以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
また、本明細書等において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指す。
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、図1乃至図11を参照して説明する。
<半導体装置の構成例1>
図2(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり、図2(B)は、図2(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図2(C)は、図2(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、図2(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100の構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても図2(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
トランジスタ100は、基板102上のゲート電極として機能する導電膜104と、基板102及び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の絶縁膜107と、絶縁膜107上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108に電気的に接続されるソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜112a、112bと、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上の絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上の絶縁膜118と、絶縁膜118上の導電膜120a、120bと、を有する。また、導電膜120aは、絶縁膜114、116、118に設けられる開口部142cを介して、導電膜112bと電気的に接続される。
また、絶縁膜106及び絶縁膜107は、トランジスタ100の第1のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜114及び絶縁膜116は、酸素を有し、酸化物半導体膜108中に酸素を供給する機能を有する。また、絶縁膜114、116、118は、トランジスタ100の第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜118は、トランジスタ100中に入り込む不純物を抑制する保護絶縁膜としての機能を有する。また、導電膜120aは、例えば、表示装置に用いる画素電極としての機能を有する。また、導電膜120bは、第2のゲート電極(バックゲート電極ともいう)として機能する。
また、図2(C)に示すように導電膜120bは、絶縁膜106、107、114、116、118に設けられる開口部142a、142bにおいて、第1のゲート電極として機能する導電膜104と電気的に接続される。よって、導電膜120bと導電膜104には、同じ電位が与えられる。
トランジスタ100が有する酸化物半導体膜108は、酸素欠損が形成されるとキャリアである電子が生じ、ノーマリーオン特性になりやすい。したがって、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を減らすことが、安定したトランジスタ特性を得る上で好ましい。本発明の一態様のトランジスタの構成においては、酸化物半導体膜108上の絶縁膜、ここでは、酸化物半導体膜108上の絶縁膜114に過剰な酸素を導入することで、絶縁膜114から酸化物半導体膜108中に酸素を移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。または、酸化物半導体膜108上の絶縁膜116に過剰な酸素を導入することで、絶縁膜116から絶縁膜114を介し、酸化物半導体膜108中に酸素を移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。または、酸化物半導体膜108上の絶縁膜114及び絶縁膜116に過剰な酸素を導入することで、絶縁膜114及び絶縁膜116の双方から酸化物半導体膜108中に酸素を移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。
なお、絶縁膜114、116としては、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜114、116は、酸素を放出することが可能な絶縁膜であることが好ましい。なお、絶縁膜114、116に酸素過剰領域を設けるには、例えば、成膜後の絶縁膜114、116に酸素を導入して、酸素過剰領域を形成する。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
また、酸化物半導体膜108は、InとZnとを有する。金属M(Mは、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、Nd、またはHf)をさらに有していても良い。代表的には、酸化物半導体膜108としては、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−M−Zn酸化物を用いることができる。とくに、酸化物半導体膜108としては、In−M−Zn酸化物を用いると好ましい。
また、酸化物半導体膜108は、Inと、Gaと、を有すると好ましい。この場合、酸化物半導体膜108は、ホモロガス構造を有し、且つInの含有量がGaの含有量よりも多いと好ましい。Inの含有量がGaの含有量よりも多い酸化物半導体膜108とすることで、トランジスタ100の電界効果移動度(単に移動度、またはμFEという場合がある)が高くすることができる。具体的には、トランジスタ100の電界効果移動度が10cm2/Vsを超えることが可能となる。
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートドライバ(とくに、ゲートドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)半導体装置または表示装置を提供することができる。
一方で、Inの含有量がGaの含有量よりも多い酸化物半導体膜108とした場合、光照射時にトランジスタ100の電気特性が変動しやすい。具体的には、トランジスタ100のチャネル領域に、酸化物半導体膜108を用いると、可視光または紫外光が酸化物半導体膜108に照射されることで、トランジスタ100の電気特性が変動する場合がある。
しかしながら、本発明の一態様の半導体装置においては、酸化物半導体膜108の膜厚が、5nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上35nm以下、さらに好ましくは5nm以上20nm以下である。別言すると、酸化物半導体膜108は、5nm以上50nm以下の膜厚を有する領域を有する。
酸化物半導体膜108の膜厚を上記範囲とすることで、光照射時における酸化物半導体膜108の光吸収量を低減することができる。したがって、光照射におけるトランジスタ100の電気特性の変動を抑制することができる。また、本発明の一態様の半導体装置においては、絶縁膜114または絶縁膜116中に過剰の酸素を含有する構成のため、光照射におけるトランジスタ100の電気特性の変動をさらに、抑制することができる。
ここで、光照射によるトランジスタ100の電気特性の変動について、図1を用いて説明する。
図1は、トランジスタ100の電気特性の1つであるシフト値の光照射による変動を説明する図である。なお、図1において、縦軸がΔShift(V)を、横軸が照射エネルギー(eV)を、それぞれ表す。
なお、シフト値とは、トランジスタ100のドレイン電流(ID)−ゲート電圧(VG)特性における、対数で表されるドレイン電流(ID)の最大の傾きの接線と1×10−12Aの軸との交点のゲート電圧(VG)である。また、ΔShiftとは、シフト値の変動量を示しており、光照射時のシフト値から光照射前のシフト値(すなわち、初期のシフト値)を差分した数値である。
図1に示した結果は、トランジスタ100の酸化物半導体膜108としては、厚さ20nmのIn−Ga−Zn酸化物を用いた時のΔShiftである。該In−Ga−Zn酸化物としては、多結晶金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=3:1:2[原子%])を用いてスパッタリング装置にて形成した。なお、酸化物半導体膜108のバンドギャップは2.8eVである。また、トランジスタ100のチャネル長(L長)、及びトランジスタのチャネル幅(W長)は、それぞれ6μm、50μmとした。
また、トランジスタ100の導電膜104及び導電膜120bに印加する電圧(VBG)としては、−15Vから+20Vまで0.25Vのステップで印加した。また、ソース電極として機能する導電膜112aに印加する電圧(VS)は、0V(comm)とし、ドレイン電極として機能する導電膜112bに印加する電圧(VD)は、10Vとした。
また、光照射条件としては、分光感度測定器を用い、50μW/cm2の光強度で、400nm以上495nm以下の波長、すなわち2.5eV以上3.1eV以下で、酸化物半導体膜108の上方、ここでは、絶縁膜114側から光を照射した。
図1に示すように、酸化物半導体膜108のバンドギャップ以上の照射エネルギー、具体的には2.8eV以上で、トランジスタ100のΔShiftの値が、−1V以上0.5eV以下であることが確認された。なお、酸化物半導体膜108のバンドギャップ以上の照射エネルギーとは、2.8eV以上、あるいは2.8eV以上3.1eV以下、あるいは2.8eV以上3.0eV以下である。
このように、本発明の一態様の半導体装置においては、酸化物半導体膜108の膜厚が、5nm以上50nm以下であり、且つ絶縁膜114または絶縁膜116中に過剰の酸素を含有する構成のため、光照射におけるトランジスタ100の電気特性の変動を抑制することができる。したがって、光照射における電気特性の変動が抑制された、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお、絶縁膜114、116が有する酸素は、熱処理によって、酸化物半導体膜108へ拡散される。例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS(Thermal Desorption Spectroscopy))にて、絶縁膜114、116中の酸素分子の放出量を測定することができる。
以上のように、酸化物半導体膜108上に絶縁膜114、116を設けることによって、絶縁膜114、116中の酸素を酸化物半導体膜108へ移動させ、酸化物半導体膜108中に形成される酸素欠損を補填することが可能となる。したがって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
また、図2(B)に示すように、酸化物半導体膜108は、第1のゲート電極として機能する導電膜104と、第2のゲート電極として機能する導電膜120bのそれぞれと対向するように位置し、これらの導電膜に挟まれている。導電膜120bのチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体膜108のチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さよりもそれぞれ長く、酸化物半導体膜108の全体は、絶縁膜114、116、118を介して導電膜120bに覆われている。また、導電膜120bと104とは、絶縁膜106、107、114、116、118に設けられる開口部142a、142bにおいて接続されるため、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向に伸延する側面は、導電膜120bと対向している。
別言すると、導電膜104及び120bは、絶縁膜106、107、114、116、118に設けられる開口部において接続すると共に、絶縁膜106、107、114、116、118を介して酸化物半導体膜108を取り囲む構成である。
このような構成を有することで、トランジスタ100に含まれる酸化物半導体膜108を、導電膜104及び120bの電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ100のように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜を電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をsurrounded channel(s−channel)構造と呼ぶことができる。
トランジスタ100は、s−channel構造を有するため、導電膜104によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導体膜108に印加することができるため、トランジスタ100の電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ100を微細化することが可能となる。また、トランジスタ100は、導電膜104及び120bによって囲まれた構造を有するため、トランジスタ100の機械的強度を高めることができる。
以下に、本実施の形態の半導体装置に含まれるその他の構成要素について、詳細に説明する。
<基板>
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置を作製することができる。
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
<第1のゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極>
第1のゲート電極として機能する導電膜104、及びソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜112a、112bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
また、導電膜104、112a、112bは、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、導電膜104、112a、112bには、インジウム錫酸化物(以下ITOともいう)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。
また、導電膜104、112a、112bには、Cu−X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu−X合金膜を用いることで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
<第1のゲート絶縁膜>
トランジスタ100の第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を、それぞれ用いることができる。なお、絶縁膜106、107の積層構造とせずに、上述の材料から選択された単層の絶縁膜、または3層以上の絶縁膜を用いてもよい。
また、絶縁膜106は、酸素の透過を抑制するブロッキング膜としての機能を有する。例えば、絶縁膜107、114、116及び/または酸化物半導体膜108中に過剰の酸素を供給する場合において、絶縁膜106は酸素の透過を抑制することができる。
なお、酸化物半導体膜108と接する絶縁膜107は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜107は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜107に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜107を形成すればよい。または、成膜後の絶縁膜107に酸素を導入して、酸素過剰領域を形成してもよい。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
また、絶縁膜107として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜107の膜厚を大きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
なお、本実施の形態では、絶縁膜106として窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜107として酸化シリコン膜を形成する。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、酸化シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トランジスタ100のゲート絶縁膜として、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を物理的に厚膜化することができる。よって、トランジスタ100の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタ100の静電破壊を抑制することができる。
<酸化物半導体膜>
酸化物半導体膜108としては、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−M−Zn酸化物を用いることができる。とくに、酸化物半導体膜108としては、In−M−Zn酸化物を用いると好ましい。
酸化物半導体膜108がIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1が好ましい。また、酸化物半導体膜108がIn−M−Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲットとしては、多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いることで、結晶性を有する酸化物半導体膜108を形成しやすくなる。なお、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%程度変動することがある。例えば、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比は、In:Ga:Zn=4:2:3近傍となる場合がある。
なお、酸化物半導体膜108がIn−M−Zn酸化物膜であるとき、Zn及びOを除いてのInとMの原子数比率は、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
また、酸化物半導体膜108としては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いる。例えば、酸化物半導体膜108は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10−9/cm3以上とする。
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜108のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
なお、酸化物半導体膜108として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。あるいは、真性、または実質的に真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×106μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。
したがって、上記高純度真性、または実質的に高純度真性の酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとすることができる。なお、酸化物半導体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等がある。
酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体膜108は水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜108において、SIMS分析により得られる水素濃度を、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms/cm3以下、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。
酸化物半導体膜108において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体膜108において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物半導体膜108、あるいは他の膜との界面におけるシリコンや炭素の濃度(SIMS分析により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜108において、SIMS分析により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜108のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。
また、酸化物半導体膜108に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体膜において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、SIMS分析により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
また、酸化物半導体膜108は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
酸化物半導体膜108は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
なお、酸化物半導体膜108が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する単層膜、あるいはこの膜が積層された構造であってもよい。
<第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜>
絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108に酸素を供給する機能を有する。また、絶縁膜118は、トランジスタ100の保護絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜114、116は、酸素を有する。また、絶縁膜114は、酸素を透過することのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形成する絶縁膜116を形成する際の、酸化物半導体膜108へのダメージ緩和膜としても機能する。
絶縁膜114としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号に対応するスピンの密度が3×1017spins/cm3以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114に含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸素の透過量が減少してしまう。
なお、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜114の外部に移動せず、絶縁膜114にとどまる酸素もある。また、絶縁膜114に酸素が入ると共に、絶縁膜114に含まれていた酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁膜114において酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過することができる酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から脱離する酸素を、絶縁膜114を介して酸化物半導体膜108に移動させることができる。
また、絶縁膜114は、酸化物半導体膜の価電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と伝導帯の下端のエネルギー(Ec_os)の間に窒素酸化物の準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形成することができる。Ev_osとEc_osの間に窒素酸化物の準位密度が低い酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミニウム膜等を用いることができる。
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法において、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的には、50℃以上650℃以下、あるいは50℃以上550℃以下におけるアンモニアの放出量が1×1018個/cm3以上5×1019個/cm3以下である。
窒素酸化物(NOx、xは1または2)、代表的にはNO2またはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体膜108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子をトラップする。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108の界面において、電子がトラップされにくい。
絶縁膜114として、Ev_osとEc_osの間に窒素酸化物の準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の加熱処理により、絶縁膜114は、100K以下のESRで測定して得られたスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルを与える。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5mTである。また、第1のシグナル、第2のシグナル、及び第3のシグナルを与えるスピンの密度の合計が1×1018spins/cm3未満であり、代表的には1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未満である。
上述した第1シグナル、第2のシグナル、及び第3のシグナルは、窒素酸化物起因のシグナルに相当する。即ち、第1のシグナル、第2のシグナル、及び第3のシグナルを与えるスピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないといえる。
また、Ev_osとEc_osの間に窒素酸化物の準位密度が低い酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×1020atoms/cm3以下である。
基板温度が220℃以上、または280℃以上、または350℃以上であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPECVD法を用いて、Ev_osとEc_osの間に窒素酸化物の準位密度が低い酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を形成することができる。
絶縁膜116は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下におけるTDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1019atoms/cm3以上、あるいは3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物絶縁膜である。
絶縁膜116としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
また、絶縁膜116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号に対応するスピンの密度が1.5×1018spins/cm3未満、さらには1×1018spins/cm3以下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して酸化物半導体膜108から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、これに限定されず、例えば、絶縁膜116を設けず、絶縁膜114の単層構造としてもよい。
絶縁膜118は、窒素を有する。また、絶縁膜118は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜118は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜118を設けることで、酸化物半導体膜108からの酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116に含まれる酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜108への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。絶縁膜118としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。このような酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
なお、上記記載の、導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜などの膜は、スパッタリング法やPECVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposition)法により形成してもよい。熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行ってもよい。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスをチャンバーに導入・反応させ、これを繰り返すことで成膜を行う。原料ガスと一緒に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)をキャリアガスとして導入しても良い。例えば2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給してもよい。その際、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスの反応後、不活性ガスを導入し、第2の原料ガスを導入する。あるいは、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着・反応して第1の層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスが吸着・反応して、第2の層が第1の層上に積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なFETを作製する場合に適している。
MOCVD法などの熱CVD法は、上記記載の導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜、金属酸化膜などの膜を形成することができ、例えば、In−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム(In(CH3)3)、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)、及びジメチル亜鉛を用いる(Zn(CH3)2)。これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(Ga(C2H5)3)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(Zn(C2H5)2)を用いることもできる。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH、Hf[N(CH3)2]4)やテトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH3)3)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。他の材料としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスとを用いてタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを用いてIn−O層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスとを用いてGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスとを用いてZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを用いてIn−Ga−O層やIn−Zn−O層、Ga−Zn−O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。
<半導体装置の構成例2>
次に、図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図3(A)(B)(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図3(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ140の上面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図3(C)は、図3(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
トランジスタ140は、先に示すトランジスタ100と比較し、開口部142bが設けられていない点が異なる。それ以外の構成については、トランジスタ100と同様であり、詳細な説明は省略する。
図3(A)(C)に示すように、開口部142aを設けて、第1のゲート電極として機能する導電膜104と、第2のゲート電極として機能する導電膜120bと、を電気的に接続してもよい。
<半導体装置の構成例3>
次に、図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図4(A)(B)(C)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図4(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ160の上面図であり、図4(B)は、図4(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図4(C)は、図4(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
トランジスタ160は、先に示すトランジスタ100と比較し、開口部142a、142bが設けられていない点が異なる。それ以外の構成については、トランジスタ100と同様であり、詳細な説明は省略する。
図4(A)(C)に示す構成とする場合、導電膜104と導電膜120bには、それぞれ異なる電位を与えることができる。
<半導体装置の構成例4>
次に、図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図5(A)乃至(F)を用いて説明する。なお、先に説明した機能と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
図5(A)は、トランジスタ100Aのチャネル長方向の断面図であり、図5(B)は、トランジスタ100Aのチャネル幅方向の断面図である。また、図5(C)は、トランジスタ140Aのチャネル長方向の断面図であり、図5(D)は、トランジスタ140Aのチャネル幅方向の断面図である。また、図5(E)は、トランジスタ160Aのチャネル長方向の断面図であり、図5(F)は、トランジスタ160Aのチャネル幅方向の断面図である。なお、トランジスタ100A、140A、160Aの上面図については、それぞれ、図2(A)に示す上面図、図3(A)に示す上面図、及び図4(A)に示す上面図と同様のため、ここでの記載は省略する。
トランジスタ100A、140A、160Aは、それぞれ、先に示すトランジスタ100、140、160の変形例であり、トランジスタ100、140、160上、具体的には、絶縁膜118、及び導電膜120a、120b上に絶縁膜122が設けられている点が異なる。それ以外の構成については、先に示すトランジスタ100、140、160と同様であり、詳細な説明は省略する。
絶縁膜122としては、絶縁膜118に用いることのできる材料と同様の材料を用いて形成することができる。また、絶縁膜122としては、導電膜120bを覆い、導電膜120aの一部が露出するように設ければよい。絶縁膜122を設ける構成とすることで、導電膜120bを保護することが可能となり、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
また、本発明の一態様の半導体装置は、図6乃至図8に示すトランジスタ100B、トランジスタ100C、及びトランジスタ100Dとしてもよい。図6に示すトランジスタ100Bは、チャネルエッチ型であり、図7に示すトランジスタ100C、及び図8に示すトランジスタ100Dは、チャネル保護型のトランジスタである。トランジスタ100C及びトランジスタ100Dにおいては、絶縁膜114、116に開口部141a、141bを設け、絶縁膜118に開口部143を設ける構成とすればよい。
また、本実施の形態に係るトランジスタは、上記の構造のそれぞれを自由に組み合わせることが可能である。
<半導体装置の作製方法1>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の作製方法について、図9乃至図11を用いて以下詳細に説明する。なお、図9乃至図11は、半導体装置の作製方法を説明する断面図である。また、図9(A)(C)(E)(G)、図10(A)(C)(E)、及び図11(A)(C)(E)(G)は、トランジスタ100の作製途中のチャネル長方向の断面図であり、図9(B)(D)(F)(H)、図10(B)(D)(F)、及び図11(B)(D)(F)(H)は、トランジスタ100の作製途中のチャネル幅方向の断面図である。
上述したように、トランジスタ100を構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、PLD法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法、またはALD法でもよい。熱CVD法の例として、MOCVD法が挙げられる。
まず、基板102上に導電膜を形成し、該導電膜をリソグラフィ工程及びエッチング工程を行い加工して、第1のゲート電極として機能する導電膜104を形成する。次に、導電膜104上に第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107を形成する(図9(A)(B)参照)。
本実施の形態では、基板102としてガラス基板を用い、導電膜104として厚さ100nmのタングステン膜をスパッタリング法で形成する。
本実施の形態では、PECVD法により、絶縁膜106として厚さ400nmの窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜107として厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
なお、絶縁膜106としては、窒化シリコン膜の積層構造とすることができる。具体的には、絶縁膜106を、第1の窒化シリコン膜と、第2の窒化シリコン膜と、第3の窒化シリコン膜との3層積層構造とすることができる。該3層積層構造の一例としては、以下のように形成することができる。
第1の窒化シリコン膜としては、例えば、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPE−CVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
第2の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成すればよい。
第3の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sccmの窒素を原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
なお、上記第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の窒化シリコン膜形成時の基板温度は350℃とすることができる。
絶縁膜106を、窒化シリコン膜の3層の積層構造とすることで、例えば、導電膜104に銅(Cu)を含む導電膜を用いる場合において、以下の効果を奏する。
第1の窒化シリコン膜は、導電膜104からの銅(Cu)元素の拡散を抑制することができる。第2の窒化シリコン膜は、水素を放出する機能を有し、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜の耐圧を向上させることができる。第3の窒化シリコン膜は水素放出が少なく、且つ第2の窒化シリコン膜からの放出される水素の拡散を抑制することができる。
絶縁膜107としては、後に形成される酸化物半導体膜108との界面特性を向上させるため、酸素を含む絶縁膜で形成されると好ましい。
次に、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108を形成する(図9(C)(D)参照)。
本実施の形態では、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=3:1:2(原子数比))を用いて、スパッタリング法により酸化物半導体膜を成膜し、該酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、該酸化物半導体膜を所望の領域に加工することで島状の酸化物半導体膜108を形成する。
酸化物半導体膜108の形成後、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、さらに好ましくは300℃以上450℃以下の加熱処理を行ってもよい。ここでの加熱処理は、酸化物半導体膜の高純度化処理の一つであり、酸化物半導体膜108に含まれる水素、水等を低減することができる。なお、加熱処理は、酸化物半導体膜108を島状に加工する前に行ってもよい。
酸化物半導体膜108への加熱処理は、電気炉、RTA(ラピッド・サーマル・アニール)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、加熱時間を短縮することが可能となる。
なお、酸化物半導体膜108への加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理した後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱してもよい。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸化物半導体膜中に酸素を供給することができる。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
なお、スパッタリング法で酸化物半導体膜108を形成する場合、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、混合ガスの場合、希ガスよりも酸素が多くても良い。また、スパッタリングガスの高純度化が好ましい。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜108に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
また、スパッタリング法で酸化物半導体膜108を形成する場合、スパッタリング装置におけるチャンバーは、酸化物半導体膜108にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空(5×10−7Paから1×10−4Pa程度まで)排気することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
次に、絶縁膜107及び酸化物半導体膜108上にソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜112a、112bを形成する(図9(E)(F)参照)。
本実施の形態では、導電膜112a、112bとして、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmのアルミニウム膜との積層膜をスパッタリング法により成膜し、該積層膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、該積層膜を所望の領域に加工することで、導電膜112a、112bを形成する。なお、本実施の形態においては、導電膜112a、112bの2層の積層構造としたが、これに限定されない。例えば、導電膜112a、112bとして、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmのアルミニウム膜と、厚さ100nmのチタン膜との3層の積層構造としてもよい。
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112bに、エッチャント131を塗布し、酸化物半導体膜108の表面(バックチャネル側)を洗浄する(図9(G)(H)参照)。
上記洗浄方法としては、例えば、リン酸水溶液等のエッチャントを用いた洗浄が挙げられる。これにより、酸化物半導体膜108の表面に付着した不純物(例えば、導電膜112a、112bに含まれる元素等)を除去することができる。なお、図9(G)(H)に示す洗浄工程は、必ずしも行う必要はなく、場合によっては、洗浄工程を行わなくてもよい。
なお、導電膜112a、112bの形成時、及び/または上記洗浄工程において、酸化物半導体膜108の一部に凹部が形成される場合がある。
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114、116を形成する(図10(A)(B)参照)。
なお、絶縁膜114を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜116を形成することが好ましい。絶縁膜114を形成後、大気開放せず、原料ガスの流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜116を連続的に形成することで、絶縁膜114と絶縁膜116の界面において大気成分由来の不純物濃度を低減することができるとともに、絶縁膜114、116に含まれる酸素を酸化物半導体膜108に移動させることが可能となり、酸化物半導体膜108の酸素欠損量を低減することが可能となる。
例えば、絶縁膜114として、PECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成することができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。また、上記の堆積性気体に対する酸化性気体を20倍より大きく100倍未満、好ましくは40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa未満、好ましくは50Pa以下とするPECVD法を用いることで、絶縁膜114が、窒素を含み、且つ欠陥量の少ない絶縁膜となる。
本実施の形態においては、絶縁膜114として、基板102を保持する温度を220℃とし、流量50sccmのシラン及び流量2000sccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室内の圧力を20Paとし、平行平板電極に供給する高周波電力を13.56MHz、100W(電力密度としては1.6×10−2W/cm2)とするPECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する。
絶縁膜116としては、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上280℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ましくは0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
絶縁膜116の成膜条件として、上記圧力の反応室において上記パワー密度の高周波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜116中における酸素含有量が化学量論的組成よりも多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物絶縁膜を形成することができる。
なお、絶縁膜116の形成工程において、絶縁膜114が酸化物半導体膜108の保護膜となる。したがって、酸化物半導体膜108へのダメージを低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて絶縁膜116を形成することができる。
なお、絶縁膜116の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気体の流量を増加することで、絶縁膜116の欠陥量を低減することが可能である。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm3未満、あるいは3×1017spins/cm3以下、あるいは1.5×1017spins/cm3以下である欠陥量の少ない酸化物絶縁層を形成することができる。この結果トランジスタの信頼性を高めることができる。
また、絶縁膜114、116を形成した後、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる窒素酸化物を低減することができる。また、上記加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜108に移動させ、酸化物半導体膜108に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
絶縁膜114、116への加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上400℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃以下とする。加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。該加熱処理には、電気炉、RTA装置等を用いることができる。
本実施の形態では、窒素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行う。
次に、絶縁膜116上に保護膜117を形成する(図10(C)(D)参照)。
保護膜117は、インジウム、亜鉛、チタン、アルミニウム、タングステン、タンタル、またはモリブデンの中から選ばれる少なくとも1以上を有する。例えば、上述した金属元素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金、上述した金属元素を有する金属酸化物、上述した金属元素を有する金属窒化物、または上述した金属元素を有する金属窒化酸化物等の導電性を有する材料を用いて形成する。
保護膜117の一例としては、窒化タンタル膜、チタン膜、インジウム錫酸化物膜、アルミニウム膜、酸化物半導体膜(例えば、IGZO膜(In:Ga:Zn=1:4:5(原子数比))等)を用いることができる。また、保護膜117としては、スパッタリング法を用いて形成することができる。また、保護膜117の厚さとしては、1nm以上20nm以下、または2nm以上10nm以下とすると好ましい。本実施の形態では、保護膜117として、厚さ5nmの酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物(Indium Tin SiO2 Doped Oxide:以下ITSOと呼ぶ)を用いる。
次に、保護膜117を介して絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108に酸素133を添加する(図10(E)(F)参照)。
保護膜117を介して絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108に酸素133を添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。また、酸素133を添加する際に、基板側にバイアスを印加することで効果的に酸素133を絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108に添加することができる。上記バイアスとしては、例えば、電力密度を1W/cm2以上5W/cm2以下とすればよい。絶縁膜116上に保護膜117を設けて酸素を添加することで、保護膜117が絶縁膜116から酸素が脱離することを抑制する保護膜として機能する。このため、絶縁膜114、116及び酸化物半導体膜108により多くの酸素を添加することができる。
また、プラズマ処理で酸素の導入を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸素プラズマを発生させることで、絶縁膜114、116への酸素導入量を増加させることができる。
次に、保護膜117を除去する(図11(A)(B)参照)。
保護膜117の除去方法としては、ドライエッチング法、ウエットエッチング法、またはドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせる方法等が挙げられる。本実施の形態においては、ウエットエッチング法を用いて、保護膜117を除去する。なお、本実施の形態においては、保護膜117を除去する方法を例示したが、これに限定されない。例えば、保護膜117を除去せずに保護膜117上に絶縁膜118を形成してもよい。
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成する(図11(C)(D)参照)。
なお、絶縁膜118の形成前、または絶縁膜118の形成後に加熱処理を行って、絶縁膜114、116に含まれる過剰酸素を酸化物半導体膜108中に拡散させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填することができる。あるいは、絶縁膜118を加熱成膜とすることで、絶縁膜114、116に含まれる過剰酸素を酸化物半導体膜108中に拡散させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填することができる。
絶縁膜118をPECVD法で形成する場合、基板温度は300℃以上400℃以下に、好ましくは320℃以上370℃以下にすることで、緻密な膜を形成できるため好ましい。
例えば、絶縁膜118としてPECVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリコンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。窒素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニアが解離し、活性種が発生する。該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシリコン及び水素の結合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の結合が促進され、シリコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン膜を形成することができる。一方、窒素に対するアンモニアの量が多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒素の分解が進まず、シリコン及び水素結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な窒化シリコン膜が形成されてしまう。これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対する窒素の流量比を5以上50以下、10以上50以下とすることが好ましい。
本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD装置を用いて、シラン、窒素、及びアンモニアの原料ガスから、厚さ50nmの窒化シリコン膜を形成する。流量は、シランが50sccm、窒素が5000sccmであり、アンモニアが100sccmである。処理室の圧力を100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給する。PECVD装置は電極面積が6000cm2である平行平板型のPECVD装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると1.7×10−1W/cm2である。
次に、絶縁膜118上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、絶縁膜114、116、118の所望の領域に開口部142cを形成する。また、絶縁膜118上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、絶縁膜106、107、114、116、118の所望の領域に開口部142a、142bを形成する。なお、開口部142cは、導電膜112bに達するように形成される。また、開口部142a、142bは、それぞれ導電膜104に達するように形成される(図11(E)(F)参照)
なお、開口部142a、142bと開口部142cは、同じ工程で形成してもよく、異なる工程で形成してもよい。開口部142a、142bと開口部142cを同じ工程で形成する場合、例えば、グレートーンマスクまたはハーフトーンマスクを用いて形成することができる。また、開口部142a、142bを複数回に分けて形成してもよい。例えば、絶縁膜106、107を加工し、その後、絶縁膜114、116、118を形成・加工する。
次に、開口部142a、142b、142cを覆うように絶縁膜118上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の形状に加工することで、導電膜120a、120bを形成する(図11(G)(H)参照)。
導電膜120a、120bとしては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いることができる。とくに、導電膜120a、120bとしては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、ITSOなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。本実施の形態においては、膜厚110nmのITSO膜をスパッタリング法で形成する。
以上の工程で図2に示すトランジスタ100を作製することができる。
なお、図3(A)(B)(C)に示すトランジスタ140、及び図4(A)(B)(C)に示すトランジスタ160としては、図11(F)に示す開口部142a、142bの形成時に開口マスクの形状を変えることで作製することができる。また、図5(A)乃至(F)に示すトランジスタ100A、140A、160Aとしては、図11(G)(H)に示す工程の後に、さらに、導電膜120a、120b及び絶縁膜118上に絶縁膜122を形成することで作製することができる。
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に含まれる酸化物半導体の構造と性質について、詳細に説明を行う。
<酸化物半導体の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous like Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体(a−OS)などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、a−OSと、それ以外の結晶性酸化物半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OSなどがある。
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であって不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が固定されておらず、短距離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
<CAAC−OS>
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
以下では、TEMによって観察したCAAC−OSについて説明する。図12(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって行うことができる。
図12(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図12(B)に示す。図12(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層の配列は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
図12(B)に示すように、CAAC−OSは特徴的な原子配列を有する。図12(C)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図12(B)および図12(C)より、ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあり、ペレットとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC−OSのペレット5100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造となる(図12(D)参照。)。図12(C)で観察されたペレットとペレットとの間で傾きが生じている箇所は、図12(D)に示す領域5161に相当する。
また、図13(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図13(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図13(B)、図13(C)および図13(D)に示す。図13(B)、図13(C)および図13(D)より、ペレットは、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
次に、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図14(A)に示すように回折角(2θ)が31°にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、CAAC−OSのout−of−plane法による構造解析では、2θが31°のピークの他に、2θが36°にもピークが現れる場合がある。2θが36°のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。c軸配向性が非常に高い場合には、out−of−plane法による構造解析では、2θが31°にピークを示し、2θが36°にピークを示さない。
一方、CAAC−OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OSの場合は、2θを56°に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図14(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°に固定してφスキャンした場合、図14(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図15(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図15(B)に示す。図15(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図15(B)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、図15(B)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
上述したように、CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をするとCAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
このため、不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度が非常に低い。具体的には、8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10−9/cm3以上のキャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
nc−OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットに相当するとも言える。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSやa−OSと区別が付かない場合がある。例えば、nc−OSに対し、ペレットよりも大きい径のX線を用いた場合、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークは検出されない。また、nc−OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円周状に分布した複数のスポットが観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、a−OSよりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSやa−OSよりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSとa−OSとの間の構造を有する酸化物半導体である。
a−like OSは、高分解能TEM像において鬆(ボイド)が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。
鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSやCAAC−OSと比較して不安定な構造である。例えばa−like OSは電子照射によってモルフォロジーが変化する。具体的には図16に示すように、In−Ga−Zn酸化物のa−like OS(試料A)に対して電子線を照射すると、そのドーズ量の増加とともに、高分解能断面TEMによって見積もられた結晶部の平均サイズが大きくなる。これに対し、同じ酸化物のnc−OS(試料B)やCAAC−OS(試料C)では電子線を照射しても目立った変化は観測されない。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、a−OS、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の一例について、図17乃至図19を用いて以下説明を行う。
図17は、表示装置の一例を示す上面図である。図17示す表示装置700は、第1の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すなわち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお、図17には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設けられる。
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706とそれぞれ電気的に接続されるFPC端子部708(FPC:Flexible printed circuit)が設けられる。また、FPC端子部708には、FPC716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708には、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706、に与えられる。
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に実装する構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法などを用いることができる。
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタを適用することができる。
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子の一例としては、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクトロウェッティング素子、プラズマディスプレイ(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャッター(DMS)素子、インターフェアレンス・モジュレーション(IMOD)素子など)、圧電セラミックディスプレイなど、電気磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素よって、異なる2色を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色光(W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともいう。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、ホワイト(W)を、それぞれの発光色を有する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よりも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について、図18及び図19を用いて説明する。なお、図18は、図17に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、図19は、図17に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成である。
まず、図18及び図19に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分について以下説明する。
<表示装置の共通部分に関する説明>
図18及び図19に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を有する。
トランジスタ750及びトランジスタ752には、先に示すトランジスタを用いることができる。
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
容量素子790は、一対の電極間に誘電体を有する構造である。より詳しくは、容量素子790の一方の電極としては、トランジスタ750のゲート電極として機能する導電膜と同一工程で形成された導電膜を用い、容量素子790の他方の電極としては、トランジスタ750のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜を用いる。また、一対の電極間に挟持される誘電体としては、トランジスタ750のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜を用いる。
また、図18及び図19において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量素子790上に、絶縁膜764、766、768、及び平坦化絶縁膜770が設けられている。
絶縁膜764、766、768としては、それぞれ先の実施の形態に示す絶縁膜114、116、118と、同様の材料及び作製方法により形成することができる。また、平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平坦化絶縁膜770を設けない構成としてもよい。
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程で形成される。なお、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と異なる工程で形成された導電膜、例えばゲート電極として機能する導電膜としてもよい。信号線710として、例えば、銅元素を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となる。
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC716を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程で形成される。また、接続電極760は、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いることができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられる。
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。また、本実施の形態においては、構造体778を第1の基板701側に設ける構成について例示したが、これに限定されない。例えば、第2の基板705側に構造体778を設ける構成、または第1の基板701及び第2の基板705双方に構造体778を設ける構成としてもよい。
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する絶縁膜734が設けられる。
<表示素子として液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図18に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705側に設けられ、対向電極としての機能を有する。図18に示す表示装置700は、導電膜772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わることによって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、反射電極としての機能を有する。図18に示す表示装置700は、外光を利用し導電膜772で光を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置である。
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
また、導電膜772として、可視光において反射性のある導電膜を用いる場合、該導電膜を積層構造としてもよい。例えば、下層に膜厚100nmのアルミニウム膜を形成し、上層に厚さ30nmの銀合金膜(例えば、銀、パラジウム、及び銅を含む合金膜)を形成する。上述の構造とすることで、以下の優れた効果を奏する。
(1)下地膜(ここでは、平坦化絶縁膜770)と導電膜772との密着性を向上させることができる。(2)エッチャントによってアルミニウム膜と、銀合金膜とを一括してエッチングすることが可能である。(3)導電膜772の断面形状を良好な形状(例えば、テーパー形状)とすることができる。(3)の理由としては、アルミニウム膜は、銀合金膜よりもエッチャントによるエッチング速度が遅い、または銀合金膜のエッチング後、アルミニウム膜が露出した場合に、銀合金膜よりも卑な金属、別言するとイオン化傾向の高い金属であるアルミニウムから電子を引き抜くため、銀合金膜のエッチングが抑制され、アルミニウム膜のエッチングの進行が速くなるためである。
また、図18に示す表示装置700においては、画素部702の平坦化絶縁膜770の一部に凹凸が設けられている。平坦化絶縁膜770は樹脂等で形成することができる。また、反射電極として機能する導電膜772は、上記凹凸に沿って形成される。したがって、外光が導電膜772に入射した場合において、導電膜772の表面で光を乱反射することが可能となり、視認性を向上させることができる。
なお、図18に示す表示装置700は、反射型のカラー液晶表示装置について例示したが、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性のある導電膜を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。透過型のカラー液晶表示装置の場合、平坦化絶縁膜770に設けられる凹凸については、設けない構成としてもよい。
なお、図18において図示しないが、導電膜772、774の液晶層776と接する側に、それぞれ配向膜を設ける構成としてもよい。また、図18において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
液晶層776にはサーモトロピック液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。液晶は低分子液晶、高分子液晶、あるいは高分子分散型液晶でも良い。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短い。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、配向処理が不要である。また、ブルー相を示す液晶を用いた場合、液晶素子の視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
<表示素子として発光素子を用いる表示装置>
図19に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜784、EL層786、及び導電膜788を有する。図19に示す表示装置700は、発光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができる。
また、導電膜784は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜に接続される。導電膜784は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。導電膜784としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよい。
また、図19に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜784上に絶縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜784の一部を覆う。なお、発光素子782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、EL層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜784側に光を射出するボトムエミッション構造や、導電膜784及び導電膜788の双方に光を射出するデュアルエミッション構造にも適用することができる。
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重なる位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設けられている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。また、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、図19に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これに限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色膜736を設けない構成としてもよい。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、図20を用いて説明を行う。
図20(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502という)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路506という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されていることが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated Bonding)によって、実装することができる。
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置された複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するための回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力する。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力され、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲートドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ504aは、別の信号を供給することも可能である。
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元となる信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与えられる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有する。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも可能である。
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介してデータ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
図20(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することができる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
図20(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路506を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成とすることもできる。
また、図20(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bによって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装する構成としても良い。
また、図20(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図20(B)に示す構成とすることができる。
図20(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STN(Super−twisted Nematic)モード、VAモード、ASMモード、OCBモード、FLCモード、AFLCモード、MVAモード、PVAモード、IPSモード、FFSモード、又はTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々なものを用いることができる。
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線GL_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
図20(B)の画素回路501を有する表示装置では、図20(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
また、図20(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図20(C)に示す構成とすることができる。
また、図20(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ552のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気的に接続される。
トランジスタ552は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
図20(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、図20(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554のソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器について、図21及び図22を用いて説明を行う。
図21に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002との間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続された表示パネル8006、バックライト8007、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリ8011を有する。
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル8006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
バックライト8007は、光源8008を有する。なお、図21において、バックライト8007上に光源8008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例えば、バックライト8007の端部に光源8008を配置し、さらに光拡散板を用いる構成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射型パネル等の場合においては、バックライト8007を設けない構成としてもよい。
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
図22(A)乃至図22(G)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有することができる。
図22(A)乃至図22(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図22(A)乃至図22(G)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。また、図22(A)乃至図22(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
図22(A)乃至図22(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
図22(A)は、携帯情報端末9100を示す斜視図である。携帯情報端末9100が有する表示部9001は、可撓性を有する。そのため、湾曲した筐体9000の湾曲面に沿って表示部9001を組み込むことが可能である。また、表示部9001はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部9001に表示されたアイコンに触れることで、アプリケーションを起動することができる。
図22(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を省略して図示しているが、図22(A)に示す携帯情報端末9100と同様の位置に設けることができる。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
図22(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信した電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
図22(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
図22(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図22(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、図22(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、図22(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有することを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機器にも適用することができる。また、本実施の形態において述べた電子機器の表示部は可撓性を有し、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる構成、または折り畳み可能な表示部の構成について例示したが、これに限定されず、可撓性を有さず、平面部に表示を行う構成としてもよい。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例においては、図2に示すトランジスタ100に相当するトランジスタを作製し、該トランジスタの光照射によるID−VG特性の変動を評価した。本実施例においては、以下に示す試料A1乃至A3、及び試料B1を作製し評価を行った。なお、試料A1乃至試料A3、及び試料B1は、それぞれチャネル長L=6μm、チャネル幅W=50μmのトランジスタのサイズとした。
本実施例で作製した試料について、以下説明を行う。なお、以下の説明において、図2に示すトランジスタ100に付記した符号を用いて説明する。
<試料A1乃至試料A3の作製方法>
まず、基板102上に導電膜104を形成した。基板102としては、ガラス基板を用いた。また、導電膜104としては、厚さ100nmのタングステン膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。
次に、基板102及び導電膜104上に絶縁膜106、107を形成した。絶縁膜106としては、厚さ400nmの窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。また、絶縁膜107としては、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。
次に、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108を形成した。酸化物半導体膜108としては、スパッタリング装置を用いてIGZO膜を形成した。なお、酸化物半導体膜108の成膜条件としては、基板温度を170℃とし、流量100sccmのアルゴンガスと、流量100sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、多結晶の金属酸化物スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=3:1:2[原子数比])に2500WのAC電力を投入して成膜した。
なお、試料A1、試料A2、及び試料A3は、酸化物半導体膜108の膜厚がそれぞれ異なる。具体的には、試料A1、試料A2、及び試料A3の酸化物半導体膜108の膜厚は、それぞれ、20nm、35nm、50nmとした。
次に、窒素雰囲気下で450℃ 1時間、続けて窒素と酸素の混合ガス雰囲気下で450℃ 1時間加熱することにより第1の熱処理を行った。
次に、絶縁膜107及び酸化物半導体膜108上に導電膜112a、112bを形成した。導電膜112a、112bとしては、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmのアルミニウム膜と、厚さ100nmのチタン膜とを、スパッタリング装置を用いて真空中で連続して形成した。
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114及び絶縁膜116を形成した。絶縁膜114としては、厚さ30nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。また、絶縁膜116としては、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。なお、絶縁膜114及び絶縁膜116としては、PECVD装置により真空中で連続して形成した。
絶縁膜114の成膜条件としては、基板温度を220℃とし、流量50sccmのシランガスと、流量2000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を20Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間に100WのRF電力を供給して成膜した。また、絶縁膜116の成膜条件としては、基板温度を220℃とし、流量160sccmのシランガスと、流量4000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を200Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間に1500WのRF電力を供給して成膜した。
次に、窒素ガス雰囲気下、350℃ 1時間で第2の熱処理を行った。
次に、絶縁膜116上に保護膜117を形成した。保護膜117としては、厚さ5nmのITSO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。該ITSO膜の成膜条件としては、基板温度を室温とし、流量72sccmのアルゴンガスと、流量5sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.15Paとし、スパッタリング装置内に設置された金属酸化物ターゲット(In2O3:SnO2:SiO2=85:10:5[重量%])に1000WのDC電力を供給して成膜した。
次に、保護膜117を介して、酸化物半導体膜108、及び絶縁膜114、116に酸素添加処理を行った。該酸素添加処理としては、アッシング装置を用い、基板温度を40℃とし、流量250sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を15Paとし、基板側にバイアスが印加されるように、アッシング装置内に設置された平行平板の電極間に4500WのRF電力を600sec供給して行った。
次に、保護膜117上に絶縁膜118を形成した。絶縁膜118としては、厚さ100nmの窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。
次に、第3の熱処理を窒素ガス雰囲気下で250℃ 1時間で行った。
<試料B1の作製方法>
試料B1としては、先に示す試料A1と比較し、以下の工程が異なる。それ以外の工程については、試料A1と同様に作製した。
試料B1としては、第2の熱処理終了後に、保護膜117の形成、及び酸素添加処理を行わずに、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成した。
以上の工程で本実施例の試料A1乃至A3、及び試料B1を作製した。
次に、上記作製した試料A1乃至A3、及び試料B1の光照射におけるID−VG特性結果を図23乃至図26に示す。なお、図23は、試料A1のID−VG特性結果であり、図24は、試料A2のID−VG特性結果であり、図25は、試料A3のID−VG特性結果であり、図26は、試料B1のID−VG特性結果である。また、図23乃至図26において、縦軸がID(A)を、横軸がVG(V)を、それぞれ表す。
光照射におけるID−VG特性は、50μW/cm2の強度の光を400nm以上495nm以下、すなわち、2.5eV以上3.1eV以下の範囲の光を照射しながら測定した。具体的には、以下の波長の光を順に照射した。495nm(2.51eV)、475nm(2.61eV)、460nm(2.70eV)、455nm(2.73eV)、450nm(2.76eV)、445nm(2.79eV)、440nm(2.82eV)、430nm(2.88eV)、420nm(2.95eV)、415nm(2.99eV)、400nm(3.10eV)。したがって、試料A1乃至A3、及び試料B1のID−VG特性は、上記11ポイントの測定データと、暗状態での測定データの合計12ポイントのデータとなる。また、図23乃至図26に示すID−VG特性結果は、上記12ポイントのデータを重ねて表示している。
また、トランジスタ100の第1のゲート電極として機能する導電膜104に印加する電圧(VG)、及び第2のゲート電極として機能する導電膜120bに印加する電圧(VBG)としては、−15Vから+20Vまで0.25Vのステップで印加した。また、ソース電極として機能する導電膜112aに印加する電圧(VS)は、0V(common)とし、ドレイン電極として機能する導電膜112bに印加する電圧(VD)は、10Vとした。
また、上記試料A1乃至A3のΔShiftの測定結果を図27(A)に示す。また、上記試料A1と試料B1のΔShiftの測定結果を図27(B)に示す。なお、図27(A)(B)において、縦軸がΔShift(V)を、横軸が照射エネルギー(eV)を、それぞれ表す。
図23乃至図27に示す結果から、酸化物半導体膜108の膜厚を薄くした試料A1のΔShiftの変動量が少ないことが確認できた。また、試料A1と試料B1を比較した場合、酸素添加処理を行った試料A1の方がΔShiftの変動量が少ないことが確認できた。また、本実施例で作製した試料A1乃至試料A3、及び試料B1は、高い電界効果移動度を有することが確認できた。
以上に示す結果より、本発明の一態様のトランジスタは、光照射による特性変動が少なく、且つ電界効果移動度度が高い半導体装置であることが確認できた。
以上、本実施例に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。