以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
また、本明細書等において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指す。
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、図1乃至図12を参照して説明する。
<半導体装置の構成例1>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図1(C)は、図1(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、図1(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100の構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても図1(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
トランジスタ100は、基板102上のゲート電極として機能する導電膜104と、基板102及び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の絶縁膜107と、絶縁膜107上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108に電気的に接続されソース電極またはドレイン電極の一方として機能する導電膜112aと、酸化物半導体膜108に電気的に接続されソース電極またはドレイン電極の他方として機能する導電膜112bと、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上の絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上の絶縁膜118と、絶縁膜118上の導電膜120a、120bと、を有する。また、導電膜120aは、絶縁膜114、116、118に設けられる開口部142cを介して、導電膜112bと電気的に接続される。
図1において、L1はトランジスタ100のチャネル長である。ここでは、チャネル長L1は、酸化物半導体膜108の上面における導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離をいう。L1は、1μm以上100μm以下であり、または1μm以上30μm以下である。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
図1(A)において、W1はトランジスタ100のチャネル幅である。ここでは、チャネル幅W1は、酸化物半導体膜108の上面において、導電膜112aと導電膜112bが向かいあっている部分の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
また、絶縁膜106及び絶縁膜107は、トランジスタ100の第1のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜114及び絶縁膜116は、酸素を有し、酸化物半導体膜108中に酸素を供給する機能を有する。また、絶縁膜114、116、118は、トランジスタ100の第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜118は、トランジスタ100中に入り込む不純物を抑制する保護絶縁膜としての機能を有する。また、導電膜120aは、例えば、表示装置に用いる画素電極としての機能を有する。また、導電膜120bは、第2のゲート電極(バックゲート電極ともいう)として機能する。
また、図1(C)に示すように導電膜120bは、絶縁膜106、107、114、116、118に設けられる開口部142a、142bにおいて、第1のゲート電極として機能する導電膜104と電気的に接続される。よって、導電膜120bと導電膜104には、同じ電位が与えられる。
トランジスタ100が有する酸化物半導体膜108は、酸素欠損が形成されるとキャリアである電子が生じ、ノーマリーオン特性になりやすい。したがって、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を減らすことが、安定したトランジスタ特性を得る上でも重要となる。本発明の一態様のトランジスタの構成においては、酸化物半導体膜108上の絶縁膜、ここでは、酸化物半導体膜108上の絶縁膜114に過剰な酸素を導入することで、絶縁膜114から酸化物半導体膜108中に酸素を移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。または、酸化物半導体膜108上の絶縁膜116に過剰な酸素を導入することで、絶縁膜116から絶縁膜114を介し、酸化物半導体膜108中に酸素を移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。または、酸化物半導体膜108上の絶縁膜114及び絶縁膜116に過剰な酸素を導入することで、絶縁膜114及び絶縁膜116の双方から酸化物半導体膜108中に酸素を移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。
なお、絶縁膜114、116としては、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜114、116は、酸素を放出することが可能な絶縁膜であることが好ましい。なお、絶縁膜114、116に酸素過剰領域を設けるには、例えば、成膜後の絶縁膜114、116に酸素を導入して、酸素過剰領域を形成する。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
また、酸化物半導体膜108は、酸素と、Inと、Znと、M(Mは、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Nd、またはHf)とを有する。代表的には、酸化物半導体膜108としては、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−M−Zn酸化物を用いることができる。とくに、酸化物半導体膜108としては、In−M−Zn酸化物を用いると好ましい。
また、酸化物半導体膜108は、酸素と、Inと、Gaと、を有すると好ましい。この場合、酸化物半導体膜108は、ホモロガス構造を有し、且つInの含有量がGaの含有量よりも多いと好ましい。Inの含有量がGaの含有量よりも多い酸化物半導体膜108とすることで、トランジスタ100の電界効果移動度(単に移動度、またはμFEという場合がある)が高くすることができる。具体的には、トランジスタ100の電界効果移動度が10cm2/Vsを超えることが可能となる。
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートドライバ(とくに、ゲートドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)半導体装置または表示装置を提供することができる。
一方で、Inの含有量がGaの含有量よりも多い酸化物半導体膜108とした場合、トランジスタ100の電気特性が変動しやすい。具体的には、トランジスタ100のチャネル領域に、上述した酸化物半導体膜108を用いると、トランジスタ100がチャネル長変調効果を受けやすく、Vd(ドレイン電圧)−Id(ドレイン電流)特性において、ドレイン電圧がピンチオフを達成する電圧以上になっても、ドレイン電流が一定にならない(トランジスタが飽和領域で動作しない、またはトランジスタの飽和特性が得られない)場合がある。
しかしながら、本発明の一態様の半導体装置においては、酸化物半導体膜108の膜厚は35nm以下、または20nm以下、または10nm以下とすることが可能である。酸化物半導体膜108の厚さは、3nm以上35nm以下、好ましくは3nm以上20nm以下、さらに好ましくは3nm以上10nm以下である。別言すると、酸化物半導体膜108は、厚さが0nmよりも大きくかつ35nm以下の領域を有する。
または、別言すると、酸化物半導体膜108のチャネル形成領域は、厚さが0nmを超えかつ35nm以下の領域、または厚さが0nmを超え20nm未満の領域を含んでいる。チャネル形成領域は、厚さが3nm以上35nm以下の領域を、または厚さが3nm以上20nm以下の領域を、または3nm以上10nm以下の領域を含むことが好ましい。
または、別言すると、酸化物半導体膜108の、導電膜112aおよび導電膜112bと重ならず、かつ導電膜104と重なる部分が、厚さが0nmを超えかつ35nm以下の領域を、または厚さが0nmを超え20nm未満の領域を有している。当該部分は、厚さが3nm以上35nm以下の領域を、または厚さが3nm以上20nm以下の領域を、または厚さが3nm以上10nm以下の領域を有することが好ましい。
酸化物半導体膜108が上記範囲膜厚の領域を有することで、Inの含有量がGaの含有量よりも多い酸化物半導体膜108を用いる場合でも、トランジスタ100を飽和領域で動作させることができる。
また、図1(B)に示すように、酸化物半導体膜108は、第1のゲート電極として機能する導電膜104と、第2のゲート電極として機能する導電膜120bのそれぞれと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。第2のゲート電極として機能する導電膜120bのチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体膜108のチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さよりもそれぞれ長く、酸化物半導体膜108の全体は、絶縁膜114、116、118を介して導電膜120bに覆われている。また、第2のゲート電極として機能する導電膜120bと第1のゲート電極として機能する導電膜104とは、絶縁膜106、107、114、116、118に設けられる開口部142a、142bにおいて接続されるため、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向の側面は、絶縁膜114、116、118を介して第2のゲート電極として機能する導電膜120bと対向している。
別言すると、トランジスタ100のチャネル幅方向において、第1のゲート電極として機能する導電膜104及び第2のゲート電極として機能する導電膜120bは、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107及び第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜114、116、118に設けられる開口部において接続すると共に、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107及び第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜114、116、118を介して酸化物半導体膜108を囲む構成である。
このような構成を有することで、トランジスタ100に含まれる酸化物半導体膜108を、第1のゲート電極として機能する導電膜104及び第2のゲート電極として機能する導電膜120bの電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ100のように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜を電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をsurrounded channel(s−channel)構造と呼ぶことができる。
トランジスタ100は、s−channel構造を有するため、第1のゲート電極として機能する導電膜104によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導体膜108に印加することができるため、トランジスタ100の電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ100を微細化することが可能となる。また、トランジスタ100は、第1のゲート電極として機能する導電膜104及び第2のゲート電極として機能する導電膜120bによって囲まれた構造を有するため、トランジスタ100の機械的強度を高めることができる。
以下に、本実施の形態の半導体装置に含まれるその他の構成要素について、詳細に説明する。
<基板>
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンからなる単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置を作製することができる。
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
<第1のゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極>
第1のゲート電極として機能する導電膜104、及びソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜112a、112bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
また、導電膜104、112a、112bは、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、導電膜104、112a、112bには、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。
また、導電膜104、112a、112bには、Cu−X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu−X合金膜を用いることで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
<第1のゲート絶縁膜>
トランジスタ100の第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を、それぞれ用いることができる。なお、絶縁膜106、107の積層構造とせずに、上述の材料から選択された単層の絶縁膜、または3層以上の絶縁膜を用いてもよい。
また、絶縁膜106は、酸素の透過を抑制するブロッキング膜としての機能を有する。例えば、絶縁膜107、114、116及び/または酸化物半導体膜108中に過剰の酸素を供給する場合において、絶縁膜106は酸素の透過を抑制することができる。
なお、トランジスタ100のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108と接する絶縁膜107は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜107は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜107に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜107を形成すればよい。または、成膜後の絶縁膜107に酸素を導入して、酸素過剰領域を形成してもよい。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
また、絶縁膜107として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜107の膜厚を大きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
なお、本実施の形態では、絶縁膜106として窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜107として酸化シリコン膜を形成する。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、酸化シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トランジスタ100のゲート絶縁膜として、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を物理的に厚膜化することができる。よって、トランジスタ100の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタ100の静電破壊を抑制することができる。
<酸化物半導体膜>
酸化物半導体膜108としては、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−M−Zn酸化物を用いることができる。とくに、酸化物半導体膜108としては、In−M−Zn酸化物を用いると好ましい。
酸化物半導体膜108がIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1が好ましい。また、酸化物半導体膜108がIn−M−Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲットとしては、多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いることで、結晶性を有する酸化物半導体膜108を形成しやすくなる。なお、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比は、In:Ga:Zn=4:2:3近傍となる場合がある。
なお、酸化物半導体膜108がIn−M−Zn酸化物膜であるとき、Zn及びOを除いてのInとMの原子数比率は、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
また、酸化物半導体膜108の厚さは、3nm以上35nm以下、好ましくは3nm以上20nm以下、さらに好ましくは3nm以上10nm以下とする。
また、酸化物半導体膜108としては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いる。例えば、酸化物半導体膜108は、キャリア密度が1×1017個/cm3以下、好ましくは1×1015個/cm3以下、さらに好ましくは1×1013個/cm3以下、より好ましくは1×1011個/cm3以下とする。
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜108のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
なお、酸化物半導体膜108として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×106μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。
したがって、上記高純度真性、または実質的に高純度真性の酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとすることができる。なお、酸化物半導体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等がある。
酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体膜108は水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜108において、SIMS分析により得られる水素濃度を、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms/cm3以下、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。
酸化物半導体膜108において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体膜108において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物半導体膜108におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体膜108との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(SIMS分析により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜108において、SIMS分析により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜108のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。
また、酸化物半導体膜108に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体膜において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、SIMS分析により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
また、酸化物半導体膜108は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
酸化物半導体膜108は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
なお、酸化物半導体膜108が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する単層構造の場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二層以上を有する積層構造を有する場合がある。
<第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜>
絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108に酸素を供給する機能を有する。また、絶縁膜118は、トランジスタ100の保護絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜114、116は、酸素を有する。また、絶縁膜114は、酸素を透過することのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形成する絶縁膜116を形成する際の、酸化物半導体膜108へのダメージ緩和膜としても機能する。
絶縁膜114としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が3×1017spins/cm3以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114に含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸素の透過量が減少してしまう。
なお、絶縁膜114においては、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜114の外部に移動せず、絶縁膜114にとどまる酸素もある。また、絶縁膜114に酸素が入ると共に、絶縁膜114に含まれる酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁膜114において酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過することができる酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から脱離する酸素を、絶縁膜114を介して酸化物半導体膜108に移動させることができる。
また、絶縁膜114は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体膜の価電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギー(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミニウム膜等を用いることができる。
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法において、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×1018個/cm3以上5×1019個/cm3以下である。なお、アンモニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃以下の加熱処理による放出量とする。
窒素酸化物(NOx、xは0以上2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的にはNO2またはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体膜108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108の界面において、電子がトラップされにくい。
絶縁膜114として、上記酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能になる。
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の加熱処理により、絶縁膜114は、100K以下のESRで測定して得られたスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピン密度の合計が1×1018spins/cm3未満であり、代表的には1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未満である。
なお、100K以下のESRスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルは、窒素酸化物(NOx、xは0以上2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルに相当する。窒素酸化物の代表例としては、一酸化窒素、二酸化窒素等がある。即ち、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピン密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないといえる。
また、上記酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×1020atoms/cm3以下である。
基板温度が220℃以上、または280℃以上、または350℃以上であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPECVD法を用いて、上記酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を形成することができる。
絶縁膜116は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1019atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物絶縁膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
絶縁膜116としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
また、絶縁膜116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が1.5×1018spins/cm3未満、さらには1×1018spins/cm3以下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して酸化物半導体膜108から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、これに限定されず、例えば、絶縁膜114の単層構造としてもよい。
絶縁膜118は、窒素を有する。また、絶縁膜118は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜118は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜118を設けることで、酸化物半導体膜108からの酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116に含まれる酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜108への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。絶縁膜118としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
なお、上記記載の、導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜などの様々な膜は、スパッタリング法やPECVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよい。熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法を用いても良い。
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行ってもよい。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが順次チャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の層が第1の層上に積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なFETを作製する場合に適している。
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、上記記載の導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜、金属酸化膜などの様々な膜を形成することができ、例えば、In−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジメチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CH3)3である。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH3)3である。また、ジメチル亜鉛の化学式は、Zn(CH3)2である。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C2H5)3)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C2H5)2)を用いることもできる。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを用いてタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn−Ga−ZnO膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してIn−O層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを用いてGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2ガスとO3ガスを用いてZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn−Ga−O層やIn−Zn−O層、Ga−Zn−O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いても良い。
<半導体装置の構成例2>
次に、図1(A)乃至(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図2(A)乃至(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図2(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ160の上面図であり、図2(B)は、図2(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図2(C)は、図2(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
トランジスタ160は、先に示すトランジスタ100と比較し、開口部142bが設けられていない点が異なる。それ以外の構成については、トランジスタ100と同様であり、詳細な説明は省略する。
図2(A)、(C)に示すように、開口部142aを設けて、第1のゲート電極として機能する導電膜104と、第2のゲート電極として機能する導電膜120bと、を電気的に接続してもよい。
<半導体装置の構成例3>
次に、図1(A)乃至(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図3(A)乃至(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図3(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ130の上面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図3(C)は、図3(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図3に示すトランジスタ130は、その上面図において、ソースまたはドレインの一方として機能する導電膜112aが、ソースまたはドレインの他方として機能する導電膜112bを同心円状に取り囲んでいる点で、トランジスタ100と異なる。
図37(A)はトランジスタ130が有する酸化物半導体膜108の上面図である。図37(A)に示すように、酸化物半導体膜108は導電膜112aと重なる領域185aおよび導電膜112bと重なる領域185bを有する。領域185aと領域185bとは、それぞれ、他方の領域と対向する端部を有する。上面からみたときに、領域185bの端部の長さは領域185aの端部の長さよりも短い。
また、導電膜112bを外部の端子と電気的に接続するために、絶縁膜121および導電膜122が設けられ、導電膜122は、開口部142dを介して、導電膜112bと電気的に接続されている。また、第1のゲート電極として機能する導電膜104と、第2のゲート電極として機能する導電膜120bとは、開口部142aを介して、互いに電気的に接続されている。
図示されていないが、導電膜112aは、画素電極として機能する導電膜と電気的に接続されていてもよい。
図示されていないが、導電膜122は、画素電極として機能する導電膜と電気的に接続されていてもよい。
導電膜122の詳細は、導電膜104、112a、112bの説明を参照すればよい。
絶縁膜121は、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上含む絶縁体を用いることができる。また、絶縁膜121は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いることもできる。
トランジスタ130は、上記以外の構成については、トランジスタ100と同様であり、詳細な説明は省略する。
導電膜112aは、ドレイン電極として機能し、導電膜112bは、ソース電極として機能することが好ましい。このように、ドレイン電極がソース電極を取り囲む構成にすることで、トランジスタ130は、チャネル長変調効果の影響を受けにくく、Vd−Id特性において、良好な飽和特性を示すことができる。
図3(A)において、L3はトランジスタ130のチャネル長である。トランジスタ130のチャネル長L3も、図1に示すトランジスタ100と同様、酸化物半導体膜108の上面における導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離をいう。別言すると、チャネル長L3は、導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離である。L3は、1μm以上100μm以下であり、または1μm以上30μm以下である。
また、図3において、一点鎖線で示すW3はトランジスタ130のチャネル幅である。トランジスタ130のチャネル幅W3は、酸化物半導体膜108上にあって、導電膜112aの端部と導電膜112bの端部から等距離に位置する同心円の円周のことをいう。
<半導体装置の構成例4>
次に、図1(A)乃至(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図4(A)乃至(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図4(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ140の上面図であり、図4(B)は、図4(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図4(C)は、図4(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図4に示すトランジスタ140は、その上面図において、ソース及びドレインの一方として機能する導電膜112aが、ソース及びドレインの他方として機能する導電膜112bを四角形状に取り囲んでいる点で、図3のトランジスタ130と異なる。それ以外の構成については、トランジスタ130と同様であり、詳細な説明は省略する。
図37(B)はトランジスタ140が有する酸化物半導体膜108の上面図である。図37(B)に示すように、酸化物半導体膜108は導電膜112aと重なる領域185aおよび導電膜112bと重なる領域185bを有する。領域185aと領域185bとは、それぞれ、他方の領域と対向する端部を有する。上面からみたときに、領域185bの端部の長さは領域185aの端部の長さよりも短い。
トランジスタ130と同様に、トランジスタ140の導電膜112aは、ドレイン電極として機能し、トランジスタ140の導電膜112bは、ソース電極として機能することが好ましい。このように、ドレイン電極がソース電極を取り囲む構成にすることで、トランジスタ140は、チャネル長変調効果の影響を受けにくく、Vd−Id特性において、良好な飽和特性を示すことができる。
図4において、L4はトランジスタ140のチャネル長である。トランジスタ140のチャネル長L4は、酸化物半導体膜108の上面における導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離である。別言すると、チャネル長L4は、導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離である。L4は、1μm以上100μm以下であり、または1μm以上30μm以下である。
また、図4(A)において、一点鎖線で示すW4はトランジスタ140のチャネル幅である。トランジスタ140のチャネル幅W4は、酸化物半導体膜108上にあって、導電膜112aの端部と導電膜112bの端部から等距離に位置する四角形の外周のことをいう。
<半導体装置の構成例5>
次に、図1(A)乃至(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図5(A)乃至(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図5(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ150の上面図であり、図5(B)は、図5(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図5(C)は、図5(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図5に示すトランジスタ150は、その上面図において、ソース及びドレインの一方として機能する導電膜112aの端部と、ソース及びドレインの他方として機能する導電膜112bの端部とが、互いに向かい合い、扇形を形成している点で、図1に示すトランジスタ100と異なる。
図5(D)はトランジスタ150が有する酸化物半導体膜108の上面図である。図5(D)に示すように、酸化物半導体膜108は、導電膜112aと重なる領域185a、および導電膜112bと重なる領域185bを有する。領域185aと領域185bとは、それぞれ、他方の領域と対向する端部を有する。上面から見たときに、領域185aの端部の長さが領域185bの端部の長さよりも短い。この点が、図1に示すトランジスタ100と異なる。
図5(A)、(B)、(D)において、L5はトランジスタ150のチャネル長である。トランジスタ150のチャネル長L5も、図1に示すトランジスタ100と同様、酸化物半導体膜108の上面における導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離をいう。L5は、1μm以上100μm以下であり、または1μm以上30μm以下である。
トランジスタ150は、上記以外の構成については、トランジスタ100と同様であり、詳細な説明は省略する。
トランジスタ150の導電膜112aは、ソース電極として機能し、トランジスタ150の導電膜112bは、ドレイン電極として機能することが好ましい。上記構成にすることで、トランジスタ150は、チャネル長変調効果の影響を受けにくく、Vd−Id特性において、良好な飽和特性を示すことができる。
<半導体装置の構成例6>
次に、図1(A)乃至(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図6(A)乃至(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図6(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ170の上面図であり、図6(B)は、図6(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図6(C)は、図6(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図6に示すトランジスタ170は、その上面図において、導電膜112a、112bの形状に合わせて、導電膜120b及び導電膜104の形状がある曲率をもって曲がっている点で、図5に示すトランジスタ150と異なる。また、図5(A)に示す開口部142bが省略されている点で、トランジスタ170は、トランジスタ150と異なる。
トランジスタ170は、上記以外の構成については、トランジスタ150と同様であり、詳細な説明は省略する。
図6(A)、(B)において、L7はトランジスタ170のチャネル長である。トランジスタ170のチャネル長L7も、図1に示すトランジスタ100と同様、酸化物半導体膜108の上面における導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離をいう。L7は、1μm以上100μm以下であり、または1μm以上30μm以下である。
トランジスタ170の導電膜112aは、ソース電極として機能し、トランジスタ170の導電膜112bは、ドレイン電極として機能することが好ましい。上記構成にすることで、トランジスタ170は、チャネル長変調効果の影響を受けにくく、Vd−Id特性において、良好な飽和特性を示すことができる。
<半導体装置の構成例7>
次に、図1(A)乃至(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図7(A)乃至(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図7(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ180の上面図であり、図7(B)は、図7(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図7(C)は、図7(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図7に示すトランジスタ180は、その上面図において、ソース及びドレインの一方として機能する導電膜112aの端部と、ソース及びドレインの他方として機能する導電膜112bの端部とが、互いに向かい合い、台形を形成している点で、図1に示すトランジスタ100と異なる。
図7において、L8はトランジスタ180のチャネル長である。トランジスタ180のチャネル長L8も、図1に示すトランジスタ100と同様、酸化物半導体膜108の上面における導電膜112aの端部と導電膜112bの端部との間の距離をいう。L8は、1μm以上100μm以下であり、または1μm以上30μm以下である。
図7(D)はトランジスタ180が有する酸化物半導体膜108の上面図である。図7(D)に示すように、酸化物半導体膜108は、導電膜112aと重なる領域185a、および導電膜112bと重なる領域185bを有する。領域185aと領域185bとは、それぞれ、他方の領域と対向する端部を有する。上面から見たときに、領域185aの端部の長さが領域185bの端部の長さよりも短い。
トランジスタ180は、上記以外の構成については、トランジスタ100と同様であり、詳細な説明は省略する。
トランジスタ180の導電膜112aは、ソース電極として機能し、トランジスタ150の導電膜112bは、ドレイン電極として機能することが好ましい。上記構成にすることで、トランジスタ180は、チャネル長変調効果の影響を受けにくく、Vd−Id特性において、良好な飽和特性を示すことができる。
<半導体装置の構成例8>
次に、図1(A)乃至(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図8(A)乃至(D)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図8(A)、(B)は、図1(B)、(C)に示すトランジスタ100の変形例の断面図である。また、図8(C)、(D)は、図1(B)、(C)に示すトランジスタ100の変形例の断面図である。
図8(A)、(B)に示すトランジスタ100Aは、図1(B)、(C)に示すトランジスタ100が有する酸化物半導体膜108を3層の積層構造としている。より具体的には、トランジスタ100Aが有する酸化物半導体膜108は、酸化物半導体膜108aと、酸化物半導体膜108bと、酸化物半導体膜108cと、を有する。
図8(C)、(D)に示すトランジスタ100Bは、図1(B)、(C)に示すトランジスタ100が有する酸化物半導体膜108を2層の積層構造としている。より具体的には、トランジスタ100Bが有する酸化物半導体膜108は、酸化物半導体膜108aと、酸化物半導体膜108bと、を有する。
ここで、酸化物半導体膜108a、108b、108c、及び酸化物半導体膜108b、108cに接する絶縁膜のバンド構造について、図9を用いて説明する。
図9(A)は、絶縁膜107、酸化物半導体膜108a、108b、108c、及び絶縁膜114を有する積層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。また、図9(B)は、絶縁膜107、酸化物半導体膜108b、108c、及び絶縁膜114を有する積層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。なお、バンド構造は、理解を容易にするため絶縁膜107、酸化物半導体膜108a、108b、108c、及び絶縁膜114の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
また、図9(A)は、絶縁膜107、114として酸化シリコン膜を用い、酸化物半導体膜108aとして金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108bとして金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108cとして金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用いる構成のバンド図である。
また、図9(B)は、絶縁膜107、114として酸化シリコン膜を用い、酸化物半導体膜108bとして金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108cとして金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2の金属酸化物ターゲットを用いて形成される金属酸化膜を用いる構成のバンド図である。
図9(A)、(B)に示すように、酸化物半導体膜108a、108b、108cにおいて、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようなバンド構造を有するためには、酸化物半導体膜108aと酸化物半導体膜108bとの界面、または酸化物半導体膜108bと酸化物半導体膜108cとの界面において、トラップ中心や再結合中心のような欠陥準位、を形成するような不純物が存在しないとする。
酸化物半導体膜108a、108b、108cに連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。
図9(A)(B)に示す構成とすることで酸化物半導体膜108bがウェル(井戸)となり、上記積層構造を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜108bに形成されることがわかる。
なお、酸化物半導体膜108a、108cを設けることにより、酸化物半導体膜108bに形成されうるトラップ準位を遠ざけることができる。
また、トラップ準位がチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108bの伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)より真空準位に遠くなることがあり、トラップ準位に電子が蓄積しやすくなってしまう。トラップ準位に電子が蓄積されることで、マイナスの固定電荷となり、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって、トラップ準位が酸化物半導体膜108bの伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)より真空準位となるような構成すると好ましい。このようにすることで、トラップ準位に電子が蓄積しにくくなり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電界効果移動度を高めることができる。
また、図9(A)、(B)において、酸化物半導体膜108a、108cは、酸化物半導体膜108bよりも伝導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体膜108bの伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜108a、108cの伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下である。すなわち、酸化物半導体膜108a、108cの電子親和力と、酸化物半導体膜108bの電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下である。
このような構成を有することで、酸化物半導体膜108bが電流の主な経路となり、チャネル領域として機能する。また、酸化物半導体膜108a、108cは、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜108bを構成する金属元素の一種以上から構成される酸化物半導体膜であるため、酸化物半導体膜108aと酸化物半導体膜108bとの界面、または酸化物半導体膜108bと酸化物半導体膜108cとの界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
また、酸化物半導体膜108a、108cは、チャネル領域の一部として機能することを防止するため、導電率が十分に低い材料を用いるものとする。または、酸化物半導体膜108a、108cには、電子親和力(真空準位と伝導帯下端のエネルギー準位との差)が酸化物半導体膜108bよりも小さく、伝導帯下端のエネルギー準位が酸化物半導体膜108bの伝導帯下端エネルギー準位と差分(バンドオフセット)を有する材料を用いるものとする。また、ドレイン電圧の大きさに依存したしきい値電圧の差が生じることを抑制するためには、酸化物半導体膜108a、108cの伝導帯下端のエネルギー準位が、酸化物半導体膜108bの伝導帯下端のエネルギー準位よりも0.2eVより真空準位に近い材料、好ましくは0.5eV以上真空準位に近い材料を適用することが好ましい。
また、酸化物半導体膜108a、108cは、膜中にスピネル型の結晶構造が含まれないことが好ましい。酸化物半導体膜108a、108cの膜中にスピネル型の結晶構造を含む場合、該スピネル型の結晶構造と他の領域との界面において、導電膜112a、112bの構成元素が酸化物半導体膜108bへ拡散してしまう場合がある。なお、酸化物半導体膜108a、108cが後述するCAAC−OSである場合、導電膜112a、112bの構成元素、例えば、銅元素のブロッキング性が高くなり好ましい。
酸化物半導体膜108a、108cの膜厚は、導電膜112a、112bの構成元素が酸化物半導体膜108bに拡散することを抑制することのできる膜厚以上であって、絶縁膜114から酸化物半導体膜108bへの酸素の供給を抑制する膜厚未満とする。例えば、酸化物半導体膜108a、108cの膜厚が10nm以上であると、導電膜112a、112bの構成元素が酸化物半導体膜108bへ拡散するのを抑制することができる。また、酸化物半導体膜108a、108cの膜厚を100nm以下とすると、絶縁膜114、116から酸化物半導体膜108bへ効果的に酸素を供給することができる。
酸化物半導体膜108a、108cがIn−M−Zn酸化物であるとき、MとしてTi、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHfをInより高い原子数比で有することで、酸化物半導体膜108a、108cのエネルギーギャップを大きく、電子親和力を小さくしうる。よって、酸化物半導体膜108bとの電子親和力の差を元素Mの組成によって制御することが可能となる場合がある。また、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfは、酸素との結合力が強い金属元素であるため、これらの元素をInより高い原子数比で有することで、酸素欠損が生じにくくなる。
また、酸化物半導体膜108a、108cがIn−M−Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除いてのInおよびMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。また、酸化物半導体膜108a、108cとして、酸化ガリウム膜を用いてもよい。
また、酸化物半導体膜108a、108b、108cが、In−M−Zn酸化物の場合、酸化物半導体膜108bと比較して、酸化物半導体膜108a、108cに含まれるMの原子数比が大きく、代表的には、酸化物半導体膜108bに含まれる上記原子と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比である。
また、酸化物半導体膜108a、108b、108cが、In−M−Zn酸化物の場合、酸化物半導体膜108bをIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体膜108a、108cをIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y2/x2がy1/x1よりも大きく、好ましくは、y2/x2がy1/x1よりも1.5倍以上である。より好ましくは、y2/x2がy1/x1よりも2倍以上大きく、さらに好ましくは、y2/x2がy1/x1よりも3倍以上または4倍以上大きい。このとき、酸化物半導体膜108bにおいて、y1がx1以上であると、酸化物半導体膜108bを用いるトランジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。ただし、y1がx1の3倍以上になると、酸化物半導体膜108bを用いるトランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y1はx1の3倍未満であると好ましい。
酸化物半導体膜108bがIn−M−Zn酸化物の場合、酸化物半導体膜108bを成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜108bとして後述のCAAC−OSが形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2等がある。
また、酸化物半導体膜108a、108cがIn−M−Zn酸化物の場合、酸化物半導体膜108a、108cを成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x2:y2:z2とすると、x2/y2<x1/y1であって、z2/y2は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。また、インジウムに対するMの原子数比率を大きくすることで、酸化物半導体膜108a、108cのエネルギーギャップを大きく、電子親和力を小さくすることが可能であるため、y2/x2を3以上、または4以上とすることが好ましい。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:5、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:4:2、In:M:Zn=1:4:4、In:M:Zn=1:4:5、In:M:Zn=1:5:5等がある。
また、酸化物半導体膜108a、108cがIn−M酸化物の場合、Mとして2価の金属原子(例えば、亜鉛など)を含まない構成とすることで、スピネル型の結晶構造を含有しない酸化物半導体膜108a、108cを形成することができる。また、酸化物半導体膜108a、108cとしては、例えば、In−Ga酸化物膜を用いることができる。該In−Ga酸化物膜としては、例えば、In−Ga金属酸化物ターゲット(In:Ga=7:93)を用いて、スパッタリング法により形成することができる。また、酸化物半導体膜108a、108cを、DC放電を用いたスパッタリング法で成膜するためには、In:M=x:y[原子数比]としたときに、y/(x+y)を0.96以下、好ましくは0.95以下、例えば0.93とするとよい。
なお、酸化物半導体膜108a、108b、108cの原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
また、本実施の形態に係るトランジスタは、上記の構造のそれぞれを自由に組み合わせることが可能である。
<半導体装置の作製方法>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の作製方法について、図10乃至図12を用いて以下詳細に説明する。なお、図10乃至図12は、半導体装置の作製方法を説明する断面図である。また、図10(A)、(C)、(E)、(G)、図11(A)、(C)、(E)、及び図12(A)、(C)、(E)、(G)は、トランジスタ100の作製途中のチャネル長方向の断面図であり、図10(B)、(D)、(F)、(H)、図11(B)、(D)、(F)、及び図12(B)、(D)、(F)、(H)は、トランジスタ100の作製途中のチャネル幅方向の断面図である。
なお、トランジスタ100を構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、PLD法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、PECVD法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、MOCVD法やALD法を使ってもよい。
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行う。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブともよぶ。)を切り替えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単原子層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の単原子層上に積層されて薄膜が形成される。
このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なトランジスタを作製する場合に適している。
まず、基板102上に導電膜を形成し、該導電膜をリソグラフィ工程及びエッチング工程を行い加工して、第1のゲート電極として機能する導電膜104を形成する。次に、導電膜104上に第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107を形成する(図10(A)、(B)参照)。
第1のゲート電極として機能する導電膜104は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、を用いて形成することができる。または、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、先に説明した有機金属化学気相堆積(MOCVD)法等の熱CVD法、又は原子層堆積(ALD)法を用いてもよい。
本実施の形態では、基板102としてガラス基板を用い、第1のゲート電極として機能する導電膜104として厚さ100nmのタングステン膜をスパッタリング法で形成する。
第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107は、スパッタリング法、PECVD法、熱CVD法、真空蒸着法、PLD法等を用いて形成することができる。本実施の形態では、PECVD法により、絶縁膜106として厚さ400nmの窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜107として厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
なお、絶縁膜106としては、窒化シリコン膜の積層構造とすることができる。具体的には、絶縁膜106を、第1の窒化シリコン膜と、第2の窒化シリコン膜と、第3の窒化シリコン膜との3層積層構造とすることができる。該3層積層構造の一例としては、以下のように形成することができる。
第1の窒化シリコン膜としては、例えば、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPE−CVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
第2の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成すればよい。
第3の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sccmの窒素を原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
なお、上記第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の窒化シリコン膜形成時の基板温度は350℃とすることができる。
絶縁膜106を、窒化シリコン膜の3層の積層構造とすることで、例えば、導電膜104に銅(Cu)を含む導電膜を用いる場合において、以下の効果を奏する。
第1の窒化シリコン膜は、導電膜104からの銅(Cu)元素の拡散を抑制することができる。第2の窒化シリコン膜は、水素を放出する機能を有し、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜の耐圧を向上させることができる。第3の窒化シリコン膜は、第3の窒化シリコン膜からの水素放出が少なく、且つ第2の窒化シリコン膜からの放出される水素の拡散を抑制することができる。
絶縁膜107としては、後に形成される酸化物半導体膜108との界面特性を向上させるため、酸素を含む絶縁膜で形成されると好ましい。
次に、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108を形成する(図10(C)、(D)参照)。
本実施の形態では、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=3:1:2(原子数比))を用いて、スパッタリング法により酸化物半導体膜を成膜し、該酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、該酸化物半導体膜を所望の領域に加工することで島状の酸化物半導体膜108を形成する。
酸化物半導体膜108の形成後、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、さらに好ましくは300℃以上450℃以下の加熱処理を行ってもよい。ここでの加熱処理は、酸化物半導体膜の高純度化処理の一つであり、酸化物半導体膜108に含まれる水素、水等を低減することができる。なお、水素、水等の低減を目的とした加熱処理は、酸化物半導体膜108を島状に加工する前に行ってもよい。
酸化物半導体膜108への加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、加熱時間を短縮することが可能となる。
なお、酸化物半導体膜108への加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理した後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱してもよい。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸化物半導体膜中に酸素を供給することができる。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
なお、スパッタリング法で酸化物半導体膜108を形成する場合、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜108に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
また、スパッタリング法で酸化物半導体膜108を形成する場合、スパッタリング装置におけるチャンバーは、酸化物半導体膜108にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(5×10−7Paから1×10−4Pa程度まで)することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
次に、絶縁膜107及び酸化物半導体膜108上にソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜112a、112bを形成する(図10(E)、(F)参照)。
本実施の形態では、導電膜112a、112bとして、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmのアルミニウム膜との積層膜をスパッタリング法により成膜し、該積層膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、該積層膜を所望の領域に加工することで、導電膜112a、112bを形成する。なお、本実施の形態においては、導電膜112a、112bの2層の積層構造としたが、これに限定されない。例えば、導電膜112a、112bとして、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmのアルミニウム膜と、厚さ100nmのチタン膜との3層の積層構造としてもよい。
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112bに、薬液131を塗布し、酸化物半導体膜108の表面(バックチャネル側)を洗浄する(図10(G)、(H)参照)。
上記洗浄方法としては、例えば、リン酸等の薬液を用いた洗浄が挙げられる。リン酸等の薬液を用いて洗浄を行うことで、酸化物半導体膜108の表面に付着した不純物(例えば、導電膜112a、112bに含まれる元素等)を除去することができる。なお、図10(G)、(H)に示す洗浄工程は、必ずしも行う必要はなく、場合によっては、洗浄工程を行わなくてもよい。
なお、導電膜112a、112bの形成時、及び/または上記洗浄工程において、酸化物半導体膜108の一部に凹部が形成される場合がある。
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114、116を形成する(図11(A)、(B)参照)。
なお、絶縁膜114を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜116を形成することが好ましい。絶縁膜114を形成後、大気開放せず、原料ガスの流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜116を連続的に形成することで、絶縁膜114と絶縁膜116の界面において大気成分由来の不純物濃度を低減することができるとともに、絶縁膜114、116に含まれる酸素を酸化物半導体膜108に移動させることが可能となり、酸化物半導体膜108の酸素欠損量を低減することが可能となる。
例えば、絶縁膜114として、PECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成することができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。また、上記の堆積性気体に対する酸化性気体を20倍より大きく100倍未満、好ましくは40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa未満、好ましくは50Pa以下とするPECVD法を用いることで、絶縁膜114が、窒素を含み、且つ欠陥量の少ない絶縁膜となる。
本実施の形態においては、絶縁膜114として、基板102を保持する温度を220℃とし、流量50sccmのシラン及び流量2000sccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室内の圧力を20Paとし、平行平板電極に供給する高周波電力を13.56MHz、100W(電力密度としては1.6×10−2W/cm2)とするPECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する。
絶縁膜116としては、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上280℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ましくは0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
絶縁膜116の成膜条件として、上記圧力の反応室において上記パワー密度の高周波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜116中における酸素含有量が化学量論的組成よりも多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物絶縁膜を形成することができる。
なお、絶縁膜116の形成工程において、絶縁膜114が酸化物半導体膜108の保護膜となる。したがって、酸化物半導体膜108へのダメージを低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて絶縁膜116を形成することができる。
なお、絶縁膜116の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気体の流量を増加することで、絶縁膜116の欠陥量を低減することが可能である。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm3未満、好ましくは3×1017spins/cm3以下、好ましくは1.5×1017spins/cm3以下である欠陥量の少ない酸化物絶縁層を形成することができる。この結果トランジスタの信頼性を高めることができる。
また、絶縁膜114、116を形成した後、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる窒素酸化物を低減することができる。また、上記加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜108に移動させ、酸化物半導体膜108に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
絶縁膜114、116への加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上400℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃以下とする。加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。該加熱処理には、電気炉、RTA装置等を用いることができる。
本実施の形態では、窒素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行う。
次に、絶縁膜116上に保護膜117を形成する(図11(C)、(D)参照)。
保護膜117は、インジウム、亜鉛、チタン、アルミニウム、タングステン、タンタル、またはモリブデンの中から選ばれる少なくとも1以上を有する。例えば、上述した金属元素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金、上述した金属元素を有する金属酸化物、上述した金属元素を有する金属窒化物、または上述した金属元素を有する金属窒化酸化物等の導電性を有する材料を用いて形成する。
保護膜117の一例としては、窒化タンタル膜、チタン膜、インジウム錫酸化物(以下ITOともいう)膜、アルミニウム膜、酸化物半導体膜(例えば、IGZO膜(In:Ga:Zn=1:4:5(原子数比))等)を用いることができる。また、保護膜117としては、スパッタリング法を用いて形成することができる。また、保護膜117の厚さとしては、1nm以上20nm以下、または2nm以上10nm以下とすると好ましい。本実施の形態では、保護膜117として、厚さ5nmの酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物(以下ITSOと呼ぶ)を用いる。
次に、保護膜117を介して絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108に酸素133を添加する(図11(E)、(F)参照)。
保護膜117を介して絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108に酸素133を添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。また、酸素133を添加する際に、基板側にバイアスを印加することで効果的に酸素133を絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108に添加することができる。上記バイアスとしては、例えば、電力密度を1W/cm2以上5W/cm2以下とすればよい。絶縁膜116上に保護膜117を設けて酸素を添加することで、保護膜117が絶縁膜116から酸素が脱離することを抑制する保護膜として機能する。このため、絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108により多くの酸素を添加することができる。
また、プラズマ処理で酸素の導入を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸素プラズマを発生させることで、絶縁膜114、116への酸素導入量を増加させることができる。
次に、保護膜117を除去する(図12(A)、(B)参照)。
保護膜117の除去方法としては、ドライエッチング法、ウエットエッチング法、またはドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせる方法等が挙げられる。本実施の形態においては、ウエットエッチング法を用いて、保護膜117を除去する。なお、本実施の形態においては、保護膜117を除去する方法を例示したが、これに限定されない。例えば、保護膜117を除去せずに保護膜117上に絶縁膜118を形成してもよい。
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成する(図12(C)、(D)参照)。
なお、絶縁膜118の形成前、または絶縁膜118の形成後に加熱処理を行って、絶縁膜114、116に含まれる過剰酸素を酸化物半導体膜108中に拡散させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填することができる。あるいは、絶縁膜118を加熱成膜とすることで、絶縁膜114、116に含まれる過剰酸素を酸化物半導体膜108中に拡散させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填することができる。
絶縁膜118をPECVD法で形成する場合、基板温度は300℃以上400℃以下に、好ましくは320℃以上370℃以下にすることで、緻密な膜を形成できるため好ましい。
例えば、絶縁膜118としてPECVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリコンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。窒素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニアが解離し、活性種が発生する。該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシリコン及び水素の結合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の結合が促進され、シリコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン膜を形成することができる。一方、窒素に対するアンモニアの量が多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒素の分解が進まず、シリコン及び水素結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な窒化シリコン膜が形成されてしまう。これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対する窒素の流量比を5以上50以下、10以上50以下とすることが好ましい。
本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD装置を用いて、シラン、窒素、及びアンモニアの原料ガスから、厚さ50nmの窒化シリコン膜を形成する。流量は、シランが50sccm、窒素が5000sccmであり、アンモニアが100sccmである。処理室の圧力を100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給する。PECVD装置は電極面積が6000cm2である平行平板型のPECVD装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると1.7×10−1W/cm2である。
次に、絶縁膜118上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、絶縁膜114、116、118の所望の領域に開口部142cを形成する。また、絶縁膜118上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、絶縁膜106、107、114、116、118の所望の領域に開口部142a、142bを形成する。なお、開口部142cは、導電膜112bに達するように形成される。また、開口部142a、142bは、それぞれ導電膜104に達するように形成される(図12(E)、(F)参照)
なお、開口部142a、142bと開口部142cは、同じ工程で形成してもよく、異なる工程で形成してもよい。開口部142a、142bと開口部142cを同じ工程で形成する場合、例えば、グレートーンマスクまたはハーフトーンマスクを用いて形成することができる。また、開口部142a、142bを複数回に分けて形成してもよい。例えば、絶縁膜106、107を加工し、その後、絶縁膜114、116、118を加工する。
次に、開口部142a、142b、142cを覆うように絶縁膜118上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の形状に加工することで、導電膜120a、120bを形成する(図12(G)、(H)参照)。
導電膜120a、120bとしては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いることができる。とくに、導電膜120a、120bとしては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物(ITSO)などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。また、導電膜120a、120bとしては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。本実施の形態においては、膜厚110nmのITSO膜をスパッタリング法で形成する。
以上の工程で図1に示すトランジスタ100を作製することができる。
なお、図3に示すトランジスタ130及び、図4に示すトランジスタ140は、上述した工程の後に、絶縁膜121を成膜し、開口部142dを設け、導電膜122を形成することで、作成することができる。
絶縁膜121としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いればよい。本実施の形態では、膜厚1.5μmのアクリル樹脂を、塗布法で形成する。
導電膜122としては、例えば、インジウム、亜鉛、錫の中から選ばれた一種を含む材料を用いることができる。本実施の形態においては、膜厚110nmのITSO膜をスパッタリング法で形成する。
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に含まれる酸化物半導体膜について以下詳細に説明を行う。
なお、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
<酸化物半導体の構造>
以下では、酸化物半導体の構造について説明する。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous like Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OSなどがある。
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であって不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
以下では、TEMによって観察したCAAC−OSについて説明する。図13(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって行うことができる。
図13(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図13(B)に示す。図13(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層の配列は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
図13(B)に示すように、CAAC−OSは特徴的な原子配列を有する。図13(C)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図13(B)および図13(C)より、ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあり、ペレットとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC−OSのペレット5100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造となる(図13(D)参照。)。図13(C)で観察されたペレットとペレットとの間で傾きが生じている箇所は、図13(D)に示す領域5161に相当する。
また、図14(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図14(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図14(B)、図14(C)および図14(D)に示す。図14(B)、図14(C)および図14(D)より、ペレットは、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
次に、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図15(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、CAAC−OSのout−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。より好ましいCAAC−OSは、out−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
一方、CAAC−OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OSの場合は、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図15(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図15(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図16(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図16(B)に示す。図16(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図16(B)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、図16(B)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
上述したように、CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をするとCAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
nc−OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OSに対し、ペレットよりも大きい径のX線を用いた場合、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークは検出されない。また、nc−OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
a−like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OSおよびnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
電子照射を行う試料として、a−like OS(試料Aと表記する。)、nc−OS(試料Bと表記する。)およびCAAC−OS(試料Cと表記する。)を準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有することがわかる。
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と見なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa−b面に対応する。
図17は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例である。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図17より、a−like OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体的には、図17中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×108e−/nm2においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、図17中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc−OSおよびCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度および2.1nm程度であることがわかる。
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られないことがわかる。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
<成膜モデル>
以下では、CAAC−OSの成膜モデルの一例について説明する。
図18(A)は、スパッタリング法によりCAAC−OSが成膜される様子を示した成膜室内の模式図である。
ターゲット5130は、バッキングプレートに接着されている。バッキングプレートを介してターゲット5130と向かい合う位置には、複数のマグネットが配置される。該複数のマグネットによって磁場が生じている。マグネットの磁場を利用して成膜速度を高めるスパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法と呼ばれる。
基板5120は、ターゲット5130と向かい合うように配置しており、その距離d(ターゲット−基板間距離(T−S間距離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好ましくは0.02m以上0.5m以下とする。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸素、アルゴン、または酸素を5体積%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01Pa以上100Pa以下、好ましくは0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで、ターゲット5130に一定以上の電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマが確認される。なお、ターゲット5130の近傍には磁場によって、高密度プラズマ領域が形成される。高密度プラズマ領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン5101が生じる。イオン5101は、例えば、酸素の陽イオン(O+)やアルゴンの陽イオン(Ar+)などである。
ここで、ターゲット5130は、複数の結晶粒を有する多結晶構造を有し、いずれかの結晶粒には劈開面が含まれる。図19(A)に、一例として、ターゲット5130に含まれるInGaZnO4の結晶の構造を示す。なお、図19(A)は、b軸に平行な方向からInGaZnO4の結晶を観察した場合の構造である。図19(A)より、近接する二つのGa−Zn−O層において、それぞれの層における酸素原子同士が近距離に配置されていることがわかる。そして、酸素原子が負の電荷を有することにより、近接する二つのGa−Zn−O層の間には斥力が生じる。その結果、InGaZnO4の結晶は、近接する二つのGa−Zn−O層の間に劈開面を有する。
高密度プラズマ領域で生じたイオン5101は、電界によってターゲット5130側に加速され、やがてターゲット5130と衝突する。このとき、劈開面から平板状またはペレット状のスパッタ粒子であるペレット5100aおよびペレット5100bが剥離し、叩き出される。なお、ペレット5100aおよびペレット5100bは、イオン5101の衝突の衝撃によって、構造に歪みが生じる場合がある。
ペレット5100aは、三角形、例えば正三角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。また、ペレット5100bは、六角形、例えば正六角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。なお、ペレット5100aおよびペレット5100bなどの平板状またはペレット状のスパッタ粒子を総称してペレット5100と呼ぶ。ペレット5100の平面の形状は、三角形、六角形に限定されない、例えば、三角形が複数個合わさった形状となる場合がある。例えば、三角形(例えば、正三角形)が2個合わさった四角形(例えば、ひし形)となる場合もある。
ペレット5100は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。理由は後述するが、ペレット5100の厚さは、均一にすることが好ましい。また、スパッタ粒子は厚みのないペレット状である方が、厚みのあるサイコロ状であるよりも好ましい。例えば、ペレット5100は、厚さを0.4nm以上1nm以下、好ましくは0.6nm以上0.8nm以下とする。また、例えば、ペレット5100は、幅を1nm以上3nm以下、好ましくは1.2nm以上2.5nm以下とする。ペレット5100は、上述の図17中の(1)で説明した初期核に相当する。例えば、In−Ga−Zn酸化物を有するターゲット5130にイオン5101を衝突させると、図19(B)に示すように、Ga−Zn−O層、In−O層およびGa−Zn−O層の3層を有するペレット5100が剥離する。図19(C)に、剥離したペレット5100をc軸に平行な方向から観察した構造を示す。ペレット5100は、二つのGa−Zn−O層(パン)と、In−O層(具)と、を有するナノサイズのサンドイッチ構造と呼ぶこともできる。
ペレット5100は、プラズマを通過する際に、側面が負または正に帯電する場合がある。ペレット5100は、例えば、側面に位置する酸素原子が負に帯電する可能性がある。側面が同じ極性の電荷を有することにより、電荷同士の反発が起こり、平板状またはペレット状の形状を維持することが可能となる。なお、CAAC−OSが、In−Ga−Zn酸化物である場合、インジウム原子と結合した酸素原子が負に帯電する可能性がある。または、インジウム原子、ガリウム原子または亜鉛原子と結合した酸素原子が負に帯電する可能性がある。また、ペレット5100は、プラズマを通過する際に、プラズマ中のインジウム原子、ガリウム原子、亜鉛原子および酸素原子などと結合することで成長する場合がある。上述の図17中の(2)と(1)の大きさの違いが、プラズマ中での成長分に相当する。ここで、基板5120が室温程度である場合、基板5120上におけるペレット5100の成長が起こりにくいためnc−OSとなる(図18(B)参照。)。室温程度で成膜できることから、基板5120が大面積である場合でもnc−OSの成膜が可能である。なお、ペレット5100をプラズマ中で成長させるためには、スパッタリング法における成膜電力を高くすることが有効である。成膜電力を高くすることで、ペレット5100の構造を安定にすることができる。
図18(A)および図18(B)に示すように、例えば、ペレット5100は、プラズマ中を凧のように飛翔し、ひらひらと基板5120上まで舞い上がっていく。ペレット5100は電荷を帯びているため、ほかのペレット5100が既に堆積している領域が近づくと、斥力が生じる。ここで、基板5120の上面では、基板5120の上面に平行な向きの磁場(水平磁場ともいう。)が生じている。また、基板5120およびターゲット5130間には、電位差が与えられるため、基板5120からターゲット5130に向かう方向に電流が流れる。したがって、ペレット5100は、基板5120の上面において、磁場および電流の作用によって、力(ローレンツ力)を受ける。このことは、フレミングの左手の法則によって理解できる。
ペレット5100は、原子一つと比べると質量が大きい。そのため、基板5120の上面を移動するためには何らかの力を外部から印加することが重要となる。その力の一つが磁場および電流の作用で生じる力である可能性がある。なお、ペレット5100に、基板5120の上面を移動するために十分な力を与えるには、基板5120の上面において、基板5120の上面に平行な向きの磁場が10G以上、好ましくは20G以上、さらに好ましくは30G以上、より好ましくは50G以上となる領域を設けるとよい。または、基板5120の上面において、基板5120の上面に平行な向きの磁場が、基板5120の上面に垂直な向きの磁場の1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上となる領域を設けるとよい。
このとき、マグネットと基板5120とが相対的に移動すること、または回転することによって、基板5120の上面における水平磁場の向きは変化し続ける。したがって、基板5120の上面において、ペレット5100は、様々な方向から力を受け、様々な方向へ移動することができる。
また、図18(A)に示すように基板5120が加熱されている場合、ペレット5100と基板5120との間で摩擦などによる抵抗が小さい状態となっている。その結果、ペレット5100は、基板5120の上面を滑空するように移動する。ペレット5100の移動は、平板面を基板5120に向けた状態で起こる。その後、既に堆積しているほかのペレット5100の側面まで到達すると、側面同士が結合する。このとき、ペレット5100の側面にある酸素原子が脱離する。脱離した酸素原子によって、CAAC−OS中の酸素欠損が埋まる場合があるため、欠陥準位密度の低いCAAC−OSとなる。なお、基板5120の上面の温度は、例えば、100℃以上500℃未満、150℃以上450℃未満、または170℃以上400℃未満とすればよい。したがって、基板5120が大面積である場合でもCAAC−OSの成膜は可能である。
また、ペレット5100は、基板5120上で加熱されることにより、原子が再配列し、イオン5101の衝突で生じた構造の歪みが緩和される。歪みの緩和されたペレット5100は、ほとんど単結晶となる。ペレット5100がほとんど単結晶となることにより、ペレット5100同士が結合した後に加熱されたとしても、ペレット5100自体の伸縮はほとんど起こり得ない。したがって、ペレット5100間の隙間が広がることで結晶粒界などの欠陥を形成し、クレバス化することがない。
また、CAAC−OSは、単結晶酸化物半導体が一枚板のようになっているのではなく、ペレット5100(ナノ結晶)の集合体がレンガまたはブロックが積み重なったような配列をしている。また、ペレット5100同士の間には結晶粒界を有さない。そのため、成膜時の加熱、成膜後の加熱または曲げなどで、CAAC−OSに縮みなどの変形が生じた場合でも、局部応力を緩和する、または歪みを逃がすことが可能である。したがって、可とう性を有する半導体装置に用いることに適した構造である。なお、nc−OSは、ペレット5100(ナノ結晶)が無秩序に積み重なったような配列となる。
ターゲット5130をイオン5101でスパッタした際に、ペレット5100だけでなく、酸化亜鉛などが剥離する場合がある。酸化亜鉛はペレット5100よりも軽量であるため、先に基板5120の上面に到達する。そして、0.1nm以上10nm以下、0.2nm以上5nm以下、または0.5nm以上2nm以下の酸化亜鉛層5102を形成する。図20に断面模式図を示す。
図20(A)に示すように、酸化亜鉛層5102上にはペレット5105aと、ペレット5105bと、が堆積する。ここで、ペレット5105aとペレット5105bとは、互いに側面が接するように配置している。また、ペレット5105cは、ペレット5105b上に堆積した後、ペレット5105b上を滑るように移動する。また、ペレット5105aの別の側面において、酸化亜鉛とともにターゲットから剥離した複数の粒子5103が、基板5120からの加熱により結晶化し、領域5105a1を形成する。なお、複数の粒子5103は、酸素、亜鉛、インジウムおよびガリウムなどを含む可能性がある。
そして、図20(B)に示すように、領域5105a1は、ペレット5105aと一体化し、ペレット5105a2となる。また、ペレット5105cは、その側面がペレット5105bの別の側面と接するように配置する。
次に、図20(C)に示すように、さらにペレット5105dがペレット5105a2上およびペレット5105b上に堆積した後、ペレット5105a2上およびペレット5105b上を滑るように移動する。また、ペレット5105cの別の側面に向けて、さらにペレット5105eが酸化亜鉛層5102上を滑るように移動する。
そして、図20(D)に示すように、ペレット5105dは、その側面がペレット5105a2の側面と接するように配置する。また、ペレット5105eは、その側面がペレット5105cの別の側面と接するように配置する。また、ペレット5105dの別の側面において、酸化亜鉛とともにターゲット5130から剥離した複数の粒子5103が基板5120からの加熱により結晶化し、領域5105d1を形成する。
以上のように、堆積したペレット同士が接するように配置し、ペレットの側面において成長が起こることで、基板5120上にCAAC−OSが形成される。したがって、CAAC−OSは、nc−OSよりも一つ一つのペレットが大きくなる。上述の図17中の(3)と(2)の大きさの違いが、堆積後の成長分に相当する。
また、ペレット同士の隙間が極めて小さくなることで、一つの大きなペレットが形成される場合がある。一つの大きなペレットは、単結晶構造を有する。例えば、ペレットの大きさが、上面から見て10nm以上200nm以下、15nm以上100nm以下、または20nm以上50nm以下となる場合がある。このとき、微細なトランジスタに用いる酸化物半導体において、チャネル形成領域が一つの大きなペレットに収まる場合がある。即ち、単結晶構造を有する領域をチャネル形成領域として用いることができる。また、ペレットが大きくなることで、単結晶構造を有する領域をトランジスタのチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域として用いることができる場合がある。
このように、トランジスタのチャネル形成領域などが、単結晶構造を有する領域に形成されることによって、トランジスタの周波数特性を高くすることができる場合がある。
以上のようなモデルにより、ペレット5100が基板5120上に堆積していくと考えられる。被形成面が結晶構造を有さない場合においても、CAAC−OSの成膜が可能であることから、エピタキシャル成長とは異なる成長機構であることがわかる。また、CAAC−OSは、レーザ結晶化が不要であり、大面積のガラス基板などであっても均一な成膜が可能である。例えば、基板5120の上面(被形成面)の構造が非晶質構造(例えば非晶質酸化シリコン)であっても、CAAC−OSを成膜することは可能である。
また、CAAC−OSは、被形成面である基板5120の上面に凹凸がある場合でも、その形状に沿ってペレット5100が配列することがわかる。例えば、基板5120の上面が原子レベルで平坦な場合、ペレット5100はa−b面と平行な平面である平板面を下に向けて並置する。ペレット5100の厚さが均一である場合、厚さが均一で平坦、かつ高い結晶性を有する層が形成される。そして、当該層がn段(nは自然数。)積み重なることで、CAAC−OSを得ることができる。
一方、基板5120の上面が凹凸を有する場合でも、CAAC−OSは、ペレット5100が凹凸に沿って並置した層がn段(nは自然数。)積み重なった構造となる。基板5120が凹凸を有するため、CAAC−OSは、ペレット5100間に隙間が生じやすい場合がある。ただし、この場合でも、ペレット5100間で分子間力が働き、凹凸があってもペレット間の隙間はなるべく小さくなるように配列する。したがって、凹凸があっても高い結晶性を有するCAAC−OSとすることができる。
このようなモデルによってCAAC−OSが成膜されるため、スパッタ粒子が厚みのないペレット状である方が好ましい。なお、スパッタ粒子が厚みのあるサイコロ状である場合、基板5120上に向ける面が一定とならず、厚さや結晶の配向を均一にできない場合がある。
以上に示した成膜モデルにより、非晶質構造を有する被形成面上であっても、高い結晶性を有するCAAC−OSを得ることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の一例について、図21乃至図25を用いて以下説明を行う。
図21は、表示装置の一例を示す上面図である。図21示す表示装置700は、第1の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すなわち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお、図21には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設けられる。
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706とそれぞれ電気的に接続されるFPC端子部708(FPC:Flexible printed circuit)が設けられる。また、FPC端子部708には、FPC716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708には、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられる。
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に実装する構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法などを用いることができる。
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタを適用することができる。
また、表示装置700は、様々な表示素子を有することが出来る。表示素子の一例としては、液晶素子、EL素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表示素子などがある。これらの他にも、電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していても良い。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素よって、異なる2色を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色光(W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともいう。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、ホワイト(W)を、それぞれの発光色を有する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よりも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について、図22及び図23を用いて説明する。なお、図22は、図21に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、図23は、図21に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成である。
まず、図22及び図23に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分について以下説明する。
<表示装置の共通部分に関する説明>
図22及び図23に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を有する。
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先に示すトランジスタを用いることができる。
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
容量素子790は、一対の電極間に誘電体を有する構造である。より詳しくは、容量素子790の一方の電極としては、トランジスタ750のゲート電極として機能する導電膜と同一工程で形成された導電膜を用い、容量素子790の他方の電極としては、トランジスタ750のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜を用いる。また、一対の電極間に挟持される誘電体としては、トランジスタ750のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜を用いる。
また、図22及び図23において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量素子790上に、絶縁膜764、766、768、保護膜767、及び平坦化絶縁膜770が設けられている。
絶縁膜764、766、768としては、それぞれ先の実施の形態に示す絶縁膜114、116、118と、同様の材料及び作製方法により形成することができる。また、保護膜767としては、先の実施の形態に示す保護膜117と同様の材料及び作製方法により形成することができる。また、平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平坦化絶縁膜770を設けない構成としてもよい。
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程で形成される。なお、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と異なる工程で形成された導電膜、例えばゲート電極として機能する導電膜としてもよい。信号線710として、例えば、銅元素を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となる。
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC716を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程で形成される。また、接続電極760は、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いることができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられる。
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。また、本実施の形態においては、構造体778を第1の基板701側に設ける構成について例示したが、これに限定されない。例えば、第2の基板705側に構造体778を設ける構成、または第1の基板701及び第2の基板705双方に構造体778を設ける構成としてもよい。
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する絶縁膜734が設けられる。
<表示素子として液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図22に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705側に設けられ、対向電極としての機能を有する。図22に示す表示装置700は、導電膜772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わることによって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、反射電極としての機能を有する。図22に示す表示装置700は、外光を利用し導電膜772で光を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置である。
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
また、導電膜772として、可視光において反射性のある導電膜を用いる場合、該導電膜を積層構造としてもよい。例えば、下層に膜厚100nmのアルミニウム膜を形成し、上層に厚さ30nmの銀合金膜(例えば、銀、パラジウム、及び銅を含む合金膜)を形成する。上述の構造とすることで、以下の優れた効果を奏する。
(1)下地膜と導電膜772との密着性を向上させることができる。(2)薬液によってアルミニウム膜と、銀合金膜とを一括してエッチングすることが可能である。(3)導電膜772の断面形状を良好な形状(例えば、テーパー形状)とすることができる。(3)の理由としては、アルミニウム膜は、銀合金膜よりも薬液によるエッチング速度が遅い、または上層の銀合金膜のエッチング後、下層のアルミニウム膜が露出した場合に、銀合金膜よりも卑な金属、別言するとイオン化傾向の高い金属であるアルミニウムから電子を引き抜くため、銀合金膜のエッチングが抑制され、下層のアルミニウム膜のエッチングの進行が速くなるためである。
また、図22に示す表示装置700においては、画素部702の平坦化絶縁膜770の一部に凹凸が設けられている。該凹凸は、例えば、平坦化絶縁膜770を有機樹脂膜等で形成し、該有機樹脂膜の表面に凹凸を設けることで形成することができる。また、反射電極として機能する導電膜772は、上記凹凸に沿って形成される。したがって、外光が導電膜772に入射した場合において、導電膜772の表面で光を乱反射することが可能となり、視認性を向上させることができる。
なお、図22に示す表示装置700は、反射型のカラー液晶表示装置について例示したが、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性のある導電膜を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。透過型のカラー液晶表示装置の場合、平坦化絶縁膜770に設けられる凹凸については、設けない構成としてもよい。
なお、図22において図示しないが、導電膜772、774の液晶層776と接する側に、それぞれ配向膜を設ける構成としてもよい。また、図22において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が速い。また、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また、配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理が不要になり、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができる。
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
<表示素子として発光素子を用いる表示装置>
図23に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜784、EL層786、及び導電膜788を有する。図23に示す表示装置700は、発光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができる。
また、導電膜784は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜に接続される。導電膜784は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。導電膜784としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよい。
また、図23に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜784上に絶縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜784の一部を覆う。なお、発光素子782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、EL層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜784側に光を射出するボトムエミッション構造や、導電膜784及び導電膜788の双方に光を射出するデュアルエミッション構造にも適用することができる。
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重なる位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設けられている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。また、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、図23に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これに限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色膜736を設けない構成としてもよい。
<カラー表示を実現するための画素構成例>
ここで、カラー表示を実現するための画素構成の一例を、図24及び図25を用いて説明しておく。なお、以下では白色光を発光する発光素子を光源に用いた場合について説明を行う。図24(A)、図24(B)、図25(A)、および図25(B)は、図21の画素部702に示した領域870を拡大した平面図である。例えば、図24(A)に示すように、3つの画素830を副画素として機能させて、まとめて1つの画素840として用いる。3つの画素830それぞれに対応する着色層を、赤、緑、青、とすることで、フルカラー表示を実現することができる。なお、図24(A)では、赤色の光を発する画素830を画素830Rと示し、緑色の光を発する画素830を画素830Gと示し、青色の光を発する画素830を画素830Bと示している。また、着色層の色は、赤、緑、青、以外であってもよく、例えば、着色層に黄、シアン、マゼンダなどを用いてもよい。
また、図24(B)に示すように、4つの画素830を副画素として機能させて、まとめて1つの画素840として用いてもよい。例えば、4つの画素830それぞれに対応する着色層を、赤、緑、青、黄としてもよい。なお、図24(B)では、赤色の光を発する画素830を画素830Rと示し、緑色の光を発する画素830を画素830Gと示し、青色の光を発する画素830を画素830Bと示し、黄色の光を発する画素830を画素830Yと示している。1つの画素840として用いる画素830の数を増やすことで、色の再現性を高めることができる。よって、表示装置の表示品位を高めることができる。
また、4つの画素830それぞれに対応する着色層を、赤、緑、青、白としてもよい(図24(B)参照)。白の光を発する画素830(画素830W)を設けることで、表示領域の発光輝度を高めることができる。なお、白の光を発する画素830Wを設ける場合は、画素830Wに対応する着色層は設けなくてもよい。画素830Wに対応する着色層を設けないことで、着色層透過時の輝度低下がなくなるため、表示領域の発光輝度をより高めることができる。また、表示装置の消費電力を低減することができる。一方で、画素830Wに対応する白の着色層を設けることにより、白色光の色温度を制御することができる。よって、表示装置の表示品位を高めることができる。また、表示装置の用途によっては、2つの画素830を副画素として機能させて、まとめて1つの画素840として用いてもよい。
また、4つの画素830をまとめて一つの画素840を構成する場合は、図25(B)に示すように、4つの画素830をマトリクス状に配置してもよい。また、4つの画素830をまとめて一つの画素840を構成する場合は、画素830Yや画素830Wに代えてシアン、マゼンダなどの光を発する画素を用いてもよい。また、画素840内に、同じ色を発する画素830を複数設けてもよい。
なお、画素840に含まれる画素830それぞれの占有面積や形状などは、それぞれ同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、配列方法として、ストライプ配列やマトリクス配列以外の方法でもよい。例えば、デルタ配列、ベイヤー配列、ペンタイル配列などに適用することもできる。ペンタイル配列に適用した場合の一例を、図25(A)に示す。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、図26を用いて説明を行う。
図26(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502という)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路506という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されていることが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated Bonding)によって、実装することができる。
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置された複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するための回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力する。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力され、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲートドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ504aは、別の信号を供給することも可能である。
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元となる信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与えられる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有する。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも可能である。
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介してデータ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
図26(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することができる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
図26(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路506を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成とすることもできる。
また、図26(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bによって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装する構成としても良い。
また、図26(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図26(B)に示す構成とすることができる。
図26(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々なものを用いることができる。
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線GL_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
例えば、図26(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、図26(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
また、図26(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図26(C)に示す構成とすることができる。
また、図26(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる配線(以下、データ線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ552のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気的に接続される。
トランジスタ552は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
図26(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、図26(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554のソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
画素回路501は、発光素子に接続されたトランジスタの閾値を補正する目的で、二つ以上のトランジスタで構成されていてもよい。例えば、図27(A)、(B)は、五つのトランジスタで画素回路501を構成した例を示している。
図27(A)及び図27(B)に示す画素回路501は、トランジスタ650乃至トランジスタ654と、容量素子655と、発光素子656とを有する。なお、トランジスタ650乃至トランジスタ654がnチャネル型である場合を例示している。
図27(A)及び図27(B)において、配線GLa、配線GLb及び配線GLcは、ゲートドライバ504aに電気的に接続され、配線SLは、ソースドライバ504bに電気的に接続されている。
まず、図27(A)について説明を行う。
図27(A)において、トランジスタ651は、配線SLと、容量素子655の一対の電極のうちの一方との間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。容量素子655の一対の電極のうちの他方は、トランジスタ650のソース及びドレインの一方に接続される。トランジスタ652は、配線ILと、トランジスタ650のゲートとの間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。トランジスタ653は、容量素子655の一対の電極のうちの一方と、トランジスタ650のゲートとの間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。トランジスタ654は、トランジスタ650のソース及びドレインの一方と、発光素子656の陽極との間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。発光素子656の陰極は、配線CLに電気的に接続されている。
さらに、図27(A)では、トランジスタ650のソース及びドレインの他方は配線VLに接続されている。
また、図27(A)において、トランジスタ651における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ651のゲートに接続された配線GLaの電位により定まる。トランジスタ652における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ652のゲートに接続された配線GLaの電位により定まる。トランジスタ653における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ653のゲートに接続された配線GLbの電位により定まる。トランジスタ654における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ654のゲートに接続された配線GLcの電位により定まる。
次いで、図27(B)について説明を行う。
図27(B)において、トランジスタ651は、配線SLと、容量素子655の一対の電極のうちの一方との間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。容量素子655の一対の電極のうちの他方は、トランジスタ650のソース及びドレインの一方及び発光素子656の陽極に接続される。トランジスタ652は、配線ILと、トランジスタ650のゲートとの間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。トランジスタ653は、容量素子655の一対の電極のうちの一方と、トランジスタ650のゲートとの間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。トランジスタ654は、トランジスタ650のソース及びドレインの一方及び発光素子656の陽極と、配線RLとの間の導通状態または非導通状態を選択する機能を有する。また、トランジスタ650のソース及びドレインの他方は配線VLに接続されている。
また、図27(B)において、トランジスタ651における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ651のゲートに接続された配線GLaの電位により定まる。トランジスタ652における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ652のゲートに接続された配線GLaの電位により定まる。トランジスタ653における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ653のゲートに接続された配線GLbの電位により定まる。トランジスタ654における導通状態または非導通状態の選択は、トランジスタ654のゲートに接続された配線GLcの電位により定まる。
図26(C)、図27(A)及び図27(B)に示す画素回路501を構成するトランジスタに、実施の形態1で示したトランジスタを用いることが好ましい。上記トランジスタのうち、特に発光素子に接続されたトランジスタに、実施の形態1で示したトランジスタを用いることが好ましい。実施の形態1で示したトランジスタは、Id−Vd特性において、良好な飽和特性を示すため、トランジスタに印加されるドレイン電圧がばらついても、発光素子に一定の電流を供給することができる。そのため、実施の形態1で示したトランジスタは、発光素子の輝度ばらつきが少ない表示装置を提供することができる。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器について、図28及び図29を用いて説明を行う。
図28に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002との間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続された表示パネル8006、バックライト8007、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリ8011を有する。
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル8006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
バックライト8007は、光源8008を有する。なお、図28において、バックライト8007上に光源8008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例えば、バックライト8007の端部に光源8008を配置し、さらに光拡散板を用いる構成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射型パネル等の場合においては、バックライト8007を設けない構成としてもよい。
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
図29(A)乃至図29(G)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有することができる。
図29(A)乃至図29(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図29(A)乃至図29(G)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。また、図29(A)乃至図29(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
図29(A)乃至図29(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
図29(A)は、携帯情報端末9100を示す斜視図である。携帯情報端末9100が有する表示部9001は、可撓性を有する。そのため、湾曲した筐体9000の湾曲面に沿って表示部9001を組み込むことが可能である。また、表示部9001はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部9001に表示されたアイコンに触れることで、アプリケーションを起動することができる。
図29(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を省略して図示しているが、図29(A)に示す携帯情報端末9100と同様の位置に設けることができる。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
図29(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信した電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
図29(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
図29(E)、(F)、(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図29(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、図29(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、図29(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有することを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機器にも適用することができる。また、本実施の形態において述べた電子機器の表示部においては、可撓性を有し、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる構成、または折り畳み可能な表示部の構成について例示したが、これに限定されず、可撓性を有さず、平面部に表示を行う構成としてもよい。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例では、実施の形態1に示したトランジスタを試作し、トランジスタ特性を測定した。
図30は、本実施例で試作したトランジスタAのトランジスタ特性を示す。トランジスタAは、図3のトランジスタ130において、導電膜120b及び開口部142aが省略されたものである。トランジスタAのチャネル長(L3)は10μm、チャネル幅(W3)は59.7μmである。また酸化物半導体膜108は、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比))を用いて、スパッタリング法により膜厚35nmの酸化物半導体膜を成膜した。その他、トランジスタAの作製方法については、実施の形態1に示した半導体装置の作製方法を参照すればよい。
図30は、トランジスタAのソース及びドレインのうち、内側の電極(図3の導電膜112b)をドレインとした場合(Inner−Drain)と、外側の電極(図3の導電膜112a)をドレインとした場合(Outer−Drain)の、Id−Vd特性、および、Id−Vg(ゲート電圧)特性をそれぞれ示している。
図30に示すId−Vd特性は、ゲート電圧を2V、4V、6V、8V、10Vとし、ドレイン電圧を0Vから20Vまで掃引したときのドレイン電流を測定した。
図30に示すId−Vg特性は、ドレイン電圧を0.1V、10Vとし、ゲート電圧を−15Vから15Vまで掃引したときのドレイン電流を測定した。また、Id−Vg特性のグラフには、同時に掲載した電界効果移動度(μFE)を掲載している(図中点線)。
図30より、トランジスタAのソース及びドレインのうち、外側の電極をドレインとした方が、ドレイン電圧によるしきい値のマイナスシフト(チャネル長変調効果)が少なく、Id−Vd特性において、ドレイン電流が一定となる良好な飽和特性が得られることが確認された。
図31は、本実施例で試作したトランジスタBのトランジスタ特性を示す。トランジスタBは、図4のトランジスタ140において、導電膜120b及び開口部142aが省略されたものである。トランジスタBのチャネル長(L4)は10μm、チャネル幅(W4)は76μmである。また酸化物半導体膜108は、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比))を用いて、スパッタリング法により膜厚35nmの酸化物半導体膜を成膜した。その他、トランジスタBの作製方法については、実施の形態1に示した半導体装置の作製方法を参照すればよい。
図30と同様に、図31は、トランジスタBのソース及びドレインのうち、内側の電極(図4の導電膜112b)をドレインとした場合(Inner−Drain)と、外側の電極(図4の導電膜112a)をドレインとした場合(Outer−Drain)の、Id−Vd特性、および、Id−Vg特性をそれぞれ示している。それぞれの測定条件に関しては、図30の記載を参照すればよい。
図31より、トランジスタBのソース及びドレインのうち、外側の電極をドレインとした方が、ドレイン電圧によるしきい値のマイナスシフト(チャネル長変調効果)が少なく、Id−Vd特性において、ドレイン電流が一定となる良好な飽和特性が得られることが確認された。
図32は、本実施例で試作したトランジスタC及びトランジスタDのトランジスタ特性を示す。
トランジスタCは、図1のトランジスタ100において、導電膜120b、開口部142a及び開口部142bが省略されたものである。トランジスタCのチャネル長(L1)は10μm、チャネル幅(W1)は50μmである。また酸化物半導体膜108は、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比))を用いて、スパッタリング法により膜厚35nmの酸化物半導体膜を成膜した。その他、トランジスタCの作製方法については、実施の形態1に示した半導体装置の作製方法を参照すればよい。
トランジスタDは、図1のトランジスタ100と同じものである。トランジスタDのチャネル長(L1)は10μm、チャネル幅(W1)は50μmである。また酸化物半導体膜108は、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比))を用いて、スパッタリング法により膜厚35nmの酸化物半導体膜を成膜した。その他、トランジスタDの作製方法については、実施の形態1に示した半導体装置の作製方法を参照すればよい。
図32に示すId−Vg特性、およびId−Vg特性の測定条件に関しては、図30の記載を参照すればよい。
図32より、第2のゲート電極(導電膜120b)が形成されたトランジスタDの方が、トランジスタCに比べてオン電流が高く、また、Id−Vd特性において、ドレイン電流が一定となる良好な飽和特性が得られることが確認された。
図33は、本実施例で試作したトランジスタEのトランジスタ特性を示す。
トランジスタEは、図1のトランジスタ100と同じものである。トランジスタEのチャネル長(L1)は10μm、チャネル幅(W1)は50μmである。また酸化物半導体膜108は、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=3:1:2(原子数比))を用いて、スパッタリング法により成膜した。なお、本実施例では、トランジスタEの酸化物半導体膜108の膜厚(OS膜厚)を、10nm、25nm、40nmの3種類を用意した。その他、トランジスタEの作製方法については、実施の形態1に示した半導体装置の作製方法を参照すればよい。
なお、図33に示す酸化物半導体の膜厚(OS膜厚)とは、トランジスタEのチャネル領域における膜厚のことを指す。つまり、図1(B)の断面図において、酸化物半導体膜108が、導電膜112a及び導電膜112bと接しない部分の膜厚である。
図33に示すId−Vg特性、およびId−Vg特性の測定条件に関しては、図30の記載を参照すればよい。
図33に示す結果より、トランジスタEは、酸化物半導体の膜厚を薄くするほどオン電流と電界効果移動度が向上する様子がわかる。酸化物半導体の膜厚が40nmの場合は、およそ11cm2/Vsの電界効果移動度が得られ、酸化物半導体の膜厚が25nmの場合は、およそ15cm2/Vsの電界効果移動度が得られ、酸化物半導体の膜厚が10nmの場合は、およそ19cm2/Vsの電界効果移動度が得られた。
図34は、本実施例で試作したトランジスタFのトランジスタ特性を示す。
トランジスタFは、トランジスタEのチャネル長(L1)を2μmとしたものである。その他の条件は、トランジスタEと同一である。トランジスタFについても、トランジスタEと同様に、酸化物半導体膜108の膜厚(OS膜厚)を、10nm、25nm、40nmの3種類を用意した。
なお、図34に示す酸化物半導体の膜厚(OS膜厚)とは、トランジスタFのチャネル領域における膜厚のことを指す。つまり、図1(B)の断面図において、酸化物半導体膜108が、導電膜112a及び導電膜112bと接しない部分の膜厚である。
図34に示すId−Vg特性、およびId−Vg特性の測定条件に関しては、図30の記載を参照すればよい。
図34の測定結果をみると、酸化物半導体の膜厚を薄くすほど、Id−Vd特性において、ドレイン電圧が一定になる良好な飽和特性が得られた。特に、酸化物半導体膜厚が10nmの場合において、良好な飽和特性が得られることが確認された。
図33及び図34の結果より、チャネル領域に用いられる酸化物半導体の膜厚は好ましくは25nm以下、さらに好ましくは10nm以下であることが確認された。
本実施例では、実施の形態1に示したトランジスタを試作し、トランジスタ特性を測定してチャネル長変調係数を算出した。
図35は、本実施例で試作したトランジスタG及びトランジスタHのトランジスタ特性を示す。
トランジスタGは、図3のトランジスタ130において、導電膜120b及び開口部142aが省略されたものである。すなわち、トランジスタGは、第2のゲート電極を持たないトランジスタである。トランジスタGのチャネル長(L3)は6μm、チャネル幅(W3)は59.7μmである。また酸化物半導体膜108は、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比))を用いて、スパッタリング法により成膜した。酸化物半導体膜108の膜厚は20nmを選んだ。その他、トランジスタGの作製方法については、実施の形態1に示した半導体装置の作製方法を参照すればよい。
トランジスタHとして、図3のトランジスタ130を試作した。すなわち、トランジスタHは、第1のゲート電極として機能する導電膜104と、第2のゲート電極として機能する導電膜120bを有するs‐channel構造である。トランジスタHのその他の詳細は、トランジスタGの記載を参照すればよい。
図35に、トランジスタG及びトランジスタHのId‐Vd特性を示す。図30と同様に、Inner−Drain及びOuter−Drainの場合のId−Vd特性についてそれぞれ測定を行った。ゲート電圧を2V、4V、6V、8V、10Vとし、ドレイン電圧を0Vから20Vまで掃引したときのドレイン電流を測定した。
また、図中には、チャネル長変調係数(λ)の値を記載した。なお、チャネル長変調係数は以下の式(1)に従って算出した。具体的には、Vg=6VにおけるVd=10VとVd=16Vでのドレイン電流の変化量からδId/δVdを算出し、Vd=16Vにおけるドレイン電流の逆数(1/Id)を前述の値に乗じて、λを算出した。λの値が小さいほど、チャネル長変調効果の影響が小さく、Id−Vd特性において、良好な飽和特性を示す。
λ=δId/δVd×1/Id (1)
図35の結果より、s−channel構造を採用したトランジスタHの方が、s−channel構造を採用していないトランジスタGよりも飽和特性が改善されているようすがわかる。また、Inner‐DrainとOuter−Drainを比較した場合、実施例1と同様に、Outer−Drainの方が飽和特性の改善が確認されたが、トランジスタHはInner−Drainの場合でも、チャネル長変調係数が小さく、良好な飽和特性を示すことが確認された。
図36は、本実施例で試作したトランジスタI及びトランジスタJのトランジスタ特性を示す。
トランジスタIは、トランジスタGにおいて、酸化物半導体膜108を、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1(原子数比))を用いて、スパッタリング法により成膜した場合のトランジスタである。その他、トランジスタIの作製方法については、トランジスタGの記載を参照すればよい。
トランジスタJは、トランジスタHにおいて、酸化物半導体膜108を、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1(原子数比))を用いて、スパッタリング法により成膜した場合のトランジスタである。その他、トランジスタJの作製方法については、トランジスタHの記載を参照すればよい。
図36に、トランジスタI及びトランジスタJのId‐Vd特性を示す。測定条件の詳細はトランジスタG、トランジスタHと同一である。
図35と同様に、図36の結果より、s−channel構造を採用したトランジスタJの方が、s−channel構造を採用していないトランジスタIよりも飽和特性が改善されているようすが確認された。また、トランジスタJはInner−Drainの場合でも、チャネル長変調係数が小さく、良好な飽和特性を示すことが確認された。
GaよりもInの比率が大きいIn−Ga−Zn金属酸化物ターゲットを用いて、酸化物半導体膜108を成膜した場合、トランジスタの飽和特性が悪化することが確認されているが、実施の形態1に示すs−channel構造を採用することで、トランジスタの飽和特性が改善されることが確認された。