気候:極端な強風がタービンの限界を超えて動かす可能性がある
Nature Communications
2025年11月5日
欧州とアジアの既存および計画中の洋上風力発電所の40%以上が、一部のタービンクラスの最大設計荷重を超える風速に晒されていることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この結果は、気候変動に伴う極端な風事象への耐性を高めるため、洋上風力エネルギーインフラの適応強化が必要であることを示している。
洋上風力発電は、世界の再生可能エネルギー移行における重要な要素である。洋上風力発電所は、過酷な環境に耐えられなければならず、そのクラスに応じて異なる最大風速設計荷重で建設される(クラスIIIが最低限、クラスII、クラスIの順に上限が高い)。最近の研究では、地球規模の気候変動により、極端な風速事象が激化していることが示唆されており、既存および計画中のプロジェクトがこの追加的な負荷に耐えられるかどうかが問題となっている。
Yanan Zhaoら(南方科技大学〔中国〕)は、1940年から2023年までの世界海洋における1時間ごとの風速データを分析した。その結果、海洋沿岸地域の約63%で極端な風速が増加しており、これは地球温暖化に伴う気象システムの変化と関連していることが多いと判明した。著者らは、アジアとヨーロッパの稼働中および計画中の洋上風力発電所の40%以上が、クラスIIIタービン(最大毎秒37.5メートルの風速に耐える設計)の現行設計荷重を超える風速に遭遇していることを発見した。これらの風力発電所の半数以上は、極端な風速が増加傾向にある地域に位置しており、著者らはこのパターンが地球温暖化下でのサイクロン活動の変化と関連していると示唆している。
本研究の知見は、気候変動の継続に伴う強まる極端な風から風力発電インフラを適応させ、保護する必要性を強調している。
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- Article
- Open access
- Published: 04 November 2025
Zhao, Y., Tao, Y., Chen, Y. et al. Increasing extreme winds challenge offshore wind energy resilience. Nat Commun 16, 9529 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-65105-3
doi:10.1038/s41467-025-65105-3
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