asahi Industries Co Ltd
Original Assignee
KYOTO PREFECTURE
Tokyo University of Agriculture and Technology NUC
Asahi Industries Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KYOTO PREFECTURE, Tokyo University of Agriculture and Technology NUC, Asahi Industries Co Ltd filed Critical KYOTO PREFECTURE
Priority to JP2013258791A priority Critical patent/JP6296776B2/ja
Priority to PCT/JP2014/083111 priority patent/WO2015093428A1/ja
Publication of JP2015113274A publication Critical patent/JP2015113274A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6296776B2 publication Critical patent/JP6296776B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C05FERTILISERS; MANUFACTURE THEREOF
    • C05FORGANIC FERTILISERS NOT COVERED BY SUBCLASSES C05B, C05C, e.g. FERTILISERS FROM WASTE OR REFUSE
    • C05F11/00Other organic fertilisers
    • C05F11/08Organic fertilisers containing added bacterial cultures, mycelia or the like
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C05FERTILISERS; MANUFACTURE THEREOF
    • C05DINORGANIC FERTILISERS NOT COVERED BY SUBCLASSES C05B, C05C; FERTILISERS PRODUCING CARBON DIOXIDE
    • C05D9/00Other inorganic fertilisers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N1/00Microorganisms, e.g. protozoa; Compositions thereof; Processes of propagating, maintaining or preserving microorganisms or compositions thereof; Processes of preparing or isolating a composition containing a microorganism; Culture media therefor
    • C12N1/04Preserving or maintaining viable microorganisms
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N1/00Microorganisms, e.g. protozoa; Compositions thereof; Processes of propagating, maintaining or preserving microorganisms or compositions thereof; Processes of preparing or isolating a composition containing a microorganism; Culture media therefor
    • C12N1/20Bacteria; Culture media therefor

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Fertilizers (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

この発明は、微生物資材を利用しているバイオ肥料に関し、特に、保存性に優れ、作物定着性の高い微生物肥料に関する。
従来から、コスト的に優位で、速効的、かつ高い肥効効率という観点から主に化学肥料が一般的な作物生産に使用され、作物増産に貢献してきた。
しかしながら、様々な食品の品質、安全性に関する問題や、肥料成分の溶脱、等による環境負荷問題の発生などから、近年、化学肥料や農薬、等の化学物質に依存した栽培体型が見直される傾向にある。そして、消費者が希望する、安心、安全、かつ良食味な作物生産に対応し、環境保全型農業を追及する傾向が強まっている。これに伴って、微生物を含んだ資材の施用が増加する傾向にある。
微生物を含んだ資材の施用に供すべく、これまで市販されていた微生物資材には、冷蔵条件で保管したり、スキムミルク等による単一の菌ペーストを調製しなければ、長期間(例えば、3カ月)、菌数や、その効果を維持することが難しいという問題があった。
このような問題への対策として、紫外線の照射や、植物残渣、等を添加すること、等によって資材に含まれる菌を単一化すること(雑菌を除く)や、対象菌のみの活性を増加させることなどが一般的に行われていた。
このような微生物資材において、菌数や、その効果を維持することを目的とした提案もいくつか行われている。例えば、特許文献1には、肥料や多孔質体に微生物培養液あるいは微生物培養液上澄みを加え、造粒した微生物資材が提案されている。また、特許文献2には、Bacillus属細菌を芽胞化することにより、高い生残性を保ち、菌濃度の高い飼料にできることが提案されている。
特開2002−363561号公報 特開2000−217567号公報
この発明は、常温(25℃前後)で6ケ月以上、菌数や、その効果を維持可能なバイオ肥料を提案することを目的にしている。
本願発明は、Bacillus属細菌を培養した後、65℃〜80℃の温度範囲で60分間以上加熱処理してなる芽胞率100%のバイオ肥料である。
この発明によれば、常温(25℃前後)で6ケ月以上、菌数や、その効果を維持可能なバイオ肥料を提供することができる。
また、Bacillus属細菌に従来から認められていた生育促進、等の特性を一層効果的に発現させ、特に、施用した作物(例えば、イネ)の根域拡大、根部への定着性向上、根の重量増加効果、栄養吸収促進効果を向上させることのできるバイオ肥料を提供することができる。
Bacillus pumilus TUAT1株(NITE BP−1356)を用いた1/5000aポット試験における各処理区の乾物蓄積量を表す図。 Bacillus pumillus TUAT1 株(NITE BP−1356)の栄養型、芽胞型の違いがイネの根伸長に与える影響を比較した検討結果を表す参考写真であって、参考写真中、左側が芽胞型、右側が栄養型。
従来からBacillus pumilusは、生育促進、病害抑制、臭気低減、蛋白分解性、等の特性を有する有用菌であることが知られていた。
本願の発明者等は、このBacillus pumilusの中から、Bacillus pumilus TUAT1株(NITE BP−1356)を選抜し、イネに施用した場合の根域拡大、栄養吸収促進効果に関して次のように検討を行った。
なお、Bacillus pumillus TUAT1株は、特許微生物寄託センターに国際寄託しており、受託番号はNITE BP−1356である。
(供試菌株および接種剤の調整)
Bacillus pumilus TUAT1株(NITE BP−1356)(以下、「TUAT1株」と表すことがある)を1g/リットルの塩化アンモニウムを含む5リットルのNFb液体培地で一週間、25℃で振とう培養し、4℃、6000rpm、30分の遠心分離で集菌した。
次に2mmのふるいを通過させた東京農工大学付属農場の黒ボク土壌1kgを121℃、40分のオートクレーブで滅菌し、100mLの滅菌蒸留水に前記集菌菌体を混和し、28℃、最大圃場容水量下で1週間静置し、熟成させた。また接種材の菌密度は希釈平板法により測定し、10〜10cfu/g に調整した。
(接種法)
TUAT1株の「リーフスター」等への接種は、ポット試験での場合、苗移植時に上記接種剤200gで苗の根部を包むようにして接種した。また圃場試験においては、接種材100gをバット上で水に懸濁させ懸濁液とし、そこに移植苗の根を1時間浸すことで接種した。
接種法の検討で、イネの場合は、播種時に上記接種剤を接種し、その後、複数回同様な接種を行うと、安定的な効果が得られることが分かった。
また、移植時の接種は、移植苗を一夜、接種剤に浸漬することで安定的な接種は確立される。
(ポット試験)
1/5000aの磁製ポットに篩別した東京農工大学付属広域都市圏フィールドサイエンス研究センターFM本町水田の灰色低地土に肥料を混和して充填し、20日育苗したリーフスター苗を移植した。ポットは3つの施肥段階を設けた。すなわち、慣行区(5kg/10a)、慣行の60%の窒素減肥をした減肥区(2kg/10a)、無施肥区(0kg/10a)である。
さらにそれぞれの接種区・無接種区を設け、計6処理区とした。リン酸およびカリウムについては慣行区および減肥区で5kg/10aとなるように施用し、無施肥区にはどちらも与えなかった。ポットは東京農工大学農学部ガラス室内にて、各処理区3連で室内に無作為に配置し、自然光下で栽培した。栽培を開始して106日後に植物体を根ごと採取し、穂、茎葉部および根部の部位別に分けた。通風乾燥機内で48時間、70℃で乾燥後、乾物重を測定した。また化学分析項目として、乾燥植物体を以下に記すように植物体養分分析、15N自然存在比の測定に供した。
(圃場試験)
圃場における接種試験は、2カ所の水田で行った。
一箇所は、東京農工大学付属広域都市圏フィールドサイエンス研究センターFM本町水田(多摩川沖積土壌)である。ここでは3つの施肥段階、すなわち慣行区(10kg/10a)、慣行の30%の窒素減肥をした減肥区(7kg/10a)、無施肥区(0kg/10a)とし、ポット試験と同様にそれぞれ接種区・無接種区を設け、計6処理区とした。リン酸およびカリウムについては慣行区および減肥区で10kg/10aとなるように施用し、無施肥区にはどちらも与えなかった。
20日間育苗したイネ「リーフスター」苗を、栽植密度が22.2株/mとなるように、一株当たり3本で移植した。
調査項目は、以下の1)、2)、3)とした。
1)生育調査項目として、各処理区の群落内から連続する5つの株を生育調査株として選び、1週間ごとに、草丈、茎数、葉色(SPAD値)の測定を行った。葉色の測定には、SPADメーター(MINOLTA、 SPAD−502)を使用した。
2)成長解析項目として、登熟期である移植後127日目に各処理区から2条8株(計16株)の地上部を採取し、地上部新鮮重を測定した。その内平均的な新鮮重をもつ4株を、穂、葉身(葉とする)、茎及び葉鞘および枯死部(茎とする)の部位別に分け、乾物重を測定した。
3)化学分析項目として、乾物を以下に記す植物体養分分析、15N自然存在比の測定に供した。
もう一箇所は、秋田県大潟村の水田である。ここでは、機械移植前に苗箱を接種剤を懸濁した溶液に浸漬し、その後、移植機で移植した。測定項目は、草丈、茎数、葉色(SPAD)、及び収量構成要素とした。
(植物体養分分析)
植物体の窒素、リン酸、カリウムの吸収について評価するために、植物体中のそれぞれの濃度、および集積量を求めた。まずポット試験及び圃場試験において得られた乾燥植物体を粉砕機で粉砕し、その植物粉を濃硫酸−過酸化水素法により湿式分解した。その後分解液中の窒素濃度をインドフェノール法、リン濃度をバナドモリブデン酸法によって比色し、分光光度計(Shimadzu,UV-160)を用いて定量した。またカリウム濃度は試料溶液を5倍または10倍に希釈し、炎光光度計(英弘精機産業,FLA型)を用いて測定した。これらから、植物体に含まれる窒素、リン、カリウムの濃度を求め、さらに乾物重の値を乗ずることにより、植物体中のこれらの要素の集積量を計算した。
15N自然存在比の測定)
接種菌が固定した窒素がリーフスターへと移行しているかを確かめるために、ポット試験および圃場試験において得られた上記乾燥植物体粉末のさらに一部を超微細粉砕機によって処理し、15N自然存在比の測定に供した。測定はカリフォルニア大学デービス校安定同位体施設に依頼分析した。
(結果)
(1/5000aポット試験)
(乾物重)
出穂期におけるリーフスターの部位別乾物重の測定値を表1に示した。根部では、慣行区の無接種区を指数表示で100とすると接種区は205となり、接種により根量の乾物重が約2倍に増加していた。
また、減肥区でも、慣行無接種区に比べて137の指数を示し、根乾物重が増加する傾向がみられ、TUAT1株の接種は根部の生育を促進することが分かった。
また無施肥区では根部への影響は見られず、施肥段階と接種との間に危険率5%で交互作用の効果が認められたことから、根の生育に関して、施肥量により接種の効果がより発現することが示された。
全乾物重の値は窒素の施肥量および接種により有意な増加を示し(P = 0.01)、対照(無接種)区との比較では減肥区および慣行区で有意な乾物蓄積の増加が認められた。また減肥接種区の全乾物重の値は慣行無接種区のそれと類似し、減肥した窒素分を接種により補償できる可能性が示唆された。さらに図1に施肥段階と乾物重の相関を示した。この結果施肥段階と乾物重に高い相関が認められ、接種によって乾物蓄積量が上積みされるように増加していた。
(養分分析)
1ポットあたりのリーフスターへの窒素集積量に関して、分散分析の結果、施肥の段階および接種それぞれの効果において有意な差が認められ(P = 0.05、P = 0.01)、施肥および接種によって窒素吸収が促進されていることが示された(表1)。
リンおよびカリウム集積量に関しては窒素と同様に、施肥の段階および菌接種それぞれの効果において有意な差が認められ(表1)、施肥および接種によってリンおよびカリウムの吸収が促進されていることが示された。
(δ15N値に基づく蓄積窒素の由来)
15Nの自然存在比は、土壌では15Nの割合が高く、窒素の原子量は重くなる。一方空気中の窒素の原子量は15Nの割合が低く、その原子量は軽くなる。この原理に基づくと、化学肥料の窒素や微生物の生物窒素固定作用で固定された窒素は、土壌中に存在する土壌由来の窒素原子より原子量が軽くなる。そのため、化学窒素肥料や生物窒素固定の窒素を主に蓄積した植物体の窒素の原子量は軽くなる。一方、土壌由来の窒素を吸収した植物体の窒素の原子量は高くなる。
表2にポット試験の根と茎葉部の接種及び無接種区のδ15N値を示した。その結果、化学肥料の施用が増えると、無施肥区に比べて無接種区ではδ15N値が減少し、軽くなっていることが分かった。これは、化学窒素肥料がδ15N値に直接的に影響していることを示している。
一方、接種区では、無接種区に比べて、その値は若干増加する傾向を示していた。この結果から、TUAT1株を接種したイネは、発根により化学窒素肥料と共に、土壌中の窒素を、無接種区に比べて多く吸収していることが分かった。
(圃場試験1(農工大水田圃場))
(乾物重)
登熟期におけるリーフスターの地上部部位別乾物重の測定値を表3に示した。分散分析の結果、地上部の全乾物重では施肥および菌接種それぞれの因子について有意差が認められた(P = 0.01)。各施肥段階での比較では、慣行区および減肥区において、接種区が対照(無接種)区を有意に上回り、接種効果が認められた。また無施肥区では菌接種の効果は認められなかった。また全体として施肥レベルと接種の有無の両因子間に交互作用が認められ(P = 0.05)、施肥段階が上がるにつれ接種効果が表れることが示唆された。地上部部位別にみると、慣行区ではすべての部位で、減肥区では葉と茎で乾物重の有意な増加が認められた。
6処理区のすべての間の多重比較では、減肥接種区と慣行無接種区との間に有意差は認められなかったことから、ポット試験と同様に窒素肥料の減肥が接種により補償できる可能性が示唆された。
(養分分析)
表3に登熟期のリーフスターの窒素、リンおよびカリウムの集積量の値を示した。各栄養素において、施肥および接種の有無両因子の有意な効果が、地上部全体および部位別で認められた(P <0.05)。さらに地上部全体では乾物重の値と同様に両因子間の交互作用が認められた。
すべての施肥段階にていて、接種により地上部の窒素集積量が増加することが示され、その増加量は無施肥区では17%、減肥区では34%、慣行区では37%であった。ポット試験では植物体中の窒素濃度に菌接種の影響は表れていなかったが、圃場試験では、窒素濃度への菌接種の明瞭な影響が認められ、さらに窒素濃度と施肥の段階には極めて高い相関(R2>0.99)がみられた。すなわちポット試験の結果とは異なり、圃場試験での接種による植物体中への窒素の集積の促進は、施肥の量にさらに上積みをする形で、植物体中の窒素濃度を高めることによって起こっていた。
またリンおよびカリウムの集積に関して、窒素と同様に施肥量および接種により有意な効果が認められ、植物体全体では、リンでは減肥区と慣行区、カリウムでは慣行区において接種による有意な集積量の増加が認められた(表3)。植物体中のリンおよびカリウム濃度は窒素の施肥量と相関する傾向があり、窒素施肥量に伴ってリンやカリウムの吸収も促進されていた。
(圃場試験2(秋田県大潟村水田圃場))
秋田県大潟村では、「環境創造型農業」を実践し、JAS有機栽培や、減農薬無化学肥料栽培が積極的に行われており、また、イネ栽培は大規模な機械化栽培である。そこで、そのような大規模な機械化栽培に、Bacillus属細菌バイオ肥料の接種が適応可能か検証した。
表4に、農家圃場における、生育状況を示した。
草丈に関しては、F及びT圃場のイネに関して、対照(無接種)区と接種区に大きな違いは無かった。
葉のSPAD値に関しては、T圃場が、F圃場より若干高めに推移し、T圃場の土壌中の窒素供給力がF圃場のそれより高いことを示していた。茎数に関しては、両圃場のイネ共、最高分けつ期(7月23日)に於いては、接種区の茎数が対照(無接種)区を上回り、8月14日の出穂期以降に於いても、茎数は接種区が対照(無接種)区を上回った。以下にはデータを示していないが、他の圃場試験でも同様な効果が示されていた。
表5に、秋田県大潟村農家圃場でのTUAT1下部接種がイネ品種「こまち」の収量および収量構成要素へ与えた効果を記載した。
F圃場では、対照区(TUAT1株無接種)および接種区間で、千粒重、登熟歩合に大きな違いは無く、一穂粒数はむしろ低下した。しかし、接種区の穂数が対照区のそれより22.4%増加し、その結果、接種区の収量も32.8%増加した。また、T圃場では、千粒重、登熟歩合、一穂粒数は、対照区と接種区間で大きな違いは無かったが、接種区の穂数が対照区のそれに比べて14.6%増加し、その結果、接種区の収量が対照区のそれに比べて17.9%増加した。
このように、慣行施肥区にTUAT1株を接種すると、穂数の増加に伴い、イネの子実収量も増加することが分かった。
本願の発明者等は、上述したBacillus pumilus TUAT1株(NITE BP−1356)による根域の拡大や栄養吸収促進効果、特に、イネに施用した場合の優れた根域の拡大、栄養吸収促進効果に着目し、同様の傾向が示されるBacillus pumilusについて、更に、研究を進めることで本願発明を完成させたものである。
本願の発明者等は、引き続き、接種源として使用するTUAT1株(NITE BP−1356)の生育ステージの違いがイネの生育や接種菌株の根部定着性に及ぼす影響を検討した。
イネ根部における定着菌数調査のため、TUAT1株のストレプトマイシン100ppm・リファンピシン100ppm二重薬剤耐性変異株(TUAT1SR8株)を接種試験に供した。
品種は、ヒノヒカリを用いた。
試験区は、接種源として使用する菌の生育ステージを比較するために、栄養型細胞接種区および芽胞接種区を設けた。
栄養型細胞は、Trypticase Soy broth培地を用い、30℃、暗条件、105rpm、24時間振とう培養後に集菌し、滅菌水に再懸濁して接種源とした。
芽胞は、Trypticase Soy broth培地を用い、30℃、暗条件、105rpm、10日間振とう培養後に集菌し、生理食塩水に懸濁後、65℃で30分間2回湯煎により栄養型細胞を死滅させた後、芽胞を滅菌水に再懸濁して接種源とした。
種籾は、塩水選、60℃で10分間温湯消毒、15℃で7日間浸種後、25℃で16時間催芽後に播種し、20日間育苗した。
接種は、育苗した苗の根部に付着した土壌を除去し、25℃、暗条件下において、1本あたり1mlの接種源に24時間根部を浸漬した。
対照(無接種)区は滅菌水に同様に浸漬した。接種苗は、0.5gの燐加安14号を添加した400mlの無肥料培土を充填した半透明ポットに1株3本植で移植し、ガラス温室において、最低夜温15℃で33日間管理した。
調査項目は、イネ生育量、イネ根部におけるTUAT1SR8株の定着性とした。
定着性調査では、根部に付着した土壌を水道水で洗浄した後、生理食塩水中で10分間振とうした液を根面試料とした。さらに、同生理食塩水中から、根を取出して、細断・磨砕、生理食塩水で希釈した液を根内試料とした。
なお、菌数計測は、培地はリファンピシン100ppm、ストレプトマイシン100ppm、シクロヘキシミド200ppm含有Trypticase Soy agarを使用し、希釈平板法で計測した。
生育量調査の結果、栄養型細胞接種区では42%、芽胞接種区では80%%、根重が有意に増加した。
定着性調査の結果、栄養型細胞接種区では、接種24時間処理直後である移植時の定着菌数は10(cfu/groot)、7日後には検出されなくなったが、芽胞接種区では、移植時の定着菌数は10(cfu/groot) 、移植25日後でも104〜5(cfu/groot)と安定してイネ根部に定着することが明らかになった。
根部に定着する菌の芽胞割合を調査するため、根面および根内試料を調整後、65℃で1時間湯煎して栄養型細胞を死滅させたところ、およそ半分程度に減少していたことより、栄養型細胞と芽胞は同程度の割合で混在していると考えられた。
このことは、芽胞は休眠状態にあるのではなく、根部において本菌株の増殖環の1ステージとして存在していると考えられた。
この検討より、接種源を芽胞にすることで、イネ根部での定着性が高まり、根重増加効果が安定化する可能性が示唆され、安定した接種効果を得るための条件として接種源を芽胞にすることが有用であるとの可能性を確認できた。
これらの検討に基づく本願発明は、Bacillus属細菌を培養した後、65℃〜80℃の温度範囲で60分間以上加熱処理してなる芽胞率100%の バイオ肥料(微生物肥料)である。
本発明の微生物肥料はBacillus属細菌を培養し、芽胞率100%としたものであるので、常温(25℃前後)での長期間の保存が可能になり、菌数およびその効果を長期間(6カ月以上)にわたって維持できるものになる。また、施用したときに作物(特にイネ)の根への定着性が向上したものになる。
発明者等の検討によれば、芽胞することによって、作物(特にイネ)の生育量の増加が、無接種ないし栄養型の接種と比較して高くなることを確認できた。
芽胞を形成することにより温度、水分などのストレス耐性が高められることは従来から知られていたことである。本願の発明者等は、上述した条件で芽胞率100%とすることによって、Bacillus属細菌に従来から認められていた生育促進、等の特性を一層効果的に発現させ、特に、施用した作物(例えば、イネ)の根域拡大、根部への定着性向上、根の重量増加効果、栄養吸収促進効果が向上することを見つけ出して本願発明を完成させたものである。
上述したように、Bacillus属細菌を培養した後、65℃〜80℃の温度範囲で60分間以上加熱処理することにより栄養型を完全に死滅させ、芽胞率100%とすることができる。
発明者等の検討によれば、栄養型を完全に死滅させて芽胞率100%とし、その上で、施用した作物の根域拡大、根部への定着性向上、根の重量増加効果、栄養吸収促進効果などを効果的に向上させる上で、65℃〜80℃の温度範囲で60分間以上加熱処理を行うことが望ましかった。
なお、60分間以上の加熱処理時間分間は、複数回に分けて行い、トータルでの加熱処理時間が60分間以上になるものでもよい。
また、芽胞率100%とし、その上で、施用した作物の根域拡大、根部への定着性向上、根の重量増加効果、栄養吸収促進効果などを効果的に向上させると共に、製造コスト・効率なども考慮して、65℃〜80℃の温度範囲での加熱処理はトータルで70分間は越えないことが望ましい。
芽胞率100%とする芽胞化の条件は、65℃〜80℃の温度範囲で、60分間以上加熱処理する条件を満たすものであればよく、培地に限定は無い。例えば、 Trypticase soy plate(20ml培地、9cm直径シャーレ)で、28℃にて10日間〜14日間培養する。ここから集菌して生理食塩水で洗浄(3回)し、再度、集菌して生理食塩水で懸濁した後、65℃で30分間加熱処理する、前記の工程を2回繰り返すことで、65℃での加熱時間を60分にする。こうして得た本発明のバイオ肥料(芽胞液)は4℃で冷蔵保存し、保存したバイオ肥料(芽胞液)を滅菌水で希釈して接種源として使用する。
上述した本発明のバイオ肥料は、施用した作物の根域拡大、根部への定着性向上、根の重量増加効果、栄養吸収促進効果などを効果的に向上させるという観点から、菌濃度が1.0×10〜9.0×10cfu/gであることが望ましい。
上述した本発明のバイオ肥料において、前記Bacillus属細菌は、Bacillus pumillus TUAT1株とすることができる。Bacillus pumillus TUAT1株は、特許微生物寄託センターに受託番号NITE BP−1356で国際寄託されている菌であって、発明者等の検討によれば、芽胞率100%とすることで、施用した作物の根域拡大、根部への定着性向上、根の重量増加効果、栄養吸収促進効果などを効果的に向上させることができた。
次に、本発明が提案する粒状バイオ肥料(粒状微生物肥料)は、粒状の肥料用資材を上述した本発明のバイオ肥料に浸漬した後、水分12%〜2%になるまで乾燥処理してなるものである。あるいは、肥料用資材に上述した本発明のバイオ肥料を添加・混合して造粒した後、水分12%〜2%になるまで乾燥処理してなるものである。
ここでの乾燥処理は水分調整を目的として行うものである。
本発明の粒状バイオ肥料における菌濃度を上述した1.0×10〜9.0×10cfu/gにする上で、乾燥処理は水分2%になるまでにしておくことが望ましく、一方、水分が15%を超えている状態で乾燥処理を終えた場合、製造時点の粒状バイオ肥料の菌濃度が1.0×10〜9.0×10cfu/gの範囲にあっても、その後の保存時に菌数が10cfu/gを下回るようになるので、好ましくない。
なお、乾燥処理後の粒状バイオ肥料の菌濃度を1.0×10〜9.0×10cfu/gとする上で、水分調整の目的で行う乾燥工程には、高温の火力乾燥ではなく、通風乾燥方式や、流動層方式の乾燥を行うことが望ましい。例えば、通風乾燥機を用いて4時間以内の乾燥により、水分12%〜2%とすることができる。
上述した本発明の微生物肥料をこのようにして粒状バイオ肥料とすることで、菌数およびその効果を更に長期間にわたって維持できる(1年以上にわたる常温での長期保存可能)ものになる。また、ハンドリング性が向上し、粒状肥料として施用する(例えば、育苗時に培土に混合施用する)ことで、作物の根への定着性を一層向上させ、肥効を向上させることができる。
前記の肥料用資材はケイソウ土、ゼオライト、シリカゲルの中のいずれか一種又は複数種の組み合わせにすることができる。
ケイ酸資材はイネの耐倒伏性向上や健苗効果を有している、そこで、シリカゲルを肥料用資材に用いる、あるいは、シリカゲルを肥料用資材の一部に用いることで、イネ生産における増収・減肥効果を向上させることができる。
これらの肥料用資材を造粒して粒状の肥料用資材とし、これを上述した本発明のバイオ肥料に浸漬した後、乾燥、篩分けを行って平均粒径2〜4mmの粒状バイオ肥料とする。
あるいは、これらの肥料用資材に上述した本発明のバイオ肥料を添加・混合して造粒した後、乾燥、篩分けを行って平均粒径2〜4mmの粒状バイオ肥料とする。
造粒は、転動造粒(ドラム、皿)、押出成形(ペレット)、圧縮成型(ブリケット)など、造粒形式を問わず、種々の造粒形式で行うことができる。
上述したいずれの形式で製造する粒状バイオ肥料であっても、ハンドリング性の観点から、硬度1kgf以上であることが望ましい。
前述した本発明の粒状バイオ肥料における前記肥料用資材には、μm以上の孔径を有する多孔質資材が含まれることが望ましい。本発明のバイオ肥料において微生物の大きさは1μm以上である。そこで、μm以上の孔径を有する多孔質資材が用いられていると、μm以上の孔の中に微生物を封入できることになるので有利である。
例えば、ケイソウ土(焼成処理していないもの)は、μm以上の孔径を有する多孔質資材であるので、Bacillus属菌を封入する多孔質資材として有用である。
上述した複数種の肥料用資材を組み合わせて使用する場合、例えば、シリカゲルとケイソウ土(焼成処理していないもの)とを重量で7:3の割合で用い、これに、総重量の1.2〜3%のバインダー(例えば、デンプン)を加えて、混合、成型(造粒)する。一方で、Bacillus属細菌を培養した後、65℃〜80℃の温度範囲で60分間以上加熱処理して芽胞率100%とした本発明のバイオ肥料の溶液を準備する。そして、前記のように準備した粒状の肥料用資材と等量の前記バイオ肥料溶液を添加し、1時間浸漬する。その後、バイオ肥料溶液をデカンテ―ションで除去し、通風乾燥(70℃、4時間)して水分2〜12%の本発明の粒状バイオ肥料を得ることができる。
なお、前記において、ケイソウ土、ゼオライト、シリカゲルの中のいずれか一種又は複数種の組み合わせからなる肥料用資材の総重量に対して、1.2〜3%の重量割合で添加するバインダー(例えば、デンプン)は、施用された本発明の粒状バイオ肥料が直ちには崩壊しないが、施用後1週間程度で崩壊するようになる目的で添加するものである。このような目的で使用される肥料用バインダーであればこの技術分野で公知の種々の物を使用できる。
以下、本発明の好ましい実施例について説明するが、本発明は、上述した実施の形態及び、以下に説明する実施例に限られることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
Bacillus属であるBacillus pumillus TUAT1株(NITE BP−1356)は、そのライフサイクルのなかに芽胞と呼ばれる形態をとることができ、温度や水分等の環境条件に対して強い耐性を持つことが可能である。また、TUAT1株はイネにおいて、その根伸長を促進する機能を持ち、養分吸収獲得の増加に貢献することにより、収量を増加させることが可能である。
しかしながら、従来、栄養型、芽胞型の違いがこれらの効果にどの程度、影響するかについては明らかではなかった。そこで、この実施例では、イネへの異なる形態のTUAT1株の接種が、イネの生育に対して影響を与えるかについて明らかにした。
なお、この実施例では、イネの根の定着性を適切に評価する目的で、TUAT1株の他に、TUAT1にリファンプシンとストレプトマイシン耐性を付与した抗生物質耐性株(TUAT1SR8株)を用いた。
接種源の調整
栄養型および芽胞の接種源の調整は以下のように行った。
栄養型の接種源の調整は、50%グリセロール溶液で保管した2種類のTUAT1株[TUAT1株と上述したファンプシンとストレプトマイシン耐性を付与した抗性物質耐性株(TUAT1SR8株)]を、500ml容三角フラスコを用いて200mlのTrypticase Soy Broth (BD社製)に接種した。接種後、28℃・110rpmの条件で24時間培養を行った。24時間の培養後、遠心分離機(BECMAN製 Centrifuge Avanti TM25)により集菌し、同量の生理食塩水を用いて、3回洗浄を行った。洗浄後、10cfu/mlの濃度に滅菌水で調整したものを接種源とした。また、接種源は使用まで4℃の条件で冷蔵保存した。
芽胞の接種源の調整は、2種類のTUAT1株(TUAT1株と上述したTUAT1SR8株)をそれぞれ9cm直径シャーレを用いて作成した20ml Trypticase Soy Agarに接種した。接種後、28℃の条件で培養を行った。培養後、遠心分離機により集菌し、同量の生理食塩水を用いて、3回洗浄を行った。洗浄後、65℃、30分間の条件で加熱処理を行い、栄養型細胞を死滅させた。その後、洗浄と加熱処理をもう一度行い、10cfu/mlの濃度に滅菌水で調整したものを接種源とした。また、接種源は使用まで4℃の条件で冷蔵保存した。
栽培試験
供試植物 イネ(Oryza sative) cv. ヒノヒカリ
栽培概要
ヒノヒカリの種子は塩水選、温湯消毒後、15℃の条件で8日間浸種した。浸種後、半日催芽処理したもみを育苗培土(無肥料育苗培土:肥料入育苗培土=2:1)に播種した。20日間育苗した苗の根を水道水で洗浄後、10cfu/mlの濃度に調整したTUAT1株とTUAT1SR8株の菌液を、それぞれを異なる試験区に1本あたり1ml接種した。接種24時間後、苗を無肥料育苗培土400mlにリンカアン14号0.5g添加した土壌を充填した500ml容ポットに移植した。移植は1ポットあたり3本とした。移植後、ガラスハウスで栽培し、33日後にTUAT1株とTUAT1SR8株を接種したイネの地上部と根部の重量を測定した。
定着菌数のモニタリング
定着菌数のモニタリングには根面、根内の定着菌数を計数するためにTUAT1SR8株を接種したイネのみを使用した。
1) 根面試料
ガラスハウスで栽培したイネを0、4、7、14日後にサンプリングした。サンプリングした根に付着した土壌を除去し、サンプルを根重量の約50倍量の生理食塩水で30分間振とうした液を根面試料とした
2) 根内試料
根面試料を調整後、根の適量を生理食塩水で摩砕した。摩砕後、根重量の約10倍量の生理食塩水を添加して得た懸濁液を根内試料とした
3)菌数の測定
リファンピシン100ppm、ストレプトマイシン100ppm、シクロヘキシミド200ppm含有 Trypticase soy plateを用いて希釈平板法で菌数を測定した。
芽胞率の調査
調整した接種源、根面および根内試料を65℃、1時間の加熱処理を行った。処理前を生菌数、処理後を芽胞数として、割合を算出した。
結果
図2は、この実施例での検討結果を表す参考写真であって、参考写真中、左側が芽胞型、右側が栄養型である。
Bacillus pumilus TUAT1株の栄養型、芽胞の接種源の違いが、イネ根部における定着性に与える影響を検討した結果、栄養型の菌数は根内において、接種直後に4.6×10 cfu/ml検出されていたものが、7日後には検出されないことが示された。根面においても同様な結果であった。
一方、芽胞の菌数は根内において、接種直後に6.3×10cfu/g検出されており、25日後であっても、5.4×10cfu/gとわずかに減少しているものの、菌数が維持されることが示された(表6)。
2種類のTUAT1株接種の栄養型、芽胞の接種源の違いが、イネの生育に対する影響を検討した結果、栄養型の接種と比較して、芽胞型では根重が危険率0.1%で有意に増加していることが認められた(t検定)。
また、TUAT1 SR8株では、根重および分げつ数が有意に増加していることが認められた(表6)。これらの結果から、TUAT1株の接種源の違いは芽胞の方が、イネへの定着性および生育への効果が高いことが明らかになった。
この実施例での検討により、根部への定着性向上、根の重量増加効果というイネの生育に対する影響の観点で、TUAT1株と、抗生物質耐性株(TUAT1SR8株)とは、栄養型に比較して同様に優れた効果を発揮しているものであることを確認できた。そこで、本発明のバイオ肥料によって発現される作用・効果、機序に関しては、TUAT1株、TUAT1SR8株のどちらを用いて検討を行っても、この実施例で確認できたように、同様の結果が示されると認められる。
TUAT1株にリファンプシンとストレプトマイシン耐性を付与した抗生物質耐性株(TUAT1SR8株)を Trypticase soy broth液体培地200mlに接種し、30℃、110rpmの条件で11日間培養した。培養後、65℃、30分間の条件で2度加熱処理を行い、5.4―5.5×10cfu/mlの芽胞を調製した。
熱処理は湯煎、処理後はサンプルを氷冷することにより行った。加熱処理後、希釈平板法により、菌数の計数を行った。菌数計数用の培地はストレプトマイシン、リファンプシン100ppmを含むTrypticase soy plateで行った。菌数の計数は2サンプル2連の平均値で算出した。
結果
検討の結果を以下の表7に示す。
TUAT1SR8株の芽胞は70℃の加熱処理では180分の処理条件であっても初期の菌数の減少がほとんど認められなかったが、80℃の処理条件では初期の菌数と比較して1/1000の菌数濃度まで減少することが示された。このことから、TUATSR8株の耐熱性は70℃の条件であることが明らかになった。
粒状肥料にTUAT1株を封入した資材の効果を検討した。
粒状肥料
シリカゲルとケイソウ土(焼成していないケイソウ土)を重量比7:3の割合で混合し、粒状成型した肥料(造粒促進剤(バインダー)として総重量3%のでんぷんを添加)。
粉状肥料
シリカゲルとケイソウ土重量比7:3の割合で混合(造粒促進剤(バインダー)として総重量3%のでんぷんを添加)した肥料
TUAT1株封入資材の調製
菌液の調製
TUAT1株にリファンプシンとストレプトマイシン耐性を付与した抗生物質耐性株(TUAT1SR8株)を200ml Trypticase soy broth液体培地を含む三角フラスコ10本に接種し、28℃、110rpmの条件で11日間培養を行った。培養後、65℃、1時間の条件で加熱処理を行い、室温、8,000rpm、10minの条件で遠心分離を行った。遠心後、生理食塩水で3回洗浄し、2リットルの生理食塩水に懸濁し、8.7×10cfu /mlの菌濃度に調整した。
製剤の調製
粒状肥料および粉状肥料200gを70%エタノールで殺菌したステンレスバットにいれ、調製した菌液200mlを添加し、1時間の浸漬処理を行った。処理後、通風乾燥器を用いて、70℃、4時間以内の条件で乾燥を行った。乾燥後、各試験に用いるまで4℃の条件で冷蔵保存した。
接種試験の概要
ヒノヒカリの種子は塩水選、温湯消毒後、15℃の条件で8日間浸種した。浸種後、半日催芽処理したもみを育苗培土(ラブリ−:春風培土:2:1)に播種した。28℃、暗所、2日間の条件で発芽させ、23℃の条件でGroth Cabinetで育苗を行った。育苗の条件については1/4サイズの育苗バットを用い、1バットあたり土壌900mlを充填後、水300gを灌水し、催芽したもみを25g、土壌(無肥料)200mlを覆土した。苗を無肥料育苗培土400mlに燐加安14号0.5g添加した土壌を充填した500ml容ディスポカップに移植した。移植は1ポットあたり3本とした。移植後、検定温室で栽培し、移植時の地上部と根部の乾物重および2ヵ月後の草丈、分げつ、地上部と根部の乾物重量を測定した。移植時の数値は100本あたりの平均、2ヶ月後は1区6ポット、4連、数値は1ポット当りの平均を示した。
結果を表8に示した。
実施例3では製剤に菌液浸漬方式(粒状の肥料用資材を本発明の微生物肥料に浸漬した後、水分12%〜2%になるまで乾燥処理)を採用していた。この実施例では、効率的な製造方法を検討するため異なる製造方式(肥料用資材に本発明の微生物肥料を添加・混合して造粒した後、水分12%〜2%になるまで乾燥処理)で調製した製剤の菌数を検討した。
実施例3と同様にして8.7×10cfu /mlの菌濃度の菌液を調製した。
実施例3と同様の肥料用資材(シリカゲルとケイソウ土(焼成していないケイソウ土)を重量比7:3の割合で混合し、粒状成型した肥料(造粒促進剤(バインダー)として総重量3%のでんぷんを添加))を用い、これに等量の菌液(8.7×10cfu /ml)を添加・混合して造粒した。
造粒後、通風乾燥機を用いて70℃、2時間30分の条件で乾燥した。
得られた製剤を乳鉢で摩砕した後、約5gに滅菌水45mlを添加し10分間振とう後、希釈平板法により菌数を計数した。
結果は表9の通りであった。
この実施例で得た製剤においても、実施例3の場合と同様の菌数を得ることができることが示された。
以上、本発明の好ましい実施形態、実施例を説明したが、本発明は上述した実施の形態、実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。

Claims (6)

  1. Bacillus属細菌であるBacillus pumillusTUAT1 株(NITE BP−1356)を培養した後、65℃〜80℃の温度範囲で60分間以上加熱処理してなる芽胞率100%のバイオ肥料を製造する方法
  2. 菌濃度が1.0×10〜9.0×10cfu/gであることを特徴とする請求項1記載のバイオ肥料の製造方法
  3. 粒状の肥料用資材を請求項1又は2記載のバイオ肥料の製造方法で製造したバイオ肥料に浸漬した後、水分12%〜2%になるまで乾燥処理してなる粒状バイオ肥料を製造する方法
  4. 肥料用資材に請求項1又は2記載のバイオ肥料の製造方法で製造したバイオ肥料を添加・混合して造粒した後、水分12%〜2%になるまで乾燥処理してなる粒状バイオ肥料を製造する方法
  5. 前記肥料用資材はケイソウ土、ゼオライト、シリカゲルの中のいずれか一種又は複数種の組み合わせからなることを特徴とする請求項3又は4記載の粒状バイオ肥料の製造方法
  6. 前記肥料用資材には、μm以上の孔径を有する多孔質資材が含まれることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項記載の粒状バイオ肥料の製造方法
JP2013258791A 2013-12-16 2013-12-16 バイオ肥料の製造方法 Active JP6296776B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013258791A JP6296776B2 (ja) 2013-12-16 2013-12-16 バイオ肥料の製造方法
PCT/JP2014/083111 WO2015093428A1 (ja) 2013-12-16 2014-12-15 バイオ肥料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013258791A JP6296776B2 (ja) 2013-12-16 2013-12-16 バイオ肥料の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015113274A JP2015113274A (ja) 2015-06-22
JP6296776B2 true JP6296776B2 (ja) 2018-03-20

Family

ID=53402774

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013258791A Active JP6296776B2 (ja) 2013-12-16 2013-12-16 バイオ肥料の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6296776B2 (ja)
WO (1) WO2015093428A1 (ja)

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2838955C (en) 2011-06-16 2023-10-24 The Regents Of The University Of California Synthetic gene clusters
US10968446B2 (en) 2012-11-01 2021-04-06 Massachusetts Institute Of Technology Directed evolution of synthetic gene cluster
CA2991776A1 (en) * 2015-07-13 2017-01-19 Pivot Bio, Inc. Methods and compositions for improving plant traits
CN105018395B (zh) * 2015-08-14 2018-06-29 青岛中达农业科技有限公司 一株短小芽孢杆菌及其在防治苹果斑点落叶病中的应用
US11479516B2 (en) 2015-10-05 2022-10-25 Massachusetts Institute Of Technology Nitrogen fixation using refactored NIF clusters
JP2017095397A (ja) * 2015-11-24 2017-06-01 朝日工業株式会社 植物病害防除剤この発明は、微生物資材を利用している植物病害防除剤に関する。特に、イネ(稲)の重要病害であるイネいもち病の発生を抑制、防除する植物病害防除剤、植物病害防除方法に関する。
CN110799474B (zh) 2017-01-12 2022-07-26 皮沃特生物公司 用于改良植物性状的方法及组合物
WO2019084059A2 (en) 2017-10-25 2019-05-02 Pivot Bio, Inc. METHODS AND COMPOSITIONS FOR ENHANCING GENETICALLY MODIFIED MICROBES THAT FIX NITROGEN
KR20200087166A (ko) 2017-10-25 2020-07-20 피벗 바이오, 인크. 식물 특성 개선을 위한 질소 고정 표적화용 유전자 표적
WO2020190363A1 (en) 2019-03-19 2020-09-24 Massachusetts Institute Of Technology Control of nitrogen fixation in rhizobia that associate with cereals
CA3172637A1 (en) 2020-05-01 2021-11-04 Pivot Bio, Inc. Measurement of nitrogen fixation and incorporation

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0912387A (ja) * 1995-04-26 1997-01-14 Shikoku Chem Corp 堆肥化処理剤
JPH09328682A (ja) * 1996-06-10 1997-12-22 Sai Teiki 微生物資材
JPH10146185A (ja) * 1996-11-18 1998-06-02 Asada Shoji Kk 耐熱性バチルス、そのバチルスを有効成分とする芝草病原菌防除剤、有機質肥料、およびその製造方法
JP2000217567A (ja) * 1999-01-29 2000-08-08 Yakult Honsha Co Ltd バチルス属細菌の芽胞化方法
JP3140430B2 (ja) * 1999-03-09 2001-03-05 株式会社 バイテク バチルス属微生物とその用途
JP2001314882A (ja) * 2000-05-09 2001-11-13 Dreams:Kk バイオ浄化資材およびその製造方法
JP2002363561A (ja) * 2001-06-08 2002-12-18 Nok Corp 微生物資材の製造方法
JP2003171193A (ja) * 2001-12-03 2003-06-17 Hiroshi Senoo 根粒菌の接種資材
JP2005281195A (ja) * 2004-03-30 2005-10-13 Nisshin Oillio Group Ltd 植物の生長促進剤、植物の栽培方法及び植物の生長促進方法
JP2006188395A (ja) * 2005-01-07 2006-07-20 Nippon Hiryo Kk 複合肥料及びその製造方法
JP4939509B2 (ja) * 2008-10-01 2012-05-30 住重環境エンジニアリング株式会社 バチルス属細菌の簡易測定法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015113274A (ja) 2015-06-22
WO2015093428A1 (ja) 2015-06-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6296776B2 (ja) バイオ肥料の製造方法
Suman et al. Improving sugarcane growth and nutrient uptake by inoculating Gluconacetobacter diazotrophicus
RU2628411C2 (ru) Микробные инокулянты и содержащие их композиции удобрений
JP5714603B2 (ja) 植物の出芽および生長を増強するためのシュードモナス・アゾトフォルマンス(pseudomonasazotoformans)種の新規蛍光シュードモナス菌
KR101908729B1 (ko) 식물 방제 및 생장 촉진 효과를 갖는 크라이세오박테리움 솔다넬리코라 균주 및 이의 용도
CN116622581B (zh) 一种贝莱斯芽孢杆菌hm-3及其应用
KR102071714B1 (ko) 식물의 저항성을 증진시키는 바실러스 메소나에 균주 및 이의 용도
AU2022222914A9 (en) Methods for carbon capture and increasing yield of crop plants
CN117106668B (zh) 一株耐盐碱促生天津假单胞菌p522及其应用
CN118028136B (zh) 一株扭托甲基杆菌及其微生物菌剂的应用
CN112029667B (zh) 一株木霉、木霉孢子悬液、木霉发酵菌粉及其制备方法与应用
KR20140083122A (ko) 트리코데르마 sp. OK―1 균주를 후막포자 형성 기술 및 이를 이용한 미생물제제
TW201536181A (zh) 利用芽孢桿菌屬細菌之農作物的栽培方法
KR102000472B1 (ko) 식물의 비생물적 스트레스 저항성을 증진시키는 바실러스 아리아바타이 균주 및 이의 용도
KR20120104875A (ko) 트리코데르마 아트로비리데 ob?1 균주를 이용한 미생물제제
JP5374260B2 (ja) 農業用資材
KR102239389B1 (ko) 고추 가뭄 스트레스 저감 미생물 바실러스 부타놀리보란스 kj40 및 이의 용도
KR20190012685A (ko) 슈도모나스 나이트로리듀센스 균주 또는 이의 배양물을 유효성분으로 포함하는 식물성장 촉진용 미생물 제제
CN107236689B (zh) 一株荧光假单胞菌pf27及其在植物促生中的应用
JP5807950B2 (ja) ナス科植物に対する増収及び疫病発病抑制効果、並びにマメ科植物に対する連作による収量低下防止効果を示す微生物菌株並びに栽培方法
KR101215273B1 (ko) 토양을 개선하고 작물의 생육을 증진시키는 미생물 혼합제제
JP5909695B1 (ja) 植物の細菌性病害に対する微生物防除剤および種子コーティング剤並びに該種子コーティング剤をコートした種子
KR20120084925A (ko) 트리코데르마 하지아눔 ok?1 균주를 이용한 미생물제제
JP2004307342A (ja) 植物の生育促進および病害抑制資材並びに当該資材を含有する育苗用培土
Singh et al. Effect of different microbial inoculants on morphological and fruit characteristics of strawberry (Fragaria× ananassa) cv. winter dawn

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161021

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171017

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171207

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180109

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180220

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6296776

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

点击 这是indexloc提供的php浏览器服务,不要输入任何密码和下载