JP2025134552A - インフルエンザワクチン製剤 - Google Patents
インフルエンザワクチン製剤Info
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Abstract
【課題】安定性が向上したインフルエンザHAワクチン製剤を提供する。
【解決手段】抗原としてインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種以上の添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
【選択図】なし
【解決手段】抗原としてインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種以上の添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は安定性が向上したインフルエンザワクチン製剤に関する。
冬季に流行するインフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症であり、くしゃみ等の飛沫や飛沫が付着した物への接触を介して伝播する。このインフルエンザの流行が大きいシーズンでは、インフルエンザ及びその関連疾患による死亡数が増加し、これは特に高齢者において顕著となる。この現象は、先進国で共通の現象であり、高齢者の割合が急増している我が国においても深刻な社会的問題である。
この季節性インフルエンザの予防に最も効果的な方法の1つとしてワクチンが挙げられる。現在、日本国において用いられているインフルエンザワクチンは、ウイルス粒子を解裂し、そのヘムアグルチニン(HA)画分を抗原として用いるスプリットワクチンであり、インフルエンザHAワクチンと称されている。
インフルエンザHAワクチンは、ウイルス表面に存在する自然な状態とは異なるHAを抗原とすることから、その製造工程ではホルマリンや界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)を添加することにより抗原の安定化が図られているが、長期保存安定性試験では力価が低下することが問題となっている。
インフルエンザHAワクチンは、ウイルス表面に存在する自然な状態とは異なるHAを抗原とすることから、その製造工程ではホルマリンや界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)を添加することにより抗原の安定化が図られているが、長期保存安定性試験では力価が低下することが問題となっている。
一般に、ワクチン製剤は凍結乾燥により安定性が向上することが知られており、凍結乾燥時の抗原の変性を避けるために糖類を添加することが一般的に行われている。例えば、組換えインフルエンザウイルスベクターにトレハロースを添加して乾燥製剤とすることによりウイルスの安定性が向上することが報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、凍結乾燥製剤は生産のサイクル長期化及び大規模な設備投資が必要となる。
しかしながら、凍結乾燥製剤は生産のサイクル長期化及び大規模な設備投資が必要となる。
また、弱毒生ワクチンの液体製剤については、添加剤としてスクロース・グルタミン酸ナトリウム、アルギニン及びアルブミンを用いた場合に抗原の安定性が向上することが報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。
しかしながら、インフルエンザHAワクチン製剤について、その安定性を向上させるために特に有効な添加剤は見出されていない。
しかしながら、インフルエンザHAワクチン製剤について、その安定性を向上させるために特に有効な添加剤は見出されていない。
Int J Pharm . 2019 Apr 20:561:66-73
Vaccine . 2016 Jul 12;34(32):3676-83
J Pharm Sci . 2019 Jul;108(7):2315-2322
本発明は、安定性が向上したインフルエンザHAワクチン製剤を提供することに関する。
本発明者らは、インフルエンザHAワクチンの安定性について検討したところ、特定の糖類やアミノ酸類を複数種組み合わせて用いることにより、溶液状態での熱安定性が格段に向上することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)~10)に係るものである。
1)抗原としてインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種以上の添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
2)液体である、1)の組成物。
3)添加剤がスクロース及び/又はトレハロースを含む、1)又は2の組成物。
4)添加剤がスクロース及びトレハロースを含み、且つN-アセチル-L-システイン及び/又はグリシンを含む、1)又は2)の組成物。
5)抗原がA型及びB型のインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有する、4)の組成物。
6)組成物溶液中のスクロース又はトレハロースの濃度がそれぞれ60~200mMである、3)~5)のいずれかの組成物。
7)組成物溶液中のN-アセチル-L-システインの濃度が0.5~4mMであり、グリシンの濃度が20~60mMである、4)又は5)の組成物。
8)組成物溶液中のスクロース及びトレハロースの濃度がそれぞれ60~200mMである、7)の組成物。
9)抗原としてA型及びB型のインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンからなる添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
10)組成物溶液中のスクロース及びトレハロース濃度がそれぞれ60~200mMであり、N-アセチル-L-システイン濃度が0.5~4mMであり、グリシン濃度が20~60mMである、9)の組成物。
1)抗原としてインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種以上の添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
2)液体である、1)の組成物。
3)添加剤がスクロース及び/又はトレハロースを含む、1)又は2の組成物。
4)添加剤がスクロース及びトレハロースを含み、且つN-アセチル-L-システイン及び/又はグリシンを含む、1)又は2)の組成物。
5)抗原がA型及びB型のインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有する、4)の組成物。
6)組成物溶液中のスクロース又はトレハロースの濃度がそれぞれ60~200mMである、3)~5)のいずれかの組成物。
7)組成物溶液中のN-アセチル-L-システインの濃度が0.5~4mMであり、グリシンの濃度が20~60mMである、4)又は5)の組成物。
8)組成物溶液中のスクロース及びトレハロースの濃度がそれぞれ60~200mMである、7)の組成物。
9)抗原としてA型及びB型のインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンからなる添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
10)組成物溶液中のスクロース及びトレハロース濃度がそれぞれ60~200mMであり、N-アセチル-L-システイン濃度が0.5~4mMであり、グリシン濃度が20~60mMである、9)の組成物。
本発明のワクチン組成物によれば、インフルエンザHA抗原の安定性を向上できることから、ワクチン接種者における免疫誘導の堅牢性を高めることができ、また海外等の遠隔の輸送における温度逸脱許容時間(Stability budget)の長時間化が可能となる。
本発明のインフルエンザHAワクチン組成物(以下、「ワクチン組成物」とも称する)は、抗原としてインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン(「HA」と略される)画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種以上の添加剤を含有する。
抗原として用いられるインフルエンザウイルスのHA画分は、A型インフルエンザウイルス由来のHA、B型インフルエンザウイルス由来のHAのいずれでも良いが、両者を含むのが好ましい。また、A型又はB型インフルエンザウイルスの複数の亜型株由来のHAを含むものであっても良い。亜型は、現在知られているすべての亜型、及び将来単離、同定される亜型が包含される。本発明において抗原として用いられる好適なインフルエンザウイルスのHAとしては、例えば、A/H1N1亜型株及びA/H3N2亜型株の2種のA型株由来のHAと、B/Victoria系統株及びB/Yamagata系統株から選ばれる1種又は2種のB型株由来のHAを含むものが好適に挙げられる。
抗原として用いられるインフルエンザウイルスのHA画分は、A型インフルエンザウイルス由来のHA、B型インフルエンザウイルス由来のHAのいずれでも良いが、両者を含むのが好ましい。また、A型又はB型インフルエンザウイルスの複数の亜型株由来のHAを含むものであっても良い。亜型は、現在知られているすべての亜型、及び将来単離、同定される亜型が包含される。本発明において抗原として用いられる好適なインフルエンザウイルスのHAとしては、例えば、A/H1N1亜型株及びA/H3N2亜型株の2種のA型株由来のHAと、B/Victoria系統株及びB/Yamagata系統株から選ばれる1種又は2種のB型株由来のHAを含むものが好適に挙げられる。
インフルエンザウイルスのHA画分は、例えば、インフルエンザ感染動物又はインフルエンザの患者から単離されたウイルス株を発育鶏卵法若しくは細胞培養法を用いて増殖させ、ウイルス粒子を含むウイルス液を界面活性剤やエーテル等により処理して分解・不活化することにより得ることができる。
具体的には、インフルエンザウイルス株を孵化鶏卵若しくは培養細胞に接種し、30~37℃で1~7日程度、好ましくは33~35℃で2日間程度培養を行う。培養終了後、ウイルス浮遊液(感染尿膜腔液若しくは感染細胞培養上清)を回収し、清澄化のため遠心分離または濾過を行う。次いで、濃縮のためバリウム塩吸着溶出反応や限外濾過を行う。ウイルス精製は、ショ糖密度勾配遠心分離等の超遠心分離や液体クロマトグラフィー等の手段を用いて行うことができる。精製ウイルス液は、Triton X、デオキシコール酸ナトリウム、CTAB等の界面活性剤やジエチルエーテルで処理することでウイルス粒子の解裂及び感染性の不活化を促す。
なお、培養細胞は、インフルエンザウイルスが増殖性を示す細胞であれば特に限定されず、例えば、MDCK(Madin-Darby Canine Kidney)、Vero、Caco-2、PER.C6、EB66及びウイルスが侵入に使用するレセプターを高発現するよう組換えた細胞が挙げられる。
具体的には、インフルエンザウイルス株を孵化鶏卵若しくは培養細胞に接種し、30~37℃で1~7日程度、好ましくは33~35℃で2日間程度培養を行う。培養終了後、ウイルス浮遊液(感染尿膜腔液若しくは感染細胞培養上清)を回収し、清澄化のため遠心分離または濾過を行う。次いで、濃縮のためバリウム塩吸着溶出反応や限外濾過を行う。ウイルス精製は、ショ糖密度勾配遠心分離等の超遠心分離や液体クロマトグラフィー等の手段を用いて行うことができる。精製ウイルス液は、Triton X、デオキシコール酸ナトリウム、CTAB等の界面活性剤やジエチルエーテルで処理することでウイルス粒子の解裂及び感染性の不活化を促す。
なお、培養細胞は、インフルエンザウイルスが増殖性を示す細胞であれば特に限定されず、例えば、MDCK(Madin-Darby Canine Kidney)、Vero、Caco-2、PER.C6、EB66及びウイルスが侵入に使用するレセプターを高発現するよう組換えた細胞が挙げられる。
本発明のワクチン組成物中のインフルエンザウイルスのHAの含有量は、ウイルス1株当たり15μg以上、すなわち15μgHA/株以上であり、好ましくは15~60μgHA/株であり、より好ましくは15~21μgHA/株である。
なお、HA含量は、一元放射免疫拡散試験法等の、WHOや国の基準で定められた試験法で測定することによって得られる値である。
なお、HA含量は、一元放射免疫拡散試験法等の、WHOや国の基準で定められた試験法で測定することによって得られる値である。
本発明のワクチン組成物においては、添加剤として、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種以上が用いられ、好ましくは3種、より好ましくは4種又は5種が用いられる。
斯かる添加剤を2種以上配合することによって、組成物が液状であっても熱安定性が向上し、温度逸脱許容時間(Stability budget)の長時間化が可能となる。
熱安定性の評価は、例えばタンパク質高次構造評価装置であるNano temper社 Tycho NT.6を用いて、組成物溶液を35~95℃の範囲で30℃/分の速度で加温し、その間に検出される蛍光(330nmと350nm)を測定し、得られた350nm/330nmの蛍光強度の比率により、タンパク質の熱変性を評価することにより行うことができる。
斯かる添加剤を2種以上配合することによって、組成物が液状であっても熱安定性が向上し、温度逸脱許容時間(Stability budget)の長時間化が可能となる。
熱安定性の評価は、例えばタンパク質高次構造評価装置であるNano temper社 Tycho NT.6を用いて、組成物溶液を35~95℃の範囲で30℃/分の速度で加温し、その間に検出される蛍光(330nmと350nm)を測定し、得られた350nm/330nmの蛍光強度の比率により、タンパク質の熱変性を評価することにより行うことができる。
添加剤の組み合わせは、熱安定性向上の点から、B型のインフルエンザHAについては、例えば、1)スクロース+トレハロース、2)(スクロース又はトレハロース)+N-アセチル-L-システイン、3)グリシン+(グルタミン酸又はアスパラギン酸)、4)グルタミン酸+アスパラギン酸、5)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン、6)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン+グリシンの組み合わせが好ましい。
また、A型のインフルエンザHAについては、例えば、1)スクロース+トレハロース、2)(スクロース又はトレハロース)+(グリシン、グルタミン酸又はアスパラギン酸)、3)グリシン+N-アセチル-L-システイン、4)グルタミン酸+アスパラギン酸、5)(スクロース又はトレハロース)+グリシン+アスパラギン酸、5)スクロース+トレハロース+(グリシン又はアスパラギン酸)、7)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン、8)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン+グリシン、9)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン+グリシン+アスパラギン酸の組み合わせが好ましい。
また、A型のインフルエンザHAについては、例えば、1)スクロース+トレハロース、2)(スクロース又はトレハロース)+(グリシン、グルタミン酸又はアスパラギン酸)、3)グリシン+N-アセチル-L-システイン、4)グルタミン酸+アスパラギン酸、5)(スクロース又はトレハロース)+グリシン+アスパラギン酸、5)スクロース+トレハロース+(グリシン又はアスパラギン酸)、7)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン、8)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン+グリシン、9)スクロース+トレハロース+N-アセチル-L-システイン+グリシン+アスパラギン酸の組み合わせが好ましい。
A型及びB型のインフルエンザHAを含むインフルエンザHAワクチンにおいては、スクロース又はトレハロース、或いはスクロース及びトレハロースの糖類を含むのが好ましく、これらにN-アセチル-L-システイン及びグリシンから選ばれる1種以上を組み合わせて用いるのがより好ましく、さらには、スクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインの3種、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンの4種を組み合わせるのが好ましい。
ワクチン組成物中の添加剤の含有量は安定化効果が奏される量であれば限定されないが、組成物溶液中の最終濃度は、スクロース又はトレハロースとしては、60mM以上とするのが好ましく、60~200mMとするのがより好ましく、60mMとするのがさらに好ましい。
グリシンとしては、20mM以上とするのが好ましく、20~250mMとするのがより好ましく、20mMとするのがさらに好ましい。グルタミン酸としては、150~300mMとするのが好ましく、200~250mMとするのがより好ましい。アスパラギン酸は、20~250mMとするのが好ましく、A型においては40~100mMとするのがさらに好ましい。
N-アセチル-L-システインとしては、0.5mM以上とするのが好ましく、0.5~4mMとするのがより好ましく、0.5~2.0mMとするのがさらに好ましい。
グリシンとしては、20mM以上とするのが好ましく、20~250mMとするのがより好ましく、20mMとするのがさらに好ましい。グルタミン酸としては、150~300mMとするのが好ましく、200~250mMとするのがより好ましい。アスパラギン酸は、20~250mMとするのが好ましく、A型においては40~100mMとするのがさらに好ましい。
N-アセチル-L-システインとしては、0.5mM以上とするのが好ましく、0.5~4mMとするのがより好ましく、0.5~2.0mMとするのがさらに好ましい。
スクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインを組み合わせて用いる場合は、スクロース60~200mM、トレハロース60~200mM、N-アセチル-L-システイン0.5~4mMとするのが好ましく、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンを組み合わせて用いる場合は、スクロース60~200mM、トレハロース60~200mM、N-アセチル-L-システイン0.5~4mM、グリシン20~100mMとするのが好ましい。
A型及びB型のインフルエンザHAを含むインフルエンザHAワクチンにおいて、スクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインを組み合わせて用いる場合は、スクロース60~200mM、トレハロース60~200mM、N-アセチル-L-システイン0.5~4mMとするのが好ましく、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンを組み合わせて用いる場合は、スクロース60~200mM、トレハロース60~200mM、N-アセチル-L-システイン0.5~4mM、グリシン20~60mMとするのが好ましい。
本発明のワクチン組成物の剤形は、液状、粉末状(凍結乾燥粉末、乾燥粉末)、カプセル状等の形態を取り得るが、液状であるのが好ましい。
本発明のワクチン組成物は、さらに医薬として許容され得る担体を含んでいてもよい。当該担体としては、ワクチンの製造に通常用いられる担体が挙げられ、具体的には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、緩衝剤、乳化剤、保存剤(例えば、チメロサール)、等張化剤、pH調整剤、不活化剤(例えば、ホルマリン)、アジュバント若しくは免疫刺激剤等が例示される。アジュバントは抗原と共に投与することで、当該抗原に対する免疫応答を増強させる物質であり、例えば、沈降性アジュバントであるアルミニウム塩(水酸化アルミニウムゲル等)、油性アジュバントであるスクアレン、グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分であるリポ多糖LPSの改変体であるMPL、CpGやPoly I:C等に由来する核酸、Toll様受容体(TLR)を活性化するバクテリア構成成分等を挙げることができる。
本発明のワクチン組成物の投与経路は、例えば、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与、経鼻投与及び経口投与が挙げられ、その投与方法は、例えば、シリンジ、マイクロニードル及びネブライザー等によって投与する方法が挙げられるが、シリンジによって皮下投与されるのが好ましい。
本発明のワクチン組成物の1回の投与量は、ウイルス1株当たり15μgHA以上であればよく、対象の年齢、性別、体重等を考慮して適宜増量できるが、好ましくは、15~60μgHA/株、より好ましくは15~21μgHA/株、さらに好ましくは15μgHA/株を、1回又は2回以上投与することが挙げられる。好ましくは複数回の投与であり、この場合、1~4週間の間隔をあけて投与することが好ましい。
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 2種の添加剤を用いた熱安定性評価
添加剤として、糖類(スクロース、トレハロース)、アミノ酸類(グリシン(Gly)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp))及び抗酸化剤(N-アセチル-L-システイン:NAC)より選択した2種類の添加剤を用いて、インフルエンザHAワクチンの熱安定性への寄与を評価した。
添加剤として、糖類(スクロース、トレハロース)、アミノ酸類(グリシン(Gly)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp))及び抗酸化剤(N-アセチル-L-システイン:NAC)より選択した2種類の添加剤を用いて、インフルエンザHAワクチンの熱安定性への寄与を評価した。
既承認であるインフルエンザHAワクチンの単原液を用いて、上記で示した添加剤を単剤もしくは2剤混合したものをHAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、添加剤はスクロース、トレハロース、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸の終濃度が200mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5mMとなるように添加し、これらをTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した(図1-1,1-2:B型、図2-1,2-2:A型)。なお、使用したインフルエンザHAワクチンの単原液は、2022/2023年シーズンのワクチン株で製造したものであり、A/H1N1はA/Victoria/1/2020(IVR-217)株、A/H3N2はA/Darwin/9/2021(SAN-010)株、B/Yamagata系統はB/Phuket/3073/2013株、B/Vixctoria系統はB/Austria/1359417/2021(BVR-26)株である。
Tycho NT.6では、調製したHA溶液を35~95℃の範囲を30℃/分の速度で加温し、熱変性曲線の変曲点温度(Ti値)を測定し、添加剤を加えない場合(HA抗原のみ)に対する差分であるΔTi値より、熱安定性を評価した。
図1-1、1-2、2-1,2-2より、B型及びA型のいずれも添加剤が1種類の場合に比べて、2種類を混合した場合は有意にΔTi値が高くなった。このうちB型ではスクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインから得らればれる2種、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種、A型ではスクロース、トレハロース、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種の組み合わせが、より熱安定性向上の高い混合処方であると考えられた。
実施例2 3種の添加剤を用いた熱安定性評価
実施例1にてHA抗原(A型)の熱安定性に効果が確認されたスクロース、トレハロースグリシン、アスパラギン酸、HA抗原(B型)の熱安定性に効果が確認されたスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システインより3種類を混合し、熱安定性効果を検証した。上記で示した添加剤を2剤混合もしくは3剤混合したものをHAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、添加剤はスクロース、トレハロース、グリシン、アスパラギン酸はそれぞれ終濃度が60mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5mMとなるように添加し、これらをTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した。(図3:B型、図4:A型)
図3より、B型ではスクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインの3種類を混合した処方は2種類を混合する処方に比べてΔTi値が有意に高くなり、このうちN-アセチル-L-システインが最も熱安定性向上への寄与が大きいと考えられた。
また、図4より、A型ではスクロース、トレハロース、グリシン及びアスパラギン酸から選ばれる3種類を混合した処方は2種類を混合する処方に比べてΔTi値が高くなり、このうちグリシンとアスパラギン酸が熱安定性向上への寄与が大きいと考えられた。
実施例1にてHA抗原(A型)の熱安定性に効果が確認されたスクロース、トレハロースグリシン、アスパラギン酸、HA抗原(B型)の熱安定性に効果が確認されたスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システインより3種類を混合し、熱安定性効果を検証した。上記で示した添加剤を2剤混合もしくは3剤混合したものをHAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、添加剤はスクロース、トレハロース、グリシン、アスパラギン酸はそれぞれ終濃度が60mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5mMとなるように添加し、これらをTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した。(図3:B型、図4:A型)
図3より、B型ではスクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインの3種類を混合した処方は2種類を混合する処方に比べてΔTi値が有意に高くなり、このうちN-アセチル-L-システインが最も熱安定性向上への寄与が大きいと考えられた。
また、図4より、A型ではスクロース、トレハロース、グリシン及びアスパラギン酸から選ばれる3種類を混合した処方は2種類を混合する処方に比べてΔTi値が高くなり、このうちグリシンとアスパラギン酸が熱安定性向上への寄与が大きいと考えられた。
以上より、A型、B型共に、スクロース、トレハロースの添加は熱安定性向上に重要であり、これらに熱安定性向上への寄与が大きいと考えられたN-アセチル-L-システイン、グリシン、アスパラギン酸の濃度設定を行い、最適な処方を検討することとした。
実施例3 N-アセチル-L-システイン濃度と熱安定性向上効果の関係
熱安定性への寄与が大きいN-アセチル-L-システインについて、N-アセチル-L-システイン濃度と熱安定性向上効果の関係を検討した。HA抗原にスクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインを添加し、HAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、スクロース、トレハロースはそれぞれ終濃度が300mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5、1、2、4mMとなるように添加した。調製したこれらの溶液をTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した(図5:B型、図6:A型)。
熱安定性への寄与が大きいN-アセチル-L-システインについて、N-アセチル-L-システイン濃度と熱安定性向上効果の関係を検討した。HA抗原にスクロース、トレハロース及びN-アセチル-L-システインを添加し、HAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、スクロース、トレハロースはそれぞれ終濃度が300mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5、1、2、4mMとなるように添加した。調製したこれらの溶液をTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した(図5:B型、図6:A型)。
図5及び6より、設定したN-アセチル-L-システインの濃度範囲内ではΔTi値に濃度依存的な変化はなく、同程度であった。したがって、B型及びA型のいずれもN-アセチル-L-システインの添加濃度は0.5~4mMまでは同程度の熱安定性効果があることがわかった。したがって、N-アセチル-L-システインの濃度は0.5mMに設定することとした。
実施例4 グリシン濃度と熱安定性向上効果の関係
熱安定性への寄与が大きいグリシンについて、グリシン濃度と熱安定性向上効果の関係を検討した。HA抗原にスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシンを添加し、HAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、スクロース、トレハロースはそれぞれ終濃度が60mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5mM、グリシンの終濃度が20、40、60、80、100mMとなるように添加した。調製したこれらの溶液をTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した(図7:B型、図8:A型)。
熱安定性への寄与が大きいグリシンについて、グリシン濃度と熱安定性向上効果の関係を検討した。HA抗原にスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシンを添加し、HAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、スクロース、トレハロースはそれぞれ終濃度が60mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5mM、グリシンの終濃度が20、40、60、80、100mMとなるように添加した。調製したこれらの溶液をTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した(図7:B型、図8:A型)。
図7では設定したグリシンの濃度範囲内でΔTi値が濃度依存的に低下したが、図8ではΔTi値が濃度依存的に上昇した。ただし、B型及びA型のいずれもグリシン濃度を20mM添加することで、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システインの3種類混合に比べてΔTi値が高くなっており、熱安定性が向上することがわかった。よって、グリシン濃度は20mMに設定することとした。
実施例5 アスパラギン酸濃度と熱安定性向上効果の関係
熱安定性への寄与が大きいアスパラギン酸について、アスパラギン酸濃度と熱安定性向上効果の関係を検討した。HA抗原にスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、アスパラギン酸を添加し、HAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、スクロース、トレハロースはそれぞれ終濃度が60mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5mM、グリシンの終濃度が20mM、アスパラギン酸の終濃度が20、40、60、80、100mMとなるように添加した。調製したこれらの溶液をTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した(図9:B型、図10:A型)。
図9ではアスパラギン酸を添加することでスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシンの4種類混合に比べてΔTi値が低下した。一方で、図10ではアスパラギン酸を40mM以上添加することで、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシンの4種類混合に比べてΔTi値が高くなっており、熱安定性が向上することがわかった。よって、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンの4種混合に対するアスパラギン酸の添加効果はA型にのみ有効であると考えられた。
熱安定性への寄与が大きいアスパラギン酸について、アスパラギン酸濃度と熱安定性向上効果の関係を検討した。HA抗原にスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、アスパラギン酸を添加し、HAタンパク質含量が50μg/mLとなるように調製した。なお、スクロース、トレハロースはそれぞれ終濃度が60mM、N-アセチル-L-システインの終濃度が0.5mM、グリシンの終濃度が20mM、アスパラギン酸の終濃度が20、40、60、80、100mMとなるように添加した。調製したこれらの溶液をTycho NT.6(NanoTemper社)を用いてHA抗原の熱安定性を評価した(図9:B型、図10:A型)。
図9ではアスパラギン酸を添加することでスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシンの4種類混合に比べてΔTi値が低下した。一方で、図10ではアスパラギン酸を40mM以上添加することで、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシンの4種類混合に比べてΔTi値が高くなっており、熱安定性が向上することがわかった。よって、スクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンの4種混合に対するアスパラギン酸の添加効果はA型にのみ有効であると考えられた。
以上の結果より、A型及びB型由来のHAを含むインフルエンザHAワクチンについては、60mMスクロース、60mMトレハロース、0.5mM N-アセチル-L-システイン及び20mMグリシンの組成が熱安定性向上効果の高い処方であると考えられた。
Claims (10)
- 抗原としてインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン、グリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる2種以上の添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
- 液体である、請求項1記載の組成物。
- 添加剤がスクロース及び/又はトレハロースを含む、請求項2記載の組成物。
- 添加剤がスクロース及びトレハロースを含み、且つN-アセチル-L-システイン及び/又はグリシンを含む、請求項2記載の組成物。
- 抗原がA型及びB型のインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有する、請求項4記載の組成物。
- 組成物溶液中のスクロース又はトレハロースの濃度がそれぞれ60~200mMである、請求項3~5のいずれか1項記載の組成物。
- 組成物溶液中のN-アセチル-L-システインの濃度が0.5~4mMであり、グリシンの濃度が20~60mMである、請求項4又は5記載の組成物。
- 組成物溶液中のスクロース及びトレハロースの濃度がそれぞれ60~200mMである、請求項7記載の組成物。
- 抗原としてA型及びB型のインフルエンザウイルスのヘムアグルチニン画分を含有し、併せてスクロース、トレハロース、N-アセチル-L-システイン及びグリシンからなる添加剤を含有するインフルエンザHAワクチン組成物。
- 組成物溶液中のスクロース及びトレハロース濃度がそれぞれ60~200mMであり、N-アセチル-L-システイン濃度が0.5~4mMであり、グリシン濃度が20~60mMである、請求項9記載の組成物。
Priority Applications (1)
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| JP2024032533A JP2025134552A (ja) | 2024-03-04 | 2024-03-04 | インフルエンザワクチン製剤 |
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2024
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