本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図2は、図1の空間光変調ユニットの内部構成を概略的に示す図である。図1では、感光性基板であるウェハWの転写面(露光面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの転写面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの転写面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や、248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光は、ビーム送光部2および空間光変調ユニット3を介して、リレー光学系4に入射する。ビーム送光部2は、光源1からの入射光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ空間光変調ユニット3へ導くとともに、空間光変調ユニット3に入射する光束の位置変動および角度変動をアクティブに補正する機能を有する。
空間光変調ユニット3は、図2に示すように、照明光路中に並列的に配置された一対の空間光変調器31および32を備えている。各空間光変調器31,32は、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素を有する。一対の空間光変調器31,32よりも光源側(図2中左側)の光路中において最も光源側には、第1偏光変換部材33が配置されている。第1偏光変換部材33と一対の空間光変調器31,32との間の光路中には、偏向部材34が配置されている。一対の空間光変調器31,32とリレー光学系4との間の光路中には、偏向部材35が配置されている。
第1偏光変換部材33は、後述するように、光源1からの光束を、互いに異なる偏光状態を有する4つの光束に変換(分割)する。偏向部材34は、第1偏光変換部材33を経て生成された4つの光束のうち、第1光束および第2光束を第1空間光変調器31へ導き、第3光束および第4光束を第2空間光変調器32へ導く。偏向部材35は、一対の空間光変調器31,32を経た光をリレー光学系4へ導く。空間光変調ユニット3の具体的な構成および作用については後述する。
空間光変調ユニット3から射出された光は、リレー光学系4を介して、第2偏光変換部材5に入射する。第2偏光変換部材5は、隣り合う2つの分割領域が互いに異なる偏光変換特性を有する8つの分割領域を備えているが、その構成および作用については後述する。リレー光学系4は、その前側焦点位置が各空間光変調器31,32の複数のミラー要素の配列面の位置とほぼ一致し且つその後側焦点位置が第2偏光変換部材5の位置とほぼ一致するように設定されている。後述するように、各空間光変調器31,32を経た光は、複数のミラー要素の姿勢に応じた光強度分布を第2偏光変換部材5の位置に可変的に形成する。
第2偏光変換部材5の位置に光強度分布を形成した光は、リレー光学系6を介して、マイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)7に入射する。リレー光学系6は、第2偏光変換部材5の位置とマイクロフライアイレンズ7の入射面とを光学的に共役に設定している。したがって、空間光変調ユニット3を経た光は、マイクロフライアイレンズ7の入射面に、第2偏光変換部材5の位置に形成された光強度分布と同じ外形形状の光強度分布を形成する。
マイクロフライアイレンズ7は、たとえば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。マイクロフライアイレンズでは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、レンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
マイクロフライアイレンズ7における単位波面分割面としての矩形状の微小屈折面は、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。なお、マイクロフライアイレンズ7として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号公報に開示されている。
マイクロフライアイレンズ7に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、入射面に形成される光強度分布とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源(多数の小光源からなる実質的な面光源:瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に形成された二次光源からの光束は、照明開口絞り(不図示)に入射する。照明開口絞りは、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍に配置され、二次光源に対応した形状の開口部(光透過部)を有する。
照明開口絞りは、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。照明開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞りは、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。なお、照明開口絞りの設置を省略することもできる。
照明開口絞りにより制限された二次光源からの光は、コンデンサー光学系8を介して、マスクブラインド9を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド9には、マイクロフライアイレンズ7の矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド9の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系10の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系10は、マスクブラインド9の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
マスクステージMS上に保持されたマスクMを透過した光束は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハステージWSを二次元的に駆動制御しながら、ひいてはウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが順次露光される。
本実施形態の露光装置は、投影光学系PLを介した光に基づいて投影光学系PLの瞳面における瞳強度分布を計測する瞳強度分布計測部DTと、瞳強度分布計測部DTの計測結果に基づいて空間光変調ユニット3中の各空間光変調器31,32を制御する制御部CRとを備えている。瞳強度分布計測部DTは、例えば投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された撮像面を有するCCD撮像部を備え、投影光学系PLの像面の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が投影光学系PLの瞳位置に形成する瞳強度分布)をモニターする。瞳強度分布計測部DTの詳細な構成および作用については、例えば米国特許公開第2008/0030707号公報を参照することができる。
本実施形態では、マイクロフライアイレンズ7により形成される二次光源を光源として、照明光学系の被照射面に配置されるマスクM(ひいてはウェハW)をケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。なお、瞳強度分布とは、照明光学系の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。
マイクロフライアイレンズ7による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ7の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ7の入射面、および当該入射面と光学的にほぼ共役な位置、すなわち第2偏光変換部材5の直後における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。図1の構成において、ビーム送光部2、空間光変調ユニット3、およびリレー光学系4は、光源1からの光に基づいて第2偏光変換部材5の直後の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。
次に、空間光変調ユニット3の内部構成および作用を具体的に説明する。第1偏光変換部材33は、図3に示すように、互いに厚さの異なる4つの平行平面板状の旋光部材33a,33b,33c,33dを有する。各旋光部材33a〜33dは、旋光性を有する光学材料である結晶材料、例えば水晶により形成されている。第1偏光変換部材33が光路中に位置決めされている状態において、各旋光部材33a〜33dの入射面(ひいては射出面)は光軸AXと直交し、その結晶光学軸は光軸AXの方向とほぼ一致(すなわち入射光の進行方向であるY方向とほぼ一致)している。
4つの旋光部材33a〜33dは、光源1からの入射光束F10をX方向に延びる線分によって4等分して得られる4つの光束F11,F12,F13,F14がそれぞれ通過するように区分されている。第1光束F11が通過する第1旋光部材33aは、Z方向に偏光方向を有するZ方向直線偏光の光が入射した場合、Z方向を+11.25度(すなわち図3中反時計廻りに11.25度)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。第2光束F12が通過する第2旋光部材33bは、Z方向直線偏光の光が入射した場合、Z方向を+22.5度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。
第3光束F13が通過する第3旋光部材33cは、Z方向直線偏光の光が入射した場合、Z方向を−11.25度(すなわち図3中時計廻りに11.25度)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。第4光束F14が通過する第4旋光部材33dは、Z方向直線偏光の光が入射した場合、その偏光方向を変化させることなく(すなわちその偏光方向を0度または+180度回転させて)Z方向直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。このように、第1偏光変換部材33は、光源1からの入射光束F10を4等分し、且つ4等分された光束F11〜F14を互いに異なる偏光状態に設定する。以下の説明では、第1偏光変換部材33にZ方向直線偏光の光が入射するものとする。
偏向部材34および35は、例えばX方向に延びる三角柱状のプリズムミラーの形態を有する。偏向部材34は、光源側に向けた一対の反射面34aおよび34bを有し、反射面34aと34bとの稜線は光軸AXを通ってX方向に延びている。偏向部材35は、マスク側に向けた一対の反射面35aおよび35bを有し、反射面35aと35bとの稜線は光軸AXを通ってX方向に延びている。なお、例えば金属のような非光学材料や石英のような光学材料により形成された三角柱状の部材の側面に、アルミニウムや銀などからなる反射膜を設けることにより、偏向部材34,35を形成することもできる。あるいは、偏向部材34,35を、それぞれミラーとして形成することもできる。
光軸AXに沿って空間光変調ユニット3に入射したZ方向直線偏光の光束は、第1偏光変換部材33を介して互いに異なる偏光状態を有する4つの光束F11〜F14に変換された後、偏向部材34に入射する。偏向部材34の第1反射面34aによって反射された第1光束F11および第2光束F12は第1空間光変調器31に入射し、第2反射面34bによって反射された第3光束F13および第4光束F14は第2空間光変調器32に入射する。第1空間光変調器31により変調された光は、偏向部材35の第1反射面35aにより反射され、リレー光学系4へ導かれる。第2空間光変調器32により変調された光は、偏向部材35の第2反射面35bにより反射され、リレー光学系4へ導かれる。
以下、説明を単純化するために、一対の空間光変調器31と32とは互いに同じ構成を有し、第1空間光変調器31の複数のミラー要素の配列面と第2空間光変調器32の複数のミラー要素の配列面とは、光軸AXを含んでXY平面に平行な面に関して対称に配置されているものとする。すなわち、各空間光変調器31,32は、その複数のミラー要素の配列面が光軸AXと平行になるように配置されている。また、偏向部材34の第1反射面34aと第2反射面34b、および偏向部材35の第1反射面35aと第2反射面35bとは、光軸AXを含んでXY平面に平行な面に関して対称に配置されているものとする。
したがって、第2空間光変調器32について第1空間光変調器31と重複する説明を省略し、第1空間光変調器31に着目して、空間光変調ユニット3における一対の空間光変調器31,32の構成および作用を説明する。空間光変調器31は、図4に示すように、XY平面に沿って二次元的に配列された複数のミラー要素31aと、複数のミラー要素31aを保持する基盤31bと、基盤31bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素31aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部31cとを備えている。
空間光変調器31(32)は、図5に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素31a(32a)を備え、入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、図4および図5では空間光変調器31(32)が4×4=16個のミラー要素31a(32a)を備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素31a(32a)を備えている。
図4を参照すると、光軸AXと平行な方向に沿って偏向部材34(図4では不図示)の第1反射面34aに入射して空間光変調器31に向かって反射された光線群(第1光束F11および第2光束F12に対応)のうち、光線L1は複数のミラー要素31aのうちのミラー要素SEaに、光線L2はミラー要素SEaとは異なるミラー要素SEbにそれぞれ入射する。同様に、光線L3はミラー要素SEa,SEbとは異なるミラー要素SEcに、光線L4はミラー要素SEa〜SEcとは異なるミラー要素SEdにそれぞれ入射する。ミラー要素SEa〜SEdは、その位置に応じて設定された空間的な変調を光L1〜L4に与える。
空間光変調器31では、すべてのミラー要素31aの反射面が1つの平面(XY平面)に沿って設定された基準状態において、光軸AXと平行な方向に沿って反射面34aに入射した光線が、空間光変調器31で反射された後に、偏向部材35(図4では不図示)の第1反射面35aにより光軸AXとほぼ平行な方向に向かって反射されるように構成されている。また、空間光変調器31の複数のミラー要素31aの配列面は、上述したように、リレー光学系4の前側焦点位置またはその近傍に位置決めされている。
したがって、空間光変調器31の複数のミラー要素SEa〜SEdによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、第2偏光変換部材5の入射面5a(ひいては第2偏光変換部材5の直後の照明瞳5b)に所定の光強度分布SP1〜SP4を形成し、さらにマイクロフライアイレンズ7の入射面に光強度分布SP1〜SP4に対応した光強度分布を形成する。すなわち、リレー光学系4は、空間光変調器31の複数のミラー要素SEa〜SEdが射出光に与える角度を、空間光変調器31の遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である第2偏光変換部材5の位置に変換する。
同様に、第2空間光変調器32によって変調された光(第3光束F13および第4光束F14に対応)は、その複数のミラー要素32aの姿勢に応じた光強度分布を、第2偏光変換部材5の入射面5a(および直後の照明瞳5b)に、ひいてはマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する。こうして、マイクロフライアイレンズ7が形成する二次光源の光強度分布(瞳強度分布)は、第1空間光変調器31およびリレー光学系4,6がマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する第1の光強度分布と、第2空間光変調器32およびリレー光学系4,6がマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する第2の光強度分布との合成分布に対応した分布となる。
空間光変調器31は、図5に示すように、平面形状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素31aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素31aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御部CRからの指令にしたがって作動する駆動部31cの作用により独立に制御される。各ミラー要素31aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向(例えばX方向およびY方向)を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的或いは離散的に回転することができる。すなわち、各ミラー要素31aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
なお、各ミラー要素31aの反射面を離散的に回転させる場合、回転角を複数の状態(例えば、・・・、−2.5度、−2.0度、・・・0度、+0.5度・・・+2.5度、・・・)で切り換え制御するのが良い。図5には外形が正方形状のミラー要素31aを示しているが、ミラー要素31aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素31aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素31aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
本実施形態では、空間光変調器31として、たとえば二次元的に配列された複数のミラー要素31aの向きを連続的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いている。このような空間光変調器として、たとえば特表平10−503300号公報およびこれに対応する欧州特許公開第779530号公報、特開2004−78136号公報およびこれに対応する米国特許第6,900,915号公報、特表2006−524349号公報およびこれに対応する米国特許第7,095,546号公報、並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、二次元的に配列された複数のミラー要素31aの向きを離散的に複数の段階を持つように制御してもよい。
空間光変調器31,32では、制御部CRからの制御信号に応じて作動する駆動部31c,32c(32cは不図示)の作用により、複数のミラー要素31a,32aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素31a,32aがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器31,32の複数のミラー要素31a,32aによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、図6に示すように、第2偏光変換部材5の入射面5aに、例えば光軸AXを中心とした輪帯状の光強度分布(図6中ハッチングを施した部分)20を形成する。
第2偏光変換部材5は、図6に示すように、光軸AXを中心とする円の周方向に沿って配列された8つの平行平面板状の旋光部材51,52,53,54,55,56,57,58を有する。各旋光部材51〜58は、旋光性を有する光学材料である結晶材料、例えば水晶により形成されている。第2偏光変換部材5が光路中に位置決めされている状態において、各旋光部材51〜58の入射面(ひいては射出面)は光軸AXと直交し、その結晶光学軸は光軸AXの方向とほぼ一致(すなわち入射光の進行方向であるY方向とほぼ一致)している。
第2偏光変換部材5を構成する8つの旋光部材51〜58は、光軸AXを中心とする円環状の領域を周方向に沿って8等分して得られる8つの分割領域を占めている。換言すれば、8つの旋光部材51〜58は、入射する輪帯状の光束20を周方向に沿って8等分して得られる8つの円弧状の光束がそれぞれ通過するように区分されている。8つの旋光部材51〜58のうち、光軸AXを挟んで対向する一対の旋光部材は、互いに同じ厚さを有し、ひいては互いに同じ偏光変換特性を有する。あるいは、光軸AXを挟んで対向する一対の旋光部材は、互いに異なる厚さを有するが、互いに同じ偏光変換特性を有する。
具体的に、一対の旋光部材51および55は、Z方向直線偏光の光が入射した場合、その偏光方向を変化させることなく(すなわちその偏光方向を0度または180度回転させて)Z方向直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。一対の旋光部材52および56は、Z方向直線偏光の光が入射した場合、Z方向を+45度(または−135度:すなわち図6中反時計廻りに45度)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。
一対の旋光部材53および57は、Z方向直線偏光の光が入射した場合、Z方向を+90度(または−90度)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。一対の旋光部材54および58は、Z方向直線偏光の光が入射した場合、Z方向を−45度(または+135度:すなわち図6中時計廻りに45度)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。このように、照明瞳またはその近傍に配置された第2偏光変換部材5は、8つの瞳領域に対応する旋光部材(分割領域)51〜58を有し、これらの8つの旋光部材51〜58のうちの隣り合う2つの旋光部材は互いに異なる偏光変換特性を有する。
本実施形態では、第2偏光変換部材5を構成する8つの旋光部材51〜58の各々に、第1偏光変換部材33からの互いに異なる偏光状態を有する4つの光束F11〜F14が導かれる。具体的に、旋光部材51への入射光束に着目すると、4つの光束F11〜F14が図6中時計廻りに光束F12、F11、F14、F13の順に配列されて全体的に円弧状の光束を形成する。ここで、各光束F11〜F14が占める領域は、円弧状の光束領域を周方向に4等分して得られる領域に対応している。図示を省略したが、他の旋光部材52〜58についても、4つの光束F11〜F14の配列の態様は旋光部材51の場合と同様である。
すなわち、本実施形態では、第1偏光変換部材33の旋光部材33bを経て生成された光束F12が、第1空間光変調器31により変調された後、8つの光束F12になって旋光部材51〜58に1つずつ入射し、第2偏光変換部材5の入射面5aに8極状の光強度分布を形成する。第1偏光変換部材33の旋光部材33aを経て生成された光束F11は、第1空間光変調器31により変調された後、8つの光束F11になって旋光部材51〜58に1つずつ入射し、第2偏光変換部材5の入射面5aに8極状の光強度分布を形成する。光束F11が形成する8極状の光強度分布は、図6中時計廻りの周方向に沿って光束F12が形成する8極状の光強度分布に隣接する。
同様に、第1偏光変換部材33の旋光部材33c,33dを経て生成された光束F13,F14は、第2空間光変調器32により変調された後、8つの光束F13,F14になって旋光部材51〜58に1つずつ入射し、第2偏光変換部材5の入射面5aに8極状の光強度分布をそれぞれ形成する。光束F14が形成する8極状の光強度分布は、図6中時計廻りの周方向に沿って光束F11が形成する8極状の光強度分布に隣接し、光束F13が形成する8極状の光強度分布は、図6中時計廻りの周方向に沿って光束F14が形成する8極状の光強度分布に隣接する。
その結果、第2偏光変換部材5の直後の照明瞳には、図7に示すように、光軸AXを中心とした輪帯状の光強度分布21が形成され、輪帯状の光強度分布21の周方向に32(=4×8)等分された各分割領域を通過する光束の偏光状態が周方向に設定された連続性の高い周方向偏光状態が実現される。ただし、図7では、図面の明瞭化のために、32等分された各分割領域を図示することなく、第2偏光変換部材5の8つの旋光部材51〜58に対応して8等分された円弧状の分割領域の境界線だけを破線で示している。
ここで、第2偏光変換部材5の旋光部材51を経た円弧状の光束21aに着目すると、第1偏光変換部材33の旋光部材33bを経て生成された光束F12に対応する光束部分は、Z方向を+22.5度(図7中反時計廻りに22.5度)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になる。ここで、旋光部材51と33bとの合成旋光角度である+22.5度は、旋光部材51の旋光角度である0度と、旋光部材33bの旋光角度である+22.5度との和に他ならない。
同様に、旋光部材33aを経て生成された光束F11に対応する光束部分はZ方向を+11.25度(=0+11.25)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になり、旋光部材33dを経て生成された光束F14に対応する光束部分はZ方向を0度(=0+0)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光(すなわちZ方向直線偏光)になり、旋光部材33cを経て生成された光束F13に対応する光束部分はZ方向を−11.25度(=0−11.25:図7中時計廻りに11.25度)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になる。
また、第2偏光変換部材5の旋光部材52を経た円弧状の光束21bに着目すると、第1偏光変換部材33の旋光部材33bを経て生成された光束F12に対応する光束部分は、Z方向を+67.5度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になる。ここで、旋光部材52と33bとの合成旋光角度である+67.5度は、旋光部材52の旋光角度である+45度と、旋光部材33bの旋光角度である+22.5度との和として得られる。
同様に、旋光部材33aを経て生成された光束F11に対応する光束部分はZ方向を+56.25度(=+45+11.25)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になり、旋光部材33dを経て生成された光束F14に対応する光束部分はZ方向を+45度(=+45+0)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になり、旋光部材33cを経て生成された光束F13に対応する光束部分はZ方向を+33.75度(=+45−11.25)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になる。
さらに、第2偏光変換部材5の旋光部材58を経た円弧状の光束21hに着目すると、第1偏光変換部材33の旋光部材33bを経て生成された光束F12に対応する光束部分は、Z方向を−22.5度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になる。ここで、旋光部材58と33bとの合成旋光角度である−22.5度は、旋光部材58の旋光角度である−45度と、旋光部材33bの旋光角度である+22.5度との和として得られる。
同様に、旋光部材33aを経て生成された光束F11に対応する光束部分はZ方向を−33.75度(=−45+11.25)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になり、旋光部材33dを経て生成された光束F14に対応する光束部分はZ方向を−45度(=−45+0)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になり、旋光部材33cを経て生成された光束F13に対応する光束部分はZ方向を−56.25度(=−45−11.25)回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光になる。
こうして、他の旋光部材53〜57を経た円弧状の光束21c〜21gについての説明を省略するが、第2偏光変換部材5の直後の照明瞳には、32等分タイプの連続性の高い周方向偏光状態で輪帯状の光強度分布21が形成される。周方向偏光状態では、輪帯状の光強度分布21を通過する光束が、光軸AXを中心とした円の接線方向に偏光方向を有する直線偏光状態になる。その結果、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、輪帯状の光強度分布21に対応するほぼ連続的な周方向偏光状態で輪帯状の光強度分布が形成される。さらに、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳の位置、すなわち結像光学系10の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASが配置されている位置)にも、輪帯状の光強度分布21に対応するほぼ連続的な周方向偏光状態で輪帯状の光強度分布が形成される。
一般に、周方向偏光状態の輪帯状や複数極状(2極状、4極状、8極状など)の瞳強度分布に基づく周方向偏光照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がS偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、S偏光とは、入射面に対して垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に垂直な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。ただし、入射面とは、光が媒質の境界面(被照射面:ウェハWの表面)に達したときに、その点での境界面の法線と光の入射方向とを含む面として定義される。その結果、周方向偏光照明では、投影光学系の光学性能(焦点深度など)の向上を図ることができ、ウェハ(感光性基板)上において高いコントラストのマスクパターン像を得ることができる。
本実施形態の照明光学系(2〜10)では、光源1からの光に基づいて輪帯状の瞳強度分布を形成する分布形成光学系(2〜4)が、入射光束F10を互いに異なる偏光状態の4つの光束F11〜F14に変換するための4つの旋光部材33a〜33dを有する第1偏光変換部材33を含み、これらの4つの光束F11〜F14を輪帯状の瞳強度分布の8つの円弧状の瞳領域の各々に入射させる。照明瞳またはその近傍に配置された第2偏光変換部材5は、8つの円弧状の瞳領域に対応する8つの旋光部材(分割領域)51〜58を有し、その隣り合う2つの旋光部材は互いに異なる偏光変換特性を有する。
こうして、第1偏光変換部材33中の4つの旋光部材33a〜33dのうちの1つの旋光部材と、第2偏光変換部材5中の8つの旋光部材51〜58のうちの1つの旋光部材との32通りの組み合わせからなる一対の旋光部材の合成旋光作用により、第2偏光変換部材5の直後の照明瞳には32等分タイプ(一般には32分割タイプ)のほぼ連続的な周方向偏光状態で輪帯状の光強度分布21が形成される。すなわち、本実施形態の照明光学系(2〜10)では、連続性の高い周方向偏光状態の瞳強度分布21を形成することができる。また、本実施形態の露光装置(2〜WS)では、連続性の高い周方向偏光状態の瞳強度分布21を形成する照明光学系(2〜10)を用いて、転写すべきマスクMのパターンの特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで周方向偏光の作用効果を良好に発揮して、微細パターンをウェハWに正確に転写することができる。
ところで、第2偏光変換部材5のような構成を有する単体の偏光変換部材を用いて、32分割タイプのほぼ連続的な周方向偏光状態で輪帯状の光強度分布21を形成するには、隣り合う2つの旋光部材の間で僅かに偏光変換特性の異なる32個の旋光部材を周方向に配列する必要がある。しかしながら、32分割タイプの偏光変換部材の製造は、8分割タイプの第2偏光変換部材5の製造に比してはるかに困難である。このように、本実施形態では、周方向偏光状態の分割数が比較的多いにもかかわらず、偏光変換部材の製造が比較的容易である点において有利である。
なお、上述の実施形態では、第1偏光変換部材33にZ方向直線偏光の光を入射させているが、第1偏光変換部材33にX方向直線偏光の光を入射させると、図8に示すように、第2偏光変換部材5の直後の照明瞳には、32等分タイプの連続性の高い径方向偏光状態で輪帯状の光強度分布22(22a〜22h)が形成される。径方向偏光状態では、輪帯状の光強度分布22を通過する光束が、光軸AXを中心とした円の径方向に偏光方向を有する直線偏光状態になる。
一般に、径方向偏光状態の輪帯状や複数極状の瞳強度分布に基づく径方向偏光照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がP偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、P偏光とは、上述のように定義される入射面に対して平行な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に平行な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。その結果、径方向偏光照明では、ウェハWに塗布されたレジストにおける光の反射率を小さく抑えて、ウェハ(感光性基板)上において良好なマスクパターン像を得ることができる。
また、上述の実施形態では、図2に示す特定の構成を有する空間光変調ユニット3に基づいて本発明を説明しているが、空間光変調ユニットの構成については様々な形態が可能である。具体的に、上述の実施形態では、入射光に空間的な変調を付与して射出する空間光変調素子として光路中に並列配置された一対の反射型の空間光変調器31,32を用い、その光源側に第1偏光変換部材33が配置されている。しかしながら、これに限定されることなく、空間光変調素子のタイプ、数、空間光変調素子と第1偏光変換部材との位置関係などについて、様々な形態が可能である。
例えば、空間光変調素子として、二次元的に配列されて個別に制御される複数の透過光学要素を有する透過型の空間光変調器、透過型の回折光学素子、反射型の回折光学素子などを用いることができる。一般に、空間光変調素子として反射型の空間光変調器または反射型の回折光学素子を用いる場合、その射出側よりも入射側に第1偏光変換部材を配置する方が、光学部材同士の機械的な干渉を容易に回避することができる。また、空間光変調素子として透過型の回折光学素子または透過型の空間光変調器を用いる場合、その入射側に第1偏光変換部材を配置しても射出側に配置しても、光学部材同士の機械的な干渉を容易に回避することができる。
また、上述の実施形態では、第1偏光変換部材33が4つの平行平面板状の旋光部材33a〜33dにより構成されているが、第1偏光変換部材の構成については様々な形態が可能である。例えば、図9に示すように、第1偏光変換部材33に代えて、所定方向に沿って厚さが連続的に変化する形態を有する第1偏光変換部材36を用いることができる。図9の変形例にかかる第1偏光変換部材36は、旋光性を有する光学材料である結晶材料、例えば水晶により形成されて、Z方向に沿って厚さが線形的に変化する偏角プリズムの形態を有する。第1偏光変換部材36の射出側(あるいは入射側)には、第1偏光変換部材36による光の偏向作用(光の進行方向の変化)を補償するコンペンセータとしての補正部材37が配置されている。
一例として、補正部材37は、第1偏光変換部材36と同じ光学材料である水晶により形成されて第1偏光変換部材36と補完的な形状を有する偏角プリズムである。また、補正部材37は、通過する光の偏光状態を変化させることがないように、結晶光学軸が入射光の偏光方向と平行または垂直になるように配置されている。図9の変形例では、第1偏光変換部材36を経て空間光変調器31,32に入射する光束が、所定の範囲に亘って連続的に偏光方向が変化する直線偏光成分を含んでいる。したがって、空間光変調器31,32の変調作用により、第2偏光変換部材5の各旋光部材51〜58へ所要の範囲に亘って連続的に偏光方向が変化する直線偏光の光を含む光束が入射する。
具体的に、旋光部材51には、Z方向を−16.875度(=(−11.25−22.5)/2:図7中時計廻りに16.875度)回転させた方向から、Z方向を+28.125度(=(+22.5+33.75)/2:図7中反時計廻りに28.125度)回転させた方向まで連続的に偏光方向が変化する直線偏光の光を含む光束が入射する。その結果、図9の変形例では、上述の実施形態よりもさらに連続性の高い周方向偏光状態で輪帯状の光強度分布が形成される。なお、図9の変形例では、補正部材37の設置を省略し、偏向部材34および35のうちの少なくとも一方をコンペンセータとして、第1偏光変換部材36による光の偏向作用を補償することもできる。
図2の実施形態および図9の変形例では、光源1から入射した光束をZ方向に平行移動させて射出する光束移動部(不図示)を第1偏光変換部材33,36の入射側または射出側に付設することにより、光源1から入射した光を一対の空間光変調器31および32のうちの少なくとも一方へ選択的に導くことも可能である。光束移動部は、光軸に対して傾斜可能な平行平面板(ハービング)、一対のミラーなどを用いて構成される。
また、上述の実施形態では、第1偏光変換部材33が、4つの矩形状の旋光部材33a〜33dにより構成されている。しかしながら、これに限定されることなく、第1偏光変換部材を構成する基本要素の種別、形状、数などについては様々な形態が可能である。一般に、入射光を所定の偏光状態の光に変化させる複数の波長板を用いて第1偏光変換部材を構成したり、入射光から所定の偏光状態の光を選択して射出する複数の偏光子を用いて第1偏光変換部材を構成したりすることが可能である。なお、複数の偏光子を用いて第1偏光変換部材を構成する場合、例えば非偏光状態の光を入射させることになる。
また、上述の実施形態では、第2偏光変換部材5が全体的に円環状の外形形状を有し、8つの円弧状の旋光部材51〜58により構成されている。しかしながら、これに限定されることなく、第2偏光変換部材の全体的な外形形状、第2偏光変換部材を構成する基本要素の種別、形状、数などについては様々な形態が可能である。例えば、複数の扇形形状の旋光部材により、全体的に円形状の外形形状を有する第2偏光変換部材を構成することもできる。また、入射光を所定の偏光状態の光に変化させる複数の波長板を用いて第2偏光変換部材を構成することが可能である。
一般に、本発明では、第1偏光変換部材は光源からの光を互いに異なる偏光状態を有する複数の光束に分割し、第2偏光変換部材は隣り合う2つの分割領域が互いに異なる偏光変換特性を有する複数の分割領域を備えている。そして、第2偏光変換部材の複数の分割領域の1つには、第1偏光変換部材からの互いに異なる偏光状態を有する複数の光束が導かれる。ここで、第1偏光変換部材を経て得られる光束(光束F11〜F14に対応)の数および偏光状態、第2偏光変換部材の分割領域(旋光部材51〜58に対応)の数および偏光変換特性、各分割領域における複数の光束の配列などについては、上述の実施形態に限定されることなく、様々な形態が可能である。
なお、上述の説明では、照明瞳に輪帯状の瞳強度分布が形成される変形照明、すなわち輪帯照明を例にとって、本発明の作用効果を説明している。しかしながら、輪帯照明に限定されることなく、例えば複数極状の瞳強度分布が形成される複数極照明などに対しても、同様に本発明を適用して同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
また、上述の説明では、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された複数の反射面の向き(角度:傾き)を個別に制御可能な空間光変調器を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば二次元的に配列された複数の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば特開平6−281869号公報及びこれに対応する米国特許第5,312,513号公報、並びに特表2004−520618号公報およびこれに対応する米国特許第6,885,493号公報の図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば特表2006−513442号公報およびこれに対応する米国特許第6,891,655号公報や、特表2005−524112号公報およびこれに対応する米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
なお、上述の実施形態では、オプティカルインテグレータとして、マイクロフライアイレンズ7を用いているが、その代わりに、内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いても良い。この場合、リレー光学系6の代わりに、第2偏光変換部材5からの光を集光する集光光学系を配置する。そして、マイクロフライアイレンズ7とコンデンサー光学系8との代わりに、第2偏光変換部材5からの光を集光する集光光学系の後側焦点位置またはその近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。このとき、ロッド型インテグレータの射出端がマスクブラインド9の位置になる。ロッド型インテグレータを用いる場合、このロッド型インテグレータの下流の結像光学系10内の、投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役な位置を照明瞳面と呼ぶことができる。また、ロッド型インテグレータの入射面の位置には、照明瞳面の二次光源の虚像が形成されることになるため、この位置およびこの位置と光学的に共役な位置も照明瞳面と呼ぶことができる。ここで、上記の集光光学系、上記の結像光学系、およびロッド型インテグレータを分布形成光学系とみなすことができる。
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレットおよびこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報の教示を参照として援用する。
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図10は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図10に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。
その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。
図11は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図11に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンプレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。